21 / 209
気になって仕方がない <中編>
しおりを挟む
車に乗り込んですぐにスマホのアプリで遥くんたちが乗ったタクシーの位置情報を確認すると、すでに八雲クリニックに向かっていた。
私も後を追うようにクリニックに急いだ。
駐車場に到着すると、入り口にほど近い場所に例のタクシーが止まっていた。
私は車を止めてすぐにタクシーに向かうと、運転手は私の姿に気づき外に出てきた。
「ご苦労だったな。荷物を出してくれ」
運転手はすぐにトランクを開け、荷物を取り出した。
<ともり りん>と名前がついた、体操服バッグは手作りだろうか。
子どもが好きそうなデザインをみて、思わず笑みがこぼれた。
「この後は私が送るから君は帰っていい。タクシー代金だ」
必要な金額より多めに渡したのは、息子と彼らを無事にここまで送り届けてくれた礼だ。
運転手は笑顔でそれを受け取ると速やかに帰っていった。
私は受け取った荷物を自分の車に積み込んで、駐車場の入り口にある自動販売機で小さなペットボトルの温かいお茶を買ってクリニックの中に入った。
扉が開いてすぐにソファーに座って俯く遥くんの顔が見えて、つい声が出た。
慌てて駆け寄ったが、遥くんは目を丸くして私をみた。
碧斗は私の姿を見て無邪気に笑っていたが、遥くんは混乱を隠せないようだった。
子どもが怪我をしたんだから無理もないが、顔色が悪い。
二人の世話が大変だろうと思って駆けつけたが、来てよかった。
さっき買っておいたお茶を渡すと、少し涙ぐんでいるように見えたのは気のせいだろうか?
それを確認したくて遥くんの顔をじっくり見ようと思ったが、碧斗も喉が渇いたと言い出した。
だがその様子を察するに碧斗はそこまで喉は乾いていないように見えた。
それよりも碧斗の隣に座っている小さな男の子。彼のほうが喉が渇いていそうだ。
彼が遥くんの息子、りんくんと言ったか。
なるほど、よく似ている。
碧斗はりんくんのために喉が渇いたと言ったのだろう。
それなら叶えてやらなければな。
碧斗を連れて待合室の中に並んでいる自販機に向かう。
ここのジュースは無添加のストレート果汁しか置いていない。
つまり、果物をそのまま食べるのと同じ栄養分が取れるということだ。
もちろん普通よりは値段が張るだろうが、子どもの健康に配慮したこのジュースはかなり人気だそうだ。
「碧斗、何にする?」
「えっと……りんごと、ぶどうにするー!」
どちらも碧斗の好きなものだ。
ジュースを買ってくると行って遥くんが何も言わなかったからアレルギーの類はないだろうが気に入ってくれるだろうか。
少しドキドキしつつも碧斗が選んだジュースを買い、碧斗に渡すと嬉しそうにりんくんの元に駆けて行った。
りんくんに好きなものを選ばせようとしていたが、結局どちらも半分ずつ飲むらしい。
遥くんが直接口をつけることを心配していたが、毒物や異物を混入される心配がないものは私は特に気にならない。
むしろ、子どもたちが分け合って飲む姿がうらやま……いや、楽しそうでいい。
遥くんは子どもたちが飲んでいたジュースが高価なものだと気づいて驚いていたが、その辺りはどうでもいい。
私が渡したお茶を彼がゴクリと飲むのが見えて、嬉しくなる自分がいた。
診察室に呼ばれて、遥くんがりんくんを連れて行こうとしたが、珍しく碧斗が駄々を捏ね始めた。
「えーっ、あおともいっしょにせんせーのおはなしきくー!! りんくんも、あおとがいっしょのほうがいいよね?」
「うん、りんもいっしょがいいー! ねー、はるかちゃん。だめー?」
碧斗だけでなく、りんくんも一緒に駄々を捏ね始めたらここで説得するのも面倒だ。
それに実のところは私も診察室に入って話を聞いておきたかった。
そうでなければ、遥くんが無理をしそうな気がしたんだ。
遥くんを納得させ、四人で診察室に入った。
八雲先生は一緒に診察室に入ってきた私に一瞬驚いていたように見えたが、彼も納得していると目で訴えると理解してくれたようだ。
そして診察が始まり、りんくんの応急処置が外される。
想像以上の腫れ具合にやはり骨折か、もしくはヒビが入っているかと予想した。
八雲先生も同じ診たてだったようで、レントゲンを撮ることになった。
結果、捻挫だったがかなり酷く捻っているのがわかる。
無理して動かせば状態はすぐに悪くなり、完治も遅くなるだろう。
子ども同士の戯れでどうしても無理をしがちだから保育園は休ませたほうがいい。
それが八雲先生の診断だった。
途端に困惑の表情を見せる遥くんをみて、彼がシングルだと確信した。
