悪役令嬢の妹(=モブのはず)なのでメインキャラクターとは関わりたくありません! 〜快適な読書時間を満喫するため、モブに徹しようと思います〜

詩月結蒼

文字の大きさ
30 / 184
第一部

29.さて、どうしよっかな

しおりを挟む


「そうね……あなたの依頼主はだれ?」
「…………」
―――ま、言うわけないよね。

 こんなにまだ小さいのに暗殺者を名乗っており、且つ依頼主がいるということは相当な手練れであることを意味する。
 当然拷問された時の対策や訓練はされているだろうし、素人の私に口を割るとは思えない。

―――さて、どうしよっかな。

 殺気は出てないし、殺す気はもうなさそうな気がするけど……暗殺者だから油断はできない。
 捕まえた後は無計画……と言ってはいるものの、そもそも計画なんてないので何をしようか現在進行形で考え中だ。
 まあでも、とりあえず心を開いてもらわなきゃ何も始まらない気がする。
 ということで、私は少年のことについて尋ねることにした。

「名前は? あなたの名前。なんて言うの?」

 長い沈黙の後、少年は一言。

「……………………1699」
―――イチロクキュウキュウ……?

 数秒ののち、私はそれが数字であることを理解した。

「なにそれ? 私が訊いたのは名前であって、数字の羅列ではないわよ?」
「……名前なんてない。管理番号だ」
―――管理番号……。

 もしかして、と思い少年に尋ねる。

「その数だけ、あなたと同じように暗殺者として育てられている子がいるの?」
「そうだ。俺は前の方だから数字は小さいが、五桁や六桁のやつもいる」

 そんなに暗殺者として育てられる子がいるのか。
 だが、あまり暗殺された話は聞かない。
 それはなぜなのだろうか。

「俺は運が良かったんだ」

 ぽつりと少年が呟いた。

「人体実験も兼ねて、孤児はみんな育てられる。死んだやつなんて数えきれないほどいる。お貴族様にはわからないだろうが、下町のやつらの命は信じられないくらい軽い」
「…………」

 本当に、そういうことがあるんだと知ったのはこの時だった。

「……あなたが依頼を引き受けるのはあなたと同じような境遇の子を助けるため?」
「そうだ。俺は見て見ぬ振りをするお前ら貴族が大嫌いだ。だから殺す」
―――なるほどね。

 なんとなく、少年のことがわかってきた。
 劣悪な環境、命の軽さ。
 少年は平民が自由に生きられるようにしようとしているのだろう。

―――でも暗殺を生業《なりわい》にするのはよくないよね。私たち貴族への怒りは十分わかった。けど、だから殺していいわけじゃない。それじゃあこの子が悪者になる。

 私は少し考えると、ある結論に至った。

「……ねえ」
「なんだ」
「あなた、なんで暗殺者になったの?」
「はあ?」
「だって、暗殺者としての実力があるなら、自分たちを実験台にするやつらを殺して解決するじゃない。これ以上不幸な子が出ないようにあなたが貴族を殺すことができるようになった要因である研究員? を消せばいいだけのことだと思うけど」

 研究員を消した後ならまた別だけど。

「……そうだな。殺せたら違った道に行けるのかもしれないな」
―――殺せたら……?

 不死身とでも言うのだろうか。

「一つ教えてやる」

 少年は間を開けて、ゆっくりと言った。

「―――奴隷契約を結んでいる限り、俺は、俺らは、暗殺をやめることはできない」


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)

犬野きらり
恋愛
私、ミルフィーナ・ダルンは侯爵令嬢で二年前にこの世界が乙女ゲームと気づき本当にヒロインがいるか確認して、私は覚悟を決めた。 『ヒロインをゲーム本編に出さない。プロローグでケリをつける』 ヒロインは、お父様の再婚相手の連れ子な義妹、特に何もされていないが、今後が大変そうだからひとまず、ごめんなさい。プロローグは肩慣らし程度の攻略対象者の義兄。わかっていれば対応はできます。 まず乙女ゲームって一人の女の子が何人も男性を攻略出来ること自体、あり得ないのよ。ヒロインは天然だから気づかない、嘘、嘘。わかってて敢えてやってるからね、男落とし、それで成り上がってますから。 みんなに現実見せて、納得してもらう。揚げ足、ご都合に変換発言なんて上等!ヒロインと一緒の生活は、少しの発言でも悪役令嬢発言多々ありらしく、私も危ない。ごめんね、ヒロインさん、そんな理由で強制退去です。 でもこのゲーム退屈で途中でやめたから、その続き知りません。

前世の記憶を思い出したら、なんだか冷静になってあれだけ愛していた婚約者がどうでもよくなりました

下菊みこと
恋愛
シュゼットは自分なりの幸せを見つける。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...