ベビーシッター先でラブラブな家族生活はじまりました

波木真帆

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絶対に知られたくない

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「わぁー! もふもふー!」

「おっきぃーっ!」

不思議な生き物の登場に大声をあげる碧斗くんと琳。
この大画面で見るから余計におっきくみえて楽しいだろうな。

僕は初めてこの映画を見た時はテレビだったから、今回こんな大画面で見られてあの時以上の感動を味わっている気がする。

「すごいねー! ゆめだけど、ゆめじゃなかったね!」

「うん! めー、でたねー!!」

碧斗くんと琳が楽しそうにおしゃべりしながら映画を見られるのもこのモニタールームのおかげだ。
本物の映画館でなかなかここまでリラックスしておしゃべりしながら見られないよ。

ここに連れてきてもらってよかったな。

それにしても西条さん、全然動かないけど映画に集中しているのかな?
今、座っている椅子が映画館と違って二人掛けのソファーだから、足や腕に西条さんの温もりを感じるけれど、ドキドキするからそっち側が見れない。

でもこんなに集中しているってことは、もしかして西条さんが一番好きな映画だったりするのかな?
意外と可愛い映画が好きなんだななんて思っていると、突然肩にポスッと重みを感じた。

えっ?

ドキドキしながらそっと視線を向けると、西条さんが僕の肩に寄りかかっているのが見える。

「――っ!!」

な、なんで? こんなことに?

すごく顔が近くてドキドキが止まらないけれど、西条さんからスゥスゥと寝息が聞こえる。
あっ! もしかして、寝てる?

この一週間、僕たちが居候させてもらって気を遣わせている上に、僕がほとんど毎日のように一人でのんびりお風呂に入らせてもらったり、マッサージしてもらっている間に子どもたちの寝かしつけをしてもらっているんだ。その上、僕が寝てしまって布団まで運んでもらったりして……忙しいのにかなり疲れさせているんだから、寝てしまうのも仕方がないよね。

子どもたちも楽しそうに映画を見ているし、映画が終わるまではゆっくり寝かせておいてあげよう。

そう思ってしばらく西条さんが僕の肩にもたれかかったままになっていたけれど、なんだか体勢が苦しそう。
多分だけど、僕のほうが背が低いからもたれかかっても寝にくいんだろう。

どうにかして良い体勢で寝かせてあげたいけど、リクライニングのスイッチは西条さんの身体の向こう側だし……なんとかして手を伸ばしてスイッチ押せないかな?

西条さんを起こさないようにしながら手を伸ばすけれど、届く気がしない。

背もたれと西条さんの間に僕の右腕を通して西条さんを支えながら左腕を目一杯伸ばすけれど、それでも届かない。うーん、どうしよう……。

そう悩んでいる間に、西条さんが前に倒れ込んでしまって、慌てて両腕で抱き留める。
わっ、どうしょう……。西条さんが僕の腕の中にいるんだけど……。

元の体勢にも戻れないし、リクライニングも押せないし、もはや八方塞がりで僕が西条さんを抱きしめているという不思議な状態。しかもちょっと僕の体勢も辛くなってきた。

「んっ、くっ……っ」

必死になんとか体勢を立て直そうとするけれど、どうにもできない。

もう仕方がない。このまま横にさせるしかないか。
なんとか身体をずらして、西条さんの頭を僕の膝の上に乗せてみた。

ふぅ……上半身はなんとかなったっぽい。
下半身はまだ座ったままの状態だから、それも楽にしてあげたいけど僕の力じゃ足を椅子に乗せるのは無理そうだ。でも僕の低い肩にもたれかかっていた時よりは楽そうかな。

僕の膝枕で西条さんが寝ているなんて……ちょっと信じられない光景だけど。
映画が終わるまで少しだけでも休めたらいい。

そう思っていたのに……体勢が辛かったのかもしれない。

画面の中の子が妹を探しに出かけた頃、突然膝の上で寝ていた西条さんが身体の向きを変えて、僕のお腹側に顔を向けてきた。足もいつの間にかソファーの上でくの字に折り曲げてのせている。

西条さん的にはさっきよりもずっと楽な体勢になったんだろうけど、妙なところに西条さんの顔があると思うとなんだかドキドキしてしまう。

ここは空調も効いているし、汗臭くはないだろうけどやっぱり緊張してしまうのは僕だけじゃないはずだ。
僕の柔らかい膝やぷよぷよとしたお腹の感触が珍しいのか、眠ったまま西条さんがすりすりとお腹に擦り寄ってくるたびに、身体のどこか奥のほうがキュンと疼く感じがして、そこからは映画は集中して観られなかった。

最後の音楽が流れる頃、ようやく目を覚ました西条さんと目が合い、西条さんが驚いた様子で身体を起こすまで僕はずっとそのままで居続けるしかなかった。

「あ、遥くん。ごめん。眠ってしまったみたいだな」

「い、いいえ。お疲れだったようなので気にしないでください」

「私はずっと……その、遥くんに迷惑を?」

「いえ。ついさっきですから大丈夫です」

西条さんはホッとしたように笑っていたけれど、西条さんには本当のことは言えなかった。
西条さんに顔を擦り寄せられて、勃たせてしまってたなんて……。

恥ずかしすぎてこんなこと絶対に知られるわけにはいかないよ。
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