⊕ヒトのキョウカイ⊕【未来転生したオレは、星を軽くぶっ壊すチート機械少女と共にこの幻実(せかい)で生きて行く…。】

Nao

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ヒトのキョウカイ4巻(オレいつの間にか子持ちになっていました。)

17 (疫病恐慌曲線)

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 8月11日…。
「中止?…そんな…。」
 会議中のレナが思わず言う。
 ここ数日 会議の度にエクスプロイトウイルスについて話していたが、砦祭はやると言う事で合意は取れていたはずなのに 急に砦祭を中止にすると言われた。
「他の都市からの圧力が凄まじいのです…。
 ネットではこの一大事に祭をして感染者を増やそうとしていると、大炎上しています…。」
 役員の一人が言う。
「いや…増やすも 現在 この都市の感染者は一人で、既に完治済みです。
 この状態で感染者が増えるとは到底思えません。」
 アントニーの横に座るレナが言う。
「祭りになれば他の都市からの観光客が来るでしょう。
 その際に感染する可能性があります。」
 前年の数字を見てもリアルで来る観光客は 精々《せいぜい》50人程度でしょうに…一人一人精密検査をしても普通にさばける人数だ…。
「感染しても バイタルを常時モニタリングしている状態で 重症化する事は無いでしょうし、咳もしないので感染は広がりません。
 感染者の体内だけの問題で済みます。
 勿論もちろん安全の為、隔離はしますが…。」
 レナが食い下がる。
 ここまで こぎ着《つ》けた砦祭を中止する事だけは何としても回避しないと…。
「今回の場合、感染したかどうかは 重要ではありません。
 重要なのは『恐ろしい殺人ウイルスに感染する可能性がある』と言う空気がネット上で出来ている事が問題なのです。
 こうなると統計や政府の情報も信用され無くなります。
 一番信憑性の高いはずの政府からの報道は、大量のウイルス感染者を誤魔化す為の捏造ねつぞうと言われ、SNSのウイルス感染をあおる書き込みには、どんなに信憑性が無い情報だろうが、信じようとします。
 これは 人は自分に都合の良い情報のみを信じようとするからです。
 なので、パフォーマンスとして大衆《たいしゅう》に分かり易く 安心感を与える為にも ここは自粛《じしゅく》するべきなのです。」
 役員の言い分にも納得は出来る。
 確かに一般人は統計は見ないし、権威がある人の言葉は信じやすいし、危険をあおられると過剰に警戒してしまう。
 私が良い例だ。
 だがこれは 人が生物である以上過剰に警戒してしまうのは仕方がない事だ。
 でも、役員は別の視点が抜けている。 
「ワーム侵攻事件での経済的影響を考えると今回の砦祭で景気を回復させる事が何より重要です。
 で無ければ、都市が支援していない企業は『都市の復旧で半月営業出来ない状況』と『稼ぎ時の砦祭での収入』が無くなり、確実に事業の継続が出来なくなるでしょう…。
 都市民の経済損失が増えれば メンタルに影響が出て問題行動が多くなりますし、ここは無理にでもやるべきだと私は考えます。」
 影響が少ないウイルスに対して、経済損失が大き過ぎる。
 ここで 中止にしたとしても、こちらにはデメリットしかない…。
「だったら、この程度で営業が出来なくなる稼げない企業は淘汰《とうた》してしまえばいい。
 淘汰圧《とうたあつ》に耐え生き残った企業は 効率が良くなるのだから…。」
 別の役員が深く考えず言う。
「その淘汰《とうた》に耐えれば優秀な企業なのですか?
 その淘汰《とうた》に耐えられない企業は 要《い》らないのでしょうか?
 だったら、電気、水道、食料、空気、道路、この企業は運営資金の半分以上を都市が持っていて、この上なく収益《しゅうえき》が悪いのですが、これらの企業への資金提供を止め、その淘汰圧《とうたあつ》にけますか?
 文明生活を送れなくなりますよ…。」
 何を製造するにも エネルギーが必要で、この都市は補助金で補填しているから、価格の安い電気を都市民に届けられる。
 水道も食料も空気も道路も、補助金が無くなれば商品の値段が数倍に跳ね上がってしまう。
 水道が無ければ『渇《かわ》き』、食べ物が買えなければ『餓死《がし》』、空気が生産出来なければ『窒息死《ちっそくし》』道路は直接は死なないが、物資を効率良く運べなければ、生活出来ずに人は死ぬ。
「いや…インフラは実質、都市営としえい企業で…。」
「なら、私達が補助金を出していない企業は滅びろと?
 あなたの大好きな風俗企業にもダメージを受けますが?」
 この都市の7割が女性だ…なので風営業は女性向け、つまり従業員は男性だ。
 逆に男性向けの風俗店は需要が少ない為、極端に少なくなっている。
「なら、こちらから資金提供して…実質 都市営としえい企業にすれば…。」
「それなら、あなたが必要だからと言う主観で企業が救われるのですか?
 淘汰《とうた》にすると言うのに、こちらが淘汰《とうた》企業を選んでいます。」
「っ…。」
「私の故郷は 経常収益《けいじょうしゅうえき》で見れば とても優秀な都市でした…それがお望みで?」
 収益が優秀だからと言って企業が優秀とは限らない…。
 何故《なぜ》なら、その収益の為に犠牲になる従業員がいるからだ。
「私達が必要かに関わらず、すべての企業を救います。
 どんなに少なくとも、需要と供給が成り立っているから企業があるのですから…。」

「さて、意見が出揃でそろいましたか?」
 レナの隣に座るアントニーが言う。
「では、役員の皆さん…砦祭を開催に賛成の方はご起立下さい。」
 ザッ…。
 役員が一斉に立ち上がる…一部役員が座っているが賛成多数だ。
「賛成多数…砦祭の開催が決定しました…。
 ただ…反対派の意見も説得力があり、既にDr.タカハシが行っている防疫ぼうえきマニュアルは出来次第 確認するとして、ワールドネットの報道が間違っているとこちら側から公式に報道し、今回のデータも全面的に公開します。
 そちらはメディア・フローケンに頼みます。」
「分かりました…。
 疫病《えきびょう》に対しての報道特番を出しましょう。
 ネットの噂やデマを統計や数字で間違っている事を分かり易く証明すれば、陰謀論側もいくらか落ち着くでしょう…。」
「都市民への公式情報の公開は、次期都市長のレナが行って下さい。」
 アントニーが言う。
「と言う事は 臨時報告放送でしょうか…後で原稿をお願いします。」
 レナがメディアに言う。
「分かりました。」
 全体として賛成を支持しつつ、反対派の言い分も聞いて対策として受け入れ、双方が納得出来るように誘導する…本当にアントニーは凄い…。
「では、今日の案件は以上ですか?
 それでは、これにて会議を終わります…お疲れ様でした。」
「「「お疲れさまでした。」」」
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