学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき

文字の大きさ
74 / 84
番外

5

 「あはは。最後の高宮の顔みた?最高だったね」
 「ああ。俺たちとの付き合いが長いわりには良く利用されるよな」

 無事に会場を抜け出した二人は、さっさと真宮邸に戻って来ていた。

 「あれ?このあと用事あるんじゃなかった?」
 「さぁ。何のことやら」
 「ふふ。嘘つくなんて悪い人」
 「今更。何なら、俺と過ごすっていう用事があるって事にするか?それなら嘘にならん」

 部屋に戻るや否や押し倒され、聖月はクスクス笑った。シレっとした顔で覆いかぶさってくる男の頬に手を当てると引き寄せる。ゆっくりと唇を重ねてから解放すると、飢えた獣の瞳とぶつかった。ほんと悪い人、とつぶやいた聖月は方眉を上げた。

 「龍が見合いに俺を行かせるのが悪いんじゃん」
 「そもそもお前がよそ見をするからだろう」

 今回の騒動の真相。それは実にくだらない。

 事の発端は、蓮が言っていたデート。学生から社会人となり、真宮当主と会社社長としての仕事が出来てから二人の時間は減った。その忙しい間を縫ってデートに出かけたのだ。

 「久しぶりのデートだったのに、あんな奴に見惚れるのが悪いんだろう」
 「いや、一般論的にイケメンでしょ。イケメン俳優として売ってるんだから」

 偶然街で出くわした人気俳優。何気なく、流石にイケメンとしてもてはやされるのが分かるよねーと聖月が零したせいで、竜崎の機嫌が急降下。独占欲の強い男が嫉妬をするとろくなことにならない。

 「んなにイケメンと美女が好きなら見合いでもすればいいと思って気を回してやったじゃねぇか?」
 「いや、確かにイケメンと美女はいっぱいいたけど」

 お偉方との会食では、聖月にすり寄りたい老害が己の子や孫を連れてくるのは分りきっていた。そんなにイケメンが好きならいくらでも見て来ればいいだろう、と拗ねた嫉妬丸出しの男の浅はかな計画である。

 「しかも、会食嫌いなのは龍だけじゃなくて俺もなのに、さっさと一人で逃げるしさ。……って言うか!そんなのどうでもいいけど、その後全然かまってくれなかったじゃん!」
 「そもそも、その会食から今回の話を持って来たのが悪いだろう。お前の所為じゃねぇか」

 行かなければならない会食だったから行ったものの、竜崎の嫉妬から色んな人間に媚びを売られるわ、自分はさっさと逃げられるわで鬱憤が溜まったらしい。

 そして、転んでもただは起きないのが聖月。その会食で面白い話を聞いてきた、と新規事業の話を竜崎に丸投げ。お偉方と真宮当主からの話となれば竜崎も断れず、仕事漬けの日々。それで構ってもらえない、と駄々をこねられても不可抗力だろうというのが竜崎の言い分だが、聖月には通用しない。

 「だから、今回の話を進めてあげたのさ!」
 「やっぱりあれはそういう意味だったか……」

 自分を放っておくほど仕事が忙しいの、そんなに仕事が好きならもっと増やしてやる!と今度は拗ねた聖月の浅はかな考え。

 纏めると、イケメンに目を眩んだ聖月に対する竜崎の嫉妬が発端となり、廻り巡って最終的に仕事に追われる羽目になった竜崎が構ってくれないので面白くないと拗ねた聖月が暴走したという。つまりは、高宮達の想像の通り、完璧に恋人同士のじゃれ合い痴話げんかである。

 恐ろしいのは、たかが痴話げんかに周囲を巻き込んだ騒動にまで発展させる天才馬鹿っぷりだろう。しかも、周囲にダメージを与える癖に自分達の評価はちゃっかり上げて信者を増やすというオマケ付き。しかも真相を知る者にはあまりのくだらなさで追加ダメージ。

 「だから、時間が上手くとれるようにパーティーに呼んだだろうが」
 「ま、さっさと抜け出せば時間が作れるしね。パーティーだから時間が読めないし、後に予定入れないでって言えば皆納得するから。丁度いい餌高宮がいた事だしね」

 と言う訳で現在に至る。後始末まで高宮に投げた事に対する罪悪感は全く無い様だ。

 機嫌を直せ、と甘く口付けられて嬉しそうな聖月。最愛の恋人が腕の中で自分だけを見つめている状況に満足げな竜崎。忙しい二人の、貴重な逢瀬の時間。ゆっくりと二つの影が重なっていき、空気の甘さが濃度を増す。長くて短い夜の訪れだった。



 「つか、アイツらはもっとマトモな痴話げんかが出来ないのか?!なんでいちいち話を大きくしないと気が済まない?!」
 「第一次粛清ファーストパージの時もそうでしたが……全く、人騒がせというか、周りを巻き込まずにやってくれませんかね」
 「なんか、すみません……」

