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MMORPGのNPCもモブデリ

モビッチと神様の箱庭

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「おはようございます」


私服の黒猫フードのパーカー姿で、プレイヤー達が作るサークルを管理すギルドの受け付け役のNPCに声を掛ければ満面の笑みを浮かべて大きなトランクを差し出した。


「こちらが制服になります。基本の白い司教の制服が3セットと、特別なイベントの時に着用していただく赤と黒の制服が1セットずつ入っています。教会は女人禁制になりますのでご了承ください」


あぁ……だから僕が公開SEXすんのか。


禁欲的な雰囲気を濃くするには縛りは必要なのかもしれません。


トランクを持とうと手を伸ばす前に後ろから現れた帝王くんに奪われる。


「帝王くんも教会?」


「俺は聖騎士の部下で教会の前に警護として昼間は立ってる」


「夜は?」


「ちゃんとシナリオ読んどけよ。エリアボスが地下ダンジョンに移動したら、俺に捕まって犯され続ける流れだろうが」


「えっ?そんな楽しそうな流れだったの?」


「お~ま~え~な~ぁ」


呆れながらも僕の荷物を持ってくれる帝王くんは、優しいよね。


「ボケボケしてっとエリアボスの聖騎士の目の前でブチ犯すぞ」


「や~だぁ~♡楽しみ~♡」


とりあえず教会に行ったら荷物を置いて、教会以外の場所を見て回る予定です。





トランクから出して手に取った制服は、裾の長い学ランみたいな白い詰襟に金の糸で繊細な刺繍を施してある。


ロザリオではなく魔石と呼ばれる石を使って作られたアミュレットを首から下げるようでビロードの小箱の中に入っていた。


他のモブ神官の制服よりも、少しだけ豪華にできていた。


教会エリアの僕専用の控え室には応接セットにシングルベットがあり、個室のトイレと部屋より立派な浴室が完備していて、余裕で寝泊まりできる仕様になっている。


個室なのは僕とフェリクスだけでした。


他のモブたちは大部屋で共用トイレとシャワー室が隣接していて個人の鍵付きロッカーが宛てがわれるみたいです。



僕は全ての制服をトランクから出すとハンガーに吊るして壁際のクローゼットに収める。


今日は制服を着なくても大丈夫でしょう。


教会の中は明日の朝に見て回ってもいいので、他のフィールドにお散歩に出ることにします。


僕の教会がある西洋風意外だと、着物を着た人々が暮らし大きな寺と神社がシンボルで対立している設定の和風、タージ・マハルみたいな寺院がシンボルのトルコ風、高層ビルが建ち並び近未来的な工業都市のシンボルは巨大な電波塔で地下都市は汚染されている設定になっている。

