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退学事案

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 チェスター様が挙手して発言を求めます。

「殿下、私が」
「うん。許可する」
「スマイリー嬢。国境の峠の守備について、獣人戦士達に完全に独立した指揮権を与える。峠すぐ近くに廃された砦があるので、そこを使用してよし。砦の整備と補給は国が行う。倒した魔物の剥ぎ取りは自由。給与は一般騎士の三割増しでどうだろう?」

 ちょっとはものがわかってるです。
 独立した指揮権と拠点がもらえ補給が確約されるなら、魔物退治に慣れた獣人戦士に被害はほとんど出ないと思われるです。
 了承してもいい条件ですが……。

「給金が少ないです。これでは説得が難しいです」

 獣人達のためにも少々欲張ってみるです。

「ビーズ男爵家の特殊性は理解している」

 ……我がビーズ男爵家はマリアダル王国に忠誠を捧げているわけではないです。

 三ヶ国が国境を接する盆地になっている場所にビーズ男爵家領はあります。
 歴史的にあっちの国にベタリ、こっちの国にベタリといった具合に主を変えているです。
 現在マリアダルに与しているのは、税金をタダにしてくれるからに過ぎませんです。

 一方で三ヶ国に広がり混沌の元凶となっている『魔の森』を押さえることで、平和と経済の発展に貢献している自負がビーズ男爵家にはあるです。

 それにしてもチェスター様のシャープな眼差しは素敵ですね。

「スマイリー嬢は夏休みに領地に帰られぬのでしょう?」
「え? はい」

 何でしょう?
 チェスター様の唐突な話題転換はよくわからんです。

「王都でアルバイトに励むから、で相違ないでござるか?」
「はい」

 コタロー様まで何なんだろう?
 あっ、ブライアン殿下が悪い顔してるです?

「冒険者活動は校則が禁じている危険なアルバイトに相当するのだ」
「えっ?」
「スマイリー嬢はこの三ヶ月の間に王都の冒険者ギルドで九回の依頼を請け、内六回は魔物との戦闘に関わった。重大な校則違反だ」
「一発退学に相当する」
「そ、そんな……」

 えらいことです!
 相当なムリを言って入学させてもらったのに、一学期のみでクビになったと知れれば、私の尊厳のピンチなのです!
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