 大勢の人に囲まれた高宮がぐったりと潰れて呻く。今回の一番の被害者は、確実に振り回された相手企業と見事に利用された彼だろう。嵯峨野も、いちいち喧嘩が壮大すぎると胃が痛い様子。

 よくよく見れば些細な話なのに、必ず国家規模・五大名家規模の騒動を引き起こす。今回も、真宮・高宮両家屈指の会社の規模拡大がかかった大事、成功した方はバックに控える家が勢力を拡大できる。彼らが文句を言うのも無理はない。そんな二人に恐縮した様子で謝る蓮。あの二人を相手にした後だと天使に見える、と涙ぐんだ二人が蓮を構い倒す。

 「本気でそろそろウチ高宮に移籍しません?」
 「その方が良い気がしてきました……」

 そんな一幕があったとかなかったとか。兎にも角にも、結論は一つ。

 悪戯好きで腹黒な天才馬鹿が喧嘩を始めるとろくなことにはならない。聖月と竜崎の周囲の人間の合意である。


********
という事で、後日談短編でした。リクエストしてくださいましたsaya様、ありがとうございました。

いかがだったでしょうか。本当は長編の方が良いのでは、とか本編では名前のみの春宮・大宮を出したら、などとも考えたのですがここに落ち着いてしまいました。お楽しみいただけたら嬉しいです。

この後、本編に出せなかったお話を出して、終了となります。宜しければ、おつきあいください。
感想 12

あなたにおすすめの小説

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない

波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。 異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。 強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。 彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。 しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。 「俺に触れられるのは、お前だけだ」 呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。 となります。

この僕が、いろんな人に詰め寄られまくって困ってます!〜まだ無自覚編〜

小屋瀬
BL
〜まだ無自覚編〜のあらすじ アニメ・漫画ヲタクの主人公、薄井 凌(うすい りょう)と、幼なじみの金持ち息子の悠斗(ゆうと)、ストーカー気質の天才少年の遊佐(ゆさ)。そしていつもだるーんとしてる担任の幸崎(さいざき)teacher。 主にこれらのメンバーで構成される相関図激ヤバ案件のBL物語。 他にも天才遊佐の事が好きな科学者だったり、悠斗Loveの悠斗の実の兄だったりと個性豊かな人達が出てくるよ☆ 〜自覚編〜 のあらすじ(書く予定) アニメ・漫画をこよなく愛し、スポーツ万能、頭も良い、ヲタク男子&陽キャな主人公、薄井 凌(うすい りょう)には、とある悩みがある。 それは、何人かの同性の人たちに好意を寄せられていることに気づいてしまったからである。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 【超重要】 ☆まず、主人公が各キャラからの好意を自覚するまでの間、結構な文字数がかかると思います。(まぁ、「自覚する前」ということを踏まえて呼んでくだせぇ) また、自覚した後、今まで通りの頻度で物語を書くかどうかは気分次第です。(だって書くの疲れるんだもん) ですので、それでもいいよって方や、気長に待つよって方、どうぞどうぞ、読んでってくだせぇな! (まぁ「長編」設定してますもん。) ・女性キャラが出てくることがありますが、主人公との恋愛には発展しません。 ・突然そういうシーンが出てくることがあります。ご了承ください。 ・気分にもよりますが、3日に1回は新しい話を更新します(3日以内に投稿されない場合もあります。まぁ、そこは善処します。(その時はまた近況ボード等でお知らせすると思います。))。

聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。 三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。 そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。 BL。ラブコメ異世界ファンタジー。

異世界オークションで売られた俺、落札したのは昔助けた狼でした

うんとこどっこいしょ
BL
異世界の闇オークションで商品として目覚めた青年・アキラ。 獣人族たちに値踏みされ、競りにかけられる恐怖の中、彼を千枚の金貨で落札したのは、銀灰色の髪を持つ狼の獣人・ロウだった。 怯えるアキラに、ロウは思いがけない言葉を告げる。 「やっと会えた。お前は俺の命の恩人だ」 戸惑うアキラの脳裏に蘇るのは、かつて雨の日に助けた一匹の子狼との記憶。 獣人世界を舞台に、命の恩人であるアキラと、一途に想い続けた狼獣人が紡ぐ、執着と溺愛の異世界BLロマンス。 第一章 完結 第二章 完結 第三章 完結

推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです

一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお) 同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。 時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。 僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。 本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。 だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。 なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。 「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」 ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。 僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。 その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。 悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。 え?葛城くんが目の前に!? どうしよう、人生最大のピンチだ!! ✤✤ 「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。 全年齢向けの作品となっています。 一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。 ✤✤