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第5話
英雄の剣、手に入れました
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風が吹いて、丘の上の霧を運んでいく。
神殿の正面入口の前に二つの巨大な石があって、片方は柱のように長く伸び、片方はずんぐりと丸かった。なにかのしるしだろうか。
「ごめんくださーい……」
琥珀は石を避けて入口を覗きこむ。神殿の周囲には花が植わっており、黄金の糸を織りこんだローブを着た女性が花壇周りの箒がけをしていた。琥珀とそう年頃の変わらない娘で、細かく巻いた黄金の髪に縁どられた顔は神々しいくらいに美しい。
(どこかの王女様かしら。それとも、精霊?)
琥珀が見とれていると、相手も琥珀にじっと目を凝らして、熊の両手に気づいたらしい。鮮やかな緑の目を見開き、箒を放りだして駆け寄ってきた。
「そこのあなた……!」
「ご、ご、ごめんなさい!」
呪われた身で敷地に入りこんだことを怒られるのか。逃げ腰になる琥珀に飛びつくようにして、娘は琥珀の腕をつかんだ。
むに。
「はう」
むずかゆいような妙な感覚が腕に伝う。娘が琥珀の肉球を両手で押したのだった。
むに、むに。
「ちょ、ちょ、ちょっと、勘弁してください。それ、むずむずするの」
琥珀が身をよじって訴えたところ、熱心に肉球を揉んでいた娘ははっと我に返ったようで、手を放した。照れ隠しのようにさらりと黄金の髪を掻きあげる。首元に巻きついた黄金の首環がきらりと光りを弾いた。
「悪かったわ。虹の国の姫は手が熊になっていると聞いて、触り心地はどうなんだろうってずっと考えていたから……ああほんと、熊。毛皮の手入れはしていないの? 私に任せてくれたならふわふわのふかふかにしてあげる」
「ちょっと待ってください……聞いたって、だれから?」
「ディランよ、もちろん。あなたはディランの婚約者の琥珀ではないの」
まっすぐな瞳で名前をあてられ、琥珀はかえって身構えてしまった。いったいこの美人はディランのなんなのか。
「ドルイドたちは魔法を知ったつもりでいるけれど、彼らが呪いを解けたためしなんてありはしないのよ。私に会いにこなかったら、きっとあなたは一生牛舎勤めをさせられていたでしょうね。私に助けを求めるようにとディランが勧めたのね?」
「あの……いいえ。ただ、アルティオさんというかたに、ここに来たらわたしの知りたいことがわかると教えてもらったものだから」
「アルティオですって! 彼女は熊の女神で、あなたに呪いをかけた張本人ではないの」
「えっ!」
頭を殴られたような衝撃だった。美女はほっそりした首を傾げて琥珀をじっと見る。
「体の一部を動物に変えるというのはその動物の守り神が行う罰の手段だもの。だからあなたの手が熊に変わったのは、アルティオの怒りを受けたからだと思うわ」
ごんごんと頭を立てつづけに殴られたような心持ちになったが、琥珀は来し方を振り返ってみても、熊の機嫌を損ねるような真似をした記憶がなかった。
それにアルティオと名乗った老婦人は、女神であれ人であれ、琥珀にいろいろな天気の素敵さを教えてくれたし、精霊を見せてもくれた。にこにこ笑っていて、人を呪うような心を持つ女性には見えなかった。
琥珀は首を横に振る。
「違うわ。わたしの手がこうなったのは、妙な苺を食べたからだもの。わたしの会ったアルティオさんはそういう人じゃない」
「私の言葉よりも自分の見たものを信じるの?」
「信じるわ」
「気に入ったわ」
琥珀はきょとんとした。なにが気に入った? 美女の神秘的な美貌が屈託ない笑みで崩れる。
「脅しにホイホイ引っかかるような娘なんて助けがいがないもの。ディランの花嫁になるならなおさら」
「わたしを試したの?」
「ほとんど真実よ。アルティオは熊の守り女神、神罰で体を変えられるのはよくあること。だけれど、アルティオが私のところに来いと勧めたのなら、あなたの呪いにはなにか別の理由があるということでしょう」
琥珀は美女をじっと見た。非の打ちどころもないくらい神々しく、どこかの王女ではないというなら、きっと。
「……あなたも女神なの?」
「わたしは予言者のシアヴィル。この神殿に仕えて剣を守っているのよ」
「剣……」
と、琥珀の知りたいこととどういう関係があるのだろう。とはいえ、アルティオの話していた巫女はこの女性で間違いないようだ。
「いらっしゃいな、琥珀」
シアヴィルが踵を返す。琥珀は慌ててあとを追った。
神殿の壁は薄い石を積み重ねて作られており、内部は暗かった。床は踏み固めた土で、ひんやり冷たく、中心に向かってやや下りに傾斜している。
「シアヴィルは一人でここを守っているの?」
「シアと呼んでくれて構わないわ。年寄りのドルイドが五人ばかりいるけれど、女は私だけ。年寄りは部屋にこもって教義の研究ばかりしているわ」
「神殿に呪われたものを入れたりしたら、あなたが叱られない?」
「アルティオの呪いではないと言ったでしょう? だったら構わない。それに、あの剣はあなたのものでもあるのよ」
どういうことだろうか。考えこむ琥珀に、シアヴィルは何気なく付け足した。
「ディランもしょっちゅうここに来ているわ」
琥珀の胸がちりっと痛んだ。大きらいと一方的に告げられて放っておかれるなんて、だれだって傷つくことだろう。
(もとはといえば彼がわたしを放っておいて、エルクウァルにひどいことを言うから……だけど、ディランだって牛舎に来てくれたところだったんだわ。謝ろう……許してくれないかもしれないけれど)
通路の先がぼんやり明るくなっている。シアヴィルは足をとめ、琥珀に先に行くように促した。
周囲はまだ暗いので、琥珀は一歩一歩慎重に歩を進める。
「ここは剣の神殿。千年の昔、英雄ルーがこの地を去るとき自らの剣を岩に突きさし、こう言い残していった。『我が再びこの地に還るとき、剣の封印は解かれる』」
吹き抜けから外の光と風が入りこんでいるようだ。通路の行き止まりの空間の中央に黄色っぽい大岩があり、その側面から、斜めに剣が突きだしている。
古びた鉄の剣だった。岩に近づくと、くらりとめまいを感じたものの、剣そのものはさして神聖な感じはしない。ただ、柄の部分は大勢の人に握られてきたらしく、黒っぽい艶を帯びていた。
ディランはこの剣のもとを訪れて、なにを思うのだろう。
「この剣を抜くと、どんないいことがあるの?」
「剣の真下に古代の魔法が眠っているというわ。それを手に入れたものは、この地に残るどんな魔法よりも強い力を手に入れることができる……代々の王はその力が欲しいがために、即位のときにこの剣を抜こうと試みてきたわ。けれど、どの王も抜けなかった」
「……ディラン様は、なんのためにここに来ているの」
「欠けたものを手に入れるため」
シアヴィルの声はすてきだが、響きは冷ややかだった。彼女は知っているのだ……アルティオが言ったとおりのことを。ディランはまったく魔法を使えない、そのための魂を持っていないと。
王族に欠けたところがあってはならない――コルマクの言葉だ。
「ディランは生まれたときに母親に呪いをかけられて、魂を失ってしまったのよ。見た目は普通の人間と変わらないけれど、彼には精霊が寄りつかないし、魔法も使えない……その呪いを解くことができるのはかけた本人か、より強い魔力を持つ魔法使いだけ。だからコルマクは、後継ぎのために古代魔法に目をつけたの」
だからディランはこの神殿を訪れ、何度も剣を抜こうと試みている。
力をつけ、武芸を磨き、勉学を修め、それだけでは足りないとなったら……。
琥珀は首を傾げた。
「そんなふうに努力を続けなければならないかたが、どうしてわたしを娶ろうなんていう気持ちになったのかしら」
「簡単なことなのよ。その剣を残した王は、海を渡って虹の国の王になったという伝説があるから」
目を剥く琥珀に、シアヴィルは落ちついた微笑みを返した。
「あなたの国にはそういう言い伝えが残っていない?」
「『王は虹を渡って、湖のそばに降りたった』というものがあるわ……ということは、つまり、わたしのずっとずっと前のご先祖様はこの魔法の国の出身だったのね? ディラン様はだからわたしを……」
「ドルイドたちが虹の国を見つけだし、あなたを手に入れる算段を整えたの。英雄ルーの子孫のあなたなら剣を抜ける、そして得られた古代魔法はディランの呪いを解けると……期待したのよね。先にあなたが呪いをかけられてしまったというのは皮肉だけれど」
「信じらんない」
琥珀は岩を貫く剣に向きなおった。
ただこれを抜く力を得たいがために、自分は求められたのか?
ディランが琥珀自身を見初めて求婚したわけじゃないことは知っているし、政略結婚がそういうものだということもわかっている。
けれど、胸がもやもやした。結婚をする前からディランにとって、琥珀よりもこの剣のほうが大事だと思うとやりきれない。
(おまけにわたしが呪われちゃったから、ディランはわたしと結婚するわけにもいかなくなって……『ほかの手段』とコルマク様がおっしゃっていたのはこのことだったのね。はじめからわたしには、剣を抜く目的以上のことは期待されていなかったんだわ)
顔が胸につくほどうなだれて、もやもやを呑みこもうとしたけれど、抑えきれない。
琥珀はきっとして顔をあげた。
「シア。わたしがこの剣を抜いてもいいの?」
「ええ。あなたにはその資格があるわ」
許可を得た琥珀は、熊の手で力強く剣の柄をはさんだ。これが抜けたらお役御免なら、いっそさっさと役目を果たしてしまったほうがいい。そして、ディランの欠けているものを補い、琥珀自身の呪いもといてしまおう。
(その上で国に帰されるなら、その時はその時よ。それにしても石、堅い……!)
顔が真っ赤になるほど力を込めて、琥珀は剣をぐりぐりと揺らした。手が熊になっているぶん、普通のときより握力はあるはずだ。ごくかすかながら、剣が動く手ごたえがあるのは気のせいだろうか。
「うー……ん……くっ」
シアヴィルが笑っている気配がする。過去何度も、ディランもこうやって剣を抜くことを試みたのかもしれない。
「くくっ」
腕だけでだめなら足も使ってみようと、琥珀が岩に膝をかけたときだった。
――シア! シア、いるのか。
だれかが来る。見つかる前になんとかしようと、琥珀はいっそう腕に力を込めた。
足音が迷いなくこちらに向かっていた。そして、聞き覚えのある声が間近で、
「琥珀っっっ! あんたこんなところでなにをしてやがる!」
「きゃー!」
ディランがなぜこんなところに!
「どうしてわたしがここにいるのがわかったの、もうちょっとあとに来てくれたらよかったのに!」
「わかっていて来たわけじゃねえ! というか、なんで人の国の神器にべたべた触っているんだ。離れろ、すぐに!」
「いやっ。もうすぐ抜けそうだもの!」
「それは王しか抜けないものなんだ! いいから離れろ、はーなーれーろーっ!」
「いーやー!」
ディランが琥珀の腰に腕をまわし、力ずくで引きはがそうとした。そうはさせまいと琥珀は剣にしがみつき、柄に齧りついてまで離れまいとする。一進一退の攻防のあいだもシアヴィルは口をはさまず眺めていた。そして、
ばきっ。
ふいに手ごたえがなくなり、ものの見事に琥珀は後ろにひっくり返った。下敷きにされたディランは背中から石の壁にぶつかり、咳きこんでいる。
「どこか打ったの、大丈夫っ?」
「……なんでもねえから、どけっ」
「あら」
悪口雑言はいつも通りなので無事なようだが、今度ばかりは琥珀も怒鳴り返せなかった。ディランの両腕にすっぽりと抱きしめられた格好で、くすんだ黒髪が頬に触れるほど顔が近い。ディランの髪は見た目よりも柔らかく、さらさらしていた。
「そういえば、剣は……あっ」
琥珀は岩を振り仰ぐ。ついさっきまで自分が齧りついていた場所には大きなひび割れができており、古びた剣が消えてしまっていた。シアヴィルが入口そばから進み出てきて、琥珀の足もとに屈みこむ。
その手に、剥き身の剣が握られていた。
「おめでとう、琥珀。あなたが新たな英雄だわ」
シアヴィルは紅潮した頬に笑みを湛えながら、剣を琥珀に差しだした。琥珀の背中のところで、ディランの胸が大きく上下する。
「ちょっと……ちょっと、待てよ。いまので剣が抜けたのなら、古代魔法も蘇ったんじゃねえのか。魔法はどこにあるんだ」
「さあ? 私は魔法使いでもドルイドでもないもの、わからないわ」
ディランははっとして琥珀の手を取ったが、熊の形は変わっていない。辺りを見回しても、壊れた岩以上のものはなにもなかった。
「じょ……冗談じゃねえぞ。こんなところで、なにもないなんて終わりかたになってたまるか。剣を岩に戻せ、儀式のやり直しだ!」
「戻せるものならどうぞ?」
ディランは複雑な表情で剣を受けとり、ひび割れに刃を滑りこませようとした。刺さるには刺さるのだが、手を離すなりすっぽ抜けて落ちてしまう。
「……」
背中だけ見ていると、ディランは一気に五十歳くらい老けこんだようだ。琥珀は這ってディランの足もとへ行き、剣を拾いあげて笑ってみせた。
「ね。ともかく剣は抜けたんだし、魔法は使うべき人が使えるのかもしれないわ。この剣はディランのものよ、ディランにあげる。そして堂々と、コルマク様の後継ぎに……」
