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揺れる心
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「スオウも同じだろう」
そう尋ねると、スオウはほんのり赤い顔を見せながら、頷く。
それを見てシュウゴは驚きつつも、嬉しそうに
「将臣、本当? 僕が着ていたら興奮する?」
と問いかける。
「ああ、秀吾とは小さい時から一緒だけど、それこそ普段着だってなんだって秀吾が着ていると思うだけで興奮するよ。もちろん、学生時代は体操服も水着も興奮して大変だったよ」
ここで誤魔化すわけにはいかないと思ったのだろう。
スオウは素直に胸の内を告げる。
それにしても水着はわかるが、体操服とは?
想像するに、運動をするときの服ということだろうがフランスの学校にはそのようなものは存在しない。
少なくとも私が通った学校では、動きやすい服であればなんでもよかったのだ。
日本では運動の授業のたびに着替えをするということか?
しかもそれがこのスオウでも興奮するもの……気になるな。
知らなかった頃のこととはいえ、ユヅルがそのような姿で人前に出ていたかと思うと嫌になるが、後で調べてこれからはそのような姿を私以外の前で見せることがないようにしよう。
それにしてもスオウはそんな大変な時期を乗り越えてここにいるのだな。
幼い頃から最愛のそばにいられるのは最高だが、ずっと鍛錬の日々だと思うと少し辛いものがある。
ずっとスオウを羨ましいと思ってきたが、それはそれで並々ならぬ努力があったのだろうな。
「小さい頃からずっと一緒だとそういう思い出もあるから良いですね。あっ、僕も今度エヴァンさんと泳ぎに行きたいです! そうしたらエヴァンさんの水着姿を見れますよね?」
私がそんなことを思っていると、ユヅルから泳ぎに誘われた。
私の水着姿を見たいと言われるのは嬉しい。
だが、同時にユヅルの水着姿を誰にも見せたくない。
そんな感情が湧き上がる。
なんと言葉を返そうかと思っていると、入り口からリオの元気な挨拶の声が聞こえてくる。
私たちが視線を向けると、爽やかな笑顔を向けながらリオを抱きかかえてこちらに向かってくるミヅキの姿があった。
リオに疲れの様子は見えない。
それどころか幸せでいっぱいといった笑顔を見せている。
それはミヅキも同じだが、さすがだな、やはりセーブできたのか。
ミヅキはどんな時でも暴走しないのだなと感心してしまう。
ユヅルとシュウゴはそんな二人を見てヒソヒソと楽しそうに話をしている。
幸せそうなんて言葉が聞こえてくるから、きっといい話をしているに違いない。
「ねぇねぇ、何話してたの?」
そんなリオの問いかけにユヅルは笑顔で泳ぎに行きたいと話をしていたことを告げる。
リオは少し驚いた様子でユヅルに
「泳ぐの得意なの?」
と尋ね返すが、ユヅルが
「うーん、そこまで得意でもないけど、泳ぎに行ったらエヴァンさんの水着姿が見られるかなって」
と返すとリオの目が輝いたように見えた。
それと同時にミヅキの表情が曇る。
ああ、ミヅキの今の心情はよくわかる。
リオの水着姿を誰にも見せたくないという嫉妬に溢れていることだろう。
私も同じだ。
ユヅルの水着は見たいが、誰にも見せたくはない。
だが、
「凌也さん! 僕も泳ぎに行きたいです!!」
と、こんなキラキラとした視線を向けられてはな……。
嫌だとはいえないだろう。
考えておこう
そう返すのがやっとか。
だろうな。
まぁ、もし、どうしても泳ぎにいきたいと言うのなら、私のプライベートビーチか、無人島を貸してもいい。
ユヅルもいきたいと言うのなら、一緒でもいいか。
ミヅキたちなら愛しい伴侶しか見てないことはわかっているからな。
後でこっそりと話をしておくとするか。
その横でユヅルたちはリオの学生生活の話を聞き、表情が曇っている。
どうやらリオは学生時代、水着を用意してもらうことができずに水泳の授業を受けることができなかったようだ。
なるほど。先ほどのミヅキの表情はこのことも理由にあったのだろう。
水着は誰にも見せたくないが、泳ぐのは体験させてやりたい、と。
そういう気持ちもあったのかもしれない。
しかし、リオは何も気にする様子もなく、
「僕ね、学校に行ってる頃は嫌なことも悲しかったことももちろんあったけど、今がすっごく幸せだから昔のことも笑顔で言えるようになったんだ。だから、気にしないで良いんだよ」
と言って、ユヅルを優しいとさえ、言ってくれる。
ああ、本当にこの子はいい子だ。
ユヅルの友人としてそばにいてくれて感謝してしまうな。
「俺が泳げるように教えよう。大切な人に何かあったときに守れるようにって、父さんにしごかれたからな」
そう話すミヅキを見て、私も昔を思い出す。
私も幼い頃、父親に着衣のまま深さ4mはあるプールに放り込まれたことがある。
水難事故などの危険から身を守る術をまず叩き込まれたのだ。
今でも数百メートルは余裕で泳げるだろう。
だから、私もユヅルを連れてトラブルに見舞われたとしても、絶対に助けてみせる自信がある。
自信満々にミヅキに水泳が得意だと言ってやると、
「それはそれは……じゃあ、今度ロレーヌと競争したいですね」
とすぐに返してきた。
ああ、ミヅキとのこんな関係が心地いい。
こうして笑い合って話ができるのも今日で終わりかと思うと少し寂しく思ってしまうな。
そう尋ねると、スオウはほんのり赤い顔を見せながら、頷く。
それを見てシュウゴは驚きつつも、嬉しそうに
「将臣、本当? 僕が着ていたら興奮する?」
と問いかける。
「ああ、秀吾とは小さい時から一緒だけど、それこそ普段着だってなんだって秀吾が着ていると思うだけで興奮するよ。もちろん、学生時代は体操服も水着も興奮して大変だったよ」
ここで誤魔化すわけにはいかないと思ったのだろう。
スオウは素直に胸の内を告げる。
それにしても水着はわかるが、体操服とは?
想像するに、運動をするときの服ということだろうがフランスの学校にはそのようなものは存在しない。
少なくとも私が通った学校では、動きやすい服であればなんでもよかったのだ。
日本では運動の授業のたびに着替えをするということか?
しかもそれがこのスオウでも興奮するもの……気になるな。
知らなかった頃のこととはいえ、ユヅルがそのような姿で人前に出ていたかと思うと嫌になるが、後で調べてこれからはそのような姿を私以外の前で見せることがないようにしよう。
それにしてもスオウはそんな大変な時期を乗り越えてここにいるのだな。
幼い頃から最愛のそばにいられるのは最高だが、ずっと鍛錬の日々だと思うと少し辛いものがある。
ずっとスオウを羨ましいと思ってきたが、それはそれで並々ならぬ努力があったのだろうな。
「小さい頃からずっと一緒だとそういう思い出もあるから良いですね。あっ、僕も今度エヴァンさんと泳ぎに行きたいです! そうしたらエヴァンさんの水着姿を見れますよね?」
私がそんなことを思っていると、ユヅルから泳ぎに誘われた。
私の水着姿を見たいと言われるのは嬉しい。
だが、同時にユヅルの水着姿を誰にも見せたくない。
そんな感情が湧き上がる。
なんと言葉を返そうかと思っていると、入り口からリオの元気な挨拶の声が聞こえてくる。
私たちが視線を向けると、爽やかな笑顔を向けながらリオを抱きかかえてこちらに向かってくるミヅキの姿があった。
リオに疲れの様子は見えない。
それどころか幸せでいっぱいといった笑顔を見せている。
それはミヅキも同じだが、さすがだな、やはりセーブできたのか。
ミヅキはどんな時でも暴走しないのだなと感心してしまう。
ユヅルとシュウゴはそんな二人を見てヒソヒソと楽しそうに話をしている。
幸せそうなんて言葉が聞こえてくるから、きっといい話をしているに違いない。
「ねぇねぇ、何話してたの?」
そんなリオの問いかけにユヅルは笑顔で泳ぎに行きたいと話をしていたことを告げる。
リオは少し驚いた様子でユヅルに
「泳ぐの得意なの?」
と尋ね返すが、ユヅルが
「うーん、そこまで得意でもないけど、泳ぎに行ったらエヴァンさんの水着姿が見られるかなって」
と返すとリオの目が輝いたように見えた。
それと同時にミヅキの表情が曇る。
ああ、ミヅキの今の心情はよくわかる。
リオの水着姿を誰にも見せたくないという嫉妬に溢れていることだろう。
私も同じだ。
ユヅルの水着は見たいが、誰にも見せたくはない。
だが、
「凌也さん! 僕も泳ぎに行きたいです!!」
と、こんなキラキラとした視線を向けられてはな……。
嫌だとはいえないだろう。
考えておこう
そう返すのがやっとか。
だろうな。
まぁ、もし、どうしても泳ぎにいきたいと言うのなら、私のプライベートビーチか、無人島を貸してもいい。
ユヅルもいきたいと言うのなら、一緒でもいいか。
ミヅキたちなら愛しい伴侶しか見てないことはわかっているからな。
後でこっそりと話をしておくとするか。
その横でユヅルたちはリオの学生生活の話を聞き、表情が曇っている。
どうやらリオは学生時代、水着を用意してもらうことができずに水泳の授業を受けることができなかったようだ。
なるほど。先ほどのミヅキの表情はこのことも理由にあったのだろう。
水着は誰にも見せたくないが、泳ぐのは体験させてやりたい、と。
そういう気持ちもあったのかもしれない。
しかし、リオは何も気にする様子もなく、
「僕ね、学校に行ってる頃は嫌なことも悲しかったことももちろんあったけど、今がすっごく幸せだから昔のことも笑顔で言えるようになったんだ。だから、気にしないで良いんだよ」
と言って、ユヅルを優しいとさえ、言ってくれる。
ああ、本当にこの子はいい子だ。
ユヅルの友人としてそばにいてくれて感謝してしまうな。
「俺が泳げるように教えよう。大切な人に何かあったときに守れるようにって、父さんにしごかれたからな」
そう話すミヅキを見て、私も昔を思い出す。
私も幼い頃、父親に着衣のまま深さ4mはあるプールに放り込まれたことがある。
水難事故などの危険から身を守る術をまず叩き込まれたのだ。
今でも数百メートルは余裕で泳げるだろう。
だから、私もユヅルを連れてトラブルに見舞われたとしても、絶対に助けてみせる自信がある。
自信満々にミヅキに水泳が得意だと言ってやると、
「それはそれは……じゃあ、今度ロレーヌと競争したいですね」
とすぐに返してきた。
ああ、ミヅキとのこんな関係が心地いい。
こうして笑い合って話ができるのも今日で終わりかと思うと少し寂しく思ってしまうな。
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