104 / 155
思わぬ流れに
しおりを挟む
食事を終え、またユヅルたちと別れて話をしているとようやくセルジュとミシェル、そしてアヤシロとケイトがコンサバトリーにやってきた。
当然のようにどちらも抱きかかえたまま現れたが、ミシェルは当然としてもケイトにも恥ずかしがるようなそぶりはなかった。
やはりここが夫夫となって過ごした年月の違いだろうか。
まぁ、それでも皆と過ごすようになって、ユヅルは以前より人前で触れ合うことを恥ずかしがらなくなったからそれはありがたい。
やはり同じように仲良く触れ合っているものを見ると、それを当たり前のことだと感じてくれるようだ。
「皆さん、お早いですね」
「ふっ。お前たちがゆっくりしていただけだろう? どうだ? いい時間をすごせたか?」
「ええ。もちろん。たっぷりとね。なぁ、ミシェル」
「うん。すごく良かったよ。ふふっ」
ほんのりと頬を染めるミシェルの姿をセルジュはすぐに隠してしまった。
ここにいる者たちは誰もそのような目でミシェルを見ないとわかっているだろうに。
ユヅルに対して私のことを狭量だと言ってくるが、こちらに言わせればセルジュの方がよっぽどだと思うがな。
まぁ、ジュールから言わせればどっちもどっちだと言われそうだが。
「それは良かった。アヤシロもゆっくりと過ごせたか?」
セルジュに配慮して話題を変えてやれば、
「ああ、ロレーヌのおかげだよ。なぁ、佳都」
とセルジュと同じように蕩けるような笑顔をケイトに向けるとケイトは嬉しそうに微笑んだ。
ああ、アヤシロがあんな顔を向ける相手ができるとは……初めて会った頃のアヤシロとは全くの別人だな。
でも考えてみればこの二人が、ここにいる皆を繋いでくれたのだ。
そんな二人の幸せそうな触れ合いは微笑ましく思えるな。
「佳都さん、ミシェルさんもこっちでお話ししましょうよ!」
リオの誘いにケイトもミシェルもアヤシロとセルジュを見上げたが、よほど濃密な時を過ごしたのだろう。
アヤシロもセルジュも夫を離したくないと嫌がるそぶりもなく、
「ゆっくりと喋っておいで」
と聞き分けよく二人をユヅルたちのいる席に座らせ、頬にちゅっとキスをしてから私たちの方にやってきた。
セルジュは私を見るとニヤリと不敵な笑みを浮かべながら
『エヴァンさまがこんなにも早くお集まりになっているとは想定外でしたよ』
と言って腰を下ろした。
『ユヅルが相手なんだ。お前のように無茶なことはできないだろう』
『人聞きの悪い。私もそこまで無茶なことはしていませんよ。ただケイトさんの用意したアレにやられただけです』
『ああ、やっぱりな。それはここにいるみんなが同意しているよ』
『ふふっ。でしょうね。それにしてもアヤシロさんはいつもあのような衣装をケイトさんに着て頂いているのですか?』
セルジュの素朴な質問にアヤシロへ一斉に視線が向けられる。
『いやいや、それは断じてない。本当だ』
必死な表情で違うと言い張っているが、流石にそれは信じるのは難しい。
『だが、いつも佳都くんが理央にきさせているだろう? 着ぐるみパジャマといい、メイド服といい、今度はベビードールまで』
『メイド服?』
メイドというとあの?
我が家にいる使用人たちの服装を思い浮かべるが、さして興奮するものでもない。
まぁユヅルが着ていればなんでも興奮するが、今回のベビードールほどの威力はないのではないか?
