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番外編
理央の夢
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「最初の撮影場所は、中庭だぞ」
「わぁー、お庭! 楽しみです!」
俺の腕の中で嬉しそうな声をあげる理央を微笑ましく思いながら、庭に足を進める。
理央の可愛さにノックアウトされていたラファエルは、俄然やる気を出しカメラ機材をたっぷりと携えて付いてくる。
どうやらもう撮影は始まっているようで、俺たちが庭に向かいながら話をしている様子もラファエルは撮ってくれているようだ。
ラファエルはもうすっかり理央のことを気に入ってくれたみたいだな。
理央が全く気づいてない分、自然な笑顔が撮れているだろう。
こういう日常の顔を残してくれるのもありがたい。
城内の地図はロレーヌ総帥に教えてもらっていたのをすでに頭に入れているから、迷うこともなく庭にたどり着いた。
庭に一歩踏み出そうとして、ふと思いついた。
すっかり忘れてしまっていたが、今は12月。
ここに来る時だって厚手のコートを着させてきたのに、こんなに薄手のドレスでは撮影どころではないのではないか?
ロレーヌ総帥も愛しい恋人との結婚式に興奮して、そのことを忘れてしまっているのかもしれない。
まぁ、庭で撮影できないのは勿体無いがこの城の中には庭以外にも撮影スポットは山のようにある。
問題ないだろう。
理央は残念がるだろうが、一度外に出れば撮影できないことはきっとわかってくれるはずだ。
できるだけ寒がらせないように、自分の身体で包み込むように抱きしめながら庭に出ると
「あれ……?」
あまりにも過ごしやすい気温に思わず声が出た。
「凌也さん、どうしたんですか?」
「いや、その……いい天気だなと思って…‥」
「そうですね。天気もいいし、ほら。雲ひとつないですよ! 空が綺麗~っ!」
「理央の日頃の行いがいいからいい天気にしてくれたんだろうな」
「ふふっ。凌也さんもですよ」
可愛らしい笑顔を見せてくれる理央にホッとしながらも、俺はこの不思議な空間に戸惑っていた。
どうみたって、屋外なのにどうしてこんなに暖かいんだ?
まるで春のように心地良い。
そっと辺りを見回してみると、近くの草木の影に何やら置かれていることに気づいた。
あれは……。
ああ、なるほど。
そういうことか。
通りでこの真冬に外で撮影などと話してもロレーヌ総帥が反対しないわけだ。
だが、この広大な敷地を体感温度を上げるほど暖めるとは……。
さすがロレーヌ総帥。
やることが大きいな。
それも全て愛しい弓弦くんのためか。
その中には理央や空良くんのことも考えてくれているのだろうな。
本当に素晴らしいお方だ。
ならば、たっぷりとこの庭を満喫して写真を撮ってもらうことにしよう。
「さぁ、理央。撮影を始めようか」
「あっ、凌也さん。僕、靴が……」
ふふっ。ずっと抱きかかえてきたからな。
ようやく靴の存在を思い出したか。
「大丈夫、ちゃんと用意しているよ。ミアさん、あの箱とそれから椅子も」
俺の声にさっとミアさんが近づいてきて、俺たちのすぐ横に背もたれのない、いかにもアンティークといった猫足のスツールを置いてくれた。
庭に椅子を用意してほしいとロレーヌ総帥に前もってお願いしていたものだが、こんな芸術品のようなすごい椅子だとは思っていなかったから驚いたが、遠慮せず使わせてもらうとしよう。
俺が理央をそのスツールに座らせると、持っていた箱を手渡しさっとその場から立ち去った。
俺はその場に片膝をついて座り、箱の蓋を開けて理央に差し出した。
「理央、中を見てごらん」
「これの、中身?」
不思議そうな表情で、理央は箱の上に置かれていた薄紙をさっと取り去った瞬間、
「え――っ! こ、これ……」
驚きの表情と共にその箱の中身から目を離すことなく見つめていた。
「理央にこのガラスの靴を履いてほしいんだ」
「りょ、うやさん……ぼ、く……っ、うれし、すぎて……っ」
「理央、俺もだよ。やっとこれを履いてもらえる」
「りょう、やさん……は、かせて、もらえますか?」
「ああ、もちろんだ」
ふわふわのドレスに隠れた理央の小さな足を持ち上げ、箱から取り出した靴を履かせる。
輝くガラスの靴は美しい理央の両足にピッタリとおさまった。
「ああ、私の美しい姫。私の妃になってください」
絵本の中の王子さながらのセリフを言いながら理央を見上げると、理央の目からとめどなく涙が溢れてくる。
「理央……」
「りょ、うやさん……ぼく、ほんとに……しあわせ、です……」
「ああ、俺も幸せだよ」
椅子に座ったまま、両手差し出してくる理央を思いっきり抱きしめキスを交わす。
ようやく理央の夢を全部叶えられた。
俺は本当に幸せだ。
「わぁー、お庭! 楽しみです!」
俺の腕の中で嬉しそうな声をあげる理央を微笑ましく思いながら、庭に足を進める。
理央の可愛さにノックアウトされていたラファエルは、俄然やる気を出しカメラ機材をたっぷりと携えて付いてくる。
どうやらもう撮影は始まっているようで、俺たちが庭に向かいながら話をしている様子もラファエルは撮ってくれているようだ。
ラファエルはもうすっかり理央のことを気に入ってくれたみたいだな。
理央が全く気づいてない分、自然な笑顔が撮れているだろう。
こういう日常の顔を残してくれるのもありがたい。
城内の地図はロレーヌ総帥に教えてもらっていたのをすでに頭に入れているから、迷うこともなく庭にたどり着いた。
庭に一歩踏み出そうとして、ふと思いついた。
すっかり忘れてしまっていたが、今は12月。
ここに来る時だって厚手のコートを着させてきたのに、こんなに薄手のドレスでは撮影どころではないのではないか?
ロレーヌ総帥も愛しい恋人との結婚式に興奮して、そのことを忘れてしまっているのかもしれない。
まぁ、庭で撮影できないのは勿体無いがこの城の中には庭以外にも撮影スポットは山のようにある。
問題ないだろう。
理央は残念がるだろうが、一度外に出れば撮影できないことはきっとわかってくれるはずだ。
できるだけ寒がらせないように、自分の身体で包み込むように抱きしめながら庭に出ると
「あれ……?」
あまりにも過ごしやすい気温に思わず声が出た。
「凌也さん、どうしたんですか?」
「いや、その……いい天気だなと思って…‥」
「そうですね。天気もいいし、ほら。雲ひとつないですよ! 空が綺麗~っ!」
「理央の日頃の行いがいいからいい天気にしてくれたんだろうな」
「ふふっ。凌也さんもですよ」
可愛らしい笑顔を見せてくれる理央にホッとしながらも、俺はこの不思議な空間に戸惑っていた。
どうみたって、屋外なのにどうしてこんなに暖かいんだ?
まるで春のように心地良い。
そっと辺りを見回してみると、近くの草木の影に何やら置かれていることに気づいた。
あれは……。
ああ、なるほど。
そういうことか。
通りでこの真冬に外で撮影などと話してもロレーヌ総帥が反対しないわけだ。
だが、この広大な敷地を体感温度を上げるほど暖めるとは……。
さすがロレーヌ総帥。
やることが大きいな。
それも全て愛しい弓弦くんのためか。
その中には理央や空良くんのことも考えてくれているのだろうな。
本当に素晴らしいお方だ。
ならば、たっぷりとこの庭を満喫して写真を撮ってもらうことにしよう。
「さぁ、理央。撮影を始めようか」
「あっ、凌也さん。僕、靴が……」
ふふっ。ずっと抱きかかえてきたからな。
ようやく靴の存在を思い出したか。
「大丈夫、ちゃんと用意しているよ。ミアさん、あの箱とそれから椅子も」
俺の声にさっとミアさんが近づいてきて、俺たちのすぐ横に背もたれのない、いかにもアンティークといった猫足のスツールを置いてくれた。
庭に椅子を用意してほしいとロレーヌ総帥に前もってお願いしていたものだが、こんな芸術品のようなすごい椅子だとは思っていなかったから驚いたが、遠慮せず使わせてもらうとしよう。
俺が理央をそのスツールに座らせると、持っていた箱を手渡しさっとその場から立ち去った。
俺はその場に片膝をついて座り、箱の蓋を開けて理央に差し出した。
「理央、中を見てごらん」
「これの、中身?」
不思議そうな表情で、理央は箱の上に置かれていた薄紙をさっと取り去った瞬間、
「え――っ! こ、これ……」
驚きの表情と共にその箱の中身から目を離すことなく見つめていた。
「理央にこのガラスの靴を履いてほしいんだ」
「りょ、うやさん……ぼ、く……っ、うれし、すぎて……っ」
「理央、俺もだよ。やっとこれを履いてもらえる」
「りょう、やさん……は、かせて、もらえますか?」
「ああ、もちろんだ」
ふわふわのドレスに隠れた理央の小さな足を持ち上げ、箱から取り出した靴を履かせる。
輝くガラスの靴は美しい理央の両足にピッタリとおさまった。
「ああ、私の美しい姫。私の妃になってください」
絵本の中の王子さながらのセリフを言いながら理央を見上げると、理央の目からとめどなく涙が溢れてくる。
「理央……」
「りょ、うやさん……ぼく、ほんとに……しあわせ、です……」
「ああ、俺も幸せだよ」
椅子に座ったまま、両手差し出してくる理央を思いっきり抱きしめキスを交わす。
ようやく理央の夢を全部叶えられた。
俺は本当に幸せだ。
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