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ひどい顔……まぶたは腫れてるし、目元には隈まである。ぼさぼさの髪、耳の手入れも尾の毛づくろいもできてない。一晩以上泣いて悩んでまた泣いて――そこい写る獣人の少女は誰だろう?
ライラが落ち着きを取り戻し、ようやく鏡を見る気になれたのは、前日の朝だった。
翌朝には村に着く、そう思ってたまたま手鏡を手にしてみたらこれだ。
まるで別人のような疲れ切った顔をしている自分がいるのを見て、ライラは一瞬、言葉を失った。
「おや? 蒼狼が黒狼になっておりますな、聖女様?」
「黒狼!? リー騎士長っ、言い過ぎですっ!!」
「いやすいません、よくよく見るとこの世でも最上位の美しさを持つ、我が主、水の精霊王の聖女たるライラ様ではないですか。今朝もその尾も……何ですか、その抜け毛のひどさは……」
川岸近くに馬車を止めて水を汲みに行って戻って来たリー騎士長は絶句する。
ライラの尾はまるで、しぼんでしまった。
そんな表現が適切なほどに細くなっていたからだ。
「……すと、れす……? ですか、ね?」
「ライラ……考えすぎですよ……まったく。首に巻けばいいマフラーになるのに」
「リー騎士長? 神殿を出てから扱いが雑になっていませんか!?」
「雑ではなく、もう神殿騎士長としての役割を隠さなければならない。そう思っているのですよ、聖女様」
「隠す? でも騎士長は私の護衛では?」
「もちろんその通りです。しかし、聖女様はこれからは一村人として生きていかなければなりません。聖女としての役割を終え、これからは言い方は失礼ですが……」
「また、農奴としての村の生活を送らなければなりません、ですか?」
「ええ、そこです。貴方はその身分に戻らなくてもいいかもしれませんが、村での特別扱いを郷里の彼らが受け入れるかどうか。自分は心配ですよ」
「どうでしょうか。六歳から一度も戻っておりませんから両親も兄弟もどうなったか。新しい妹でもいるといいのですが」
それにしてもマフラーは暴言です、とライラは頬を膨らませて抗議する。
上着を脱いでいた彼女の尾は、ようやく自由に動けたとばかりにしぼんでいたそれを少しばかり膨らませて、ゆらゆらと揺れながら主人と同じくリー騎士長に抗議をしていて、騎士長は思わず微笑んでしまっていた。
「もう、笑わないでください!」
「失礼。しかし、その尾は動ける程度には回復したようですな。ストレスというより、聖女様が尾を虐めすぎたのでは? さんざん、引っ張ったりかじったりされてましたからな」
「見ていたんですね!? 私のあんな姿を? 信じられない」
「目の前にいるのだから仕方ありませんな。まあ、車内の床上に落ちた毛の量を見ると一目瞭然ですが」
「……毛の! 冬毛に生え変わる時期なの! 多分……」
「そういうことにしておきましょう。しかし、ご家族ですか。朝食を用意しておきますから、とりあえず川で顔を洗われては? さすがにこの季節は入れませんがね」
「水を魔法で引き上げて桶に入れて加熱すればお湯になるけど、さすがにここでは……。村に入る前に教会に寄りたいですね。身体を清めて戻りたいです」
「ライラ……」
リー騎士長は思わずため息を漏らした。
身分の話をしたばかりなのに。彼女はずっと聖女だが、神殿関係者からは身を引いて生活することになるのに、と。
「あ……そうでした、ね。もう、神官を辞退したのでした……」
「教会には神殿から派遣された人間がおりますが、貴方の方が位は上です。相手ももしかしたら移動などになるかもしれないと危機感を覚えているかもしれない」
「先に挨拶には行けるけど、そこから先は厄介になってはだめ、ということですね。どこにいても権力の問題は絡んでくる」
「左様ですな。まずは朝食にしましょう。話はそれからだ」
「ええ、リー騎士長」
ライラは川に行き精霊王に祈りを捧げみたが、主は居るようで居ないようなそんな感じしかしなかった。返事はなく、しかし、魔法は問題なく使える。まだ聖女として見捨てられてはいないのだと思うと、少しだけ安心できた。
馬車に戻り、リー騎士長が用意した硬いパンや携帯食、川で得たのだろう魚などが起こされた焚火によって炙られ、もしくは温められ、焼かれて香ばしい香りを鼻に送り込んでくる。
食事ができるありがたみに感謝しながら、ライラはそれらを食べているとリー騎士長はいくつかの質問をしてきた。それらは多くが蒼狼族に関するもので、一族の習慣やどんな特性があるのか雰囲気、よそ者に対しての許容度などをそこそこ詳しく聞かれた。
「家族ですが、獣人は多産と聞きます。蒼狼族もそうですか? 村には百人もいないと聞いていますが」
「……蒼狼族は普通の獣人とは違います。多産ではなく、一度身ごもれば四年は胎内に、それから出産となり寿命は二百から三百年。だから、農奴としては適しているのです」
「家族を引き離して奴隷として扱うなら、そうですな。しかし、三百年とは羨ましい。普通の獣人は人間よりも短命だというのに。犬や猫が短命なように、肉体的には人を凌駕していても短い寿命が普通だ」
「そうですね、だから殿下も側妃にすると決まった時にせいぜい、半世紀程度だと思われたのでしょう。実際、村に純粋な蒼狼族はいませんから。多くは混血でその寿命も他の獣人と変わりません。子供を産む時期だけは変化がないようですけど」
「ではもし新しい家族がいたとしても……」
「まだ、四歳か五歳。でしょう、多分。姉と呼んでもらえるかどうか不安です」
明日の朝、とうとう、自分の人生の岐路がやってくる。
一つの心に生まれた二つの道。
