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第二部
101.女神な姉と天使な弟
しおりを挟むルアと別れて約5年。
その間に起こった出来事の1つとして一級魔術師になったことはもちろん、弟のフィルが生まれ姉になったことは、かなり大きなことだった。
「お仕事、おつかれさまでした。無事でなによりです」
「ありがとう、フィル。……その本はどうしたの?」
「! えっと、姉さまと読みたくて……」
「~~っ」
可愛さのあまり思わず抱きしめる。
「わっ……姉さま? ユリアーナ姉さま?」
―――私の弟、マジ天使……っ!
フィルはエリアーナに似てとても優しい子に育った。
そしてなんと、私と同じ本好きなのだ。
と言っても読むのは絵本がメインだけど、それでもこうして話せるのは嬉しい。
―――容姿はお父様そっくりだけど、中身はお母様そっくりなんだよね~。
いつか、ぷにぷにスベスベの肌がお父様みたいに鍛えられた美丈夫になるのかもしれないと思うと、そうなる前にたくさん触っておきたくなる。
「……それにしてもよくわかったね、私が帰って来たこと」
「たまたま外にいたこともありますが、一番は〈精霊〉に教えてもらったからです」
「ああ、だから早かったのね」
フィルは〈精霊〉が見える。
お母様が〈精霊の愛子〉であることが大きな理由だろう。
私とエリアーナはお母様から〈精霊の祝福〉を受けないと見えないし、見えるのは少しの間だけ。
そう言うことも考えると、フィルはお母様似なのだろう。
フィルは〈精霊〉との相性がいいらしい。
優秀な〈精霊使い〉になれるだろうが、お父様曰く、武芸の才能もあるらしいので騎士になることも考えてほしいと言っている。
―――どんな大人になるのかはわからないけれど、フィルは優秀だから何にでもなれるんだろうな。
すると―――
「ユリィ~! フィル~!」
「エリィ姉さん……!」
「エリアーナ姉さま!」
フィルと同じ亜麻色の髪。
ルビーの瞳。
15歳になったエリアーナは「可愛らしい」から「美しい」と形容される美人になった。
「おかえり、ユリィ。お仕事お疲れ様」
「~~その言葉だけで行って来てよかったって思える……っ」
「大袈裟だなぁ、ユリィは」
大袈裟でもなんでもない。
―――幸せすぎる。
姉弟に恵まれてるって、こんなにも素晴らしいことだとは知らなかった。
もはや女神よりも女神な姉と、天使よりも天使な弟だと思う。
実際に女神様や天使に会ったことはないが、多分、見た目の時点でエリアーナとフィルが勝つと思う。
うんうんと頷く私。
「あ、そういえば、ユリィ宛にお手紙が来てたよ。部屋に届けてあるって」
「ほんと? ありがとエリィ姉さん。……ごめんね、フィル。本を読むのは午後でもいい?」
「では、1時にいつもの場所で。エリアーナ姉さまはどうしますか?」
「私はダンスの授業が入ってるから、今日は無理かな……。あっ、でも3時には終わるからそしたらみんなでお茶でもしない? 今日はいい天気だし、外で楽しみましょう」
「! とても素敵です」
「じゃあ、そうしよっか」
エリアーナとフィルと分かれ自室に戻る。
机の上に置かれた3センチほどの手紙の束が目に入った。
―――うへぇ……これ全部、私宛の手紙なの?
差出人だけ先に確認して優先順位をつけ並び替える。
―――本当は手紙の確認と返事を書いてほしいんだけど……ユリはいい子だからちゃんとやりなさいって言うんだよね。
いい子なのは良いことだけど……うーん。
なんとも言えない気持ちになる。
―――フィルとエリィと約束したし……頑張るとするか。
私は紙とインクを取り出し、報告書の作成を始めた。
―――――――――
裏話/
ユリアーナの弟をフィリウスに命名するまでかなりの時間がかかりました。多分、あくモブの登場人物の中で一番迷いました。それぐらい難しかったです。
補足/
ルアと別れて約5年、とありますが、ユリアーナはまだ誕生日を迎えてないので13歳ではなく12歳です。他のキャラも同様です。
イメージとして、
・エリアーナ…高校1年生
・ユリアーナ…中学1年生
・フィリウス…保育園・幼稚園児
になります。
身長はエリアーナから順に160、155、100センチぐらいです。ちなみにブライトやノーブル、アルトゥールは170センチ前後です。
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