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第十章 教会と婚約破棄
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黒髪の彼が話し出すシーンはさっさと進めてやった。というか、恥ずかしくて思い出したくない。
空中に浮かび上がる画面は記憶をフルスピードで再生する。
隠したいところが隠せないのがこの魔術の欠点だった。
ちょっと行き過ぎて、わたしの視界が胸元だったり、前方の階段だったり、あるところまで階段を上がると視線が上下し、その合間にはすぐ間近にイデアの顔が見えた。
「……アルフリーダ様?」
「こっ、これは違うんですっ! 従者がっ、ドラゴン達から逃げるとき動けなくなってしまったわたしを抱き上げて、命からがら逃げてくれた時の記憶ですから……その。浮気とかではないのです、神父様」
「なるほど。あなた様は二級魔導師。貴族でもあらせられる。真実を語るべき場所はどこにあるかをよくご存知でしょう」
「そうです。だから浮気ではありません、そう……後からそれについては話しがありますが」
そう言うと、ダーレク神父はちょっと困った顔になり、両目を顔の上に泳がせてから、
「では。その大事なことはまた後から。それでどこにドラゴンがいるんですか?」
「ああ。巻き戻します」
「巻き戻す……?」
「記憶の時間を少し過去に戻すのです。そうすれば、話すよりも早い――」
そう言ってると、ようやく問題の光景が画面の中に投影される。
確かに、自分の胸元と上を見れば無精髭が生えたいかつい男性の顎先はそこにあった。
そんなものを見せされたら、それは浮気も疑いたくなるわよね。
口で説明した方が早かったかもしれない。
映像の中では、鉱石ランプの一つから目を移し、通路を曲がって――音声が出るようにしていたら、わたしの情けない悲鳴か大声があたりに響いただろう。
そんなシーンになっていた。
目の前に広がる光景。
巨大な空洞は見渡せば左右にそれぞれ二百メートルほどもあり、見上げれば天井があるようでないような。
その場所にも鉱石ランプは設置されているのだが、その灯りを辿っても照らし出せない高さが見て取れる。
その先に、彼らはいた。
「これは素晴らしい」
「え? 素晴らしいんですか!」
「こんな貴重な映像は滅多にお目にかかることが出来ませんよ」
「ああ、そういう意味……。ドラゴンには驚かれないんです?」
「ええまあ。私の生まれた王国ではドラゴンを飼い慣らして共に生きる、そんな環境で生まれましたので」
「そちらこそ貴重ですね」
そんな珍しい環境にながらどうして、この人は神父になったんだろう。
人にはそれぞれ人生があるんだなあー、と思いつつ。
ドラゴンの種類が分かるかと思って質問をしてみる。
「これ、危険なやつなんですか?」
「人に害を与えるかと、そういう意味でしょうか?」
「ええ。はい。場合によっては駆逐しないいけませんので」
「……多分ですが、あまり気の荒い連中ではないと思うのです。ええ、多分」
頭の先から尻尾の先まで数えれば多分、五メートル。
今更ながら、背中に羽はないし、ぬめぬめとした鱗も見当たらない。
がっしりとした肌はどちらかといえば亀の甲羅のようなモノに近いのかもしれない。
「種類がわかると、そういうことですか?」
「土竜……の一種ではないかと思います。ああ、地下に棲むという意味ではなくて。大地の魔力に誘われてふらりふらりとは集まって来たのでしょかね?」
「集まって来られても困るんですけど」
「しかしまあ、そこそこに数がおりますな」
「先ほどの地下に住む案内人の話では、先週はまだ十頭に満たなかったと。でも今朝になってみたら、二十数頭……」
「この映像はあなたの記憶からということなので細やかな部分まで見えなくても仕方がない?」
「はいおっしゃる通りです。あくまで人の記憶なので注意深く見たところはより鮮明に映ると思います」
「なるほど」
一瞬何か可哀想なものを見るような目で、彼はわたしを見た。
それは憐れみとかそういったものも含まれていたけど、どちらかといえば大変なお仕事ですね、と。
そんな意味合いを含んでいるような気がした。
「これは全て退治ですか」
