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第八章 裏切り者の親友
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そんなエリダは普段通りの化粧をし、いつもよりは憔悴した顔をそうとは分からなくさせていた。
紅の髪、バラのようなそれはどこか輝きを失っていたし、水晶のような透き通った青い瞳も後悔と怒りと何かが混じったように見受けられる。
ともかく、彼女は全身で怒りと苛立ちを現わしていた。
「誰でもせいでそうなったと思っているの!」
「おっしゃる意味がわかりませんわ、エリダ様」
「あんたのせいで、私がここに来る羽目になったのよ!」
意識して軽んじてやると、エリダは紅の髪と同じほどに頬を紅潮させた。
今にも噛みつこうとしている野良犬のようで、まったく可愛くない。
執事さんは、我関せずといった顔をしていて――つまり、これは昨夜の痴態を伯爵様も知っていらっしゃる。
そういうことだな、とわたしは理解した。
つまり、娘の不名誉というか自分で犯した不始末は自分で回収してこい。そう言われたのだろう。
その意味はあれ――家の紋章の入った備品を取り戻してこい、だろうか?
面白いので、からかってみる。
もう、親友だなんて情はさらさらなかった。
「ああ、なるほど! 誰かと思ったら負け犬になったエリダじゃない」
それまでの鬱憤を全て晴らしたかった。
目が合った瞬間。
言葉の砲弾を叩きつけてやる。
「負け……っ!? この――」
「あっと、近づかないで! 凍てつかせるわよ……?」
「ひっ!? なっ、何よ! 貴族に対して魔法を使おうっての!?」
「……魔導です!」
小さく訂正をする。
「己の身を守るための自衛は、この王国で認められた権利ですが?」
まともな、常識を非常識な貴族令嬢に冷淡な口調で教えてやる。
こんな常識も知らなかったの、あなたって?
そんな感じだ。
案の定、語彙が少ないエリダは、その本性をあっけなく剝きだした。
「親友の顔をした――氷の魔女のくせに!」
「ええ、氷の魔女ですが? 国王陛下から拝命しました、我が二つ名でございます。悪しざまに言われますと不敬罪に問われますよ、エリダ様?」
「なっ――!?」
氷の魔女。
その二つ名は伊達じゃない。
ドラゴンの前で役に立たなかったけど……人間相手なら負ける気はしなかった。
たとえそれがラルクのような騎士であっても。
エリダの前ではここ半年間の間、おしとやかな淑女を装ってきた。
いえ、別にそうしたかったわけではなくて、その他大勢の貴族の誰かと一緒にいることが多かったから。
自分という存在をありのままにさらけ出す場面が、あまりなかっただけ。
その意味では、恋人のラルクのほうがまだわたしのことをよく知っている。
「あんたなんて……ラルクに好かれもしない女の癖にっ!」
ちょっとだけいらっとしたけど、そこまで言うならこちらも容赦する必要がなくなった。
ふうん、と上から目線。
エリダはわたしよりの頭一つ低かった。
「それはどうも、ところでどうしたの? 昨夜は大変だったそうじゃない。運河の支流から、地下水道まで流されて――ねえ?」
「あ、あなたっ! どこでそれを――!?」
昨夜の今日で、こんなに早く、それも正確に状況が伝わっているなんて、エリダは思ってもみなかったんだろう。
顔を真っ赤どころかそれを通り越して、息をすることも忘れたように荒い息をしていた。
執事さんがとうとう耐え切れず、ぶはっと小さく笑ったのがどうにもおかしかった。
紅の髪、バラのようなそれはどこか輝きを失っていたし、水晶のような透き通った青い瞳も後悔と怒りと何かが混じったように見受けられる。
ともかく、彼女は全身で怒りと苛立ちを現わしていた。
「誰でもせいでそうなったと思っているの!」
「おっしゃる意味がわかりませんわ、エリダ様」
「あんたのせいで、私がここに来る羽目になったのよ!」
意識して軽んじてやると、エリダは紅の髪と同じほどに頬を紅潮させた。
今にも噛みつこうとしている野良犬のようで、まったく可愛くない。
執事さんは、我関せずといった顔をしていて――つまり、これは昨夜の痴態を伯爵様も知っていらっしゃる。
そういうことだな、とわたしは理解した。
つまり、娘の不名誉というか自分で犯した不始末は自分で回収してこい。そう言われたのだろう。
その意味はあれ――家の紋章の入った備品を取り戻してこい、だろうか?
面白いので、からかってみる。
もう、親友だなんて情はさらさらなかった。
「ああ、なるほど! 誰かと思ったら負け犬になったエリダじゃない」
それまでの鬱憤を全て晴らしたかった。
目が合った瞬間。
言葉の砲弾を叩きつけてやる。
「負け……っ!? この――」
「あっと、近づかないで! 凍てつかせるわよ……?」
「ひっ!? なっ、何よ! 貴族に対して魔法を使おうっての!?」
「……魔導です!」
小さく訂正をする。
「己の身を守るための自衛は、この王国で認められた権利ですが?」
まともな、常識を非常識な貴族令嬢に冷淡な口調で教えてやる。
こんな常識も知らなかったの、あなたって?
そんな感じだ。
案の定、語彙が少ないエリダは、その本性をあっけなく剝きだした。
「親友の顔をした――氷の魔女のくせに!」
「ええ、氷の魔女ですが? 国王陛下から拝命しました、我が二つ名でございます。悪しざまに言われますと不敬罪に問われますよ、エリダ様?」
「なっ――!?」
氷の魔女。
その二つ名は伊達じゃない。
ドラゴンの前で役に立たなかったけど……人間相手なら負ける気はしなかった。
たとえそれがラルクのような騎士であっても。
エリダの前ではここ半年間の間、おしとやかな淑女を装ってきた。
いえ、別にそうしたかったわけではなくて、その他大勢の貴族の誰かと一緒にいることが多かったから。
自分という存在をありのままにさらけ出す場面が、あまりなかっただけ。
その意味では、恋人のラルクのほうがまだわたしのことをよく知っている。
「あんたなんて……ラルクに好かれもしない女の癖にっ!」
ちょっとだけいらっとしたけど、そこまで言うならこちらも容赦する必要がなくなった。
ふうん、と上から目線。
エリダはわたしよりの頭一つ低かった。
「それはどうも、ところでどうしたの? 昨夜は大変だったそうじゃない。運河の支流から、地下水道まで流されて――ねえ?」
「あ、あなたっ! どこでそれを――!?」
昨夜の今日で、こんなに早く、それも正確に状況が伝わっているなんて、エリダは思ってもみなかったんだろう。
顔を真っ赤どころかそれを通り越して、息をすることも忘れたように荒い息をしていた。
執事さんがとうとう耐え切れず、ぶはっと小さく笑ったのがどうにもおかしかった。
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