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捜索
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しおりを挟む「風紀に通報しやがったのか!」
「おい、マズいぞ!あいつらを相手にするのは分が悪い!」
「ダチが一回捕まった事会ったけど、マジで死んだ顔して戻って来たんだけど」
「逃げた方が良いんじゃね⁈」
「……おーおー。流石、龍たちの威光は凄いってか、あの子達、悪い子にどんなお仕置きしてきたのさ、この怯えよう」
いきなり浮足立って、逃げるべきか、聖月を捕まえるべきか、迎え撃つべきか、小さなグループに分かれて話し合いが始まった。因みに、一部はとち狂ったのか少年を今の内に襲おうとしているようだ。そんな彼らをみて、蟀谷を引きつらせる聖月。よくよく馬鹿な事をやらかしてはNukusのメンバー――特に煌に取っ捕まっては悪戯仲間の颯斗と一緒に説教とお仕置きを受けていた聖月である。何となく想像はつくが、正直、引く。
あはははは。と乾いた笑いで遠い目をしていた聖月だが、いち早く逃げ出そうとする集団を目敏く見つけ、素早く近づくと足払いをかける。
「やろう!」
「はいはーい。残念だけど、逃がしはしないよぉ。そんな面白くない展開にするわけないじゃーん」
「そこをどけ!」
勢いよく突っ込んでくる一回り以上大きい体をひらりと交わし、その勢いを利用して地面に叩きつけ意識を奪う。冷や汗をかいて立ち竦む男たちは今更ながらに後悔し、聖月の言葉を思い出していた。
「面白くない展開って」
「えー。だって、それじゃあ、善良な一般生徒が義務を果たしただけになっちゃうじゃん。暴れる時のモットーは、"人の不幸は何とやら"。って事で。俺、もっと、楽しみたいから、付き合って?」
顔の前で手を組んで可愛らしくおねだりする聖月。しかし、その内容は実に可愛らしくない。
つまり。ただ、通報するだけでは男たちの不幸顏――極端に言えば、絶望した顔を見られない。そこで、どうするか。今にも風紀が来て、怖ろしい目に遭うのではないかと怯えつつ、この場から去る事を許されなくすればいい。聖月を倒せば問題ないかもしれないが、既に大の男が二人あっさりとやられている。次はどんな風に倒してほしい?と顔だけでなく声出して問うてくる聖月。あんまりなモットーと相まって絶望しかない。聖月の思うつぼで、玩具にされている。
「っちぃ!こんな細っこいのに負けられっかよ!」
「っ!そうだ!みんなでやりゃあ、多勢に無勢!勝てない訳ねぇ!」
「お!難しい言葉をよく知ってるじゃん!その調子でかかっておいで!」
火に嬉々として油を注ぎまくりながら荒くれ者たちを返り討ちにしていく。この程度であれば数など問題なく倒す事が出来る。が、それを知らない馬鹿たちが向かってくるのを楽しむ。ここしばらく喧嘩が出来なかった事への鬱憤と、お目付け役の居ない解放感、知名度が上がった事で無鉄砲に向かってくる馬鹿が減っており残念に思っていたが久々にそれを楽しめる、という事で、本人も思った以上に興奮していたようだ。最早手の施しようのない勢いで男たちを地に沈めていく。
因みに。時折聖月が接触した男の耳元に何かを囁くと、その男の顔色が一気に失われ抵抗なく鎮められる。
「うふふ。ただ単純に気絶するんじゃあ、楽しくないもんね。楽しませてくれたお礼に、熨斗付けてあげる!」
耳打ちされただけでポカンと口を開けて魂を飛ばしているヤツがいる。それを見る限り、つけられた熨斗はろくでもないのはすぐに想像つく。
要らねぇよ!
男たちの心情が、これ以上なく一致する。とは言え、向かっていく以外の選択肢があるわけもなく。
「進んでも地獄。引いても地獄。どうしろと⁈」
「耳ふさげ!まだましだ!きっと!」
「もう嫌ぁ!」
「あはははは!もっともぉっとかかって来なよ!」
一人倒すたびに元気になっていく錯覚が見える。とうとう頭を抱えた男たちは全力で叫んだ。
「誰だよ!こんなやつ野放しにしたの!」
「お目付け役!しっかり見張っとけよ!」
「つか、コイツこそ風紀に取り締まられるべきだろ!」
ちなみに、すでに状況から取り残され、煽情的な姿で放置されている少年が、キャパを越えた頭で考えたことが。
「いや、自分の事棚に上げて言う事?って言うか、一応悪い事してないし、彼……」
であったとか、なかったとか。まぁ、余談である。
**********
あれ、想像以上に被害者君が空気になってた……
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