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165.2夜から夜までの慌ただしい一日2(魔力譲渡)✔ 2023.12.26修正 文字数 前3,235後3,152減83

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 魔法師団長に魔力ポーションを飲ませたんだけど、少しは元気になってくれたかな? 確認しに行ってみよう。

 オークの焼き串とワインの入ったカップを持っている、第一騎士団長と魔法師団長を見つけた。他にも騎士や魔法師も数名が集まっており、難しげな表情をしている。漏れ聞こえている話の内容からすると反省会のようなことをやっているようだ。

 オーク肉の焼き串の皿を両手に持って近づいて行くと、第一騎士団長に手招きされた。横に座っていた騎士が少しずれて隙間を作ってくれたため、第一騎士団長の右横に座ることになってしまった。

「アルフレッド、魔法師団が準備してきた三百本の魔法のスクロールを使い切ったと報告を受けてだな。見ての通りの有様なので、王都へ戻ろうかと協議していたところだ」

「三百本も使ったんですか?」

 買えば相当な金額が必要だが、魔法大国アスラダから貰ったモノなので、実際の出費は伴っていないそうだ。俺が岩風竜を倒した時にもらったやつだな。だから、国王陛下が律儀に海までの道を造ろうと魔法師団と護衛のために第一騎士団を派遣してくれたんだ。

 今回の作業で三十五キロほど伐採し、森を切り開いたそうだ。それでもまだ、三百キロ以上伐採が残っているだろうと説明されたんだ。

 それに、伐採を優先しているため、木は道になる予定地の両側に放置したままになっているそうだ。運んで製材しないとだな。建物を作るにしても幾らでもあった方がいいよね。

 うちの村を広げる際には、切り株を取り除いて、直ぐに道として利用できるように土魔法でガチガチに固めてやったんだけどな。

 どうやら切株もそのままになっているみたいだし、伐根が一番大変な作業だから、まだまだ先の長い話になりそうだよね。切株もテーブルとか衝立にしたら特産品とかにならないかな?

 何もしなければ新しい草木が芽吹いて、また森に戻るだろうとも言われた。そうなると、伐採の済んだ土地だけでも伐根して固めておこうかな。

 風魔法を連発すれば、一年もあれば海まで行けるかも……もっといい方法を思いついた。さっき、大木が切り倒されて道のようになっているのを見たばかりじゃないか。

 レックスに伐採を頼めば、三百キロなんて一日あれば終わりそうな気がするな。後でレックスに頼んでみるかな。

 明日、王都に向けて出発すると言うから、数日は静養してからじゃないと、行軍スピードに影響がでるんじゃないですか。と、提案してみた。すると、第一騎士団長は少しだけ悩む素振りを見せたが、魔法師団長の様子を見ると直ぐに俺の提案を受け入れてくれたんだ。

 しかし、ここまで第一騎士団長と魔法師団長が疲弊するとは思わなかったよ。やっぱり森を舐めてはいけないという事だよね。

 今後の方針が決まると、騎士と魔法師が俺の持っていた皿のオーク肉の串を掴んで、礼を言って離れていった。

 動こうとしない魔法師団長の様子を魔力鑑定眼で確認したんだけど、魔力の回復が遅いみたいなんだ。魔力ポーションを飲んでもここまでしか回復していないなんて、本当に魔力枯渇の一歩手前だったんじゃないかな。

 きっと、伐採を頑張ったところに毒虫の撃退、追い打ちをかけるように消火作業とくれば魔力枯渇を起こしてもおかしくないよね。魔力が一定以下になると回復が遅れるって聞いたことがあるんだよ。でなければ、一番魔力量の多かった魔法師団長の魔力回復がここまで遅いわけがない。

 俺は神聖教会の宝玉に魔力の充填ができるんだから、魔力鑑定眼で確認しながら細心の注意を払って行えば、人間にも充填できるんじゃないかな?