でも、ライラにいま見える道は険しくも困難な、急斜面の登り路だった。
ライラが落ち着きを取り戻し、ようやく鏡を見る気になれたのは、前日の朝だった。
翌朝には村に着く、そう思ってたまたま手鏡を手にしてみたらこれだ。
まるで別人のような疲れ切った顔をしている自分がいるのを見て、ライラは一瞬、言葉を失った。
「おや? 蒼狼が黒狼になっておりますな、聖女様?」
「黒狼!? リー騎士長っ、言い過ぎですっ!!」
「いやすいません、よくよく見るとこの世でも最上位の美しさを持つ、我が主、水の精霊王の聖女たるライラ様ではないですか。今朝もその尾も……何ですか、その抜け毛のひどさは……」
川岸近くに馬車を止めて水を汲みに行って戻って来たリー騎士長は絶句する。
ライラの尾はまるで、しぼんでしまった。
そんな表現が適切なほどに細くなっていたからだ。
「……すと、れす……? ですか、ね?」
「ライラ……考えすぎですよ……まったく。首に巻けばいいマフラーになるのに」
「リー騎士長? 神殿を出てから扱いが雑になっていませんか!?」
「雑ではなく、もう神殿騎士長としての役割を隠さなければならない。そう思っているのですよ、聖女様」
「隠す? でも騎士長は私の護衛では?」
「もちろんその通りです。しかし、聖女様はこれからは一村人として生きていかなければなりません。聖女としての役割を終え、これからは言い方は失礼ですが……」
「また、農奴としての村の生活を送らなければなりません、ですか?」
「ええ、そこです。貴方はその身分に戻らなくてもいいかもしれませんが、村での特別扱いを郷里の彼らが受け入れるかどうか。自分は心配ですよ」
「どうでしょうか。六歳から一度も戻っておりませんから両親も兄弟もどうなったか。新しい妹でもいるといいのですが」
それにしてもマフラーは暴言です、とライラは頬を膨らませて抗議する。
上着を脱いでいた彼女の尾は、ようやく自由に動けたとばかりにしぼんでいたそれを少しばかり膨らませて、ゆらゆらと揺れながら主人と同じくリー騎士長に抗議をしていて、騎士長は思わず微笑んでしまっていた。
「もう、笑わないでください!」
「失礼。しかし、その尾は動ける程度には回復したようですな。ストレスというより、聖女様が尾を虐めすぎたのでは? さんざん、引っ張ったりかじったりされてましたからな」
「見ていたんですね!? 私のあんな姿を? 信じられない」
「目の前にいるのだから仕方ありませんな。まあ、車内の床上に落ちた毛の量を見ると一目瞭然ですが」
「……毛の! 冬毛に生え変わる時期なの! 多分……」
「そういうことにしておきましょう。しかし、ご家族ですか。朝食を用意しておきますから、とりあえず川で顔を洗われては? さすがにこの季節は入れませんがね」
「水を魔法で引き上げて桶に入れて加熱すればお湯になるけど、さすがにここでは……。村に入る前に教会に寄りたいですね。身体を清めて戻りたいです」
「ライラ……」
リー騎士長は思わずため息を漏らした。
身分の話をしたばかりなのに。彼女はずっと聖女だが、神殿関係者からは身を引いて生活することになるのに、と。
「あ……そうでした、ね。もう、神官を辞退したのでした……」
「教会には神殿から派遣された人間がおりますが、貴方の方が位は上です。相手ももしかしたら移動などになるかもしれないと危機感を覚えているかもしれない」
「先に挨拶には行けるけど、そこから先は厄介になってはだめ、ということですね。どこにいても権力の問題は絡んでくる」
「左様ですな。まずは朝食にしましょう。話はそれからだ」
「ええ、リー騎士長」
ライラは川に行き精霊王に祈りを捧げみたが、主は居るようで居ないようなそんな感じしかしなかった。返事はなく、しかし、魔法は問題なく使える。まだ聖女として見捨てられてはいないのだと思うと、少しだけ安心できた。
馬車に戻り、リー騎士長が用意した硬いパンや携帯食、川で得たのだろう魚などが起こされた焚火によって炙られ、もしくは温められ、焼かれて香ばしい香りを鼻に送り込んでくる。
食事ができるありがたみに感謝しながら、ライラはそれらを食べているとリー騎士長はいくつかの質問をしてきた。それらは多くが蒼狼族に関するもので、一族の習慣やどんな特性があるのか雰囲気、よそ者に対しての許容度などをそこそこ詳しく聞かれた。
「家族ですが、獣人は多産と聞きます。蒼狼族もそうですか? 村には百人もいないと聞いていますが」
「……蒼狼族は普通の獣人とは違います。多産ではなく、一度身ごもれば四年は胎内に、それから出産となり寿命は二百から三百年。だから、農奴としては適しているのです」
「家族を引き離して奴隷として扱うなら、そうですな。しかし、三百年とは羨ましい。普通の獣人は人間よりも短命だというのに。犬や猫が短命なように、肉体的には人を凌駕していても短い寿命が普通だ」
「そうですね、だから殿下も側妃にすると決まった時にせいぜい、半世紀程度だと思われたのでしょう。実際、村に純粋な蒼狼族はいませんから。多くは混血でその寿命も他の獣人と変わりません。子供を産む時期だけは変化がないようですけど」
「ではもし新しい家族がいたとしても……」
「まだ、四歳か五歳。でしょう、多分。姉と呼んでもらえるかどうか不安です」
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でも、ライラにいま見える道は険しくも困難な、急斜面の登り路だった。
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