Remember me, Sempai!!!!!

蛇腹木ユリカ

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利き手でぶん殴っちゃいます

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言ってるそばから笑いが止まらなくなり、リカコはすぐに半身を起こした。
手の甲で口元を隠して、声を出さずに笑い続ける。

ときおり鋭く息を吸う音が、なんだかしゃくりあげているように聞こえた。
お腹をおさえてリカコは笑いを堪えようと努力するけれども、痙攣は簡単には収まりそうになかった。

「リカコ……」

タクミが情けない声を上げる。
彼の手は、リカコが身を起こした拍子に服の中から出て行ってしまっていた。
今はタクミの腹の上でだらりとしている。

リカコは半ば笑ったまま返事をした。

「は、はい、なんでしょうっ」
「キスしよ」
「ぜっったいに嫌です」

リカコの笑いはぴたりと収まった。
鈴を転がすような声で笑っていたのが、急に感情の抜け落ちたような声になったのでタクミは息を呑んだ。

リカコも自分の声音の変わりように少しだけ驚いた。
そもそも、どうして笑いがこみあげてきたのかもよく分かっていなかったが。

リカコが自分の変化に戸惑っている間に、タクミは「だよな~」と言って自分の掌を両目に当てた。
そのまま数呼吸分、沈黙が流れる。

ああ、とうとう寝落ちしてしまった、とリカコが肩を落としかけた時、タクミが声を発した。
リカコは顔を上げた。

「おっぱいさわらせてくれてありがとうございました」
「……どういたしまして」
「っあ~、忘れたくねぇなあ」

大きな声でそう言いながら、タクミは手のひらを顔の前で合わせた。
そうやって見えたタクミのまなざしは真剣に見えた。
酒に酔っているようには見えなかった。

「わすれたくねーなぁ」

けれどそれも一瞬のことで、タクミはあくびをすると、今にも寝てしまいそうな眼でリカコを見上げるのだった。
リカコはほろ苦い笑みと共にタクミの顔に手を添えた。
きっとタクミには慈愛の笑みに見えているのだろう。

「リカコ……今度会った時にオレが忘れてるみたいだったら、その時は、なんにも言わずにぶん殴ってくれ」

ショックで思い出すかもだし、と言いながらタクミは夢の中に吸い込まれていくように目を閉じた。

「うんうん、分かりました。もしその時がきたら利き手でぶん殴っちゃいます」

でも、大丈夫です。
タクミせんぱいは今日のことを忘れませんよ。
リカコは続けて言った。

だって、

「忘れさせないようにしてあげますって言いましたよね? あたし、良いこと思いついたんです」

右耳に髪をかけると、リカコは身体を沈め、タクミの首筋に顔をうずめた。
タクミの皮脂と、酒のにおい。

リカコは首筋に唇を寄せて、痕がしっかり残るように吸い付いた。
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