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ヒトのキョウカイ2巻(エンゲージネジを渡そう)
10 (宇宙船内遊泳)
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皆がそれぞれの自室に戻り、ナオは自室でVRに接続し ジガからもらったURLにアクセスする。
今回はエアトラで この都市から高度100kmの宇宙まで上がって、地球を1~2周して南極に降下する…オレ達は完璧に客なので 講習の義務は無い。
だが、最低限自分を守る為 ちゃんと対応出来るように しとく必要がある。
その為、ジガを講師として学ぼうと言うのだ。
行き先はジガのパブリックスペース。
さてナオが ジガのパブリックスペースに行くと、目の前に大きな建物が現れた。
豪華な装飾がされた外観はまるでお城で、入り口の両開きドアの上には『Oasis』と書かれた看板が光っている。
「明らかに風俗店だよな…。」
ドアを開けて中に入る…3階建ての吹き抜けの天井に階段…。
ここでパーティでも出来るんじゃないかと思う位大きい。
「こりゃ迷うな…。」
さてどうしようかと思っていたが…。
空中に案内用の矢印が表示され、ナオは案内に従い進み、両開きのドアを開けた…。
中は 小ホール程度の大きさがあり、ドアから右奥には大きな舞台…。
舞台下から少し離れた所には 円形のテーブルとそれをU字に囲むソファーが等間隔に配置されている。
キャバクラ?何でまた…。
「よう…遅かったな…。」
トヨカズとレナがソファーに座り、ワインをグビグビと飲んでいる…。
「美味しい…味覚エンジンが気になるわね…。」
「そりゃ上物の10万UMのワインだからな。」
ジガは いつものようなパイロットスーツでは無く 胸開きの白いワンピースを着ていてトヨカズにお酌をしている。
お酌の仕方も絶妙で、注ぐ際にさりげなく胸が見えるギリギリをついて立ちまわっている…。
ナオが座ると球型氷をグラスに入れワインを注ぐ…。
「ほい…どうぞ」
「どーも」
ナオはワインを一口含む…素人だからこのワインの本当の価値までは分からないが…味、香り共にレベルが高い。
「それにしても何で、ジガのパブリックスペースが風俗店なんだ?」
ナオがジガに聞いてみる…。
「大戦で、南極に行くまでここに住んでいたからな…。
広くて良い家だろ?」
「確かに良い所ではあるんだが…。」
あージガはセクサロイドをやっていたのか…。
確かにヒューマノイドの需要と言ったら性風俗は大きそうだ。
「さーてそれが飲み終わったら、訓練だ…。
時間でみっちり仕込むからな…」
「おう」「は~い」「分かった。」
ジガが両開きドアを開ける…そこは宇宙船の中だった。
直径は9m程の円柱で回転する事で遠心力による、疑似重力を発生させている。
「こっからは低重力だ気を付けろよ」
ドアの先は ちょうど中心に設定されていて、いつものパイロットスーツに着替えたジガが飛び出し、ゆっくりと降下していく…。
レナは思いっ切って真っすぐに飛ぶが回転しながら流される…。
「あれ?止まらない…」
「真ん中は無重力だからな…」
レナは端にぶつかり、手で押して床に着地する。
トヨカズが飛び出す…レナのように回転するが、手と脚を広げて回転を止め…脚を上に蹴り上げ反作用で向きを変え、端に着地…更に蹴って床に着地する。
「どんなもんだ…無重力はVRで飽きるほどやったからな…。」
ナオはドアから脚を下ろし座る…脚だけ無重力状態な奇妙な感覚を感じつつ…ドアの下を手で押し上げる形で地面に着地。
「低重力ならこれで大丈夫だろう。
中心に行く時は気を付けないとな…。」
「さて、まずは衣食住の『衣』からだ…。」
ジガがARウィンドウで操作を行い…決定ボタンを押す。
ナオ、トヨカズ、レナの服が分解され量子光となり消える。
ナオとトヨカズはTシャツにトランクス状態…レナもブラジャーとパンツの状態だ。
「衣服解除?変態が喜びそうなコードね…。」
男が2人がいる前で下着姿にされたのにレナは平然としている。
まぁ一緒に風呂に入ってた時点で こうなる事は予想出来たのだが…。
コイツには羞恥心と言う言葉は無いのか?
「更に…と」
ナオ達の前にパイロットスーツを召喚していく…。
ナオとトヨカズは、緑…レナは赤だ。
「これ強化服か…?」
トニー王国製宇宙規格強化服に似ている…。
「素材が変わった位で基本は変わって無い…人類規格だからな…着方は?」
「たぶん大丈夫」
パイロットスーツは首部分から腰部分まで線ファスナーがあるツナギ型で、背中には補助用の背骨がついている…
ナオは、線ファスナーを下げてツナギを着こみ、線ファスナーをしっかりと閉める。
線ファスナーのつなぎ目のがある生地には、空気より小さい密度の面ファスナーで構成されていて 左右に 裏地が面ファスナーの生地があり、左右交互に重ね、真空中での気密を保つ。
前の強化服は、胸と腰部分にも面ファスナーで締め付けていたが、ロック式のワンタッチベルトになっている。
その上から面ファスナーの生地を被せる事で更にベルトを保護する。
後は脚に2ヵ所のワンタッチベルト…靴はブーツで、面ファスナーで挟《はさ》む形になっている。
パイロットスーツの脚を入れ、内側と外側から面ファスナーで気密を確保…。
手袋も挟み込み式だ。
「これでどうだ?」
「前の義体なら100%だが、今なら80%…調整が甘い。」
ジガがナオのパイロットスーツの腕を引っ張る。
「まだ、これだけ巻けるな…」
手首部分のリングのカバーを外し、余った生地を巻いていく…。
「コイツは体型を選ばない汎用型で 安いんだが…こうやって個人に合わせて調節しないといけないんだ。」
足首のリングを開き生地を巻きとる…。
胴体部分にまだ余裕があり、折り畳んでベルトで固定…。
「後は…」
各ベルトをギリギリまで締め付け ナオの体型に合わせていく。
「はい出来上がり…」
「オレも出来た…調整を頼む」
「私も」
トヨカズとレナも出来たようで、ジガに近づく…。
「トヨカズは…と割と限界サイズだな…これで良し。」
腕と脚のリングを1巻ずつ巻いて調整…。
「レナは、胸のベルトが甘い…」
「と言っても、そこ 窮屈だし…」
「よーしなら教訓として緩くしておこう…」
ジガは にやけ顔で レナの胸のベルトを緩める…。
「じゃあ次は1分で脱げるようになれ…始め!!」
ジガがパンと手を叩く…。
「おお前より脱ぎやすい…。」
面ファスナーですべてを固定していた昔と違い、下からベルトのロックを外すだけで各部が緩み、腹部と胸部の面ファスナーを外して、線ファスナーを下ろす。
「ナオ…クリア」
「よしどうだ…。」
「トヨカズ…クリア」
「えーとここと、ここと、ここを外して…はい」
「1分5秒…ギリギリ合格にするか…。
さて次は1分でまた着替えな…始め!!」
サイズを合わせてあるので 今度は着こんで線ファスナーを上げ面ファスナーを重ねて、足からロックしていく…。
「ほい…どうだ」
「オレも」
「何とか」
ジガが1人1人確認していく。
「はい全員クリア…じゃあ次はヘルメット行くぞ。」
ジガがヘルメットとボンベを出す。
ヘルメットの気密を確保する為、肩まで生地があるタイプだ。
ボンベには3本のホースと表面にはO2と書かれている。
「O2?Airじゃなくて?」
「それであってる…酸素100%の純酸素だ」
「いやいや死ぬだろう…。
1気圧の宇宙服で純酸素なんて。」
「その為の『エアセル』だ…。
ヘルメットの後ろにタンクがあるだろう…この中に『エアセル』が入ってる。」
ジガはヘルメットを被り自分の後頭部を軽く叩く。
「コイツは電気を流す事でヘルメット内の二酸化炭素を吸収して酸素に変換してくれるんだ…。
