ベビーシッター先でラブラブな家族生活はじまりました

波木真帆

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二人掛けのソファー席

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「今日はみんなでお出かけするから、お着替えしよう」

食事が終わって片付けをしている間に、さっと着替えを済ませてきた西条さんが碧斗くんと琳に声をかけてくれる。

「ぱぱー。どこにいくのー?」

「楽しいところだよ。さぁ、二人で好きな服を選んで」

「わぁー、あおとくん。どれにするー?」

二人は楽しそうに服を選び始めた。

片付けを済ませて、僕も碧斗くんと琳のお着替えを手伝おうと手を拭きながら西条さんに近づいた。

「僕もお着替え手伝います」

「大丈夫だよ。遥くんは自分の着替えをしてていい。遥くんが着る服は脱衣所に用意しているから行っておいで」

もう僕の服まで用意してくれているなんて……いつの間にそこまでしてくれたんだろう?

「そのほうが早く出かけられるだろう? 子育ては二人でやるんだから心配しないでいいよ」

そこまで言われたらそれ以上言えず、僕は西条さんに任せて着替えに向かった。
脱衣所に入ると、本当に服が用意してある。
しかもなんだか西条さんが着ていた服と似ているような?
勘違いかな?

まぁ、そもそもが西条さんが選んでくれた服だから系統が似るのは不思議じゃないか。

さっと着替えを済ませてみんなの元に戻ると、碧斗くんと琳の着替えもすっかり終わっていた。

碧斗くんと琳の服は全部色違いで揃えてあるから、二人で着ていると兄弟みたいに見える。
やっぱりこれくらいの子が色違いとはいえ、お揃いを着ているのはすごく可愛いな。

「遥くんも着替えたようだし、出かけようか」

「わぁーい!」

碧斗くんと琳が手を繋ぎ、嬉しそうに玄関に駆けていく。
琳が玄関の上がり框に座ると、さっと碧斗くんが琳の靴を履かせてくれる。

「碧斗くん。僕がやるからいいよ」

流石にそこまではさせられないと慌てて代わろうとしたけれど、碧斗くんに止められてしまった。

「だいじょーぶ。あおとがおせわするの!」

「でも……」

「遥くん。碧斗がやりたいと言っているからやらせてやってくれ」

西条さんは碧斗くんが琳の靴を履かせても気にならないみたいだ。
それどころか喜んでいるような感じさえ見える。
それならいいのかな……なんだか申し訳ない気もするけれど。

四人で玄関を出てエレベーターに乗り込み、モニタールームのある三階まで降りていく。
ロビーと西条さんの家がある最上階以外の階で降りるのは初めてだからなんだかドキドキする。

三階で降りて、共有施設に入るための入り口でも指紋認証が必要なようで西条さんは入り口に手をかざしていた。

「手をかざしたら住民さんはいつでもモニタールームやその他の場所を楽しめるんですね」

この前は突然家の扉が開いて、元義弟かも……なんて勝手に恐怖を感じていたけれど、考えてみたらどこに入るにも指紋認証が必要なこのマンションでそれを突破して家まで入ってくるなんてありえなかったな。
あの時の僕は本当にどうかしてた。

「そうだ。ただ、今日に限ってはモニタールームは私たちだけの貸切にしているから、他には誰も入ってこないよ。指紋認証をして住民だと認められても貸切の時間の間は鍵が開かない仕組みになっている」

「えっ……貸切? そんなこともできるんですか?」

「ああ、パーティールームなんかも同じだよ。パーティーの最中にいくら住民であっても勝手に入ってこられたら困るだろう?」

確かに、それはそうかも……。

「貸切だと子どもたちが騒いでも周りを気にしなくていいから安心して映画が観られるよ」

「今日は何の映画を見るんですか?」

「これだよ」

西条さんが笑顔で見せてくれたのは、有名な子ども向けのアニメ映画。
オカリナを吹く不思議な生き物と子どもたちのお話。

「あっ、これ! 僕も琳にそろそろ見せたいなと思っていた映画です」

「そうか、私もなんだよ。琳くんが観てないならよかった」

そんな話をしながら、僕たちはモニタールームの前までやってきた。

「ぱぱー、あけてー」

待ち遠しそうにお願いしてくる碧斗くんと琳に笑顔を見せながら、西条さんが指紋をかざすとドアがカチャリと開いた。

扉を開けると自動で電灯が点き、中に入ってみるとそこには驚きの光景が広がっていた。

「わぁー! 広い!!」

大画面を前にいくつもの席があって、まるで本物の映画館のようだ。

ただ違うのは、個別の席の他にソファーのような席や、ラグが敷かれた席があって、それぞれ好きなように寝転んだりしながら映画が観られるところだ。

「碧斗、琳くん。好きな席に座っていいぞ」

「わぁー! りん、あのもふもふにすわりたい!」

「いいよ、いこう!」

琳と碧斗くんはあっという間に座る場所を決めて、ラグにちょこんと並んで座っていた。

「あそこなら映画に疲れたら横になって眠れるから子どもたちにとっても楽な席だよ」

「そうなんですね。じゃあ、僕は……」

「遥くんは私とあの席に座ろう。あそこなら、映画を見ながら子どもたちの様子も確認できるよ」

西条さんにさっと手を取られて連れて行かれたのは、二人掛けのソファー席。しかもリクライニング付きで、ものすごくリラックスできる席だ。

ここに二人で座るのは緊張しかないんだけど……確かに子どもたちの席もよく見える。

「ほら、遥くん。映画が始まるよ。座って」

そう言われている間に、モニタールームの電気が消えて大画面で映画が始まった。

慌てて言われた席に座ったけれど、ピッタリと西条さんが横にいるからすごく緊張する。
心臓の音が聞こえそうなくらいバクバクしている中、西条さんは僕が隣にいても気にする様子もなく大画面に見入っているようだった。
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