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癒しのカフェ
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んっ?
何か視線を感じると思ったらユヅルがほんのり頬を染めて私を見つめている。
ああ、もうこんな車の中でそんなに可愛らしい顔を見せるなんて。
二人っきりの時なら喜んでそのままキスでも奪うところだがな。
まぁ、同乗者は自分の愛しい伴侶に夢中で、ユヅルの可愛らしい顔には視線が向いていないからよしとしよう。
こうやってユヅルに邪な思いなど絶対に向けないと思っている相手と同じ時間を過ごすのは気楽でいい。
3人がどんな話題を話しているか、そっと耳を澄ませればこれから行くショコラショーの話をしているようだ。
「理央くん……チョコレートを最近初めて食べたって言ってたよね? それまでは食べたことなかったの?」
その言葉にリオが当然とでも言うように自分のおかれていた環境を話していた。
甘くて美味しいものを知ると、食べたくて我慢できなくなる。
味を知らなければ、また食べたいなんて思わずに済む。
そんな言葉が耳に飛び込んできて、心が締め付けられる思いがする。
甘くて美味しいと言いながら食べる子どもを、幼いリオはどんな思いで見ていたのだろう。
ミヅキがどんなことをしてでもリオの願いを叶えてあげたいと言っていた気持ちが痛いほどよくわかる。
『ミヅキ……リオを一生大切にしなければいけないな』
『ええ。リオの望むものはどんなことをしてでも叶えて見せます』
そう自信満々に言い切ったミヅキを私は友人として誇りに思った。
きっとユウキも同じ思いだろう。
予定のカフェに到着したようだ。
ミヅキたちとユウキたちを先に降ろし、私ユヅルと共に車の外に出た。
先に車から降りていたリオとソラが興奮した様子でユヅルに話しかけてくる。
ユヅルは目の前の光景を見て、茫然としつつも目を輝かせている。
どうやらこの店はユヅルのお眼鏡に適ったようだ。
うちの屋敷でシェフとして腕を振るっていたエミールは、10年ほど前に結婚したのを機にここにカフェをオープンした。
城をたまに視察に行くたびにここのカフェでのんびりとした時間を過ごすのが楽しみになっていた。
ここは時間の流れが緩やかで都会の喧騒を忘れさせてくれる。
私の心を浄化してくれるようなそんな癒しの場所だった。
だからこそ、前々からもし最愛の人が現れたらエミールのカフェに連れて行って同じ時を過ごそうと考えていた。
エミールもきっと私の相手を待ち望んでくれているはずだ。
予約の電話を入れた時に最愛の人を連れて行くとは伝えていたが、さて、どんな反応を見せてくれるだろう。
他の車で続いてやってきたケイトやシュウゴたちもこの店の雰囲気を気に入ってくれたようだ。
ここは外観だけでなく、中も素晴らしい空間なのだぞと自慢したくなるほど、エミールのカフェは居心地がいいんだ。
大人数で他の客の迷惑にならないかと心配をするユヅルを見て、嬉しくなる。
こんな時でも周りへの配慮を忘れないのだから、本当に優しい子だ。
ドアにかかっていた<réservé>のプレートを教えてやるとどうやら意味を理解したユヅルは嬉しそうに笑っていた。
しっかりと勉強の成果が出ているようだな。
皆を連れ、中に入るとすぐにエミールが駆け寄ってきた。
エミールは私と挨拶を交わしながらも、視線はずっとユヅルに向いたままだ。
普通ならこんなにもユヅルを見られれば邪な思いでも抱いているのでは無いかと心配になるが、なんと言ってもエミールには溺愛する伴侶がいる。
その溺愛っぷりをもう10年以上も見続けているのだから、心配はしていない。
それに、エミールがユヅルに釘付けになる理由はもう一つあるのを知っているからだ。
ユヅルの顔をまじまじと見つめて、どこかで会った覚えがあるといエミールに、アマネの息子だと教えてやるとすぐに父親がニコラだと気がついた。
そう。
エミールはニコラとアマネがあの屋敷で仲睦まじい時を過ごしたのを知っているのだ。
だからこそ、その二人の愛の結晶であるユヅルの姿に声を震わせて喜んでいた。
もう少し感動の対面をさせてあげたいが今日は他にも友人がいる。
このカフェにはまたユヅルを連れてきたらいい。
エミールに声をかけ、店の中に入るといつものように落ち着いた雰囲気の店内に癒される。
ユヅルも同じような気持ちを抱いてくれているようだ。
やはり感性が合うと言うのはこう言うことを言うのだろうな。
日当たりがよく、一番いい場所にユヅルたちを座らせ、私やアヤシロたちはユヅルたち伴侶を見つめられる場所に腰を下ろした。
今日はショコラショーがメインだが、もう一つ楽しいゲームがてら美味しいスイーツを用意しているのだ。
きっと喜んでくれるに違いない。
ユヅル、リオ、ソラはともかく、他のものはこのスイーツの正体に気づいてくれるだろうか。
