悪役令嬢の妹(=モブのはず)なのでメインキャラクターとは関わりたくありません! 〜快適な読書時間を満喫するため、モブに徹しようと思います〜

詩月結蒼

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第一部

39.さて、どうやって少年を逃がそうか

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―――異母兄……腹違いの兄弟か。
「……驚かないんだな、あんた」
「驚いていないわけではないよ」

 なんとなく予想してたから、そこまでね。
 異母兄弟ってことは、色ありは父親かな。
 ま、今そんなことはどうでもいい。
 少年をなんとかしなくては。

「それだけわかれば十分。逃げるよ」
「無理だ」
「しつこいわねぇ……。そんなにエヴァは強いの?」
「ああ、強い」
「…………」
―――知ってるわよ。けど、逃げ出さないと意味ないでしょうが。

 自分から逃げるのは無理みたいだ。
 ならどうしよっかなぁ……あ。

「先に一個教えて。ここが綺麗なのはなんで? 誰のため?」
「! あんたはどこまで知っているんだ」
「え? ぜーんぜん知らない。ほとんど知らない。だから聞いてるんでしょ」

 けれど少年の反応でなんとなくわかった。

「……なんで育てられてるの? 目的は?」

 暗殺者にすることだけじゃない。
 明らかに何か別の目的がある。
 じゃなきゃ、綺麗に保つ必要なんてほとんどないに等しい。

「―――人身売買」

 少年が一言、そう言った。

「幼児の人身売買をしている」
「なるほどね」

 なら納得が行く。
 買うのは金持ちの貴族だ。
 汚いところに足を踏み入れるはずがない。
 だから綺麗にしているのだ。

「俺は今日の売買の目玉だ。売られる」
「そう」

―――さて、どうやって少年を逃がそうか。

 手っ取り早いのはリンドール家に仕えさせ、鍛えて、強くなってからもう一度来てぶっ倒す方法だ。
 強引にやれるけど肝心の本人が嫌がってるし……なら、そうね、賭けてみるか。
 結構危険だが、主要人物メインキャラクターの少年が生きるため、そして私の読書のためなら仕方がない。
 ここは必要経費だ。

「売買用のコインとかあるの?」
「……魔力や宝石を売って、コインに変えられる。1コインの料金は1万円。コインの変換は受付でする。見た目が綺麗な人とか常連はサービスしてくれることもある……って、こんなこと知る必要あるのか?」
「ええ、あるわよ」

 少年の我儘な願いを叶えるためにはこれしかない。

「あなたを買うわ。私が」

 指をたて口元の近く当て、不敵に微笑んで見せる。

「……は? え?」
「ありがとね、少年。裏でコソコソ動かなくても正規の方法であなたを連れ出せばいいだけのことだもの」
「お前、頭大丈夫か!? 自分で言うのもなんだが、俺は高いんだぞ!?」

 おおー、本当に自分で言ってるな、おい。
 頭大丈夫か!? って……私をなんだと思ってるのよ。
 恩人(?)なのにひどいこと言うなぁ。

「最低でも一千万はかかる。そこからさらに値は上がるってのに……てか、金はどうするんだよ! 盗むのか!?」
「そんなことするわけないでしょ。私の魔力を売ればいいだけよ。それに、美人になれば少しはサービスしてくれるのよね?」
「……自分で言うか? 美人って。それにお前は幼女だろ、誰がどう見ても。美人っていうのは色気のある蠱惑こわく的な人のことを言うんだぞ?」

 失礼極まりないことを言う。
 確かに私は幼女で色気のない女ですよ。
 けど、この世界には魔法がある。
 姿形なんて変えられる。
 舐めんなよ少年。
 読書のために鍛えた私の魔法の精度を侮られては困る。

―――【変色】【成長】【促進】【幻惑】【魅了】【創造】【顕現】
「……!!?」

 誰もが認める色気のある女性に、少年が目を大きく開いた。
 甘い香りのしそうな艶《つや》のある蜂蜜色の弱巻毛のロングヘアー。
 神秘的で蠱惑的なアメジストの瞳。
 黒を基調としたセクシーなボンテージのゴシックロリータ風のワンピースに、スタイルを引き出すコルセット。
 網タイツにヒールの靴。
 ところどころに散りばめた美しい蝶や花の飾りはくどくなく美しい。
 そんな美しい魅力的な女性は誰でしょう。
 はい。そうですね。私です。
 ユリアーナ・リンドールが変身した姿です。

「おま、え……」
「うーん、名前、どうしようかしらねぇ。あっ、ヴァイオレットとかどうかしら。ヴァイオレット。うん、いいわね。そうしよ」
「そうじゃなくて!」
「ん?」
―――あ、もしかして恥ずかしくなっちゃったのかな? この胸、大きいもんね。私もびっくりしてるよ。

 もちろん変装した姿なのでわたしの未来の姿とかではない。
 美人さんの方がサービスしてくれるとのことだったので前世の知識を活かしてボンキュッボンのナイスバディなお姉さんにしてみた。
 大きい胸にむっちり太もも、ぺったんお腹の素晴らしいスタイルの女性だ。
 大丈夫だ少年。
 私にもそういう心理の理解はある。
 安心したまえ。
 勝手にそう解釈して私は話を進めた。

「じゃ、またあとでね~」
「っ、おい! 待てっ!」
―――あ、そっか。忘れてた。【復元】
「っ……!」

 少年の枷を元に戻す。

「バレたらまずいもんね。これで大丈夫よ」
「いや、ちが……っ!」
「私もそろそろ見つかったらまずいから行くね。バイバイ」
「あっ、まっ……!」
―――【透明】【隠蔽】【同化】

 私は姿を隠して取引会場を探しに行くのだった。
 しかし少年の部屋から出る時、廊下にエヴァが隠れていたことを私はわからなかった。



――――――――――――

補足/
 病弱で引きこもりのだったくせになんでエロいお姉さんになれるんじゃい、と言われることを考えてここで説明させてください。
 今回ユリアーナがヴァイオレットになるときに創った服は、コンビニの入り口付近にあるグラビア写真や、一時期同じ病室で過ごした男の子に借りた漫画に出てくるみんなが理想のお姉さんの服をイメージして創りました。
 ユリアーナが素敵なお姉さんになれたのは運が良かったからです。基本的に性教育系の知識はありません。
 魅惑的、蠱惑的という言葉を知っているのは、同じ病室で過ごした男の子に教えてもらったからです。

小話/
ユリアーナ「肌の露出面積が高ければいいんでしょ? 高ければ。そしたら自然とエッチなお姉さんになるよ(ドヤ)」
ルア「出す場所によるだろ、出す場所。やり過ぎるとただの変態痴女になるぞ(真剣)」


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