「なれるかっ!」
怒鳴られて、びくっとしてしまった。ディランも自分の声に驚いたように琥珀を見つめ、いたん顔を背けたものの、
「……寄こせ」
琥珀の手から剣をもぎとり、柄を琥珀へ、刃を自分のほうへ向けてひざまずいた。
「英雄ルーの子孫よ。私、ディラン・マク・コルマクはあなたへの忠誠をお誓い申しあげます」
「頭でも打ったの?」
「だれがだっ! ……ともかく魔法がなくたって、剣の所有者は尊敬されるべきなんだ。おまえ自身がどうであれ、それがこの国の掟だ」
「そんなこと、困るわ。わたしはただ、あなたがその剣を抜くためだけにわたしが必要だったっていうから」
ディランは眉をあげたものの、図星だったのだろう。琥珀から顔を背けて、それでも剣を下ろそうとしない。琥珀は悲しくなってきた。
「……わたしはもう、あなたにとって用なし?」
「……呪われた女を見捨てるほど無責任じゃねえ。あんたの手をもとに戻すまでは、放りだすつもりはねえよ」
婚約者としては用なしなのか。琥珀は悲しい気持ちになりながら、熊の手で剣を受けとった。
くすくす笑いが聞こえる。シアヴィルが眦に涙を浮かべながら、堪えきれない笑いを洩らしていた。
「どうして笑うの?」
「だって、これまで代々の王があがめてきた剣を、力任せに引っこ抜……いいえ、なんでもないの。ここの剣がなくなってしまったことがわかったら、ドルイドどもが大騒ぎするだろうって思っただけで、おっかしくって」
「試してみたかっただけなのよ。ディランの役に立てたらいいなって思っただけなのに、こんなことになるなんて思わなかった」
本心からの呟きを洩らすと、ディランが「あ」と声をあげた。
「なによ」
「いちいちつっかかるなっての……あれだ、つまり、あんたが剣の所有者として認められたのだったら、もう牛舎住まいをしなくてもよくなるんじゃねえか? 手が熊だろうがなんだろうが、英雄に代わるものはないんだし」
「わたしが英雄の子孫です、なんてコルマク様に名乗れるはずないわ! 冗談でしょう、わたしはただの小国の姫なのに」
「いいえ、告げるべきね」
鮮やかな金髪を揺らし、シアヴィルがきっぱり宣言した。
「剣を抜いたものが英雄ルーの再来というのは、ドルイドたちも知っている言い伝えだもの。呪いが不吉だなどという言い伝えに従って琥珀を牛舎に押しこめたのだから、もちろん、これからは琥珀を王と同様に遇するべきです」
「遇されなくていいの! わたしは、普通に……お守りを返してもらえるなら、それだけでじゅうぶんなの」
「あんたの琥珀玉、ドルイドたちが持っている」
ディランがぼそっと告げた。婚約者を振り仰いだ琥珀に、溜息をついて首を横に振ってみせる。
「返せっつっても聞きやしねえ。魔法で守られた結界のなかに仕舞いこみやがって」
「……取り戻そうとしてくれたの?」
ディランは目を伏せた。できなかった、という意味だと伝わってくる。
姿を見せなかった三日のあいだ、琥珀のために動いてくれたのか。
魔法を持たない身で、唯一の希望だった剣を琥珀が抜いてしまっても結果をちゃんと受けとめて、そのうえなお、呪いがとけるまでは放りださないと約束してくれて。
とくん、と、琥珀の胸が疼いた。
鼓動が強く打つでもなく、胸の奥のところが潰されたみたいに痛い。
「剣のせいかしら」
不安を感じさせる痛みに、焦りながら言うと、ディランが眉をあげた。
「なにが」
「胸が痛いの。苦しい感じがするわ、理由もなく」
「ああそりゃあ、大昔の王はその剣で山ほどの敵を屠ったっていうしな。即位の儀式のたびにこの岩のそばで生贄も捧げられているし、そんだけの血を吸った剣を抱いてりゃ、そりゃあ胸苦しくもなるさ」
胸苦しさを忘れるくらいの衝撃に、琥珀の顔がさあっと冷たくなった。熊の爪で引っかけるように剣を持ち、腕を突きだしてできるだけ自分から遠ざける。
「いらない、これ! ディランが預かって」
「とんでもねえ。英雄様の剣に触れるなど恐れ多くてできやしないね」
「じゃあシアヴィルが、これまでどおりにここで預かってくれたら……」
「とんでもない。所有者が定まった剣をこちらで預かることなどできませんわ」
「そんなああ」
神殿の正面入口の前に二つの巨大な石があって、片方は柱のように長く伸び、片方はずんぐりと丸かった。なにかのしるしだろうか。
「ごめんくださーい……」
琥珀は石を避けて入口を覗きこむ。神殿の周囲には花が植わっており、黄金の糸を織りこんだローブを着た女性が花壇周りの箒がけをしていた。琥珀とそう年頃の変わらない娘で、細かく巻いた黄金の髪に縁どられた顔は神々しいくらいに美しい。
(どこかの王女様かしら。それとも、精霊?)