しかも酸素割合が20%になるようになってる。」
「と言う事は電気を流せれば人間の吐く息をリサイクルされて、酸素ボンベはいらないって事か?」
「そう…でも電力をドカ食いするから、電力供給が不安になってきたら、出力を下げて6分の1はボンベを使う。
酸素は1kg積んでいるから、エアセルを使わないで丸1日…。
エアセルをフル稼働で 6倍だから1週間程度な。」
酸欠で死ぬより餓死の方が早そうだ…。
ナオは ヘルメットの後ろにある2本の吸気口に酸素ボンベのホースを取り付ける。
酸素ボンベを背負い、ヘルメットを被り…。
「あー忘れていたコイツを付けろ」
ジガはヘアバンドを出す…。
「ヘアバンド?なんで?」
「無重力だと髪が動いて鬱陶しいからな…。
それに汗は特にヤバい…戦闘中に掻いた汗が目に入って視界不良になって撃墜されたヤツもいる…。」
「ヘルメットを被ってたら、汗を拭う事は出来ないしな」
ナオは髪をまとめてヘアバンドを付け、ヘルメットを被り、肩部分の面ファスナーを軽く叩いて押し付ける。
ヘルメットは首を通しやすいように大きく作られていて被りやすい。
装着するとARウィンドウが現れ、気密確認の状態が表示される。
「これでOK」
「オレも出来た…OKでた」
「私は難しい…」
「レナは髪が多いからな…折り畳むか」
ジガは丁寧にヘアロールで髪を丸めていく…『髪を切れ』と言わない辺りジガらしい。
「ヘアロールが頸椎の後ろにしまう事になるから…ここにダメージが入ると首の骨が折れやすくなるか…」
「なら髪を短くするしか無いか…ジガお願いできる?」
「構わないが…良いのか?」
「長いのは好きだから…ヘアバンドで固定できるレベルで…」
「分かった…とりあえずは…と」
ジガが操作し、レナをショートヘアにする。
「あっすんなり入った…。」
「じゃあ空気を抜いて真空にするぞ…」
吸気口から空気を吸い上げ、周りの空気が一気に無くなり真空になる。
「ちょ…あっ…呼吸が…。」
レナは必死に呼吸をするが 空気が入っていかない…。
「あー胸を思いっきり押してみな…。」
レナは胸を思いっきり押して呼吸を再開する。
「かぁっはぁはぁ……一体…何がっ。」
「肺にかかっている圧力が無くなったからだ…よっと」
ジガはレナの胸のベルトを引っ張り肺に圧力をかける。
「人の肺ってのは、肺の中の気圧と外の気圧の差を利用して、動いているんだ。
だから外の気圧が下がると肺が膨張して『空気があるのに呼吸ができなくなる』んだ。
な訳で、真空中では胸部へ人為的なストレスを懸ける必要がある。
今回のは胸のベルトをしっかり締めて置かないとなる事故な…。」
「訓練中……に…殺す気かぁ」
レナが息を整えつつ言う。
「人は身をもって体験しないと学ばないからな…。
これでしっかりベルトを閉めるようになるだろ。」
「ちゃんと説明してくれれば閉めたのに…。」
「VRは安全に『死にかけられる』からな。
危険な事は一通り体験しておいた方がいいんだ…。」
「さて次は無重力での移動だ…。」
宇宙船の回転が止まり 遠心力が無くなった事で 完全な無重力状態になる。
「さて真空で無重力状態での移動だ…。
空気が無いからバタ足で動く事は出来ねぇから、動くには何かしらの質量を後ろに置いて行く必要がある…」
ジガは床を蹴り上げ上昇…身体をひねり天井まで行き、また蹴って戻ってくる…。
「今のは 宇宙船の質量を蹴る事により 推進力にした…後は…」
ジガは酸素ボンベについている2本のホースを左右で握り、地面を蹴り 中心部まで行き 推進剤を使って回転して そのまま戻ってくる…。
「酸素を推進剤にする事で移動する方法だ。」
ナオは地面を蹴り中心部で…を通り過ぎ 天井にぶつかり、態勢を立て直した所で酸素を噴射し戻ってくる…。
「間に合わないな」
「推進剤を多く使うから加速しちまうんだ…シューじゃなくてプだ。」
ナオはプっと一瞬酸素を噴射して上がる…それからホースを前後に構え同時に噴射…ゆっくりと回転をかける。
「今!」
そしてまた一瞬噴射し戻る…。
「慣れが必要だな」
「うわぁ回るぅぅ」
トヨカズが酸素を出し過ぎて、高速回転し始めた。
反対方向に噴射して回転を止める。
「早くは動けねぇな」
トヨカズがゆっくりと降りてくる。
レナは飛び上がり真ん中で宙返りをし酸素を噴射…逆さまに降りてぶつかる…。
「あいた…ホースが動いた。」
「ホースにも慣性がかかるからな…脇を閉めて固定するんだ。」
「あーなるほど」
「慣れたら最低限の酸素で移動できるようにするんだ。
自分の呼吸にも使うんだからな…。」
ジガはボールを何個も実体化させ投げる…。
ボールば壁にぶつかり反射して複雑な軌道を取って行く。
「ほら…取ってこい」
「ちょホースで手が使えない…。」
ナオは 拾おうとするが掴《つか》めずボールを弾き飛ばす…。
「つかめた…アイタ」
レナは掴《つか》めたが壁に頭からぶつかる。
「ホイ、ホイ、ホイ」
トヨカズはヘルメットでヘディングをしジガに返す。
「おーうまいうまい」
ピピピピピピ
ナオ、トヨカズ、レナの目の間にARウィンドウが表示され、警告音がなる…。
「酸素が3分の1を切った…。」
「私は まだ大丈夫…だけどナオを救出しろって表示されてる。」
「じゃあ集合…重力と気圧を戻すぞ…」
ナオ達はゆっくりとだがジガに近づく…。
訓練の成果もあってゆっくりなら問題なく移動できるまでになっていた。
「まずは気圧だ…。」
プシューと周りが霧で包まれる…
「気圧が戻っても温度がすぐに戻っている訳じゃないから温度が上がるまでヘルメットを外すなよ…。」
熱せられた空気が気圧と温度を安定させ、気温を20度まで上げる…。
「ヘルメット解放を許可…もう外していいぞ。」
ビリビリと面ファスナーを剥がし、ヘルメットを外す。
「ふう」
「お疲れさん」
ジガが『スパウトパウチ』のジュースを実体化し投げる。
「スポーツドリンクだ。せっかくだから無重力で飲んでみ」
レナがジュースを掴み、キャップを回して外して飲む…。
「あら…少しゼリーぽい?」
「窒息対策だ…。
液体だと飲みにくいからな…飲み終わったら重力も戻すぞ」
宇宙船が回転をし始め 遠心力が発生する。
「疲れたー」
レナ寝転がる…。
「重力があると落ち着く…。
『人は土から離れては生きられない』か…意外と本当かもな…。」
ナオが言う…。
地球の重力に比べ、かなり軽い 6分の1G…。
だいたい月と同じ位だが、それでも無重力より落ち着く。
「と言ってもまだ衣食住の『衣』と『住』だ『食』はまだだ。」
「ゼリー飲んでるじゃん」
「人は飲み食いだけじゃないだろ…」
「あー」
ナオとトヨカズが同時に声を上げる。
「トイレか?」
ナオが言う。
「そ、宇宙航行で一番大切な事…トイレだ。」
今回はエアトラで この都市から高度100kmの宇宙まで上がって、地球を1~2周して南極に降下する…オレ達は完璧に客なので 講習の義務は無い。
だが、最低限自分を守る為 ちゃんと対応出来るように しとく必要がある。
