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第七章
女神の疑い
しおりを挟む「貴方は」
サティナはそう言い、言葉に詰まる。
続きを言おうとし――、敢えてそれを飲み込んだ感じだった。
信じてくれる誰かを失ってはならない。
そんな使命感がそこにはあるようにも、アイリスには見て取れた。
続きを知ろうとしてついつい、オウム返しに聞き返してしまう。
「貴方は、なんですか……女神様?」
「本当に私の信者なの?」
「それはもう、間違いないほどに! 信者ですよ!」
「主がその能力を、失った力を取り戻そうとこうやって頑張っているのに?」
「そうやって頑張って間違った方向に行かれようとしているから、止め立てしようとしているんです!」
「間違ったって……なんでそう言えるのよー」
はあ、とサティナは女神らしからぬため息。もとい、大きな息を吐いた。
残念。そんな諦めの一言が聞こえてきそうな、盛大なため息だった。
「なぜ、と言われましても信者が困るような未来を作るのが神の思し召しですか?」
「それが必要なら」
「断言しないでください。そのために多くの血が流れても、女神様は困らないと言いたそう……」
「困るわよ。信者が減ったらそれはそれで、信仰の力が無くなって影響力が無くなるんだから」
「サティナ様……」
まるでアイリスがケイトにぶっちゃけるような勢いで、その一言は繰り出された。
それは言い出す相手が違うのではないのかとアイリスは思うが、この女神様ともそれなりの付き合いだ。
とりあえず幼い自分を利用されるのだけは防ごうとやって来たのだから、その目的は果たすつもりだった。
「ね、困るでしょ?」
「お困りになるのは、現世に対する影響力だけではありませんか。そんなもの、妹のアミュエラ様の身代わりになって力を半減された今、どのお口が言われるのですか」
「あー……そうね。貴方は全部を知ってるんだったわ。でも、こうしないと使命が果たせないのよ」
「使命ってどれをおっしゃっているんですか。姪のカーラ様の問題は間に合いませんでしたよ? サティナ様の復活は出来ましたけど、その代わりに水晶族とバルッサムたちの赤の月への帰還という悲願が無残にも打ち砕かれました。それでも、サティナ様は使命を果たすと言われるのですか?」
「……時には犠牲も付き物だわ。姪どころか甥二人もあの後。いいえ、これからの未来でろくでもないことをやらかそうとしてるんだから」
甥?
あの画面で見た二柱の男神のことだろうか。
聖女タチアナの子供の魂を人質にしろと命じたあの神様たち。
自分の時代の神様は人間にももとるような行為を平然とやらかしていて、到底、信仰の対象にはしたくないと心の底から言える相手だった。
まだ、目の前の迂闊な女神様の方がましなほどに思える。
「では、その未来も変えに行きませんか?」
「変えるって貴方が? どうやって?」
「それはですねー」
まだ子供の自分にはサティナ様の御姿は見えていないらしい。
アイリスはそれだけを確認すると、怪しいと疑う女神にそっと一歩を踏み出した。
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