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320. 魔法大国アスラダ護衛任務受諾(外務大臣任命という名のグラン帝国案件丸投げ)✔

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 皇帝から聞いた情報によると、魔法大国アスラダでも、入国の際には魔道具を使用して邪神教の使徒が入国するのを防いでいるとのことだった。

 触れなくても測れるって、やっぱり便利だよね。使われる側になって考えてみると、空港の金属探知機みたいなもので、すり抜けるのはなかなか厳しそうだ。

 賢者の絵本がベストセラーだと聞かされているので、髪と目の色は変えないとまともに道を歩くこともできそうにない。もう少し俺に配慮してくれてもいいのにな。

『偽りの姿』の魔道具を使えば、市民に俺だとは気が付かれないはずだ。測定できる魔道具は高価でそこまで数もないみたいだからね。

 皇帝も一つしか手に入らなかったと自慢げに言っていたんだけど、陛下にお願いして買ってほしいと言ってみようかな。もちろん費用はちゃんと渡すからね。

 空や森を抜ける者は防ぎようがないが、あの魔道具があれば街道を通って、入国する者については全て検査できるだろう。それだけでも安全性を大きく向上させることができる。

 今回は逆の立場だ。どうやって気が付かれずに入国するかが課題なんだよね。俺の両腕には賢者の腕輪が嵌っており外れないんだ。魔力を測られると魔道具が見つかってしまう。俺の体からも魔力が漏れ出しているみたいだから、魔道具は使っていなくても結果は同じなのかもしれないんだけどね。

 現状では空から入国するのが一番バレない気はしている。でも、グラン帝国の時は暗かったのに見つかってしまったからな。同じことになってしまう可能性もある。

 そうか、発想を逆転させればいいんだ。数の特定までは出来なかったはずだから、マシュー商会の馬車に結界の魔道具を積み込んでもらい、同行すればいい。

 結界の魔道具は襲撃対策だと説明すればいけるかな? いや、ダメなのか? 結界の魔道具は邪神教の狂信者も使っていたな。

 いい考えが浮かばない。悩んで日にちだけが過ぎている。インディカ米の種籾から目が出たので半分はそのまま撒くことにした。残り半分は苗に育ててから、田植えをするつもりでいる。

 鳥に食べられないように案山子を作り、シルクスパイダーの糸も張ったからね。レックスの子供たちにも見回りをお願いしたから、きっと立派に育って美味しいインディカ米が収穫できるはずだ。

 俺が家を空けることが多いせいだろう、サーシャがまた、ご機嫌斜めになっていたんだ。空のドライブやチョコレートパフェの効果があったようでやっと機嫌を直してくれたよ。そのためにカカオ豆は使い切ったんだけどね。

 そうこうしていたら、陛下から城に来るようにと緊急鳩便が届いたんだ。きっと皇帝の申し出について結果が出たのだろう。直ぐにウイングスーツに着替えて城に向かう。

「アルフレッドよ! 宰相や事務方の者達と協議したんだが、初めてのことで、よい解決方法が思いつかなんだ。だが、折角の申し出だからのう、それにお前ならなんとかできるだろう。好きにやっていいぞ! これを渡しておこう」

 陛下も宰相も苦笑いしており、歯切れの悪い返事をもらってしまった。口には出さなかったけど、『俺に丸投げする』という事ですね。

 貰った任命書類には、『アルフレッド・ハイルーン公爵を外務大臣に任命し、グラン帝国との外交権を一任する。 メダリオン王国 メダリオン三世』と書かれていた。やっぱり丸投げじゃん。

 俺の表情が不満そうに見えたのだろう、直ぐに魔法大国アスラダにお礼に行くから、キャスペル殿下の護衛として同行してほしいと話題を変えてきたんだ。

 どうやって入国しようかと悩んでいたから、俺としては渡りに船、思ってもいないところで解決できた。王族の護衛なら魔道具を使っても問題なさそうだし、ボディーチェックもされないよね。

 タイミングもいいので、触れずに魔力測定できる魔道具の購入を陛下にお願いした。ちゃんとお金は渡すと言ったら、宰相がラッキーみたいな顔をしたのはちゃんと見たからね。

 陛下からチョコレートがもっと欲しいと要望されたんだけど、もうカカオ豆がないから作れないんだ。説明すると陛下は見て分かるくらい落胆していた。

 ミルトにお願いして定期的に仕入れてもらうのがいいけれど、迷いの森の植物って取引しているのかな?