その為、ジガを講師として学ぼうと言うのだ。
行き先はジガのパブリックスペース。
さてナオが ジガのパブリックスペースに行くと、目の前に大きな建物が現れた。
豪華な装飾がされた外観はまるでお城で、入り口の両開きドアの上には『Oasis』と書かれた看板が光っている。
「明らかに風俗店だよな…。」
ドアを開けて中に入る…3階建ての吹き抜けの天井に階段…。
ここでパーティでも出来るんじゃないかと思う位大きい。
「こりゃ迷うな…。」
さてどうしようかと思っていたが…。
空中に案内用の矢印が表示され、ナオは案内に従い進み、両開きのドアを開けた…。
中は 小ホール程度の大きさがあり、ドアから右奥には大きな舞台…。
舞台下から少し離れた所には 円形のテーブルとそれをU字に囲むソファーが等間隔に配置されている。
キャバクラ?何でまた…。
「よう…遅かったな…。」
トヨカズとレナがソファーに座り、ワインをグビグビと飲んでいる…。
「美味しい…味覚エンジンが気になるわね…。」
「そりゃ上物の10万UMのワインだからな。」
ジガは いつものようなパイロットスーツでは無く 胸開きの白いワンピースを着ていてトヨカズにお酌をしている。
お酌の仕方も絶妙で、注ぐ際にさりげなく胸が見えるギリギリをついて立ちまわっている…。
ナオが座ると球型氷をグラスに入れワインを注ぐ…。
「ほい…どうぞ」
「どーも」
ナオはワインを一口含む…素人だからこのワインの本当の価値までは分からないが…味、香り共にレベルが高い。
「それにしても何で、ジガのパブリックスペースが風俗店なんだ?」
ナオがジガに聞いてみる…。
「大戦で、南極に行くまでここに住んでいたからな…。
広くて良い家だろ?」
「確かに良い所ではあるんだが…。」
あージガはセクサロイドをやっていたのか…。
確かにヒューマノイドの需要と言ったら性風俗は大きそうだ。
「さーてそれが飲み終わったら、訓練だ…。
時間でみっちり仕込むからな…」
「おう」「は~い」「分かった。」
ジガが両開きドアを開ける…そこは宇宙船の中だった。
直径は9m程の円柱で回転する事で遠心力による、疑似重力を発生させている。
「こっからは低重力だ気を付けろよ」
ドアの先は ちょうど中心に設定されていて、いつものパイロットスーツに着替えたジガが飛び出し、ゆっくりと降下していく…。
レナは思いっ切って真っすぐに飛ぶが回転しながら流される…。
「あれ?止まらない…」
「真ん中は無重力だからな…」
レナは端にぶつかり、手で押して床に着地する。
トヨカズが飛び出す…レナのように回転するが、手と脚を広げて回転を止め…脚を上に蹴り上げ反作用で向きを変え、端に着地…更に蹴って床に着地する。
「どんなもんだ…無重力はVRで飽きるほどやったからな…。」
ナオはドアから脚を下ろし座る…脚だけ無重力状態な奇妙な感覚を感じつつ…ドアの下を手で押し上げる形で地面に着地。
「低重力ならこれで大丈夫だろう。
中心に行く時は気を付けないとな…。」
「さて、まずは衣食住の『衣』からだ…。」
ジガがARウィンドウで操作を行い…決定ボタンを押す。
ナオ、トヨカズ、レナの服が分解され量子光となり消える。
ナオとトヨカズはTシャツにトランクス状態…レナもブラジャーとパンツの状態だ。
「衣服解除?変態が喜びそうなコードね…。」
男が2人がいる前で下着姿にされたのにレナは平然としている。
まぁ一緒に風呂に入ってた時点で こうなる事は予想出来たのだが…。
コイツには羞恥心と言う言葉は無いのか?
