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第九章 精霊と二級魔導師
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しおりを挟む「何を利用するって?」
「ですから! 敵を利用して味方にするんですよ。その上で全ての功績をあなたがもらえばいい。違う?」
「それはとても良い案だけど。そんなにうまくいくかしら」
「やり方だと思うわよ。騎士団は地方の貴族の為のもので、この街を守ることが使命だから巻き込みか方次第じゃない」
「巻き込むって平然と言えるレイが怖いわ」
空になったカップに注がれる新たな紅茶が、オレンジのような香りを漂わせる。
ほうっと肩から力を抜いて考えよう。
どちらにしても、失敗したらわたしに居場所はなくなるのだから。
それを飲み干すと、わたしは地下へと足を運ぶ。
まずは祖父の遺してくれた書庫を確認しよう。過去の業務日誌などあればいいんだけど、と歩く頭の片隅でレイが言った騎士団を利用する可能性もあり得るよね、と心で悩みながら。
約半日を地下で過ごした。
祖父の蔵書庫は地下二階にあり、この季節だと冷え込みもそこそこ。
一度は降りたものの、これでは寒さに耐え切れなくなると思い、冬の装いで再び下に足を運ぶ。
思い鉄製の扉は火事や盗難防止のもので、ご丁寧にも入れる人間を制限するために施錠の魔術までかけられている。
彼はここをそれほどに大事にしたかったのだろうと思うと、ありがたみを感じた。
先人の残してくれる知識や文化は大事な遺産だからだ。
「この資料群をまとめて検索できるようなものがあればいいのに」
千冊近い本を収めた数列の本棚の前に立ち、そんなことをぼやくわたし。
王都の魔法学院では、端末にすべての情報が網羅されていて、特定のキーワードを入力するとそれに関連する資料の題名一覧を表示してくれた。
だけどさすがにそれは最先端の技術であって、さびれた田舎のここにそんなものがあるはずがない。
「おじい様が生きていらっしゃったら、文字通り生き字引だったのに」
さて、それでは二級魔導師たるわたしの魔術を披露しますか。
ちょうど寒い場所だし、蔵書を痛めないように気を付ければ――簡易な検索は可能のはず。
三級魔導師から上になるには、魔法とは別の存在。
この世界の構成要素である魔素によって生み出された存在ではないモノ。
ほんのすこしの時空の層の向こう側にいて、こちらのあらゆる何かに宿り、干渉してくる意思を持つ彼ら。
精霊に通じることができないと、その資格を得ることは出来ない。
とはいっても、魔力を振動させて彼らの言語に近い波に意思を載せ、会話をするというだけで特段、攻撃に使えたり防御が出来たり、奇跡を起こしたりということには……残念ながら使えない。
できるのは小さなありえそうであり得ない何か、それを依頼することくらいだった。
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