そうでなければ二人でどうにかして切り抜けようとするはずだ。
それなら我が家に一緒に連れてきたらいい。
その結論に至るのに時間はかからなかった。
子どもを二人見ながらの家事は手間はかかるだろうが、すっかり仲良くなっているりんくんがいれば、碧斗は喜ぶだろう。
碧斗もすっかりやる気になっているし、八雲先生も碧斗が手助けをすることに賛成してくれた。
外堀は埋めたからこのまま突き進めばいい。
診察室を出て、遥くんは私に本当に一緒に連れて行っていいのかと確認してきたが、こちらには何の問題もない。
むしろ一緒でも来てくれるほうが助かるんだ。
クリニックを出て、私の車に誘導した。
碧斗とりんくんを後部座席に取り付けてもらっていたチャイルドシートに乗せ、遥くんには助手席に座ってもらった。
この車に限らず、私が持っている車の助手席に座らせることはまずない。
だが遥くんだけは助手席でないといけない気がした。
後部座席を映したモニターをつけながら、車を走らせると、遥くんとの穏やかな時間が流れる。
この時間が永遠に続けばいいとさえ思ってしまっていることに自分でも驚いた。
彼に保育園に連絡するように促した途端、突然彼のスマホが着信を告げた。
私も後を追うようにクリニックに急いだ。
駐車場に到着すると、入り口にほど近い場所に例のタクシーが止まっていた。
私は車を止めてすぐにタクシーに向かうと、運転手は私の姿に気づき外に出てきた。
「ご苦労だったな。荷物を出してくれ」
運転手はすぐにトランクを開け、荷物を取り出した。
<ともり りん>と名前がついた、体操服バッグは手作りだろうか。
子どもが好きそうなデザインをみて、思わず笑みがこぼれた。
「この後は私が送るから君は帰っていい。タクシー代金だ」
必要な金額より多めに渡したのは、息子と彼らを無事にここまで送り届けてくれた礼だ。
運転手は笑顔でそれを受け取ると速やかに帰っていった。
私は受け取った荷物を自分の車に積み込んで、駐車場の入り口にある自動販売機で小さなペットボトルの温かいお茶を買ってクリニックの中に入った。
扉が開いてすぐにソファーに座って俯く遥くんの顔が見えて、つい声が出た。
慌てて駆け寄ったが、遥くんは目を丸くして私をみた。
碧斗は私の姿を見て無邪気に笑っていたが、遥くんは混乱を隠せないようだった。
子どもが怪我をしたんだから無理もないが、顔色が悪い。
二人の世話が大変だろうと思って駆けつけたが、来てよかった。
さっき買っておいたお茶を渡すと、少し涙ぐんでいるように見えたのは気のせいだろうか?
それを確認したくて遥くんの顔をじっくり見ようと思ったが、碧斗も喉が渇いたと言い出した。
だがその様子を察するに碧斗はそこまで喉は乾いていないように見えた。
それよりも碧斗の隣に座っている小さな男の子。彼のほうが喉が渇いていそうだ。
彼が遥くんの息子、りんくんと言ったか。
なるほど、よく似ている。
碧斗はりんくんのために喉が渇いたと言ったのだろう。
それなら叶えてやらなければな。
碧斗を連れて待合室の中に並んでいる自販機に向かう。
ここのジュースは無添加のストレート果汁しか置いていない。
つまり、果物をそのまま食べるのと同じ栄養分が取れるということだ。
もちろん普通よりは値段が張るだろうが、子どもの健康に配慮したこのジュースはかなり人気だそうだ。
「碧斗、何にする?」
「えっと……りんごと、ぶどうにするー!」
どちらも碧斗の好きなものだ。
ジュースを買ってくると行って遥くんが何も言わなかったからアレルギーの類はないだろうが気に入ってくれるだろうか。
少しドキドキしつつも碧斗が選んだジュースを買い、碧斗に渡すと嬉しそうにりんくんの元に駆けて行った。
りんくんに好きなものを選ばせようとしていたが、結局どちらも半分ずつ飲むらしい。
遥くんが直接口をつけることを心配していたが、毒物や異物を混入される心配がないものは私は特に気にならない。
むしろ、子どもたちが分け合って飲む姿がうらやま……いや、楽しそうでいい。
遥くんは子どもたちが飲んでいたジュースが高価なものだと気づいて驚いていたが、その辺りはどうでもいい。
私が渡したお茶を彼がゴクリと飲むのが見えて、嬉しくなる自分がいた。
診察室に呼ばれて、遥くんがりんくんを連れて行こうとしたが、珍しく碧斗が駄々を捏ね始めた。
「えーっ、あおともいっしょにせんせーのおはなしきくー!! りんくんも、あおとがいっしょのほうがいいよね?」
「うん、りんもいっしょがいいー! ねー、はるかちゃん。だめー?」