『ああ、ロレーヌが想像しているものとは別物ですよ』
『別物?』
『うーん、説明が難しいのでもったいないですが写真を見せましょう』
そう言って、ミヅキはスマホを取り出し、たくさんあるファイルの中から
『うーん、まぁ、これならいいか』
と吟味した写真を私たちの前に出してくれた。
「「「「――っ!!!!」」」」」
『こ、これ……っ』
目の前に現れたのは、おおよそメイドとは思えない可愛らしい黒のふんわりとした膝丈のドレスにフリルがたっぷりとついた白いエプロン。
おまけに可愛らしいウサギ耳や猫耳をつけてリオが笑顔を向けている。
ケイトやソラも一緒に写っているというのに、リオだけにピントが合っているのはさすがと言ったところか。
『可愛いでしょう? 綾城の家でこれに着替えて見せてくれたんですよ。あまりにもそれが可愛すぎて、いくつか自分でも買い足しました』
『えっ? 観月、自分で買い足したのか?』
『ああ、当然だろう。どうせ、悠木も買ってるよ。あいつなら、メイド服だけでなく他にもいっぱい揃えていそうだ』
『ああ、確かに。あいつ、嵌まると徹底的にやりそうだからな』
『ふっ。それはお前もだろう?』
アヤシロとミヅキは二人で盛り上がっているようだが、私もセルジュもジョルジュも、それにスオウもこの写真の威力にすっかり魅入ってしまっていた。
いや、別にリオに惹かれたというわけではない。
おそらく脳内でそれぞれの伴侶に顔を当てはめて見ていることだろう。
現に私の頭の中でも、このメイド服に身を包み、可愛らしい犬耳をつけたユヅルがこちらに笑いかけている。
『このメイド服はどこで買えるんだ?』
『えっ? ロレーヌ、買うつもりですか?』
『ああ、もちろんだ。セルジュもジョルジュも買うだろう?』
『ええ。これはいいですね』
『これは着せたくなる可愛さだな』
『やっぱりメイド服は世界共通で萌えるものなのだな。これは俺たちが新婚旅行で泊まったホテルに売っていたんだよ。写真撮影用のお土産としてな』
『あのホテルにそんなものがあったとは……知らなかったな』
『ロレーヌの古城ホテルは格式高いから本物のドレスを用意しているんだろうから当然だよ。ここはお土産用だから大して金額もしないからな』
『なるほど……そうなのか。だが、これはいい』
思わぬ存在を知ることができたな。
うちでもこのような衣装を作り出してみるのも楽しいかもしれない。
そうしたら、ユヅルに試作品と称していろいろ着せられるな。
ああ、新しい事業に乗り出すことになりそうだ。
当然のようにどちらも抱きかかえたまま現れたが、ミシェルは当然としてもケイトにも恥ずかしがるようなそぶりはなかった。
やはりここが夫夫となって過ごした年月の違いだろうか。
まぁ、それでも皆と過ごすようになって、ユヅルは以前より人前で触れ合うことを恥ずかしがらなくなったからそれはありがたい。
やはり同じように仲良く触れ合っているものを見ると、それを当たり前のことだと感じてくれるようだ。
「皆さん、お早いですね」
「ふっ。お前たちがゆっくりしていただけだろう? どうだ? いい時間をすごせたか?」
「ええ。もちろん。たっぷりとね。なぁ、ミシェル」
「うん。すごく良かったよ。ふふっ」
ほんのりと頬を染めるミシェルの姿をセルジュはすぐに隠してしまった。
ここにいる者たちは誰もそのような目でミシェルを見ないとわかっているだろうに。
ユヅルに対して私のことを狭量だと言ってくるが、こちらに言わせればセルジュの方がよっぽどだと思うがな。
まぁ、ジュールから言わせればどっちもどっちだと言われそうだが。
「それは良かった。アヤシロもゆっくりと過ごせたか?」
セルジュに配慮して話題を変えてやれば、
「ああ、ロレーヌのおかげだよ。なぁ、佳都」
とセルジュと同じように蕩けるような笑顔をケイトに向けるとケイトは嬉しそうに微笑んだ。
ああ、アヤシロがあんな顔を向ける相手ができるとは……初めて会った頃のアヤシロとは全くの別人だな。
でも考えてみればこの二人が、ここにいる皆を繋いでくれたのだ。
そんな二人の幸せそうな触れ合いは微笑ましく思えるな。
「佳都さん、ミシェルさんもこっちでお話ししましょうよ!」
リオの誘いにケイトもミシェルもアヤシロとセルジュを見上げたが、よほど濃密な時を過ごしたのだろう。
アヤシロもセルジュも夫を離したくないと嫌がるそぶりもなく、
「ゆっくりと喋っておいで」
と聞き分けよく二人をユヅルたちのいる席に座らせ、頬にちゅっとキスをしてから私たちの方にやってきた。
セルジュは私を見るとニヤリと不敵な笑みを浮かべながら
『エヴァンさまがこんなにも早くお集まりになっているとは想定外でしたよ』
と言って腰を下ろした。
『ユヅルが相手なんだ。お前のように無茶なことはできないだろう』
『人聞きの悪い。私もそこまで無茶なことはしていませんよ。ただケイトさんの用意したアレにやられただけです』
『ああ、やっぱりな。それはここにいるみんなが同意しているよ』
『ふふっ。でしょうね。それにしてもアヤシロさんはいつもあのような衣装をケイトさんに着て頂いているのですか?』
セルジュの素朴な質問にアヤシロへ一斉に視線が向けられる。
『いやいや、それは断じてない。本当だ』
必死な表情で違うと言い張っているが、流石にそれは信じるのは難しい。
『だが、いつも佳都くんが理央にきさせているだろう? 着ぐるみパジャマといい、メイド服といい、今度はベビードールまで』
『メイド服?』
メイドというとあの?
