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番外編
祖父への誓い
<sideエリック>
日本での滞在を終えて、ロサランへ戻って数日後。
私はヨウスケと二人で暮らす家を購入した。
王宮から徒歩五分ほどの距離にあり、ここからならヨウスケはいつでもトールと会うことができるだろう。
ジェラルドはこれまで通り王宮で過ごせばいいと言ってくれたが、やはり二人っきりで過ごす家が欲しかった。
これで気兼ねなく、ヨウスケと愛し合える。
日本から持ってきたヨウスケの荷物も全て運び入れ、ヨウスケは今、その片付けに勤しんでいる。
ヨウスケの祖父のために作った部屋は、アーチーのグッズで溢れ返り、その量に驚かされる。
レコード、ポスター、雑誌、コンサートグッズ。
購入してからかなりの年月が経っているだろうに、どれも丁寧に保管されていたからか、まったく古さが感じられない。
『すごいな』
『うん。じいちゃん、本当にアーチーが好きだったから』
ヨウスケはそう言って微笑んだ。
だが、その笑顔は少し寂しそうだった。
ずっと楽しみにしていたコンサートを前に、命を終えた祖父の無念を思っているのだろう。
私は寄り添うことしかできない。
『さぁ、片付けなきゃ!』
悲しみを必死に乗り越えようとするその姿がなんともいじらしい。
『どれから片付ける?』
『あの辺の段ボールからかな。結構重かったけど、なんだったか覚えてないんだ』
あの時は、時間に追われて箱詰めするだけで精一杯だった。
改めて箱を開けてみる。
中から出てきたのは古いアルバムだった。
『ヨウスケ、これは?』
『あっ』
ヨウスケが慌てて駆け寄ってくる。
その表紙を見た瞬間、目を細めた。
『懐かしいな』
そこには幼いヨウスケがいた。
まだ五歳くらいだろうか。
祖父に肩車されて、満面の笑みを浮かべている。
『可愛らしいな』
『恥ずかしいよ』
私が褒めると、一気に耳まで赤くする。
そんなところも実に可愛い。
『これは? メダルか?』
『運動会のときの写真だよ。かけっこで一番になったんだ』
得意げな表情で写真に写っている。
隣には祖父の姿。
しかし、両親の姿はない。
ページをめくっても、ヨウスケだけか、祖父とのツーショット写真だけ。
入学式も、卒業式も、誕生日も、全部祖父との思い出ばかりの写真たち。
私は黙ってページを見つめた。
『じいちゃんだけが、いつも仕事を休んで来てくれてたんだ』
ヨウスケがぽつりと呟く。
『運動会も発表会も全部』
写真を撫でるヨウスケの指先が震えている。
『周りは親が来ててさ、俺だけいつもじいちゃんだけで……最初はやっぱり寂しかったよ』
そっとヨウスケを抱きしめる。
ヨウスケは私の腕の中で、言葉を続けた。
『父さんも母さんも来てないのは、俺だけだったんだ』
そう言いながら、私を見上げる。
ヨウスケは必死に笑顔を作っていたが、目には涙を浮かべていた。
『でも……じいちゃんがいてくれたから平気だった』
その言葉に胸が締め付けられる。
『じいちゃんが俺のこと、いっぱい褒めてくれたから』
ヨウスケの瞳から一粒、涙がこぼれ落ちる。
『だから俺、寂しくなかったよ』
子どもが親に見捨てられて寂しくなかったわけがない。
ヨウスケはずっと我慢していたはずだ。
私はヨウスケを抱く腕の力を強めた。
『立派なおじいさんだったんだな』
『うん』
『私も会いたかったよ』
『えっ?』
ヨウスケの目が見開かれる。ぽろっとまた一粒涙が溢れた。
『私の大切な人を愛情深く育ててくれた方だ。感謝を伝えたかったよ』
私はアルバムの写真を見つめる。
『ありがとう、とね』
ヨウスケが唇を震わせた。
次の瞬間、私の胸に顔を埋める。
必死に堪えようとしているが、わずかに嗚咽が漏れる。
『じいちゃんに……会いたい……っ』
私は何も言わず、小さな背中を撫でた。
祖父の代わりにはなれない。
寂しさを消すこともできない。
だが、これから先……ヨウスケが一人になることはない。
『ヨウスケ……おじいさんが大切に育ててくれた君を、今度は私が幸せにする』
そう告げると、涙で濡れた顔が上がる。
『約束するよ』
ヨウスケは泣きながら笑った。
その笑顔は、アルバムの中の幼い少年と少しだけ重なって見えた。
キョウスケ殿……
あなたの大切な孫は、もう二度と一人にはしない。
この先の人生は、私が全部幸せにする。
