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私の主人、危なげない表情をみせる
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「ーーと、言う訳で私は回復術を覚えました」
父から聞いた話を9割以上端折って、結論だけシニフェ様に報告をしてみると、大きな瞳をこぼれ落ちそうな程広げてぽかんとした顔を見せてくださった。眼が普段よりも一層大きくなり、幼げなげな印象になります。
ただでさえ華奢な体躯なのにそんなあどけない表情するなんて、何を考えているのでしょう!?
男は敷居を跨げば7人の敵ありとは言いますが、こんな顔を見せて外を歩かれては敵は7人どころではありません。危険過ぎます。
「エノームは優秀だ優秀だと思っていたけども、回復術まで覚えるのか」
シニフェ様はそう言って私の方を向いて両手を合わせる。
「え、っちょ、なんですか?」
「拝んでおくんだ!」
「拝!?なんでですか!?」
「このゲームはな、普通のゲームとは違って回復術が使えるのは『神属性』のみなんだ」
出たな『ゲーム』・・・は?神?
「いえ、シニフェ様。私はエノームです。ガスピアージェ子爵家に養子でやってきた、元を正せばただの平民です」
「平民だとか貴族だとか、そんな物は人の持つ素養には関係がないんだ。エノームよ、生まれなど関係ないんだ。才能の有無は爵位や地位の有無に関わららず、生まれるものだ」
キリっとしたお顔で至極真面目な事をおっしゃる。
……いえ仰っている内容は立派ですが、今ソレについて論じる場合ではございません。私よ、しっかりなさい。いつもこうしてキラキラとしたお顔を見せて下さるシニフェ様に見蕩れて全肯定している間に脱線してしまうんです。
心を強く持ちなさい。
心を鬼にしてお話をちゃんと聞き込むのです。残念ながら、シニフェ様の行く末をご存知なのはシニフェ様だけなのです。入念に聞き込み対策を起てなくてはならないのですよ。
「神ーー『属性』とはなんでしょう?」
「ええっとな、そのキャラ特有の分類?魔法とか体術とかの覚え易さって言えば良いのかなぁ?例えばエノームは魔法特化型ではあったんだけど、状態異常系の魔法と速度異常の魔法しかしなかったんだよね。プランは魔法はしないで打撃・・・こん棒とかアクスだった。そんで俺は剣と闇魔法」
「闇?」
「そー、グランメションの家の家系魔術は闇魔法なんだよね。とはいえ、死者を復活させるとかじゃなく、影を操って打撃を与えるとか相手の目くらましをするってレベル」
火や雷はまだ聞いた事があるが、闇は聞いた事はない。そんな種類はないはずーーいや、グランメション家の秘匿魔術なのだから一般には知られていないだけなのだろう。
「シニフェ様はその魔法は覚えていらっしゃるのでしょうか」
闇と言う壮大な系統の魔法、それも他の誰もが使えない種類となれば何かしらのリスクがある気がします。私の回復術も実はリスクがありますし。
「いやー、ゲームで見てたからあるってことは知ってたんだよね。んで、お父様に聞いたんだけどさ」
「グランメション侯爵ですか・・・侯爵は遣り手であるし早々に覚えさせようと・・・」
「『シーたんにはまだ早いから!』って言われた」
「は?」
そう言えば、私はこんなに長らくシニフェ様のそばに居させていただいているけれど、侯爵とシニフェ様が話しているところを数える程しか見た事がありませんね。数少ない謁見の際も「うむ」と仰っていただいたくらいしか記憶がありません。ただ、ガスピアージェの父の話を聞くからに自分の子供に興味は持っているようだとは思っておりましたが・・・・
「シニフェ様、つかぬ事をお伺いしますが、侯爵様になんと呼ばれているんですか」
「ん?お父様もお母様も俺の事を『シーたん』って呼んでるな・・・まて、ちょっとまって。エノーム、正直に言ってくれ。エノームは自分のご両親から「エーたん」って呼ばれていないのか?」
「ーーー」
「おい、笑いをこらえてるな。命令だ、正直に言え」
「・・・呼ばれておりません。エノームと呼ばれております」
「プランは・・・」
「何度かご両親と一緒に居るところを見た事がありますが、普通に『プラン』と呼ばれてました」
プランのお母上は語尾に♡マークがつきそうな声色ではありましたが、かろうじて名前でした。たまに『プランちゃん』というのは耳にしたかもしれません。
おや、シニフェ様の石化石膏の肌がだんだん朱色に・・・
「うわぁぁぁ!!なにそれ!?お父様もお母様も『貴族子弟は家では『名前の始めの文字+たん』で呼ばれるのが習わしです』って子供の頃にめちゃくちゃ真面目な顔で言い聞かされてたんだけど?!え、なに、俺は騙されたってこと?!」
侯爵が、あの影の王とか恐れられている侯爵様が息子の事を『シーたん』と、しかも嘘までついてそう呼んでいるという事に驚愕しますが、出来る事なら私もそう呼びたいです。
まちなさい、私よ。また脇道に逸れてしまいますよ、しっかりなさい。
「シー、ごほん。シニフェ様、その事はご家族の問題ですので帰ってから悩んで下さい。私に言われましてもどうしようも出来ない事柄ですのでこの件は聞かなかった事で終わりとさせていただきます。話を戻させていただきますけども、闇魔術はまだ覚えていないのですね」
「グスっ…うん。それを覚えると、余計に悪役ルートに入りそうだしな。ゲームとは出来るだけ違うように生きていこうと思ってる」
「なら良かったです。そのまま、決して覚えないで下さいね。それが必要な際には私にお申し付けください」
「……言ったら何してくれるんだ?」
「そうですねぇどんな状況で闇魔法が必要になるのか全く想像はつきませんが、代わりの魔法でも開発してみせますよ」
そう言うと、シニフェ様は吹き出されました。
「エノームが言うと本当に開発しそうだなぁ」
しますとも。してみせますよ。
父から聞いた話を9割以上端折って、結論だけシニフェ様に報告をしてみると、大きな瞳をこぼれ落ちそうな程広げてぽかんとした顔を見せてくださった。眼が普段よりも一層大きくなり、幼げなげな印象になります。
ただでさえ華奢な体躯なのにそんなあどけない表情するなんて、何を考えているのでしょう!?
男は敷居を跨げば7人の敵ありとは言いますが、こんな顔を見せて外を歩かれては敵は7人どころではありません。危険過ぎます。
「エノームは優秀だ優秀だと思っていたけども、回復術まで覚えるのか」
シニフェ様はそう言って私の方を向いて両手を合わせる。
「え、っちょ、なんですか?」
「拝んでおくんだ!」
「拝!?なんでですか!?」
「このゲームはな、普通のゲームとは違って回復術が使えるのは『神属性』のみなんだ」
出たな『ゲーム』・・・は?神?