そして大きな活火山に囲まれたマグマの池がそこかしこにある炎と岩だらけの灼熱の国のシンボルは巨大なドラゴンの石像になっている。


反対に氷の神殿がシンボルで雪に鎖された国、ピラミッドがシンボルの古代エジプト文明風の7つに加えて、隠れフィールドの海中と天空で世界は構成されている。


移動距離を考えただけで行くのが面倒くさくなってきた。


「おい、モビッチ。一緒に教会の周りの街を散策しようぜ」


考え込んでいると、いつの間にか控え室に来ていた帝王くんに猫耳フードの上から頭を撫でられた。


「エリアを出ないの?」


「1日じゃ無理だろ?とりあえず把握しておきたいのは教会の周りだろう?」


確かに移動だけで終わりそうなので、帝王くんの誘いに乗ることにしました。


控え室に続く廊下は隠し扉で塞がれており、突き当たりの壁に手を当てれば緑色の光が指紋を読み取り自動で開閉される仕組みになっている。


隠し扉から出ると祭壇がある中庭の手前にある広い礼拝堂だった。


この奥の中庭と祭壇が、明日からの僕の定位置です。


礼拝堂を抜けて木々が綺麗に剪定された広い庭は大きな噴水と白いベンチが配置されており、色とりどりの薔薇が咲き誇っています。


兎やクマの形のトピアリーも可愛らしい。


庭園を抜ければ大きな金色の門が立ちはだかる。


「俺は、この門じゃなく教会のドアの脇に立つことになる」


「大きな門だね。開けるの大変そう」


「バカか。馬車でもないのに開ける必要ないだろ。徒歩は脇の小さな門から出入りすんだよ」


「言われて見れば古民家の勝手口みたいな小さな扉がある。帝王くんってガックガクだね」


「それは博学って、お前はワザとだろう?」


「チョット、ニホンゴムズカシイ」


さっさと帝王くんを置いて門から街に出ると、ゴシック建築が立ち並ぶメルヘンな街並みが広がっていた。


教会の敷地は無人に近かったけど、街は結構な人が歩いている。


ゆっくり歩いて回ればクエストを貼り出すギルド、武器屋に防具屋、情報をくれる酒場に、ポーションが買える道具屋、フィールド限定の着替えアイテム洋服屋、テイムできる動物を扱うペットショップ、移動手段を提供する馬屋、違うフィールドに転送してくれる魔法陣がある役所を確認していく。


「NPCのモブはワープ無料だって」


「まぁ職員からは金は取らねぇだろうよ」


「モビッチちゃんは教会の神官役かぁ。俺は始まりの国のお見送り王子様だよ」


聞き覚えがある声がしたので振り向くと、王侯貴族キャラを派遣する株式会社 豪華絢爛のコードネーム エドワードが立っていた。


始まりの国とは、新規のプレイヤーがキャラメイクして名前を登録する役所の役割を果たす城があり、オープンフィールドに出る前にゲームに慣れるために用意された場所で、チュートリアルのためにだけに作られた国で基本は千葉にあるのに東京と言い張る遊園地みたいな場所でした。


青い三角屋根の白い城を中心に放射線状に街が形成されており、プレイヤーがレベル10になると追い出されて二度と戻れない決まりになっている初心者専用のフィールドでした。


お見送り王子とは、始まりの国から送り出す時の見送り役の事で、簡単に言えばレベル10になったプレイヤーを追い出すのがエドワードの仕事らしい。


「始まりの国のNPC役はやらないのかい?」


「むしろ初心者専用のフィールドにBLモブの仕事があると思ってんのか?」


正統派王子様のエドワードと、コケシ帝王が同じ場所に存在するのが違和感しかないと思うのは僕だけなのかな?


「君には話しかけてないんだけど」


「器のちいせぇ王子様だな」

エドワードが帝王くんをグイッと腕で押し退けると僕の腰に腕を回して耳元で話し始めた。


「なぜ各フィールドのシンボルが夜間は年齢制限が掛かって入れなくなるか知ってる?教会で1番偉いのは聖騎士じゃないよね?」


シンボルの建物は夜になるとR18モードのイベント仕様になるので閉鎖される。


そう、教会だけでは無いのです。


「シンボルの建物でエリアボスが出現する隠し部屋。教会で言えばモビッチちゃんがいる中庭みたいな場所に繋がる扉を開けアイテムは飛行艇を使って各地を転々と移動する俺を見付けて話かけないといけないんだよ」


正統派イケメン王子がニヤリと黒い微笑みを浮かべている。


「夜になると王子に会えないんだけど、R18モードになると宿泊している部屋から出てこない設定でね。プレイヤーが扉に近付くと昼間に一緒にいたいメイドとやってる喘ぎ声と音がするだけで開けられないんだよ」


目の前に社長のサインが入った仕事の依頼書をヒラヒラさせている。


「夜の教会イベントが無い日は俺のメイドだよ。プレイヤーにバレない程度に濃厚なデートを楽しもうね」


こうしてエドワードに横抱きされた僕は始まりの国に移動することになんたのです。


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