悪役令嬢の妹(=モブのはず)なのでメインキャラクターとは関わりたくありません! 〜快適な読書時間を満喫するため、モブに徹しようと思います〜

詩月結蒼

文字の大きさ
56 / 184
第一部

55.……………………人によるね

しおりを挟む



「あとこれとこれですね。ついでにこれも。頑張ってください、ごしゅじんさま」
―――ううっ、ううっ……仕事多すぎて泣きそう……っ。

 ユリの監視のもと、書類仕事と向き合い始めて30分。
 私は終わりそうにない量に泣きかけていた。
 現実逃避がてらに、なにがあったか一度簡単に説明しよう。
 前提として、私は3日間ルアを助けるためにユリに身代わりを任せて頼んでいた。
 それにより何が起こったのか。
 最悪なことが起こった。
 仕事が溜まっているのである。

「なんでやってくれなかったのよ、ユリ」
「私はごしゅじんさまではありませんから」
―――ちゃんとした子(?)に育ってくれて嬉しいけどこれは別にしてほしかった……。

 仕事と言っているが私は8歳。
 何をするのかと言うと、勉強と魔法と、そしてお茶会や密会などのお手紙作り&返信作りである。
 今は苦手なお手紙作り&返信作り。
 まあまあ、いやかなり、正直言って結構溜まっている。
 溜めまくった私がいけないのだが、うん。

「手伝ってよユリー」
「ごしゅじんさまの前世の記憶に埋まっていた『萌える猫×メイド』とやらになって応援します。……にゃん」
―――うん。語尾の「にゃん」を入れたことには花丸をあげよう。……けど今は素直に喜べないから手伝ってほしい……。

 そうそう。
 気づいたらユリは複製体なのに自我がある珍しい複製体になっていた。
 前世の知識もあるのでこういう話ができる人がいて嬉しい。
 でも、もうちょっと方向性をね、うん、変えてほしかった気もしなくもない。

―――あ、そうだ。レティシア様にも書かないといけなかったっけ。
「ごしゅじんさま」
「んー?」
「大人な猫×メイドと幼女の猫×メイドはどちらが萌えるのですか?」
「……………………人によるね」
「そうなんですか」
―――そこまで考え始めたか。

 ユリは私の複製体なので見た目は私。
 なのでそんな姿で「大人な猫×メイドと幼女の猫×メイドはどちらが萌えるのですか?」と聞かれるとなんとも居た堪れない気持ちになる。
 私はペンを置いてユリに言った。

「……ユリ」
「はい」
「とりあえず黒髪黒目のメイド服姿になって。身長は私と同じくらい。メイド服はサーシャのを真似して。……あ、髪はボブね」
「かしこまりました」

 ユリが黒髪(ボブ)黒目のメイドになる。
 可愛い脇役モブメイドができあがる。
 ユリが私と同じ姿だと、ちょっと出来が良すぎて怖くなることがあるので、普段からはこっちの姿になってもらおう。
 それにしても、さすがユリってところだ。
 ちゃんと注文を反映させてる。

「猫耳と尻尾は同じ黒にして」
「かしこまりました」
「セクシーなのはヴァイオレットになって満足したから、無自覚なあざとかわいい幼女の猫×メイドがいい。上目遣いで手を丸めて」
「上目遣いに猫の手……こうでしょうか?」
「そして語尾に『にゃん』をつけて決めセリフをどうぞ」
「……どうでしょうかにゃん?」
「そう! それ!!」

 ユリは私と思考を共有しているため、私の求めているものを言わなくてもわかってくれる。
 アレンジをするとしたら体のラインを強調させた露出度高めのメイド服に耳の近くでツインテールさせるべきだろうか。
 でも、ユリはAIみたいな無機質な感じだからツインテールはあんまりかな。
 小さめなヘッドドレスにボブが最適かも。

「うーん……ユリ、フリルとリボンの量多めなメイド服にチェンジ。リボンは淡いピンクね。ヘッドドレスのフリルは大ぶりだけど大きすぎるのはダメ」
「承知しました」

 ユリはポンポンと姿を変える。

「いかがでしょうか。……にゃん」

 遅れて語尾をつけるのが初々しい。
 うん、いいね、最高。

「なにやってんだ、あんたら」
「あ、ルア」

 ルアがいつの間にか部屋に入って来た。
 ユリの出来栄えを見てもらうと、「読書以外のあんたの趣味か……」と言われた。

「うーん、趣味じゃない。趣味とは違う」
「じゃあなんなんだよ」
「なんだろね。趣味とはまた違うんだよなぁ。つい熱が入っちゃって」
「あっそ」
―――理解されなかったか。

 ちょっとはわかってくれると思ったのだが、女性と男性ではまた違うのだろう。

―――もしかして、こういうのに興味あるのって、私だけ? それはそれで悲しいような……誰か仲間いないの!?

 すると、ユリがポンポンと私の頭に触れた。

「ドンマイです、ごしゅじんさま。ユリは応援します。……にゃん」
「ユリ~~!!」

 慰めてくれるのはかわいい猫×メイドのユリだけだ。
 そう言えば―――

「お父様の稽古どうだった?」
「……正直厳しいが、学べることが多くて楽しい」

 それはよかった。
 ルアはお父様に「ユリアーナの護衛のくせに弱くてどうする! みっちり鍛えるからな! 覚悟しろ!」と言われてお父様に毎日稽古をつけてもらっている。
 自分よりも強い相手と戦うことが少なかったらしいルアは、お父様の稽古が楽しいみたい。
 充実しているようで何よりだ。

「ああ……そう言えば、手紙が来てたぞ。お茶会のお誘いだとさ」
「えーまたー? 断ろっかな~」

 最近読書できてないし。

「同じ公爵家のフォーレイン家からだぞ? 断れるのか?」
―――ん? フォーレインって……。
「あああっ!!」
「っ……どうしたんだよ」
「全っ然調べられてない!」
「は?」

 返事を出すのが遅れたからなのか、それともいつもの定期的に行うお茶会なのかはわからないが、きっとレティシア様は怒ってる!

―――まずい、まずいよ……何も調べられてない。ユリが居場所を突き止めてるだけだもんな……ううっ、なんて言おう……っ。
「しかも明日だとさ。急な誘いだけど予定空いてんのか?」
「……空いてる」
「残念だったな」
「はああぁ~」

 当分読書はできそうにない。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)

犬野きらり
恋愛
私、ミルフィーナ・ダルンは侯爵令嬢で二年前にこの世界が乙女ゲームと気づき本当にヒロインがいるか確認して、私は覚悟を決めた。 『ヒロインをゲーム本編に出さない。プロローグでケリをつける』 ヒロインは、お父様の再婚相手の連れ子な義妹、特に何もされていないが、今後が大変そうだからひとまず、ごめんなさい。プロローグは肩慣らし程度の攻略対象者の義兄。わかっていれば対応はできます。 まず乙女ゲームって一人の女の子が何人も男性を攻略出来ること自体、あり得ないのよ。ヒロインは天然だから気づかない、嘘、嘘。わかってて敢えてやってるからね、男落とし、それで成り上がってますから。 みんなに現実見せて、納得してもらう。揚げ足、ご都合に変換発言なんて上等!ヒロインと一緒の生活は、少しの発言でも悪役令嬢発言多々ありらしく、私も危ない。ごめんね、ヒロインさん、そんな理由で強制退去です。 でもこのゲーム退屈で途中でやめたから、その続き知りません。

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

処理中です...