「いえ、シニフェ様。私はエノームです。ガスピアージェ子爵家に養子でやってきた、元を正せばただの平民です」
「平民だとか貴族だとか、そんな物は人の持つ素養には関係がないんだ。エノームよ、生まれなど関係ないんだ。才能の有無は爵位や地位の有無に関わららず、生まれるものだ」
キリっとしたお顔で至極真面目な事をおっしゃる。
……いえ仰っている内容は立派ですが、今ソレについて論じる場合ではございません。私よ、しっかりなさい。いつもこうしてキラキラとしたお顔を見せて下さるシニフェ様に見蕩れて全肯定している間に脱線してしまうんです。
心を強く持ちなさい。
心を鬼にしてお話をちゃんと聞き込むのです。残念ながら、シニフェ様の行く末をご存知なのはシニフェ様だけなのです。入念に聞き込み対策を起てなくてはならないのですよ。
「神ーー『属性』とはなんでしょう?」
「ええっとな、そのキャラ特有の分類?魔法とか体術とかの覚え易さって言えば良いのかなぁ?例えばエノームは魔法特化型ではあったんだけど、状態異常系の魔法と速度異常の魔法しかしなかったんだよね。プランは魔法はしないで打撃・・・こん棒とかアクスだった。そんで俺は剣と闇魔法」
「闇?」
「そー、グランメションの家の家系魔術は闇魔法なんだよね。とはいえ、死者を復活させるとかじゃなく、影を操って打撃を与えるとか相手の目くらましをするってレベル」
火や雷はまだ聞いた事があるが、闇は聞いた事はない。そんな種類はないはずーーいや、グランメション家の秘匿魔術なのだから一般には知られていないだけなのだろう。
「シニフェ様はその魔法は覚えていらっしゃるのでしょうか」
闇と言う壮大な系統の魔法、それも他の誰もが使えない種類となれば何かしらのリスクがある気がします。私の回復術も実はリスクがありますし。
「いやー、ゲームで見てたからあるってことは知ってたんだよね。んで、お父様に聞いたんだけどさ」
「グランメション侯爵ですか・・・侯爵は遣り手であるし早々に覚えさせようと・・・」
「『シーたんにはまだ早いから!』って言われた」
「は?」
そう言えば、私はこんなに長らくシニフェ様のそばに居させていただいているけれど、侯爵とシニフェ様が話しているところを数える程しか見た事がありませんね。数少ない謁見の際も「うむ」と仰っていただいたくらいしか記憶がありません。ただ、ガスピアージェの父の話を聞くからに自分の子供に興味は持っているようだとは思っておりましたが・・・・
「シニフェ様、つかぬ事をお伺いしますが、侯爵様になんと呼ばれているんですか」
「ん?お父様もお母様も俺の事を『シーたん』って呼んでるな・・・まて、ちょっとまって。エノーム、正直に言ってくれ。エノームは自分のご両親から「エーたん」って呼ばれていないのか?」
「ーーー」
「おい、笑いをこらえてるな。命令だ、正直に言え」
「・・・呼ばれておりません。エノームと呼ばれております」
「プランは・・・」
「何度かご両親と一緒に居るところを見た事がありますが、普通に『プラン』と呼ばれてました」
プランのお母上は語尾に♡マークがつきそうな声色ではありましたが、かろうじて名前でした。たまに『プランちゃん』というのは耳にしたかもしれません。
おや、シニフェ様の石化石膏の肌がだんだん朱色に・・・
「うわぁぁぁ!!なにそれ!?お父様もお母様も『貴族子弟は家では『名前の始めの文字+たん』で呼ばれるのが習わしです』って子供の頃にめちゃくちゃ真面目な顔で言い聞かされてたんだけど?!え、なに、俺は騙されたってこと?!」
侯爵が、あの影の王とか恐れられている侯爵様が息子の事を『シーたん』と、しかも嘘までついてそう呼んでいるという事に驚愕しますが、出来る事なら私もそう呼びたいです。
まちなさい、私よ。また脇道に逸れてしまいますよ、しっかりなさい。
「シー、ごほん。シニフェ様、その事はご家族の問題ですので帰ってから悩んで下さい。私に言われましてもどうしようも出来ない事柄ですのでこの件は聞かなかった事で終わりとさせていただきます。話を戻させていただきますけども、闇魔術はまだ覚えていないのですね」
「グスっ…うん。それを覚えると、余計に悪役ルートに入りそうだしな。ゲームとは出来るだけ違うように生きていこうと思ってる」
「なら良かったです。そのまま、決して覚えないで下さいね。それが必要な際には私にお申し付けください」
「……言ったら何してくれるんだ?」
「そうですねぇどんな状況で闇魔法が必要になるのか全く想像はつきませんが、代わりの魔法でも開発してみせますよ」
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しますとも。してみせますよ。
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