「更に…と」
ナオ達の前にパイロットスーツを召喚していく…。
ナオとトヨカズは、緑…レナは赤だ。
「これ強化服か…?」
トニー王国製宇宙規格強化服に似ている…。
「素材が変わった位で基本は変わって無い…人類規格だからな…着方は?」
「たぶん大丈夫」
パイロットスーツは首部分から腰部分まで線ファスナーがあるツナギ型で、背中には補助用の背骨がついている…
ナオは、線ファスナーを下げてツナギを着こみ、線ファスナーをしっかりと閉める。
線ファスナーのつなぎ目のがある生地には、空気より小さい密度の面ファスナーで構成されていて 左右に 裏地が面ファスナーの生地があり、左右交互に重ね、真空中での気密を保つ。
前の強化服は、胸と腰部分にも面ファスナーで締め付けていたが、ロック式のワンタッチベルトになっている。
その上から面ファスナーの生地を被せる事で更にベルトを保護する。
後は脚に2ヵ所のワンタッチベルト…靴はブーツで、面ファスナーで挟《はさ》む形になっている。
パイロットスーツの脚を入れ、内側と外側から面ファスナーで気密を確保…。
手袋も挟み込み式だ。
「これでどうだ?」
「前の義体なら100%だが、今なら80%…調整が甘い。」
ジガがナオのパイロットスーツの腕を引っ張る。
「まだ、これだけ巻けるな…」
手首部分のリングのカバーを外し、余った生地を巻いていく…。
「コイツは体型を選ばない汎用型で 安いんだが…こうやって個人に合わせて調節しないといけないんだ。」
足首のリングを開き生地を巻きとる…。
胴体部分にまだ余裕があり、折り畳んでベルトで固定…。
「後は…」
各ベルトをギリギリまで締め付け ナオの体型に合わせていく。
「はい出来上がり…」
「オレも出来た…調整を頼む」
「私も」
トヨカズとレナも出来たようで、ジガに近づく…。
「トヨカズは…と割と限界サイズだな…これで良し。」
腕と脚のリングを1巻ずつ巻いて調整…。
「レナは、胸のベルトが甘い…」
「と言っても、そこ 窮屈だし…」
「よーしなら教訓として緩くしておこう…」
ジガは にやけ顔で レナの胸のベルトを緩める…。
「じゃあ次は1分で脱げるようになれ…始め!!」
ジガがパンと手を叩く…。
「おお前より脱ぎやすい…。」
面ファスナーですべてを固定していた昔と違い、下からベルトのロックを外すだけで各部が緩み、腹部と胸部の面ファスナーを外して、線ファスナーを下ろす。
「ナオ…クリア」
「よしどうだ…。」
「トヨカズ…クリア」
「えーとここと、ここと、ここを外して…はい」
「1分5秒…ギリギリ合格にするか…。
さて次は1分でまた着替えな…始め!!」
サイズを合わせてあるので 今度は着こんで線ファスナーを上げ面ファスナーを重ねて、足からロックしていく…。
「ほい…どうだ」
「オレも」
「何とか」
ジガが1人1人確認していく。
「はい全員クリア…じゃあ次はヘルメット行くぞ。」
ジガがヘルメットとボンベを出す。
ヘルメットの気密を確保する為、肩まで生地があるタイプだ。
ボンベには3本のホースと表面にはO2と書かれている。
「O2?Airじゃなくて?」
「それであってる…酸素100%の純酸素だ」
「いやいや死ぬだろう…。
1気圧の宇宙服で純酸素なんて。」
「その為の『エアセル』だ…。
ヘルメットの後ろにタンクがあるだろう…この中に『エアセル』が入ってる。」
ジガはヘルメットを被り自分の後頭部を軽く叩く。
「コイツは電気を流す事でヘルメット内の二酸化炭素を吸収して酸素に変換してくれるんだ…。
しかも酸素割合が20%になるようになってる。」
「と言う事は電気を流せれば人間の吐く息をリサイクルされて、酸素ボンベはいらないって事か?」
「そう…でも電力をドカ食いするから、電力供給が不安になってきたら、出力を下げて6分の1はボンベを使う。
酸素は1kg積んでいるから、エアセルを使わないで丸1日…。
エアセルをフル稼働で 6倍だから1週間程度な。」
酸欠で死ぬより餓死の方が早そうだ…。
ナオは ヘルメットの後ろにある2本の吸気口に酸素ボンベのホースを取り付ける。
