悪役令嬢の妹(=モブのはず)なのでメインキャラクターとは関わりたくありません! 〜快適な読書時間を満喫するため、モブに徹しようと思います〜

詩月結蒼

文字の大きさ
36 / 184
第一部

35.ひとりごと……

しおりを挟む



「いいですけど、なにか?」

 レティシア様は数秒悩むと、少しだけ前置きを言った。

「答えなくて、結構です。ひとりごとだと思ってくださって構いません。そう、これは、わたくしのただのひとりごとです」
―――ひとりごと……。

 そこまで言う必要のあることなのだろうか。
 そしてレティシア様は私を真っ直ぐ見つめて言った。

「……ユリアーナ様。あなたは、なんですか?」
―――!

 顔に出ていない、と信じたい。
 けど、レティシア様は、おそらく。
 私がユリアーナでないとわかっている。

「……申し訳ございません。馬鹿みたいな質問でした。今のは忘れてください」

 ですが、と続けた。

「ユリアーナ様がユリアーナ様ではないなのであれば、わたくしには知る権利があることを覚えておいてください。では、失礼しますね」

 しばらく呆然としていた。
 脳内でレティシア様の言葉が響く。
 そして私は落ち着いた後、ある疑問について考えた。

―――私は、何者なんだろう……。

 あ、中二病発言ではないからね?
 真面目に考えているからね?
 だが、この問題は前々からふと思うことがあった。
 私は何故、転生したのだろう。
 私はユリアーナ・リンドールなのか。
 それとも、牧野由良なのか。
 ユリアーナ・リンドールを生きる牧野由良というのが一番しっくりくる。
 だけどこの世界には牧野由良を知る人はいない。
 病弱でもないし、だとしたら牧野由良ではないのだろうか。
 けれど、ユリアーナ・リンドールが生まれた時から記憶があるということは、本物(?)のユリアーナ・リンドールの自我はないということになる。

―――いや、待って。ユリアーナ・リンドールの自我は生まれてすぐに牧野由良の記憶に呑まれたって可能性もある。

 元となる自我はユリアーナ・リンドールか牧野由良か。
 答えは簡単に出せない。
 わからないのだから。
 それと、私しかこの世界に転生した転生者はいないのだろうか。
 それもまた変な話のような……。

―――はっ、もしかして、レティシア様がそうだったりして!?

 普通だったら私=転生者にならない。
 私=変人しかありえない。
 でも同じ転生者だったら……。
 ありえなくはない。

『ユリアーナ様がユリアーナ様ではないなのであれば、わたくしには知る権利があることを覚えておいてください』

 私は、転生者であることをレティシア様に話さなければならないのだろうか。
 隠しているつもりはないし、話すことによる損害もない。
 だけど―――。

―――まだ言いたくないな。

 明確な理由はない。
 しかし言う必要はないので、まだ私がユリアーナではないことをレティシア様に教える気はない。
 ただ一つ、はっきりとしていることがある。

―――私はまだ、ユリアーナでいたい。



 パーティが終わり、私はエリアーナと再開して馬車に乗る。
 疲れたのか、揺れる馬車の中で眠ってしまったエリアーナを気にしつつ、夕焼け空を見つめる。
 私がだれなのか、なんて、私にもわからない。
 わからないことだらけだ。
 それでも、私は生きる。
 生きて、生きて、本を読む。
 それが今の私。
 ユリアーナ・リンドールを生きる人だ。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

治癒魔法で恋人の傷を治したら、「化け物」と呼ばれ故郷から追放されてしまいました

山科ひさき
恋愛
ある日治癒魔法が使えるようになったジョアンは、化け物呼ばわりされて石を投げられ、町から追い出されてしまう。彼女はただ、いまにも息絶えそうな恋人を助けたかっただけなのに。 生きる希望を失った彼女は、恋人との思い出の場所で人生の終わりを迎えようと決める。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

処理中です...