悪役令嬢の妹(=モブのはず)なのでメインキャラクターとは関わりたくありません! 〜快適な読書時間を満喫するため、モブに徹しようと思います〜

詩月結蒼

文字の大きさ
55 / 158
第一部

54.バレてたか

しおりを挟む



―――し、静かになっちゃった……。

 お母様は静かに考えており、お父様はお母様の拘束を必死に解こうとしている。
 ルアは困惑し、エリアーナはおろおろ。
 どうしよう、この状況……。

「わかったわ」

 沈黙を破ったのはお母様だった。

「ユリアーナがそこまで言うのなら、この子は信用できるわ。この子を……ルアくんをユリアーナの従者にすることを、私は認めるわ」
「! お母様……!」
「フェーリ!」

 でも、まだ問題は残っている。
 お父様だ。

「ダメに決まってるだろ!」
「いいじゃないディール。今日はユリアーナのお誕生日だし、ルアくんはいい子よ?」
「何もわからないのにこいつを信用するのは……!」
「ねえディール」

 お母様は蠱惑的な笑みを浮かべた。

「私の予想が一度でも外れたこと、ある?」
「っ……」

 お父様が怯んだ。

―――さすがお母様。強い。

 やはり家庭で強いのは母であると私は再認識した。

「お父様はユリアーナが同じ年頃の男の子と一緒なのがいやみたい」
「っ!? フェーリ……!」
「ふふっ。お父様のことはなんとかするから、ユリアーナとルアくんは心配しなくていいからね~」
「あ、ありがとうございます、お母様」
―――にしてもルア『くん』って……お母様らしい。

 お母様はルアへ向けた〈精霊術〉を解き、こっちに手招きした。
 ルアはお母様を恐れているのか、少しずつ歩み寄る。

「ユリアーナのこと、お願いね」
「っ……、はい」

 ルアははっきりと言った。

「うんうん。ルアくんはユリアーナの言った通り、本当に強いみたいね。素直で頑張り屋さんなルアくんなら、私も安心できるわ」
「お母様……?」
「ルアくんも特別よ?」
「……?」

 そう言うと、お母様は私とルアの頭に手を乗せた。
 そして―――

「素敵な出会いと成長がありますように。―――二人に〈精霊の祝福〉あれ」
「「!」」

 キラキラとした光が降り注ぐ。
 お母様の〈精霊の祝福〉だ。
 ほんのりと光ったものが見える。
 これはまだ未熟な〈精霊〉の姿だ。
 ふわふわしていてかわいい。
 そして本物の〈精霊〉は―――

〈久しぶりですわね、ユリアーナ〉
〈年々フェーリそっくりになってる~。けど、まさか男を連れてくるなんてびっくり〉
〈リリィの言う通りですわ〉
―――ローサ、リリィ……!

 黒髪に赤いドレスのローサ。
 銀髪に白いワンピースのリリィ。
 二人はお母様と一番仲のいい〈精霊〉だ。

―――ルアはそういうんじゃないのに。
〈えー? ないない〉
〈嘘ですわね〉

 全く信じてくれない二人。
 まあ、いいんだけど。

「これが〈精霊〉……」

 ルアは見たことないのか。
 ま、それが当たり前か。

「さっきお父様を抑えてたのがこの二人だよ。花の〈精霊〉のローサとリリィ」
〈よろしくね、ルア〉
〈よろしくお願いしますわ〉
「……お願いします」

 ルアも二人と仲良くなれたようだ。
 あーよかったよかった……で、終われそうにないのはなんでだろう。

「私は認めないからな」
―――あ、そうだった。お父様のこと、すっかり忘れてたよ。

 ローサとリリィがお父様に近づく。

〈もう少しやる?〉
〈やった方が良さそうですわね〉
「ローサ、リリィ」
〈どうするの? フェーリ〉
〈どういたしますの? フェーリ〉
「私の部屋に運んでおいて」
「なっ! フェーリ!」
「もー、あなたは心配しすぎなの。ふたりとも、お願いね」
〈はーい〉
〈わかりましたわ〉
「フェーリ~~っ!!」

