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250.2海図にない島2(島の調査)✔

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 翌日も五隻の帆船が、ソードノーズを釣ろうと釣り糸を垂らしている。だが、そんなに簡単に釣れる筈も無く、シーラが六匹しか釣れなかった。そんなに簡単に連れるなら角が高額にならないな。結局、五日頑張ったが釣れたのはシーラばかりだった。やはりソードノーズはなかなか釣れないな。

〈おーい! こんなところにあんな島があったかな?〉

見張りのエグザイルエルフが念話しながら指さしており、小さな島が見える。

〈海図には無いぞ。新しい島を発見したのかも!〉

 帆船が進路を変更し始めた。

〈これは凄い発見だ! 大儲けができるかもしれないぞ!〉

 エグザイエルフ達が長さ五百メートル程の小さな島を発見したと大騒ぎしている。確かにこの辺りの海図には島は記載されていない。

 新しい島の発見なら凄いことだとエグザイルエルフ達が盛り上がっている。

 俺は横で釣りをしているミルトに小さな声で話しかけた。

「ねえミルト! 半年やそこらで新しい島ができるものだろうか? 海底火山の噴火でできたなら白煙が上がっていたり、もっと温かいよね。それによく育ったカキやフジツボが島の周りに付いているよ。これって長い間、海に浸かっていそうだよ」

「そう言われると、新しくできたにしてはおかしいですね」

〈何もなさそうだがちょっと、上陸して調べてみようぜ。ミルト様、許可してもらえないですか?〉

 ミルトが考えている。

〈気を付けて上陸するんだよ。危険なら直ぐに帰るように〉

〈ありがとうございます〉

〈あの島、様子がおかしくないか?〉〈確かに怪しい〉

 エグザイエルフ達が帆船間で念話のやり取りをしているが、おかしいと思い始めている。

 見たところ、島の標高は五十メートル程と高くはない。見える範囲は切り立った崖になっていて、砂浜が全くない。水や食料の補給はできそうにないな。周りに住み着いている魚を釣るくらいかな。利用価値があるようには思えない。

 島に一番近い帆船が小さなボートを降ろしだした。海底の岩礁の確認でもするのだろうか?

 いきなり帆船で近づくと、海底に岩礁があれば簡単に沈没するからな。流石は海に慣れている。こうやって海図の作成も調査したのかもしれないな。この海図を作るのはかなり時間と労力がかかっていそうだぞ。

〈島の周りには海底に棚が出ている場所がある。帆船で近づくのは止めておこう、このまま上陸してみます〉

〈分かった。気をつけて〉

〈はい〉

 五名が乗ったボートが島に近づくと、ごつごつした岩にロープを結び付けている。上陸しようとしているが、足場が滑るみたいだ。俺が上陸して上からロープを垂らしてあげた方がいいだろう。

 ウイングスーツに着替えて島に向かう。帆船の接岸できそうな場所や登りやすい場所があるか向こう側も確認してみよう。

 上空から島の周りを飛んでみる。島の中央が一番高くなっており、島全体が一つの大きな岩のようだ。大きな帆船の接岸できそうな場所はなさそうだな。

 島全体がごつごつしていて土すら見当たらない。そこに海藻みたいな藻とかが干からびたようについている。哺乳類はもちろんだが、鳥や爬虫類の姿さえも見えない。

 できて間もない島なのだろうか? でもカキとかは付いていたからな。

 エグザイエルフ達が登ろうとしている場所に着地すると、ロープを岩にきつく結びつけて垂らす。

〈このロープを使ってください〉

〈アルフレッド様、助かります〉

〈落ちないでくださいよ〉

〈ありがとうございます〉

 エグザイルエルフの五名が、なんとか島に上陸することに成功した。

〈助かりました。どうやって登ろうかと悩んでいました〉

〈ロープを降ろしてもらえなかったら上がれていません。この島、周りが全部反り返っているなんておかしいですよ〉

 確かにおかしい。ほぼ楕円形をしており島の周りは突き出てオーバーハングになっている。ネズミ返しのような造りをしており、まるで島に上がらせないように意図的に作られているようにも見える。

