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第三章 姉妹の確執

35 季美side2

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 いくばくかの罪悪感。
 初めてにしてはそれなりに長い時間お互いに過ごすことができた、貴重な体験。
 綺麗な人に抱かれたことで、自分がほんの少し清らかな体になれた気がして、それなりに嬉しかった。

 だけど、行為が終わった後の彼の発言はいただけない。
 だって、「先輩に申し訳ない」なんて言ったのだから。
 ならその先輩を裏切った私はどうなるの?
 あなたと一緒に汚れてあげるってそう決めたのに。
 あなただけがさっさとその場から逃げようとするなんて、卑怯じゃない。

 ねえ、抱介。
 もう一度、抱きしめてよ。
 もう一度、抱き上げてよ。
 もう一度、側にいてよ。
 あなたのことを裏切ったなんて、私は思っていないから。
 あなたに裏切られたから、私も裏切ってやろうと思っただけ。

 だから半年ほどあなたと付き合って、それから新しい彼氏を見つけて。
 彼の方が私よりもより悪ぶって汚れているように見えたから。
 だからそっちに足を向けることであなたの視線から逃げようとした。

 裏切らせたのは私だしあなたを最初の時に誘ったのも私。
 あなたを惑わせたのも私。
 でも後悔はしてないの。
 だってあなたも私を裏切ったから。

 あの一言がなくて、例えばこれから二人で先輩に謝りに行こう、とか。
 もう先輩と別れて俺とずっと一緒にそばにいてくれよ、とか。
 俺だけの季美でいて欲しいんだ、とか。
 もう絶対に離さない、とか。
 大丈夫だよ。俺がそばにいるからもう、大丈夫だよ、とか。
 とにかく私の進む方向に光が見える方向に引っ張って行って欲しかったし、そんな言葉をかけて欲しかった。

 あー……でも、待って。
 もしかしたらそのうちのいくつかは、言われたかもしれない。
 私は物覚えがそんなに良くないからさっさと忘れてしまったのかもしれない。
 自分にとって都合が悪いことは忘れる主義だから。
 後悔はしても反省をしない、それが私の生き様だから。
 だけどどうしてだろう。

 抱介と裸で抱き合ったあの時が、一番幸せな時間だった。
 他のどんな男たちと肌を合わせても、やっぱりそれは違うくて。
 どうしてだろう。
 私が何度裏切っても。
 彼は怒ることなく、もう一度あの道に立ち戻らせてくれると、そう信じていたのに。

 心の中でそう確信してしまったからこそ、さっさとこっちに向いてくれない彼に、苛立ちばかりが募ってしまう。
 そんな時だった。二人が揃って私の目の前に、現れたのは。

 
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