彼氏が親友と浮気して結婚したいというので、得意の氷魔法で冷徹な復讐をすることにした。

和泉鷹央

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第十一章 ドラゴンと氷の魔女

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「あなたの魔導も興味がありますが、たまには我々、紋章使いの能力を見ていただいてもよろしいかもしれませんね」
「え?」
「女神様の奇跡というやつです。本当はそんなに大したもんじゃないけどね」

 イタズラな少年のように笑ってみせ、彼の左目がそれまでの黒い瞳が、真紅の色を帯びた。
 途端、眼の少し前に、意匠化された幾何学模様と唐草模様と、数字でもあり文字でもあり、それらが緻密に配列され立体化したようなものが、浮かび上がる。

「それがあれですか……紋章眼の宣教師」
「世間様ではそう呼ばれているようですが。そんなに大したもんではないですよ。生活魔導を少しばかり使い勝手よくしたものだから」

 彼が使う力はわたしが使う精霊たちのそれとは、また別の力。
 正しくは青い月の女神様の力をお借りしているらしい。
 ここまで複雑になると、わたしにはさっぱり理解できない世界だ。

「神父様の扱われるそれの方が、このアルフリーダにとっては失われた魔法のように見えてしまいます」
「ご謙遜を。さてやることはたったひとつで。この空間の中にある、ドラゴン。もしくはそれに比類するような単語が出てくる様々なものを検索するわけです、が……」

 紅の瞳から緑色の光が周囲を走査した。
 わたしや神父様も含めて四角い長方形のこの空間を緑の光は一瞬で満たし、そして消えてしまう。
 続いて深紅の光が同じように放たれてゆき、それは彼の左目へと収束し、格納された。

「それで何がどうわかるんでしょうか……?」

 二度ほど、色違いの光線が狭い世界の中を調べ、その情報を彼の左目に持ち帰った。
 そこまでは理解できた。でもそこから先がよくわからない。
 わたしの場合は脳内で把握し、構成してどこに何があるかを立体的に記憶して資料を探し出せたけど、彼の場合はどうなのか?
 と、思っていたらもっと先進的だった……。

「光ってる……」
「そこかしこに青く点滅している書類の束とか、まとめられた本があるはずです。それを全て集めていただけますか」
「えっと……まさかと思いますが、うわっ」
「面白いでしょう?」

 面白いとかそういう世界ではない。
 試しに近くにあった青い光の点滅が示す一冊の本を棚から引き抜く。
 本を開こうと背表紙を裏返したら、なんと短い棒のような青いしおりが、ページの間にご丁寧に挟まれていて。
 その青いしおりに指先が触れた瞬間、自動的に本が開き、該当するページがパラパラとめくられて目の前に現れる。
 そしてもっと面白いことに、必要な箇所と思われる文章の一文が赤く染められている。

「これは凄すぎるという表現が妥当だと思うのです」
「まあまあ私だけの能力ではありませんから。これは宣教師が長い時間をかけて培ってきたものですから。それよりも夜は短いですよ。早く終わらせてしまいましょう」

 と、ダーレク神父は目配せを一つ。
 夜は短いというのは本当のことで。
 教会の朝の礼拝は早朝五時ぐらいから始まる。
 今は、深夜の二十一時ぐらい。
 早く彼を解放してあげないと、明日の朝がきつい。そんな意味も含まれていた。

「はい、そうします!」

 元気よく返事をすると、そこいらに数十箇所光っている青い点滅を目指し、わたしたちは慌ただしく資料を回収することから始めた。

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