 ずるずると引きずられるお父様。
 ちょっと申し訳なく思った。

「お父様のことは気にしないでね。さっき言ったように、私がなんとかするわ」
「本当にありがとうございます。お母様」
「ふふっ。早く慰めに行かないとね」

 お母様は部屋を出た。
 だが、何か思い出したのか、「あ、忘れるところだった」と言って私の元へ来た。

「夜遊びはほどほどにね、ユリアーナ」
「……!」

 小さな声で忠告すると、お母様はまたすぐに戻って行った。

「なんて言われたんだ?」
「…………まあ、色々」
―――バレてたか。

 流石に3日も不在だったのだ。
 バレても仕方ない。
 むしろこれだけで済んでよかった。
 お母様に感謝である。
 気をつけないとなぁ、と思うのであった。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

悪役令嬢に転生しましたがモブが好き放題やっていたので私の仕事はありませんでした

蔵崎とら
恋愛
権力と知識を持ったモブは、たちが悪い。そんなお話。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

隠された第四皇女

山田ランチ
恋愛
 ギルベアト帝国。  帝国では忌み嫌われる魔女達が集う娼館で働くウィノラは、魔女の中でも稀有な癒やしの力を持っていた。ある時、皇宮から内密に呼び出しがかかり、赴いた先に居たのは三度目の出産で今にも命尽きそうな第二側妃のリナだった。しかし癒やしの力を使って助けたリナからは何故か拒絶されてしまう。逃げるように皇宮を出る途中、ライナーという貴族男性に助けてもらう。それから3年後、とある命令を受けてウィノラは再び皇宮に赴く事になる。  皇帝の命令で魔女を捕らえる動きが活発になっていく中、エミル王国との戦争が勃発。そしてウィノラが娼館に隠された秘密が明らかとなっていく。 ヒュー娼館の人々 ウィノラ(娼館で育った第四皇女) アデリータ(女将、ウィノラの育ての親) マイノ(アデリータの弟で護衛長) ディアンヌ、ロラ(娼婦) デルマ、イリーゼ(高級娼婦) 皇宮の人々 ライナー・フックス(公爵家嫡男) バラード・クラウゼ(伯爵、ライナーの友人、デルマの恋人) ルシャード・ツーファール(ギルベアト皇帝) ガリオン・ツーファール(第一皇子、アイテル軍団の第一師団団長) リーヴィス・ツーファール(第三皇子、騎士団所属) オーティス・ツーファール(第四皇子、幻の皇女の弟) エデル・ツーファール(第五皇子、幻の皇女の弟) セリア・エミル(第二皇女、現エミル王国王妃) ローデリカ・ツーファール(第三皇女、ガリオンの妹、死亡) 幻の皇女(第四皇女、死産?) アナイス・ツーファール(第五皇女、ライナーの婚約者候補) ロタリオ(ライナーの従者) ウィリアム(伯爵家三男、アイテル軍団の第一師団副団長) レナード・ハーン(子爵令息) リナ(第二側妃、幻の皇女の母。魔女) ローザ(リナの侍女、魔女) ※フェッチ   力ある魔女の力が具現化したもの。その形は様々で魔女の性格や能力によって変化する。生き物のように視えていても力が形を成したもの。魔女が死亡、もしくは能力を失った時点で消滅する。  ある程度の力がある者達にしかフェッチは視えず、それ以外では気配や感覚でのみ感じる者もいる。

【完結】貧乏子爵令嬢は、王子のフェロモンに靡かない。

櫻野くるみ
恋愛
王太子フェルゼンは悩んでいた。 生まれつきのフェロモンと美しい容姿のせいで、みんな失神してしまうのだ。 このままでは結婚相手など見つかるはずもないと落ち込み、なかば諦めかけていたところ、自分のフェロモンが全く効かない令嬢に出会う。 運命の相手だと執着する王子と、社交界に興味の無い、フェロモンに鈍感な貧乏子爵令嬢の恋のお話です。 ゆるい話ですので、軽い気持ちでお読み下さいませ。

処理中です...