「退治といいますか、でもらうと困る存在も世間にはあるのでしょう?」
そう言うと彼はまた、うーん、と首をかしげて何かを考え始めた。
空中に浮かび上がる画面は記憶をフルスピードで再生する。
隠したいところが隠せないのがこの魔術の欠点だった。
ちょっと行き過ぎて、わたしの視界が胸元だったり、前方の階段だったり、あるところまで階段を上がると視線が上下し、その合間にはすぐ間近にイデアの顔が見えた。
「……アルフリーダ様?」
「こっ、これは違うんですっ! 従者がっ、ドラゴン達から逃げるとき動けなくなってしまったわたしを抱き上げて、命からがら逃げてくれた時の記憶ですから……その。浮気とかではないのです、神父様」
「なるほど。あなた様は二級魔導師。貴族でもあらせられる。真実を語るべき場所はどこにあるかをよくご存知でしょう」
「そうです。だから浮気ではありません、そう……後からそれについては話しがありますが」
そう言うと、ダーレク神父はちょっと困った顔になり、両目を顔の上に泳がせてから、
「では。その大事なことはまた後から。それでどこにドラゴンがいるんですか?」
「ああ。巻き戻します」
「巻き戻す……?」
「記憶の時間を少し過去に戻すのです。そうすれば、話すよりも早い――」
そう言ってると、ようやく問題の光景が画面の中に投影される。
確かに、自分の胸元と上を見れば無精髭が生えたいかつい男性の顎先はそこにあった。
そんなものを見せされたら、それは浮気も疑いたくなるわよね。
口で説明した方が早かったかもしれない。
映像の中では、鉱石ランプの一つから目を移し、通路を曲がって――音声が出るようにしていたら、わたしの情けない悲鳴か大声があたりに響いただろう。
そんなシーンになっていた。
目の前に広がる光景。
巨大な空洞は見渡せば左右にそれぞれ二百メートルほどもあり、見上げれば天井があるようでないような。
その場所にも鉱石ランプは設置されているのだが、その灯りを辿っても照らし出せない高さが見て取れる。
その先に、彼らはいた。
「これは素晴らしい」
「え? 素晴らしいんですか!」
「こんな貴重な映像は滅多にお目にかかることが出来ませんよ」
「ああ、そういう意味……。ドラゴンには驚かれないんです?」
「ええまあ。私の生まれた王国ではドラゴンを飼い慣らして共に生きる、そんな環境で生まれましたので」
「そちらこそ貴重ですね」
そんな珍しい環境にながらどうして、この人は神父になったんだろう。
人にはそれぞれ人生があるんだなあー、と思いつつ。
ドラゴンの種類が分かるかと思って質問をしてみる。
「これ、危険なやつなんですか?」
「人に害を与えるかと、そういう意味でしょうか?」
「ええ。はい。場合によっては駆逐しないいけませんので」
「……多分ですが、あまり気の荒い連中ではないと思うのです。ええ、多分」
頭の先から尻尾の先まで数えれば多分、五メートル。
今更ながら、背中に羽はないし、ぬめぬめとした鱗も見当たらない。
がっしりとした肌はどちらかといえば亀の甲羅のようなモノに近いのかもしれない。
「種類がわかると、そういうことですか?」
「土竜……の一種ではないかと思います。ああ、地下に棲むという意味ではなくて。大地の魔力に誘われてふらりふらりとは集まって来たのでしょかね?」
「集まって来られても困るんですけど」
「しかしまあ、そこそこに数がおりますな」
「先ほどの地下に住む案内人の話では、先週はまだ十頭に満たなかったと。でも今朝になってみたら、二十数頭……」
「この映像はあなたの記憶からということなので細やかな部分まで見えなくても仕方がない?」
「はいおっしゃる通りです。あくまで人の記憶なので注意深く見たところはより鮮明に映ると思います」
「なるほど」
一瞬何か可哀想なものを見るような目で、彼はわたしを見た。
それは憐れみとかそういったものも含まれていたけど、どちらかといえば大変なお仕事ですね、と。
そんな意味合いを含んでいるような気がした。
「これは全て退治ですか」
「退治といいますか、でもらうと困る存在も世間にはあるのでしょう?」
そう言うと彼はまた、うーん、と首をかしげて何かを考え始めた。
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