 ある程度の魔力量を回復させることができれば、後は自然に増えるはずだ。あとは過充填しないようにしないと、バッテリーなら爆発しちゃうからな。

「魔法師団長、魔力ポーションを飲んでから体長は良くなりましたか?」

 元気がないのは見て分かってはいるんだけど、あえて聞いてみた。

「ちょっと張り切り過ぎてこのざまだ。魔力欠乏症だな。森が火事になり消火するのに水魔法で魔力を使い過ぎてしまったわい。なんとか死なんですんだが、ここまで魔力が少なくなると元に戻るのは、なかなか時間がかかりそうじゃわい」

 魔法師団長が血の気の失せた顔で力なく言った。

「僕、ちょっと試してみたいことがあるんだけど、強力してくれませんか?」

「なんじゃ、こんな老いぼれのワシにどうしろと言うのじゃ」

 かなり警戒している、やっぱりいつもの魔法師団長らしくないな。

「上手くいけば魔力を充填できるかもしれないんですけど、実験に付き合ってもらえないですか?」

「なに! お前は宝玉と同じように、ワシに魔力を充填するというのか!?」

「実験ですって! 初めてやるから上手くいく保証はないけど、悪くはならないんじゃないかな」

 魔法師団長が考え込んでしまった。

「よ、よかろう。お前の手に掛かって死ぬのもいいかのう!」

 もしかして過充填で体が爆発する心配とかしていた? 魔法師団長を心配するように残っていた魔法師の数人が、なんとも言えない表情で俺を見てくる。

「魔法師団長! 人聞きの悪い事を言わないでください! 僕が殺すみたいじゃないですか? みんな本気にしたらどうするんですか!」

「そこはほれ、ワシらは帰って来なんだ。と、報告すればな、証拠隠滅なら先程の魔狼迷宮の主が、ここにおるやつら全員を腹に納めればきれいさっぱりとな! ヒェッヒェッ!」

 この爺さん、まだ冗談を言う元気が残っていたみたいだな。面倒な人だな、今の発言で魔法師がブルっと体を震わせているじゃないか。本気にしないでよ、口封じに食べさせるとかしないから。

 魔法師団長の両手を握ると、宝玉に魔力を充填するよりも、少量ずつを慎重に流し込む。

 魔力鑑定眼には、順調に両手から魔法師団長の体の中に魔力が流れ込んでいる。顔色や心臓の鼓動にも異常は現れていない。

 血液ではないが拒絶反応とかあると怖いので、少しずつ細心の注意をしながら流し込む。

 二十分近く流し込むと二割は充填できたように見えている。初めてなので、このくらいで少し様子を見た方がいいな。できるだけ自前の魔力で回復する方がいいはずだからね。回復が上手くいかないようなら、もう一回充填することにしよう。

「魔力が自然に増えるならそのほうがいいから、このくらいで止めておきましょう、後は経過を観察します。実験なので後で感想を聞かせてくださいよ」

「わ、分かった。しかし、お前というやつは……いや。ここは素直にありがとうと言うべきじゃな。目眩もせんようになったし、だいぶ楽になった。魔力が増えておる! なんなら前より増えるのが早いように感じるぞ!」

 魔法師団長の顔色が改善しており、目にも力が戻っている。少し観察していたが順調に魔力の回復が始まっているので、このままで大丈夫なんじゃないかな。

「もう安心ですね」

 一時間ほど経過すると、魔魔力欠乏症は脱したようで、法師団長はいつもの顔色を取り戻している。

「この回復力なら、ワシの魔力は苗よりも増える可能性があるぞ! これは楽しみじゃわい。また、魔力欠乏症で危なくなったらアルフレッドに魔力充填して貰えばよいからな! ヒェッヒェッ!」

 元気になったらすぐにこれだからな。

「もう魔力充填なんかしませんよ! 無茶しないでください!」

「なにをケチ臭いことを言っておる。減るもんでもあるまい。ケチケチせずに充填してくれればよかろう。魔力欠乏症から復活した魔法師は魔力量が増えると言われておるのじゃ。普通は死ぬ可能性があるから誰もやろうとはせんがな。大いに楽しみじゃわい! ヒェッヒェッヒェッ!」

 魔法師団長が完全にいつもの元気を取り戻してしまった。魔力を充填し過ぎたかもだな。

 元気な魔法師団長は俺、やっぱり苦手なんだよな!

 夜が明けてきたな、結局、徹夜になってしまった。
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