碧斗だけでなく、りんくんも一緒に駄々を捏ね始めたらここで説得するのも面倒だ。
それに実のところは私も診察室に入って話を聞いておきたかった。
そうでなければ、遥くんが無理をしそうな気がしたんだ。
遥くんを納得させ、四人で診察室に入った。
八雲先生は一緒に診察室に入ってきた私に一瞬驚いていたように見えたが、彼も納得していると目で訴えると理解してくれたようだ。
そして診察が始まり、りんくんの応急処置が外される。
想像以上の腫れ具合にやはり骨折か、もしくはヒビが入っているかと予想した。
八雲先生も同じ診たてだったようで、レントゲンを撮ることになった。
結果、捻挫だったがかなり酷く捻っているのがわかる。
無理して動かせば状態はすぐに悪くなり、完治も遅くなるだろう。
子ども同士の戯れでどうしても無理をしがちだから保育園は休ませたほうがいい。
それが八雲先生の診断だった。
途端に困惑の表情を見せる遥くんをみて、彼がシングルだと確信した。
そうでなければ二人でどうにかして切り抜けようとするはずだ。
それなら我が家に一緒に連れてきたらいい。
その結論に至るのに時間はかからなかった。
子どもを二人見ながらの家事は手間はかかるだろうが、すっかり仲良くなっているりんくんがいれば、碧斗は喜ぶだろう。
碧斗もすっかりやる気になっているし、八雲先生も碧斗が手助けをすることに賛成してくれた。
外堀は埋めたからこのまま突き進めばいい。
診察室を出て、遥くんは私に本当に一緒に連れて行っていいのかと確認してきたが、こちらには何の問題もない。
むしろ一緒でも来てくれるほうが助かるんだ。
クリニックを出て、私の車に誘導した。
碧斗とりんくんを後部座席に取り付けてもらっていたチャイルドシートに乗せ、遥くんには助手席に座ってもらった。
この車に限らず、私が持っている車の助手席に座らせることはまずない。
だが遥くんだけは助手席でないといけない気がした。
後部座席を映したモニターをつけながら、車を走らせると、遥くんとの穏やかな時間が流れる。
この時間が永遠に続けばいいとさえ思ってしまっていることに自分でも驚いた。
彼に保育園に連絡するように促した途端、突然彼のスマホが着信を告げた。
2,645
あなたにおすすめの小説
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
愛される日は来ないので
豆狸
恋愛
だけど体調を崩して寝込んだ途端、女主人の部屋から物置部屋へ移され、満足に食事ももらえずに死んでいったとき、私は悟ったのです。
──なにをどんなに頑張ろうと、私がラミレス様に愛される日は来ないのだと。
婚約者の心の声が聞こえるようになったが手遅れだった
神々廻
恋愛
《めんどー、何その嫌そうな顔。うっざ》
「殿下、ご機嫌麗しゅうございます」
婚約者の声が聞こえるようになったら.........婚約者に罵倒されてた.....怖い。
全3話完結
君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました
水谷繭
恋愛
メイベル・ホワイトは目立たない平凡な少女で、美人な姉といつも比べられてきた。
求婚者の殺到する姉とは反対に、全く縁談のなかったメイベル。
そんなある日、ブラッドという美少年が婚約を持ちかけてくる。姉より自分を選んでくれたブラッドに感謝したメイベルは、彼のために何でもしようとひたすら努力する。
しかしそんな態度を重いと告げられ、君といると疲れると言われてしまう。
ショックを受けたメイベルは、ブラッドばかりの生活を改め、好きだった魔法に打ち込むために魔術院に入ることを決意するが……
◆なろうにも掲載しています
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
夫「お前は価値がない女だ。太った姿を見るだけで吐き気がする」若い彼女と再婚するから妻に出て行け!
佐藤 美奈
恋愛
華やかな舞踏会から帰宅した公爵夫人ジェシカは、幼馴染の夫ハリーから突然の宣告を受ける。
「お前は価値のない女だ。太った姿を見るだけで不快だ!」
冷酷な言葉は、長年連れ添った夫の口から発せられたとは思えないほど鋭く、ジェシカの胸に突き刺さる。
さらにハリーは、若い恋人ローラとの再婚を一方的に告げ、ジェシカに屋敷から出ていくよう迫る。
優しかった夫の変貌に、ジェシカは言葉を失い、ただ立ち尽くす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる