残念ですが、殿下。浮気ばかりするあなたには愛想が尽き果てました。これにて絶縁させて頂きます!~婚約破棄&国外追放?お好きにどうぞ~

和泉鷹央

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第二章

貴族の責務

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 どうもうまく逃げられた気がする。
 ……そう、あいつはそんなに弱い女じゃない。 
 やはりその不信感が拭えない。
 
「確かめに行くか」

 拭えない以上、確かめるしかない。いやーそれも正直、面倒くさい。
 王国にいられなくなった以上、ソフィ、いや――彼女との愛は忘れるべきなんだ。
 俺もいい被害者だよ、本当に。

「結局、何がしたいんだ、あいつは……?」

 出てくる答えは二者択一しかない。
 貴族を止めて庶民として生きるか、その誇りを保ちいつか戻れることを諦めずに生き恥を晒し続けるか。

「ああ……もう一つあったな」

 貴族にだけ許された権利。
 自分だけで責任をすべて取ること。そこで食い止めること。
 後に残さずに、終わらせること。
 ……自害だ。

「甘やかしてもあいつの為にならんな。覚悟もない貴族ほど、タチの悪いものもない」

 そうなると俺はどうするべきだろうか?
 その首を持ち帰り、侯爵閣下に報告する義務がある?
 いや、それはアンナローズの叔父夫妻に任せてもいい。
 護衛を勤め上げれなかったということで、後追いの自害をするのも一般的だ。
 
「ソフィアに恨まれるな。あの世まで追いかけてこられたら男冥利に尽きるもんだが」

 あの権力大好き女がそうするとは思えない。
 今頃は俺がいなくなったのをこれ幸いと新しい相手に……その目は向いているだろう。
 キリが良いな。
 アンナローズも既に十六歳。
 女子であっても十三歳を越えれば立派な成人だ。
 覚悟はできているだろう。

「ま、そんなもんか」

 ラッセルはどうにももやもやしたものを心に抱えながら、アンナローズの部屋の扉をノックした。
 返事はなく、寝入っているような気もするが――起こしてでもここは話すべきだと思った彼は、「入るぞ」と一声かけ、数呼吸置いてドアノブを回した。

「許可もなく入って来るなんて、礼儀知らずね……」
「何をしている?」

 室内にはところ狭しと彼女の私物が散乱していた。
 衣類、書籍、化粧品などもそうだし、なかにはちらほらと貴金属なども見受けられる。
 手持ちの物を売ってここを出ていく気か?
 一瞬、ラッセルはそう思ってしまった。
 
「別に……少し時間が欲しいの」
「時間? どれくらいだ?」
「……明日の朝?」

 朝、か。
 出ていくのならそれもいい。
 親が出ていけと言えば、二度と家には戻らないのが王国の子供だ。
 自分の生き方を自分で決めるのだと当人が言うなら、それを否定する気もラッセルにはない。
 ただ……

「費用を作るなら夕方か、明後日くらいにしておけ。それとな――」
「……分かってる。これでもライデセン侯爵家の女だから。分かってるわ……」
「そうか、なら。それでいい。後、食事は自分で作れ。俺はもうお前を特別扱いはしない。侯爵令嬢のままでいるなら、いつかそうなると誓うなら。また別だがな」
「分かってます」

 出て行って。
 静かに望むアンナローズにはこれ以上かける言葉はないだろう。
 そう思い、ラッセルは彼女の部屋を後にした。
 いくばくかの後味の悪さと共に。
 
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