それも含めて楽しみだな。
何か視線を感じると思ったらユヅルがほんのり頬を染めて私を見つめている。
ああ、もうこんな車の中でそんなに可愛らしい顔を見せるなんて。
二人っきりの時なら喜んでそのままキスでも奪うところだがな。
まぁ、同乗者は自分の愛しい伴侶に夢中で、ユヅルの可愛らしい顔には視線が向いていないからよしとしよう。
こうやってユヅルに邪な思いなど絶対に向けないと思っている相手と同じ時間を過ごすのは気楽でいい。
3人がどんな話題を話しているか、そっと耳を澄ませればこれから行くショコラショーの話をしているようだ。
「理央くん……チョコレートを最近初めて食べたって言ってたよね? それまでは食べたことなかったの?」
その言葉にリオが当然とでも言うように自分のおかれていた環境を話していた。
甘くて美味しいものを知ると、食べたくて我慢できなくなる。
味を知らなければ、また食べたいなんて思わずに済む。
そんな言葉が耳に飛び込んできて、心が締め付けられる思いがする。
甘くて美味しいと言いながら食べる子どもを、幼いリオはどんな思いで見ていたのだろう。
ミヅキがどんなことをしてでもリオの願いを叶えてあげたいと言っていた気持ちが痛いほどよくわかる。
『ミヅキ……リオを一生大切にしなければいけないな』
『ええ。リオの望むものはどんなことをしてでも叶えて見せます』
そう自信満々に言い切ったミヅキを私は友人として誇りに思った。
きっとユウキも同じ思いだろう。
予定のカフェに到着したようだ。
ミヅキたちとユウキたちを先に降ろし、私ユヅルと共に車の外に出た。
先に車から降りていたリオとソラが興奮した様子でユヅルに話しかけてくる。
ユヅルは目の前の光景を見て、茫然としつつも目を輝かせている。
どうやらこの店はユヅルのお眼鏡に適ったようだ。
うちの屋敷でシェフとして腕を振るっていたエミールは、10年ほど前に結婚したのを機にここにカフェをオープンした。
城をたまに視察に行くたびにここのカフェでのんびりとした時間を過ごすのが楽しみになっていた。
ここは時間の流れが緩やかで都会の喧騒を忘れさせてくれる。
私の心を浄化してくれるようなそんな癒しの場所だった。
だからこそ、前々からもし最愛の人が現れたらエミールのカフェに連れて行って同じ時を過ごそうと考えていた。
エミールもきっと私の相手を待ち望んでくれているはずだ。
予約の電話を入れた時に最愛の人を連れて行くとは伝えていたが、さて、どんな反応を見せてくれるだろう。
他の車で続いてやってきたケイトやシュウゴたちもこの店の雰囲気を気に入ってくれたようだ。
ここは外観だけでなく、中も素晴らしい空間なのだぞと自慢したくなるほど、エミールのカフェは居心地がいいんだ。
大人数で他の客の迷惑にならないかと心配をするユヅルを見て、嬉しくなる。
こんな時でも周りへの配慮を忘れないのだから、本当に優しい子だ。
ドアにかかっていた<réservé>のプレートを教えてやるとどうやら意味を理解したユヅルは嬉しそうに笑っていた。
しっかりと勉強の成果が出ているようだな。
皆を連れ、中に入るとすぐにエミールが駆け寄ってきた。
エミールは私と挨拶を交わしながらも、視線はずっとユヅルに向いたままだ。
普通ならこんなにもユヅルを見られれば邪な思いでも抱いているのでは無いかと心配になるが、なんと言ってもエミールには溺愛する伴侶がいる。
その溺愛っぷりをもう10年以上も見続けているのだから、心配はしていない。
それに、エミールがユヅルに釘付けになる理由はもう一つあるのを知っているからだ。
ユヅルの顔をまじまじと見つめて、どこかで会った覚えがあるといエミールに、アマネの息子だと教えてやるとすぐに父親がニコラだと気がついた。
そう。
エミールはニコラとアマネがあの屋敷で仲睦まじい時を過ごしたのを知っているのだ。
だからこそ、その二人の愛の結晶であるユヅルの姿に声を震わせて喜んでいた。
もう少し感動の対面をさせてあげたいが今日は他にも友人がいる。
このカフェにはまたユヅルを連れてきたらいい。
エミールに声をかけ、店の中に入るといつものように落ち着いた雰囲気の店内に癒される。
ユヅルも同じような気持ちを抱いてくれているようだ。
やはり感性が合うと言うのはこう言うことを言うのだろうな。
日当たりがよく、一番いい場所にユヅルたちを座らせ、私やアヤシロたちはユヅルたち伴侶を見つめられる場所に腰を下ろした。
今日はショコラショーがメインだが、もう一つ楽しいゲームがてら美味しいスイーツを用意しているのだ。
きっと喜んでくれるに違いない。
ユヅル、リオ、ソラはともかく、他のものはこのスイーツの正体に気づいてくれるだろうか。
それも含めて楽しみだな。
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