酸素ボンベを背負い、ヘルメットを被り…。
「あー忘れていたコイツを付けろ」
ジガはヘアバンドを出す…。
「ヘアバンド?なんで?」
「無重力だと髪が動いて鬱陶しいからな…。
それに汗は特にヤバい…戦闘中に掻いた汗が目に入って視界不良になって撃墜されたヤツもいる…。」
「ヘルメットを被ってたら、汗を拭う事は出来ないしな」
ナオは髪をまとめてヘアバンドを付け、ヘルメットを被り、肩部分の面ファスナーを軽く叩いて押し付ける。
ヘルメットは首を通しやすいように大きく作られていて被りやすい。
装着するとARウィンドウが現れ、気密確認の状態が表示される。
「これでOK」
「オレも出来た…OKでた」
「私は難しい…」
「レナは髪が多いからな…折り畳むか」
ジガは丁寧にヘアロールで髪を丸めていく…『髪を切れ』と言わない辺りジガらしい。
「ヘアロールが頸椎の後ろにしまう事になるから…ここにダメージが入ると首の骨が折れやすくなるか…」
「なら髪を短くするしか無いか…ジガお願いできる?」
「構わないが…良いのか?」
「長いのは好きだから…ヘアバンドで固定できるレベルで…」
「分かった…とりあえずは…と」
ジガが操作し、レナをショートヘアにする。
「あっすんなり入った…。」
「じゃあ空気を抜いて真空にするぞ…」
吸気口から空気を吸い上げ、周りの空気が一気に無くなり真空になる。
「ちょ…あっ…呼吸が…。」
レナは必死に呼吸をするが 空気が入っていかない…。
「あー胸を思いっきり押してみな…。」
レナは胸を思いっきり押して呼吸を再開する。
「かぁっはぁはぁ……一体…何がっ。」
「肺にかかっている圧力が無くなったからだ…よっと」
ジガはレナの胸のベルトを引っ張り肺に圧力をかける。
「人の肺ってのは、肺の中の気圧と外の気圧の差を利用して、動いているんだ。
だから外の気圧が下がると肺が膨張して『空気があるのに呼吸ができなくなる』んだ。
な訳で、真空中では胸部へ人為的なストレスを懸ける必要がある。
今回のは胸のベルトをしっかり締めて置かないとなる事故な…。」
「訓練中……に…殺す気かぁ」
レナが息を整えつつ言う。
「人は身をもって体験しないと学ばないからな…。
これでしっかりベルトを閉めるようになるだろ。」
「ちゃんと説明してくれれば閉めたのに…。」
「VRは安全に『死にかけられる』からな。
危険な事は一通り体験しておいた方がいいんだ…。」
「さて次は無重力での移動だ…。」
宇宙船の回転が止まり 遠心力が無くなった事で 完全な無重力状態になる。
「さて真空で無重力状態での移動だ…。
空気が無いからバタ足で動く事は出来ねぇから、動くには何かしらの質量を後ろに置いて行く必要がある…」
ジガは床を蹴り上げ上昇…身体をひねり天井まで行き、また蹴って戻ってくる…。
「今のは 宇宙船の質量を蹴る事により 推進力にした…後は…」
ジガは酸素ボンベについている2本のホースを左右で握り、地面を蹴り 中心部まで行き 推進剤を使って回転して そのまま戻ってくる…。
「酸素を推進剤にする事で移動する方法だ。」
ナオは地面を蹴り中心部で…を通り過ぎ 天井にぶつかり、態勢を立て直した所で酸素を噴射し戻ってくる…。
「間に合わないな」
「推進剤を多く使うから加速しちまうんだ…シューじゃなくてプだ。」
ナオはプっと一瞬酸素を噴射して上がる…それからホースを前後に構え同時に噴射…ゆっくりと回転をかける。
「今!」
そしてまた一瞬噴射し戻る…。
「慣れが必要だな」
「うわぁ回るぅぅ」
トヨカズが酸素を出し過ぎて、高速回転し始めた。
反対方向に噴射して回転を止める。
「早くは動けねぇな」
トヨカズがゆっくりと降りてくる。
レナは飛び上がり真ん中で宙返りをし酸素を噴射…逆さまに降りてぶつかる…。
「あいた…ホースが動いた。」
「ホースにも慣性がかかるからな…脇を閉めて固定するんだ。」
「あーなるほど」
「慣れたら最低限の酸素で移動できるようにするんだ。
自分の呼吸にも使うんだからな…。」
ジガはボールを何個も実体化させ投げる…。
ボールば壁にぶつかり反射して複雑な軌道を取って行く。
