彼氏が親友と浮気して結婚したいというので、得意の氷魔法で冷徹な復讐をすることにした。

和泉鷹央

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第八章 裏切り者の親友

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 結局、わたしは彼――地下の道先案内人。
 イデアという名の黒髪黒目の東方風の異国人に、あの嫌なやつだけ。だけど命の恩人ともいえるべき男性の、忠告に従うことにした。
 その前に彼にわたしたあの端末だけではいろいろと今後の計画に不安だったので、レイにも渡してある、とある魔導具と同じものを手渡して来た。
 通信機、とでも言えばいいのだろうか。
 あの手鏡のように輝く鏡面を持ち、四角いそれは雪竜ゆきりゅうと呼ばれるドラゴンの鱗を加工したものだ。

「はい、これ。もってて頂戴」
「なんだ、これ……?」

 真っ白な背面に表側は真っ青な鏡面を持つ長方形のそれ。
 手の平大のそれを受け取り、しげしげと物珍しそうにイデアは眺めていた。

「連絡手段よ」
「はあ? どうやって――連絡……? 糸電話の糸がないみたいなものか?」
「……その勘の良さに惚れ惚れしちゃうわね。似たようなものかなー。鏡面に手を当てて、相手を念じれば通話ができる。音声だけだけどね」
「――へえ……うわっ!? なんだこりゃ!」

 利点は、と実際にこちらの端末を持ち、起動してみる。
 彼の手元が震えて、あちらの鏡面がいくども光を放つ。

「ああー、落とさないでね。割れやすいから。割れても使えるけど」
「……すまない。ん?」

 イデアは何かおかしい。そんな顔をした。
 わたしの声が、その鏡面から聞こえた気がしたからだろう。

「え? 声……」
「いまは近距離だから、微妙だけど。離れたら、通話できるわ。あと――」

 と、わたしは長方形の角にある突起を示した。
 そこを二度ほど、押してやる。
 すると、声は消えてしまった。
 そう――思念のみがその端末を持つことを許された者同士で、共有されるのだ。
 わたしたち魔導師は、この魔導具を『雪鱗伝具せつりんでんぐ』と呼んでいた。

「これ、雪鱗伝具せつりんでんぐ。略して雪竜、なんて呼ぶ魔導師もいるけど。便利なのよ、諜報にも貴族同士の密会でもよく使われるの」
「触れたら誰でも聞こえたり――はしない、のか?」
「互いに許可を与えないとダメなのよ。いま押したボタンの反対側の面に茶色い突起があるでしょう? それが起動するボタンだから、長く押せば起動し、長く押せば機能を終了する。再起動するにはもう一度長く押せばいい」
「……みょうちきりんな道具ばっかり、寄越すんだな……。つまりあれか、非常時の――あのドラゴンどもが動き出したら、連絡しろ、と。そういうことか?」
「そうそう、正解」

 しばらく触っていたイデアは、これ、どれくらい保つ、とたずねてきた。
 ランプのように燃料がいるのか。
 そういう問いかけだった。

「要らないわよ。元は、ドラゴン――雪竜のうろこだから」
「雪竜? 聞いたことないな……」
「稀有な存在だからね」

 彼はへえ、と驚いた顔をしてみせた。

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