だからどうか、ヨウスケのことは私に託していただきたい。
日本での滞在を終えて、ロサランへ戻って数日後。
私はヨウスケと二人で暮らす家を購入した。
王宮から徒歩五分ほどの距離にあり、ここからならヨウスケはいつでもトールと会うことができるだろう。
ジェラルドはこれまで通り王宮で過ごせばいいと言ってくれたが、やはり二人っきりで過ごす家が欲しかった。
これで気兼ねなく、ヨウスケと愛し合える。
日本から持ってきたヨウスケの荷物も全て運び入れ、ヨウスケは今、その片付けに勤しんでいる。
ヨウスケの祖父のために作った部屋は、アーチーのグッズで溢れ返り、その量に驚かされる。
レコード、ポスター、雑誌、コンサートグッズ。
購入してからかなりの年月が経っているだろうに、どれも丁寧に保管されていたからか、まったく古さが感じられない。
『すごいな』
『うん。じいちゃん、本当にアーチーが好きだったから』
ヨウスケはそう言って微笑んだ。
だが、その笑顔は少し寂しそうだった。
ずっと楽しみにしていたコンサートを前に、命を終えた祖父の無念を思っているのだろう。
私は寄り添うことしかできない。
『さぁ、片付けなきゃ!』
悲しみを必死に乗り越えようとするその姿がなんともいじらしい。
『どれから片付ける?』
『あの辺の段ボールからかな。結構重かったけど、なんだったか覚えてないんだ』
あの時は、時間に追われて箱詰めするだけで精一杯だった。
改めて箱を開けてみる。
中から出てきたのは古いアルバムだった。
『ヨウスケ、これは?』
『あっ』
ヨウスケが慌てて駆け寄ってくる。
その表紙を見た瞬間、目を細めた。
『懐かしいな』
そこには幼いヨウスケがいた。
まだ五歳くらいだろうか。
祖父に肩車されて、満面の笑みを浮かべている。
『可愛らしいな』
『恥ずかしいよ』
私が褒めると、一気に耳まで赤くする。
そんなところも実に可愛い。
『これは? メダルか?』
『運動会のときの写真だよ。かけっこで一番になったんだ』
得意げな表情で写真に写っている。
隣には祖父の姿。
しかし、両親の姿はない。
ページをめくっても、ヨウスケだけか、祖父とのツーショット写真だけ。
入学式も、卒業式も、誕生日も、全部祖父との思い出ばかりの写真たち。
私は黙ってページを見つめた。
『じいちゃんだけが、いつも仕事を休んで来てくれてたんだ』
ヨウスケがぽつりと呟く。
『運動会も発表会も全部』
写真を撫でるヨウスケの指先が震えている。
『周りは親が来ててさ、俺だけいつもじいちゃんだけで……最初はやっぱり寂しかったよ』
そっとヨウスケを抱きしめる。
ヨウスケは私の腕の中で、言葉を続けた。
『父さんも母さんも来てないのは、俺だけだったんだ』
そう言いながら、私を見上げる。
ヨウスケは必死に笑顔を作っていたが、目には涙を浮かべていた。
『でも……じいちゃんがいてくれたから平気だった』
その言葉に胸が締め付けられる。
『じいちゃんが俺のこと、いっぱい褒めてくれたから』
ヨウスケの瞳から一粒、涙がこぼれ落ちる。
『だから俺、寂しくなかったよ』
子どもが親に見捨てられて寂しくなかったわけがない。
ヨウスケはずっと我慢していたはずだ。
私はヨウスケを抱く腕の力を強めた。
『立派なおじいさんだったんだな』
『うん』
『私も会いたかったよ』
『えっ?』
ヨウスケの目が見開かれる。ぽろっとまた一粒涙が溢れた。
『私の大切な人を愛情深く育ててくれた方だ。感謝を伝えたかったよ』
私はアルバムの写真を見つめる。
『ありがとう、とね』
ヨウスケが唇を震わせた。
次の瞬間、私の胸に顔を埋める。
必死に堪えようとしているが、わずかに嗚咽が漏れる。
『じいちゃんに……会いたい……っ』
私は何も言わず、小さな背中を撫でた。
祖父の代わりにはなれない。
寂しさを消すこともできない。
だが、これから先……ヨウスケが一人になることはない。
『ヨウスケ……おじいさんが大切に育ててくれた君を、今度は私が幸せにする』
そう告げると、涙で濡れた顔が上がる。
『約束するよ』
ヨウスケは泣きながら笑った。
その笑顔は、アルバムの中の幼い少年と少しだけ重なって見えた。
キョウスケ殿……
あなたの大切な孫は、もう二度と一人にはしない。
この先の人生は、私が全部幸せにする。
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