我が家にいる使用人たちの服装を思い浮かべるが、さして興奮するものでもない。
まぁユヅルが着ていればなんでも興奮するが、今回のベビードールほどの威力はないのではないか?
『ああ、ロレーヌが想像しているものとは別物ですよ』
『別物?』
『うーん、説明が難しいのでもったいないですが写真を見せましょう』
そう言って、ミヅキはスマホを取り出し、たくさんあるファイルの中から
『うーん、まぁ、これならいいか』
と吟味した写真を私たちの前に出してくれた。
「「「「――っ!!!!」」」」」
『こ、これ……っ』
目の前に現れたのは、おおよそメイドとは思えない可愛らしい黒のふんわりとした膝丈のドレスにフリルがたっぷりとついた白いエプロン。
おまけに可愛らしいウサギ耳や猫耳をつけてリオが笑顔を向けている。
ケイトやソラも一緒に写っているというのに、リオだけにピントが合っているのはさすがと言ったところか。
『可愛いでしょう? 綾城の家でこれに着替えて見せてくれたんですよ。あまりにもそれが可愛すぎて、いくつか自分でも買い足しました』
『えっ? 観月、自分で買い足したのか?』
『ああ、当然だろう。どうせ、悠木も買ってるよ。あいつなら、メイド服だけでなく他にもいっぱい揃えていそうだ』
『ああ、確かに。あいつ、嵌まると徹底的にやりそうだからな』
『ふっ。それはお前もだろう?』
アヤシロとミヅキは二人で盛り上がっているようだが、私もセルジュもジョルジュも、それにスオウもこの写真の威力にすっかり魅入ってしまっていた。
いや、別にリオに惹かれたというわけではない。
おそらく脳内でそれぞれの伴侶に顔を当てはめて見ていることだろう。
現に私の頭の中でも、このメイド服に身を包み、可愛らしい犬耳をつけたユヅルがこちらに笑いかけている。
『このメイド服はどこで買えるんだ?』
『えっ? ロレーヌ、買うつもりですか?』
『ああ、もちろんだ。セルジュもジョルジュも買うだろう?』
『ええ。これはいいですね』
『これは着せたくなる可愛さだな』
『やっぱりメイド服は世界共通で萌えるものなのだな。これは俺たちが新婚旅行で泊まったホテルに売っていたんだよ。写真撮影用のお土産としてな』
『あのホテルにそんなものがあったとは……知らなかったな』
『ロレーヌの古城ホテルは格式高いから本物のドレスを用意しているんだろうから当然だよ。ここはお土産用だから大して金額もしないからな』
『なるほど……そうなのか。だが、これはいい』
思わぬ存在を知ることができたな。
うちでもこのような衣装を作り出してみるのも楽しいかもしれない。
そうしたら、ユヅルに試作品と称していろいろ着せられるな。
ああ、新しい事業に乗り出すことになりそうだ。
応援ありがとうございます!
31
お気に入りに追加
1,579
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる