ベビーシッター先でラブラブな家族生活はじまりました

波木真帆

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気になって仕方がない <中編>

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車に乗り込んですぐにスマホのアプリで遥くんたちが乗ったタクシーの位置情報を確認すると、すでに八雲クリニックに向かっていた。

私も後を追うようにクリニックに急いだ。
駐車場に到着すると、入り口にほど近い場所に例のタクシーが止まっていた。

私は車を止めてすぐにタクシーに向かうと、運転手は私の姿に気づき外に出てきた。

「ご苦労だったな。荷物を出してくれ」

運転手はすぐにトランクを開け、荷物を取り出した。
<ともり りん>と名前がついた、体操服バッグは手作りだろうか。
子どもが好きそうなデザインをみて、思わず笑みがこぼれた。

「この後は私が送るから君は帰っていい。タクシー代金だ」

必要な金額より多めに渡したのは、息子と彼らを無事にここまで送り届けてくれた礼だ。

運転手は笑顔でそれを受け取ると速やかに帰っていった。
私は受け取った荷物を自分の車に積み込んで、駐車場の入り口にある自動販売機で小さなペットボトルの温かいお茶を買ってクリニックの中に入った。

扉が開いてすぐにソファーに座って俯く遥くんの顔が見えて、つい声が出た。
慌てて駆け寄ったが、遥くんは目を丸くして私をみた。
碧斗は私の姿を見て無邪気に笑っていたが、遥くんは混乱を隠せないようだった。

子どもが怪我をしたんだから無理もないが、顔色が悪い。
二人の世話が大変だろうと思って駆けつけたが、来てよかった。

さっき買っておいたお茶を渡すと、少し涙ぐんでいるように見えたのは気のせいだろうか?

それを確認したくて遥くんの顔をじっくり見ようと思ったが、碧斗も喉が渇いたと言い出した。
だがその様子を察するに碧斗はそこまで喉は乾いていないように見えた。
それよりも碧斗の隣に座っている小さな男の子。彼のほうが喉が渇いていそうだ。

彼が遥くんの息子、りんくんと言ったか。
なるほど、よく似ている。

碧斗はりんくんのために喉が渇いたと言ったのだろう。
それなら叶えてやらなければな。

碧斗を連れて待合室の中に並んでいる自販機に向かう。
ここのジュースは無添加のストレート果汁しか置いていない。
つまり、果物をそのまま食べるのと同じ栄養分が取れるということだ。
もちろん普通よりは値段が張るだろうが、子どもの健康に配慮したこのジュースはかなり人気だそうだ。

「碧斗、何にする?」

「えっと……りんごと、ぶどうにするー!」

どちらも碧斗の好きなものだ。
ジュースを買ってくると行って遥くんが何も言わなかったからアレルギーの類はないだろうが気に入ってくれるだろうか。
少しドキドキしつつも碧斗が選んだジュースを買い、碧斗に渡すと嬉しそうにりんくんの元に駆けて行った。

りんくんに好きなものを選ばせようとしていたが、結局どちらも半分ずつ飲むらしい。
遥くんが直接口をつけることを心配していたが、毒物や異物を混入される心配がないものは私は特に気にならない。
むしろ、子どもたちが分け合って飲む姿がうらやま……いや、楽しそうでいい。

遥くんは子どもたちが飲んでいたジュースが高価なものだと気づいて驚いていたが、その辺りはどうでもいい。
私が渡したお茶を彼がゴクリと飲むのが見えて、嬉しくなる自分がいた。

診察室に呼ばれて、遥くんがりんくんを連れて行こうとしたが、珍しく碧斗が駄々を捏ね始めた。

「えーっ、あおともいっしょにせんせーのおはなしきくー!! りんくんも、あおとがいっしょのほうがいいよね?」

「うん、りんもいっしょがいいー! ねー、はるかちゃん。だめー?」

碧斗だけでなく、りんくんも一緒に駄々を捏ね始めたらここで説得するのも面倒だ。
それに実のところは私も診察室に入って話を聞いておきたかった。

そうでなければ、遥くんが無理をしそうな気がしたんだ。

遥くんを納得させ、四人で診察室に入った。

八雲先生は一緒に診察室に入ってきた私に一瞬驚いていたように見えたが、彼も納得していると目で訴えると理解してくれたようだ。

そして診察が始まり、りんくんの応急処置が外される。
想像以上の腫れ具合にやはり骨折か、もしくはヒビが入っているかと予想した。
八雲先生も同じ診たてだったようで、レントゲンを撮ることになった。

結果、捻挫だったがかなり酷く捻っているのがわかる。

無理して動かせば状態はすぐに悪くなり、完治も遅くなるだろう。
子ども同士の戯れでどうしても無理をしがちだから保育園は休ませたほうがいい。
それが八雲先生の診断だった。

途端に困惑の表情を見せる遥くんをみて、彼がシングルだと確信した。
そうでなければ二人でどうにかして切り抜けようとするはずだ。

それなら我が家に一緒に連れてきたらいい。
その結論に至るのに時間はかからなかった。

子どもを二人見ながらの家事は手間はかかるだろうが、すっかり仲良くなっているりんくんがいれば、碧斗は喜ぶだろう。
碧斗もすっかりやる気になっているし、八雲先生も碧斗が手助けをすることに賛成してくれた。

外堀は埋めたからこのまま突き進めばいい。

診察室を出て、遥くんは私に本当に一緒に連れて行っていいのかと確認してきたが、こちらには何の問題もない。
むしろ一緒でも来てくれるほうが助かるんだ。

クリニックを出て、私の車に誘導した。
碧斗とりんくんを後部座席に取り付けてもらっていたチャイルドシートに乗せ、遥くんには助手席に座ってもらった。

この車に限らず、私が持っている車の助手席に座らせることはまずない。
だが遥くんだけは助手席でないといけない気がした。

後部座席を映したモニターをつけながら、車を走らせると、遥くんとの穏やかな時間が流れる。
この時間が永遠に続けばいいとさえ思ってしまっていることに自分でも驚いた。

彼に保育園に連絡するように促した途端、突然彼のスマホが着信を告げた。
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