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16 大勢に弄られる
「ここだよ」
立ち並ぶ高層ビル群にほど近い、オフィスビルの並ぶ通りの一角にその場所はあった。一階が骨董品を鬻いでいる。その真新しいビルの横のエントランスを入り、すぐ脇のエレベーターに乗る。
「四階押して」
エレベーターの壁の入居ボードの四階の欄には「ファッションハウス」とある。なんだそれ、という感じの平凡な名前だ。他の階の表示と同じ、金属質のプレートにそう印字されていた。
ドアが開く。すぐ目の前に、ガラス張りの店があり、手前に置かれたカンバススタンドに店名をあしらったボードが置かれていた。店の中が良く見える。
色とりどりの衣装、女性の下着、靴、バッグ、ハンカチーフなどが、木造りのマガジンラックに外向けに美しく飾られた、開放的なイメージの店だった。
サキさんはすたすたとガラスのドアを開け、店内に入って行く。後を追ってレナもドアをくぐった。
店内に入ると、表のイメージとはちょっと異質な、いかにもそれらしい商品が陳列されていた。数々の、派手な下着、ラバーコスチューム、アイマスク、そして、・・・おもちゃ。レナも経験した、手枷足枷、ふわふわのモール付きの手錠、カラフルな、縄。大抵のSMショップに置いてある、お馴染みの品々が、店の奥に行くにしたがって過激度が増すように置かれていた。商品を見ていた二三の男性客が、レナに、次いでレナの首輪に視線を送ってきた。
奥のレジには、ピンクのタンクトップを着てセミロングの髪を明るいブラウンに染めた若い女性がいた。パソコンから顔を上げ、にこやかに応対してくれた。
「いらっしゃいませ」
サキさんがカードを示すと、その店員さんはひとつ頷いて、後ろの壁を振り返り、別のカードをカウンターの上の金属のトレーに置いた。
「ありがとう」サキさんが礼を言うと、
「ごゆっくり」
若い女性は一瞬だけレナに意味ありげな視線を注ぎ、再びパソコンの画面に戻って行った。
カウンターの横の陳列棚の裏にまた、別の、普通のドアがある。サキさんがノブの上のスロットにカードを差し込むと、カチ、と音がしてロックが外れた。
「さあ、入ろう」
サキさんに促され、レナはドアの中に入った。
その空間は、レナのプレイルームよりもやや広かった。
表の開放的な雰囲気とは裏腹に、濃いグレーを基調とした落ち着いた雰囲気。三面の壁とフロアの四分の一ほどは商品の棚で埋まり、残り四分の三が商店としては不必要なほどに広い。
その一角に、L字型にソファーが組んであり、四五名の男女が談笑していた。
みんな身なりの良い、明らかにサキさんより年上の中年の男性の中に、一人だけ、若やいではいるものの、物腰と話し声とで、ある程度の年齢を感じさせる美女がいた。
「あら、いらっしゃい。しばらくね」
その美女が、コツコツと床を鳴らしながらゆっくりと歩み寄って来て、サキさんに会釈した。
喪服のような、黒のパンツスーツ。高いヒールを履いているのがわかる。目線がレナよりも少し高かった。白い胸元に、大粒の真珠のネックレスが鈍い光を放っていた。
無遠慮な視線が、レナの足元から舐め上げるように這い上がった。赤いマニキュアの指先で、いきなり顎を摘ままれた。
「新しい奴隷? ・・・いい子ね」
その女性は、涼やかに微笑した。
彼女の背後にいる、男たちの視線が自分に集まる。一体、何が始まるのか。何をされるのか。ドキドキが、止まらない。
たぶんこの女性はここのオーナーで、男たちはおそらくここの常連なのだ。そのように推測された。風格のようなものを感じる。
「この子に似合う、おススメ品、紹介してやってください。シオリ、用意しなさい」
「え?」
「脱ぐんだよ。ここで。全部」
ドアの右手には濃い色をした木製のロッカーが四つ並んでいた。皮張りのベンチシートも置いてある。配置は部活の更衣室のようだが、店内との間には間仕切りもカーテンも一切、ない。
サキさんは、「3」とだけ印字されたカードを、三番のロッカーのスロットに刺した。
「・・・はい」
背中のジッパーに手を伸ばすと、サキさんが、ご主人様が、その手を抑え、ジッパーをゆっくりと下げてくれた。
「・・・ありがとうございます」
優しくレナの肩に手を添え、身体を奥のソファーに向けさせた。自分に向けられる、男たちの視線。女性の、舐めるような、目つき。
これじゃ、見せ物だ。
「さあ。みんなシオリを見たがってる。シオリにどんなものが似合うか、選んでくれるんだよ。お見せしなけりゃ、わからない」
「・・・はい。ご主人様」
両腕をクロスさせて肩から服を抜き、袖を抜き、床に落とした。まだ、手足に陽焼け跡の名残りが残る、十七歳の健康的な肢体が露になった。
背中に手を回し、白いカップの布の小さなブラジャーのホックを外した。ストラップを外し、片方ずつ腕を抜く。すでにワンピースを拾い上げているご主人様が差し出す手に、それを委ねた。
身体を回される。店内に尻を向けながら、ショーツを下ろせというわけだろう。両手の親指をサイドに引っ掛けて、下ろし、片足ずつ、抜いた。そこでもう一度体を回される。
「両手を首の後ろで組みなさい。僕がいいというまで、その手を放してはいけない。いいね?」
「はい」
「そのままお客様の傍に行って、こう言いなさい。『スレイヴ見習いのシオリです。どうかわたしに似合うものを紹介してください』」
サキさん、ご主人さまの手には、値札の付いた赤い革製の細いリードが握られていた。首輪にカチ、とフックが付けられた。股間が、どうしようもなく熱く、疼き、濡れる。
「せっかく綺麗にペディキュアしたんだ。サンダルも脱いで、ご覧いただきなさい」
「はい」
素足が床に触れる。何故か乳首が立ち、上向いた。
「じゃあ、行こうか」
ご主人様のリードに引かれながら、ひたひたと裸足で歩き、男性たちのくつろぐソファーの傍に立った。
「膝をついて、股を開いて、じっくりお前の身体をご覧いただきながら、ご挨拶するんだよ、シオリ」
言われた通りに膝をついた。そして、股間を開いた。
「もっと。きちんと開かないと、お客様方に見ていただけないじゃないか」
「・・・はい」
ああ、たまらない・・・。リードが引かれる。自然に猫背になっていた胸がそびやかす。乳首が、公然と、曝される。
「はじめまして・・・。スレイヴ見習いのシオリです。どうか、わたしに、似合う品物を、紹介してください」
ああ、どうしよう・・・。恥ずかしい・・・。顔が燃えるように、熱い。膝ががくがく震え、股間が疼いた。
男たちの無言の視姦が、長かった。
下卑た笑いはなかった。このような小娘など見飽きている。あるいは、よく、恥ずかしげもなく、見知らぬ他人の前で・・・。そう言いたげな顔をしていた。そんな冷たい視線に、羞恥だけでなく、被虐感をも煽られる。
「歳はいくつ?」
客の一人が尋ねた。レナが答える前にご主人様が口を開いた。
「二十歳に、なったばかりです」
よかった。うっかり、本当の歳を言うところだった。
「オッパイ、キレイだね。何カップ? Dかな?」
「お答えしなさい、シオリ」
「・・・Cです」
顔から全身へ、桜色に染まって行くのがわかる。ああ・・・。吐息が出てしまいそうだ。レナは目をつぶって、それを耐える。
「奴隷になって、どのくらい? これまで、どんなプレイをしたのかな、シオリは」
「・・・縛られたり、バイブとかで・・・」
「バイブを、どうしたのかな?」
「あそ、・・・オ●ンコ、に、入れていただいたり・・・」
これは、言葉の責めだ。
初めてサキさんと電話をした時と同じだ。それがより強力に、何倍もの規模で、行われている。しかも、見知らぬ他人に。
股間の疼きが、たまらない。
「可愛いね。丸顔に近い瓜実なのに、目鼻がつんとすっきりして、それでいて、バランスが取れてる。嫌味がない。というか、どこか、男をそそらせる顔だね」
「乳首も、まだピンクだ。乳輪も大き過ぎず小さ過ぎず、色も丁度いい具合だね。キレイで、えっちなおっぱいだ」
商品のように、値踏みされる、自分。その被虐が、性感をくすぐり、股間の疼きを加速する。
「毛、濃いねえ。剃るの?」
「今度の、プレイで・・・、剃っていただきます」
「いいねえ。可愛いねえ。初々しい。ママにもこんな頃があったんだろうねえ」
「そうねえ。あったかも知れないけど、大昔過ぎて、忘れちゃった」
レナのすぐそばに立っていた美人が静かに笑った。その低い笑いが、室内に響いた。
「どんな声で鳴くのかなあ。鳴き声が、聞きたくなるねえ」
「呼びます?」と女性。
「彼、今何してるの」
「家に居るはずです。呼んでみましょうか」
そういって女性はスマートフォンを取り出した。
「・・・もしもし。プーちゃん? あなた今何してるの? そう・・・。ちょっとお店いらっしゃい。可愛いお客様が来てるの。あなたにお相手して欲しいのよ。どのくらいで来れる? ・・・そう。じゃ、待ってるわね」
十分で来ます。そう、女性は言った。
何をされるんだろう。不安。ドキドキが、止まらない。斜め後ろでリードを持つご主人様は、ただ黙って微笑を保っている。
「じゃあ、彼が来るまで、シオリとグッズ選びでもしようかね」
一人の男性が立ち上がり、壁際の陳列棚に歩み寄った。
「立ちなさい」
ご主人様に促され、両手を首の後ろに組んだまま立ち上がって、男性のいる方へ歩み寄った。
サキさんとは違う種類の、奇妙なな香りのするコロン。頭がクラクラしそうになる。特徴のない、のっぺりした顔の男性が金属のクリップを取ってパッケージを破く。
「これなんか、どうかな。カワイイ乳首に似合うよ」
勃起した乳首に、リング状のクリップが装着される。男性が指を放すと、冷たい先端が、乳首を挟む。
「はうっ、・・・ああ」
「感度、いいね。鳴き声もいい。これから聴許し甲斐がありそうだ。まだ、若いのに、いい奴隷を持って、羨ましい」
「恐縮です」
ご主人様は、微笑を湛えたまま、そう、応じた。
ペアのクリップを両の乳首に施され、陳列棚に添って歩かされてゆく。
「このクリップにね、このローターをね、こうするとね・・・」
スプリングのついたハンドル部分に小さな受けがあり、そこへピンク色のローターの本体がすっぽり収まった。その男性がスイッチを入れると、強烈な振動が乳首を襲った。
「あっ、・・・はあ・・・」
身体を曲げ、思わず放しそうになる両手を、いつの間にか背後に回っている美人が抑え、ピンクのフワフワのついた手錠で拘束した。
「これ、このカワイイ奴隷ちゃんにピッタリでしょ」
「いいですね。それも頂いて行きましょう。よかったな、シオリ。みなさんに気に入られたぞ、嬉しいなあ」
ご主人様の、サキさんの声が冷たく響く。
「・・・はい、・・・あっ、・・・シオリはん、っう、嬉し、・・・です。あん。あ、ありが、と、ござい、あ、・・・す」
もう片方が装着され、二個のローターの振動が身体の奥へ、クリトリスまで信号を送る。疼きが高まり、早くもレナのヴァギナは愛液を分泌し始める。ああ、また濡らしてしまう。それも、見ず知らずの他人の前で。
首の後ろで手錠で拘束された腕を、強い、濃い香りの香水の匂いを放つ女性に捉まれ・・・。レナは被虐の快感を増幅し始めた。
「ずっと気になってたけど、これ、何かしら」
紫のマニキュアを施した美しい手が、レナの首にかかったチェーンに触れた。
「・・・お答えしなさい、シオリ」
脇を曝した恥ずかしい恰好のまま、レナは答えた。
「・・・は、はい。・・・ご主、人様、から頂いた、わ、あ、たしの、ぷれい、るーむのカギ、です」
「まあ! 素敵・・・。羨ましい奴隷ね、あなた」
振動が、強すぎる。脳が蕩けそうになる。おとがいをあげ、懸命に耐えようとするレナ。快感に仰け反りそうになるのを、女性に支えられている格好。その様を、快感に悶えるレナの痴態をじっと見つめる男性。ソファーの客。そして、じっとリードを持ち。微笑を保ち続ける、ご主人様。
背後のドアが開き、
「ママ。お待たせしました」
若い男性の声が響いた。
彼には、体毛というものが、一切、無かった。
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