 取り扱いがないようなら、次に魔大陸に行ったら精霊の女王様に譲って貰うようにお願いしないといけないな。心のメモに書いておこう。

 チョコレートは陛下に五粒しか渡していない。きっと陛下も簡単に手に入ると考えていたのだろう、自慢しながら、宰相、王妃、キャスペル殿下、アルテミシア様にも一粒ずつ食べさせていたんだ。

 みんな甘くて美味しいと、一粒食べただけでチョコレートの虜になっていた。王家の皆さんは甘いモノが好きなんだよね。

 なんとなく予想はできたが、王妃からチョコレートがもっと食べたいと要望され、「ワシに任せておけ」と胸を叩いたそうだ。

 次にミルトが来るのって何ヶ月後になるのかな? 早くても半年はかかりそうだな。それから魔大陸に帰って次に来るとしたら、……カカオ豆が手に入るのは一年と半年後になりそうだ。陛下の様子からすると待てそうな雰囲気ではないな。

 安請け合いはしない方がいい、王妃になんて言えばいいか悩んでいそうな顔をしている。陛下と目が合ってしまった。

「アルフレッドよ、なんとかできんか?」

「原料のカカオ豆が魔大陸の奥地まで行かないと手に入らないんですよ」

「そうなのか……」 

 かわいそうになるくらい元気がなくなってしまった。チョコレートが手に入らないと言われただけで、こんなに元気がなくなるなんて……王妃様は優しい方だから大丈夫だよね。

 ここにいても何も解決しない、キャスペル殿下と魔法大国アスラダに行く打ち合わせをしよう。馬車で行くことになるだろうから往復で十二日は見た方がいいだろうな。また、サーシャの機嫌が悪くなりそうだが、今回はベビとチビが残るから大丈夫だよね。

 アルテミシア様にサーシャと遊んでもらえないかお願いしてみようかな。アルテミシア様の部屋に向かうと、珍しくキャスペル殿下も一緒にお茶をしていた。

「アルフレッド、丁度いい所に来たな。まあ座れ、紅茶を出してくれ!」

 アルテミシア様付の侍女が紅茶を用意するために部屋を出て行った。

「珍しいですね、アルテミシア様の部屋におられるなんて、何かあったんですか?」

「アルテミシアが自慢するから、話を聞いていたところだ!」

 アルテミシア様の顔を見ると、なぜか顔を赤くすると目を逸らされ、頭をペコリと下げられた。嫌な予感がしてきたぞ、一体何を自慢していたのだろうか?

 チビとベビに乗り、グラン帝国の上空や海も見て綺麗で楽しい空のドライブだった。早く嫁いでハイルーン領の屋敷に住みたいとのろけ話をしたそうだ。

 まさか、魔法大国アスラダに空のドライブがしたいとか言いませんよね? 大きな騒ぎになってしまう。

「魔法大国アスラダまで馬車で往復すると二週間近く掛かるな……アルテミシアのように龍に乗るなら日帰りもできるな! 空のドライブをしよう!」

 キャスペル殿下が嬉しそうに言った。

「本気ですか? きっと、大変な騒ぎになってしまいますよ!」

「メダリオン王国は強力な友を得たことを知らせてやらねばな!」

 キャスペル殿下の顔が悪いことを考えている人みたいだ。こんなことになっていると分かっていたら、護衛に行くと即答しなかったんだけどな。面倒なことになってきたぞ、名前を出さずに護衛に同行すれば身バレせずにすむだろうか?
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