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友人たちとの語らい
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そうしみじみ思っていると、
「エヴァンさん、大好きっ!」
とユヅルが抱きついてきて、必死に背伸びをしている。
まさか、ユヅルからのキスか?
と思いつつ、少し屈んでやるとユヅルの柔らかな唇がそっと私のそれに触れた。
その瞬間、リオたちから歓声が上がる。
私は嬉しかったが、ユヅルは思わずやってしまったと言った様子で一気に顔を赤らめていく。
それがあまりにも可愛すぎて、私はすぐにユヅルを自分の身体で覆い隠した。
いくら友人たちとはいえ、こんなにも可愛い姿をおいそれと見せてやるわけにはいかない。
ユヅルの可愛い顔を見ていいのは私だけだからな。
恥ずかしそうに私の胸元で震えるユヅルを抱きしめながら、セルジュとジョルジュに視線を送ると私の意図に気づいてくれたのか、すぐに恋人たちと甘い雰囲気に持ち込んでくれた。
その姿をユヅルに見せて安心させ、リオたちにも
嬉しいときは愛しい恋人や伴侶とキスをする。これがフランス式なんだ。君たちも嬉しいときは人目を気にしないでキスしたりハグしたりしてくれて構わないよ」
と教えてやると、彼らはユヅルを囃し立てるどころか、もうフランス人になってるんだと尊敬の眼差しで見始めた。
ふふっ。
セルジュたちのおかげで助かったな。
だが、あの素直な子たちがこれから私のいうことを守ろうとして、嬉しいことがあるたびに恋人たちにハグしたり、キスしたりしてきて、抑えるのに大変かもしれないが……。
まぁ、そこの対処は任せるとしよう。
ユヅルはあれだけ恥ずかしがっていたが、リオたちに尊敬の目で見つめられて嬉しくなったのか、今度は堂々と愛の言葉を叫びながら私に抱きつきキスをしてくれた。
ああ、ここが自室ならそのまま押し倒すが……ここは我慢だ。
やはり可愛い伴侶の無自覚な煽りを抑えるのは大変だな。
そんな私の心のうちを見透かしたように、ジュールが食事の案内に来た。
ユヅルはテーブルに並べられた食事に夢中の様子。
この間に昂った気持ちを抑えられると私はホッと息を吐いた。
クリスマスに相応しい豪華な食事の数々。
シェフたちも相当腕を振るってくれたようだ。
フォアグラにテリーヌや生牡蠣。
そして、フランスのクリスマスには欠かせないchaponとpoularde。
chaponとpoulardeは上質な脂を纏い、細部まで肉が柔らかいのが特徴だ。
舌の肥えた私の友人たちもきっと美味しいと言ってくれるに違いない。
リオは目の前に置かれた大きなchaponのローストを見て驚きの声をあげていたが、ミヅキはすぐに私にこれがchaponかと尋ねてきた。
ふふっ。やはりさすがだな。
見ただけでchaponだとわかってくれる者に食べてもらえるとは、きっとシェフも喜ぶだろう。
ミヅキとchaponとpoulardeについて話をしていると、ユヅルが不思議そうにその二つがなんなのかと尋ねてきた。
鶏肉の種類だと教えてやり、取り分けて食べさせてみると目の動きだけで喜んでいるのがわかる。
よかった、後でシェフを褒めておこう。
ふと見ると、ミシェルがセルジュに生牡蠣を食べさせているのが見える。
あいつは相変わらず生牡蠣が好きだな。
だが、ミシェルはわかっているのだろうか?
牡蠣は性欲を高めるということを……。
ただでさえ、激しそうなセルジュがあんなに牡蠣を食べているのだ。
想像したくはないが、今夜は激しい夜になりそうだな……。
別にそれはどうでもいいのだが、明日の結婚式でミシェルが演奏できなくなるような事態だけは避けてもらわねば。
後でそれとなく注意しておくとしようか。
食事も一通り終わったところで、
「ロレーヌ総帥、少しワインでも飲みながらお話でもいかがですか?」
と声をかけてくれた。
「ああ、そうだな。ちょうどワインに合うチーズや生ハムもあるから準備させよう」
「いえ、ジュールさんは理央たちのお世話をしてくれているようなので、私でよければ準備しますよ」
ミヅキはそういうが早いか、さっと数枚の皿にチーズや生ハム、パンに乗せたフォアグラやパテを盛り付けてくれた。
「手際がいいな。料理の腕も相当のものだろう?」
「いえ、まだまだです。ですが、理央を満足できるくらいには……」
「ははっ。それでいい、十分だろう」
アヤシロやユウキ、スオウ、セルジュ、そして、ジョルジュも一緒にソファーに座り、それぞれの恋人を見つめながら、楽しいひとときを過ごす。
こんな時間を過ごすのは初めてかもしれないな。
『ロレーヌ、さっきスオウと話していたのだが、彼はパリ警視庁にかなり興味があるようだ。ゆくゆくはこちらに引き抜こうかとも考えている』
『そうか、ジョルジュがそこまでいうならスオウも大したものだな』
『いえ、そんなことは……。ですが、こうやってジョルジュさんと直接お話ができて本当に嬉しいです。今回はお誘いいただきありがとうございます』
『いや、そんなに恐縮することはない。スオウとシュウゴがきてくれて私もユヅルも喜んでいるのだから。だが、スオウがこちらに来るなら、シュウゴも一緒に連れてくるのだろう?』
『ええ、それはもちろん。離れるなんてことは考えてません』
『ふふっ。それは素晴らしいな。だが、シュウゴの働き口はどうする? まぁ彼ほど優秀なら、どこでも見つかるな。うちで働いて欲しいくらいの人材だ』
『ええ。本当に秀吾は優秀ですよ。今も観月さんの片腕としてなくてはならない存在になっていると思います』
自分が褒められるより、恋人が褒められた方がよほど嬉しいのだな。
ふふっ。やはりここにいる者たちは皆、似ている。
「エヴァンさん、大好きっ!」
とユヅルが抱きついてきて、必死に背伸びをしている。
まさか、ユヅルからのキスか?
と思いつつ、少し屈んでやるとユヅルの柔らかな唇がそっと私のそれに触れた。
その瞬間、リオたちから歓声が上がる。
私は嬉しかったが、ユヅルは思わずやってしまったと言った様子で一気に顔を赤らめていく。
それがあまりにも可愛すぎて、私はすぐにユヅルを自分の身体で覆い隠した。
いくら友人たちとはいえ、こんなにも可愛い姿をおいそれと見せてやるわけにはいかない。
ユヅルの可愛い顔を見ていいのは私だけだからな。
恥ずかしそうに私の胸元で震えるユヅルを抱きしめながら、セルジュとジョルジュに視線を送ると私の意図に気づいてくれたのか、すぐに恋人たちと甘い雰囲気に持ち込んでくれた。
その姿をユヅルに見せて安心させ、リオたちにも
嬉しいときは愛しい恋人や伴侶とキスをする。これがフランス式なんだ。君たちも嬉しいときは人目を気にしないでキスしたりハグしたりしてくれて構わないよ」
と教えてやると、彼らはユヅルを囃し立てるどころか、もうフランス人になってるんだと尊敬の眼差しで見始めた。
ふふっ。
セルジュたちのおかげで助かったな。
だが、あの素直な子たちがこれから私のいうことを守ろうとして、嬉しいことがあるたびに恋人たちにハグしたり、キスしたりしてきて、抑えるのに大変かもしれないが……。
まぁ、そこの対処は任せるとしよう。
ユヅルはあれだけ恥ずかしがっていたが、リオたちに尊敬の目で見つめられて嬉しくなったのか、今度は堂々と愛の言葉を叫びながら私に抱きつきキスをしてくれた。
ああ、ここが自室ならそのまま押し倒すが……ここは我慢だ。
やはり可愛い伴侶の無自覚な煽りを抑えるのは大変だな。
そんな私の心のうちを見透かしたように、ジュールが食事の案内に来た。
ユヅルはテーブルに並べられた食事に夢中の様子。
この間に昂った気持ちを抑えられると私はホッと息を吐いた。
クリスマスに相応しい豪華な食事の数々。
シェフたちも相当腕を振るってくれたようだ。
フォアグラにテリーヌや生牡蠣。
そして、フランスのクリスマスには欠かせないchaponとpoularde。
chaponとpoulardeは上質な脂を纏い、細部まで肉が柔らかいのが特徴だ。
舌の肥えた私の友人たちもきっと美味しいと言ってくれるに違いない。
リオは目の前に置かれた大きなchaponのローストを見て驚きの声をあげていたが、ミヅキはすぐに私にこれがchaponかと尋ねてきた。
ふふっ。やはりさすがだな。
見ただけでchaponだとわかってくれる者に食べてもらえるとは、きっとシェフも喜ぶだろう。
ミヅキとchaponとpoulardeについて話をしていると、ユヅルが不思議そうにその二つがなんなのかと尋ねてきた。
鶏肉の種類だと教えてやり、取り分けて食べさせてみると目の動きだけで喜んでいるのがわかる。
よかった、後でシェフを褒めておこう。
ふと見ると、ミシェルがセルジュに生牡蠣を食べさせているのが見える。
あいつは相変わらず生牡蠣が好きだな。
だが、ミシェルはわかっているのだろうか?
牡蠣は性欲を高めるということを……。
ただでさえ、激しそうなセルジュがあんなに牡蠣を食べているのだ。
想像したくはないが、今夜は激しい夜になりそうだな……。
別にそれはどうでもいいのだが、明日の結婚式でミシェルが演奏できなくなるような事態だけは避けてもらわねば。
後でそれとなく注意しておくとしようか。
食事も一通り終わったところで、
「ロレーヌ総帥、少しワインでも飲みながらお話でもいかがですか?」
と声をかけてくれた。
「ああ、そうだな。ちょうどワインに合うチーズや生ハムもあるから準備させよう」
「いえ、ジュールさんは理央たちのお世話をしてくれているようなので、私でよければ準備しますよ」
ミヅキはそういうが早いか、さっと数枚の皿にチーズや生ハム、パンに乗せたフォアグラやパテを盛り付けてくれた。
「手際がいいな。料理の腕も相当のものだろう?」
「いえ、まだまだです。ですが、理央を満足できるくらいには……」
「ははっ。それでいい、十分だろう」
アヤシロやユウキ、スオウ、セルジュ、そして、ジョルジュも一緒にソファーに座り、それぞれの恋人を見つめながら、楽しいひとときを過ごす。
こんな時間を過ごすのは初めてかもしれないな。
『ロレーヌ、さっきスオウと話していたのだが、彼はパリ警視庁にかなり興味があるようだ。ゆくゆくはこちらに引き抜こうかとも考えている』
『そうか、ジョルジュがそこまでいうならスオウも大したものだな』
『いえ、そんなことは……。ですが、こうやってジョルジュさんと直接お話ができて本当に嬉しいです。今回はお誘いいただきありがとうございます』
『いや、そんなに恐縮することはない。スオウとシュウゴがきてくれて私もユヅルも喜んでいるのだから。だが、スオウがこちらに来るなら、シュウゴも一緒に連れてくるのだろう?』
『ええ、それはもちろん。離れるなんてことは考えてません』
『ふふっ。それは素晴らしいな。だが、シュウゴの働き口はどうする? まぁ彼ほど優秀なら、どこでも見つかるな。うちで働いて欲しいくらいの人材だ』
『ええ。本当に秀吾は優秀ですよ。今も観月さんの片腕としてなくてはならない存在になっていると思います』
自分が褒められるより、恋人が褒められた方がよほど嬉しいのだな。
ふふっ。やはりここにいる者たちは皆、似ている。
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