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23.特殊な依頼に特殊な報酬
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「土地の再建をギルドに依頼してきたっていうんですか!」
俺は驚いて聞き返した。
冒険者はなんでも屋みたいなものだし、ギルドは王国との繋がりもある。
でも、だからって領地の再建なんてギルドに頼んでいいのか?
「言いたいことはよくわかるよ。国王もかなり悩んだそうだが、他にいい案も出なかったらしい。話を聞いた時は私もかなり戸惑ったが、陛下とは付き合いもあるし、断るわけにもいかなくてね」
コートランドも思うところはあるようで、複雑そうな表情を浮かべていた。
「では、イースト・エンドの再建を私たちに任せるおつもりなんですか? それはいくらなんでも……」
シアが言葉をにごす。
当然だ。俺たちは所詮ただの冒険者。
荒れた領地を建て直せを言われても困る。
だが、コートランドは首を横に振った。
「いや、難しく考える必要はないんだよ。全体の方針については私とキルナゴフ王国の方で話し合って、ある程度決めてあるんだ。君たちは私たちの指示に従って、現場での仕事をやってくれればいい」
なるほど、そうなのか。
俺たちで再建の方法を考えたりとかはしなくていいわけだ。
コートランドの頼まれたことをやるだけなら、普段の依頼とあまり変わらないか。
とはいうものの、依頼の内容が領地の再建であることに変わりはないわけで……。
俺は隣のシアを見た。
この話にはやはり困惑しているようだ。
俺もまさかこんなことを依頼されるとは思わなかったからな。
さて、どうしたものか。
迷う俺たちを見て、コートランドがふっと笑った。
「悩むのも無理はないが、この特殊な依頼には特殊な報酬が用意されているんだよ。再建が済んだのち、イーストエンドの一部は君たちのものとなる」
「えっ!」
俺もシアも驚きのあまり声を上げた。
「私もただでこんな依頼を引き受けたりはしないさ。陛下と交渉した結果、再建したイースト・エンドの半分を冒険者ギルドの領地とさせてもらうことになった。だからその一部を君たちに渡そうというわけだ」
「依頼を達成したら領主になるってことですか?」
俺は聞いてみた。
俺たちには最強の冒険者になるという目標がある。
土地をもらって領主になってしまったら冒険者は続けられなくなるんじゃないかと不安だった。
「領主というのとは少々違うな。あくまで権限はこちらが持つことになるからね。その代わり君たちは領主としての面倒ごとの類を全てこちらに押し付けてしまえるわけだ。単に広い土地と大きな家が手に入るんだと思ってくれ。まあ、どちらも今は荒れているんだが」
そう言ってコートランドは苦笑した。
なるほど、ギルドはイーストエンドの半分を王国からもらえるから、それを俺たち分けてくれるというわけか。
そっちの方がいいな。領主をやれと言われても困るし。
「広い土地か……」
「大きな家……」
俺とシアはその言葉を反芻してみた。
冒険者なのだから生活が不安定になるのは覚悟している。
でも、それはそれとして、この報酬はいいんじゃないかと思う。
「ああ、もちろん君たちは冒険者を辞める必要はない。というか、君たちのような優秀な人材に辞められては困る」
コートランドが言った。
冒険者を辞めなくていいなら何も問題はないな。
「どうだろう、シア。俺はなかなか面白そうな話だと思うんだけど」
「そうですね。将来のことも考えると、やっぱり家はあった方がいいと思います」
「将来ときたか……」
真面目な顔で言い放ったシアに俺はたじろいだ。
俺だって彼女が何を言いたいのかくらいはわかっている。
でも、この場でそれを堂々と口にするとは……。
「言ったでしょう? 私は面倒な女ですって」
「できるだけ早く、慣れるようにするよ……」
にっこり笑うシアに俺は降参した。
そうか、将来、将来か……まあ、その辺を考えるのは最強の冒険者になってからでいいよな?
「というわけで、お二人への依頼は冒険者ギルドの指示に従って、イースト・エンドを再建していただくこと。そして報酬はお二人の新居となります」
コートランドの隣に控えていた受付係さんが淡々と言った。
「その言い方はやめてください……」
二人の新居という表現は色んな意味でまだ早いので、俺はそう言ったのだが、受付係さんは無表情のまま、
「冗談です」
と言った。
この人、冗談とか言うのか。
俺が愕然としていると、コートランドが笑った。
「彼女はこう見えて明るい性格なんだよ」
「こう見えては余計です」
案外冗談とかが好きらしい受付係さんは、冷ややかに抗議していた。
「では二人とも、この依頼、引き受けてもらえるかな?」
コートランドに問われて、俺もシアもうなずいた。
最強の冒険者になるのなら、領地持ちというのは箔が付いていいんじゃないかと思う。
……将来のことは、まあともかく。
俺は驚いて聞き返した。
冒険者はなんでも屋みたいなものだし、ギルドは王国との繋がりもある。
でも、だからって領地の再建なんてギルドに頼んでいいのか?
「言いたいことはよくわかるよ。国王もかなり悩んだそうだが、他にいい案も出なかったらしい。話を聞いた時は私もかなり戸惑ったが、陛下とは付き合いもあるし、断るわけにもいかなくてね」
コートランドも思うところはあるようで、複雑そうな表情を浮かべていた。
「では、イースト・エンドの再建を私たちに任せるおつもりなんですか? それはいくらなんでも……」
シアが言葉をにごす。
当然だ。俺たちは所詮ただの冒険者。
荒れた領地を建て直せを言われても困る。
だが、コートランドは首を横に振った。
「いや、難しく考える必要はないんだよ。全体の方針については私とキルナゴフ王国の方で話し合って、ある程度決めてあるんだ。君たちは私たちの指示に従って、現場での仕事をやってくれればいい」
なるほど、そうなのか。
俺たちで再建の方法を考えたりとかはしなくていいわけだ。
コートランドの頼まれたことをやるだけなら、普段の依頼とあまり変わらないか。
とはいうものの、依頼の内容が領地の再建であることに変わりはないわけで……。
俺は隣のシアを見た。
この話にはやはり困惑しているようだ。
俺もまさかこんなことを依頼されるとは思わなかったからな。
さて、どうしたものか。
迷う俺たちを見て、コートランドがふっと笑った。
「悩むのも無理はないが、この特殊な依頼には特殊な報酬が用意されているんだよ。再建が済んだのち、イーストエンドの一部は君たちのものとなる」
「えっ!」
俺もシアも驚きのあまり声を上げた。
「私もただでこんな依頼を引き受けたりはしないさ。陛下と交渉した結果、再建したイースト・エンドの半分を冒険者ギルドの領地とさせてもらうことになった。だからその一部を君たちに渡そうというわけだ」
「依頼を達成したら領主になるってことですか?」
俺は聞いてみた。
俺たちには最強の冒険者になるという目標がある。
土地をもらって領主になってしまったら冒険者は続けられなくなるんじゃないかと不安だった。
「領主というのとは少々違うな。あくまで権限はこちらが持つことになるからね。その代わり君たちは領主としての面倒ごとの類を全てこちらに押し付けてしまえるわけだ。単に広い土地と大きな家が手に入るんだと思ってくれ。まあ、どちらも今は荒れているんだが」
そう言ってコートランドは苦笑した。
なるほど、ギルドはイーストエンドの半分を王国からもらえるから、それを俺たち分けてくれるというわけか。
そっちの方がいいな。領主をやれと言われても困るし。
「広い土地か……」
「大きな家……」
俺とシアはその言葉を反芻してみた。
冒険者なのだから生活が不安定になるのは覚悟している。
でも、それはそれとして、この報酬はいいんじゃないかと思う。
「ああ、もちろん君たちは冒険者を辞める必要はない。というか、君たちのような優秀な人材に辞められては困る」
コートランドが言った。
冒険者を辞めなくていいなら何も問題はないな。
「どうだろう、シア。俺はなかなか面白そうな話だと思うんだけど」
「そうですね。将来のことも考えると、やっぱり家はあった方がいいと思います」
「将来ときたか……」
真面目な顔で言い放ったシアに俺はたじろいだ。
俺だって彼女が何を言いたいのかくらいはわかっている。
でも、この場でそれを堂々と口にするとは……。
「言ったでしょう? 私は面倒な女ですって」
「できるだけ早く、慣れるようにするよ……」
にっこり笑うシアに俺は降参した。
そうか、将来、将来か……まあ、その辺を考えるのは最強の冒険者になってからでいいよな?
「というわけで、お二人への依頼は冒険者ギルドの指示に従って、イースト・エンドを再建していただくこと。そして報酬はお二人の新居となります」
コートランドの隣に控えていた受付係さんが淡々と言った。
「その言い方はやめてください……」
二人の新居という表現は色んな意味でまだ早いので、俺はそう言ったのだが、受付係さんは無表情のまま、
「冗談です」
と言った。
この人、冗談とか言うのか。
俺が愕然としていると、コートランドが笑った。
「彼女はこう見えて明るい性格なんだよ」
「こう見えては余計です」
案外冗談とかが好きらしい受付係さんは、冷ややかに抗議していた。
「では二人とも、この依頼、引き受けてもらえるかな?」
コートランドに問われて、俺もシアもうなずいた。
最強の冒険者になるのなら、領地持ちというのは箔が付いていいんじゃないかと思う。
……将来のことは、まあともかく。
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