「ほら…取ってこい」
「ちょホースで手が使えない…。」
ナオは 拾おうとするが掴《つか》めずボールを弾き飛ばす…。
「つかめた…アイタ」
レナは掴《つか》めたが壁に頭からぶつかる。
「ホイ、ホイ、ホイ」
トヨカズはヘルメットでヘディングをしジガに返す。
「おーうまいうまい」
ピピピピピピ
ナオ、トヨカズ、レナの目の間にARウィンドウが表示され、警告音がなる…。
「酸素が3分の1を切った…。」
「私は まだ大丈夫…だけどナオを救出しろって表示されてる。」
「じゃあ集合…重力と気圧を戻すぞ…」
ナオ達はゆっくりとだがジガに近づく…。
訓練の成果もあってゆっくりなら問題なく移動できるまでになっていた。
「まずは気圧だ…。」
プシューと周りが霧で包まれる…
「気圧が戻っても温度がすぐに戻っている訳じゃないから温度が上がるまでヘルメットを外すなよ…。」
熱せられた空気が気圧と温度を安定させ、気温を20度まで上げる…。
「ヘルメット解放を許可…もう外していいぞ。」
ビリビリと面ファスナーを剥がし、ヘルメットを外す。
「ふう」
「お疲れさん」
ジガが『スパウトパウチ』のジュースを実体化し投げる。
「スポーツドリンクだ。せっかくだから無重力で飲んでみ」
レナがジュースを掴み、キャップを回して外して飲む…。
「あら…少しゼリーぽい?」
「窒息対策だ…。
液体だと飲みにくいからな…飲み終わったら重力も戻すぞ」
宇宙船が回転をし始め 遠心力が発生する。
「疲れたー」
レナ寝転がる…。
「重力があると落ち着く…。
『人は土から離れては生きられない』か…意外と本当かもな…。」
ナオが言う…。
地球の重力に比べ、かなり軽い 6分の1G…。
だいたい月と同じ位だが、それでも無重力より落ち着く。
「と言ってもまだ衣食住の『衣』と『住』だ『食』はまだだ。」
「ゼリー飲んでるじゃん」
「人は飲み食いだけじゃないだろ…」
「あー」
ナオとトヨカズが同時に声を上げる。
「トイレか?」
ナオが言う。
「そ、宇宙航行で一番大切な事…トイレだ。」
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枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
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【お知らせ】6/22 完結しました!
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
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突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
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この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
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「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
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超克の艦隊
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米国駐在武官からもたらされた一報は帝国海軍に激震をもたらす。
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『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
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