〈あまり時間はかけれないので、手分けして調査するぞ〉

〈分かった。気を付けて〉

 エグザイエルフ達が散らばっていく。 

 岩の間に小さなカニを見つけたが、フナムシはいないな。陸から離れた島には、渡り鳥がいることが多いはずだが、糞や抜け落ちた羽すら見当たらない。不思議だな。有毒ガスとかが出ているのかな。気をつけないとガスは目に見えないから。でも火口や溶岩の痕跡もないんだよね。

 ザパ

 ん! 島が浮き上がった? 

〈島が浮き上がったぞ おかしい。直ぐに帰ろう〉

〈急ごう〉

 上陸しているエグザイルエルフ達が慌てている。急いでボートに戻ろうとしているが海面迄が離れ、島にロープで繋がったボートは直立してゆらゆらと揺れている。今にも海に落ちそうだ。これでは乗るなんて無理だな。

 飛び上がり確認すると、島の大きさも七百メートル以上あるように見える。一気に二百メートルも大きくなっている。絶対にこの島はおかしい。

 あ! 島の正体が分かった。巨大な海亀だ! 今まで沈んでいた体が段々と海上に現れる。この大亀だが、甲羅だけで一キロはあるのではないだろうか。何を食べたらこんなに大きく育つんだろうか? この大きさになるまで何年くらいかかるのかな? 

 まさか、俺達を食べたりしないだろうな!?

 大亀が動きだすと大波が発生し、大きな頭が海中から現れた。さっきまで大亀は眠っていたのかもしれないな。

 帆船のみんなも大亀に気がつき、転覆を避けるために遠ざかろうとしている。

〈万年亀だ! こんなところで出会うなんて! 退避しろ! 急げ!〉

〈とにかく離れるんだ! 帆船が巻き込まれたら終わりだぞ!〉

 ぶら下がっていたボートが海に落ちてもみくちゃになっている。万年亀が起こす渦に巻き込まれると、ボートは木の葉のようにくるくると回りながら吸い込まれていった。

 取り残されたエグザイルエルフ達の顔がこわばっている。今飛び込んでもボートと同じ末路を辿るだろう。

 エグザイエルフを抱えてホバリングできるかな? 重量オーバーな気がする。早くしないといつ潜り始めるか分からないからな。

〈ミルト! 危険だけど帆船をもう少し近くに来させて、帆の予備をして。みんな受け止めてよ〉

〈分かりました〉

 俺は垂れ下がっていたロープを帆船のマストに結ぶ。

〈ズボンのベルトを外してロープにかけて帆船に滑って〉

 即席のジップラインのようなものだ。みんな動こうとしない。意味が分からないのか?

〈ズボンのベルトを外してロープにかけて。両手に巻き付けたら帆船に滑って。時間がないから早く〉

 みんなあたふたしている。……仕方ない。こうやるんだ。俺が手本を見せてベルトでロープを滑っていく。

 マスト迄ロープを滑るとたるみで勢いが落ちる。ベルトを握った手を離せば体が落ち、予備の帆を張ったエグザイルエルフ達が受け止めてくれる。

〈オー! 凄いな〉

〈早く! 帆船がもたないから!〉

 意を決したエグザイエルフがひとり、またひとりと滑って来る。みんな無事に受け止めてもらえた。

 大亀が沈み始めた。ロープが引っ張られ、ぎちぎちと音を立てている。俺はウインドスラッシュでロープを切断する。

 海流を操作し、大亀からの離脱を図る。大亀が沈み大きな渦ができており、帆船が後方に引っ張られている。更に風の魔法を追加してなんとか離脱に成功した。もう少し遅れていたら、この帆船も渦に引き込まれて沈んでいただろう。

 みんな、甲板にペタンと腰を落としている。危なかったな。
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