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「純一、このゲーム知ってる?」

実力テストも終わり、次の日から休み時間の度に湊が話しかけてくるようになった。

でも、やっぱり湊と仲良くして良かったなと思うのは、湊が女の子も連れてくるようになった事だ。

(訂正。湊が連れてくるんじゃなくて、湊にくっついて来るんだな。でも、これで俺も女の子と話せる)

「え? 湊、こういうのもやるんだ、何か意外」

スマホに表示されていたのは、選択肢でエンディングが変わる、ホラーゲームだった。

「そうそう。今度二人で読みながらやろうよ、すっごく怖いよ?」

そこで女子が間に入ってくる。

「えー? 私、怖くて湊くんに抱きついちゃうかもー」

あからさまなアピールに、純一の笑顔が引き攣る。しかし湊は、笑顔のまま動じない。さすが、慣れているだけある。

「あはは、大丈夫、純一としかやりたくないし」

さらりとかわされた女子は、急に用事を思い出して去っていった。諦めの早い女子だな、とその後ろ姿を目線で追う。

(何か、モテるのも大変だな)

純一なら、あそこまでハッキリ言えず、曖昧に笑うだけだっただろう。

「純一」

「あ、司。マメだねー君も」

純一がいつか現れるだろう彼女候補といつまでも仲良くなれないのは、こうして湊が軽くあしらってしまうのと、こちらも休み時間の度にやってくる司のせいだ、と純一は思う。

しかも司は無口なので、純一の所に来ても何を話すでもなく、湊と純一の会話を聞きながら、そばで本を読んでいるだけなのだ。

「司、毎回毎回来なくても良いんだぞ? 俺らの会話聞いてて楽しいか?」

「純一に会いたいから来てるだけだ。会話が不得意なのは分かっている」

「うっ……」

また真っ直ぐ好意を隠さず話す司に、「愛されてるねぇ」とからかう湊。司の好意は恋愛感情なのだとバレていなければ良いが。

「そう言えば、早速テストの答案用紙、返ってきてるよね。二人はどう?」

「うっ……」

純一はまた言葉に詰まる。

本当は、哲朗と同じ高校に行きたくて受験もしたが、落ちてこの高校に入学した。はっきり言って、勉強が苦手なのだ。

「ま、まあまあかなー」

「そっかー、俺はイマイチ」

湊は苦笑しながら答える。司はと言うと、黙ったまま本を読んでいるだけだ。

するとチャイムが鳴る。司は本に栞を挟んで、じゃあまた、と去っていった。

「司、答えなかったな」

純一が呟く。そうなると、聞き出したくなるのが世の常だ。湊と目を合わせてニヤリと笑う。

「でも、とりあえず自分の答案用紙が全部返ってくるのが恐ろしいよ」

純一が言うと、湊はそうだね、とまた苦笑した。

そこで先生が来て、その話はそこでお開きになったのだった。
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