琥珀が見とれていると、相手も琥珀にじっと目を凝らして、熊の両手に気づいたらしい。鮮やかな緑の目を見開き、箒を放りだして駆け寄ってきた。
「そこのあなた……!」
「ご、ご、ごめんなさい!」
呪われた身で敷地に入りこんだことを怒られるのか。逃げ腰になる琥珀に飛びつくようにして、娘は琥珀の腕をつかんだ。
むに。
「はう」
むずかゆいような妙な感覚が腕に伝う。娘が琥珀の肉球を両手で押したのだった。
むに、むに。
「ちょ、ちょ、ちょっと、勘弁してください。それ、むずむずするの」
琥珀が身をよじって訴えたところ、熱心に肉球を揉んでいた娘ははっと我に返ったようで、手を放した。照れ隠しのようにさらりと黄金の髪を掻きあげる。首元に巻きついた黄金の首環がきらりと光りを弾いた。
「悪かったわ。虹の国の姫は手が熊になっていると聞いて、触り心地はどうなんだろうってずっと考えていたから……ああほんと、熊。毛皮の手入れはしていないの? 私に任せてくれたならふわふわのふかふかにしてあげる」
「ちょっと待ってください……聞いたって、だれから?」
「ディランよ、もちろん。あなたはディランの婚約者の琥珀ではないの」
まっすぐな瞳で名前をあてられ、琥珀はかえって身構えてしまった。いったいこの美人はディランのなんなのか。
「ドルイドたちは魔法を知ったつもりでいるけれど、彼らが呪いを解けたためしなんてありはしないのよ。私に会いにこなかったら、きっとあなたは一生牛舎勤めをさせられていたでしょうね。私に助けを求めるようにとディランが勧めたのね?」
「あの……いいえ。ただ、アルティオさんというかたに、ここに来たらわたしの知りたいことがわかると教えてもらったものだから」
「アルティオですって! 彼女は熊の女神で、あなたに呪いをかけた張本人ではないの」
「えっ!」
頭を殴られたような衝撃だった。美女はほっそりした首を傾げて琥珀をじっと見る。
「体の一部を動物に変えるというのはその動物の守り神が行う罰の手段だもの。だからあなたの手が熊に変わったのは、アルティオの怒りを受けたからだと思うわ」
ごんごんと頭を立てつづけに殴られたような心持ちになったが、琥珀は来し方を振り返ってみても、熊の機嫌を損ねるような真似をした記憶がなかった。
それにアルティオと名乗った老婦人は、女神であれ人であれ、琥珀にいろいろな天気の素敵さを教えてくれたし、精霊を見せてもくれた。にこにこ笑っていて、人を呪うような心を持つ女性には見えなかった。
琥珀は首を横に振る。
「違うわ。わたしの手がこうなったのは、妙な苺を食べたからだもの。わたしの会ったアルティオさんはそういう人じゃない」
「私の言葉よりも自分の見たものを信じるの?」
「信じるわ」
「気に入ったわ」
琥珀はきょとんとした。なにが気に入った? 美女の神秘的な美貌が屈託ない笑みで崩れる。
「脅しにホイホイ引っかかるような娘なんて助けがいがないもの。ディランの花嫁になるならなおさら」
「わたしを試したの?」
「ほとんど真実よ。アルティオは熊の守り女神、神罰で体を変えられるのはよくあること。だけれど、アルティオが私のところに来いと勧めたのなら、あなたの呪いにはなにか別の理由があるということでしょう」
琥珀は美女をじっと見た。非の打ちどころもないくらい神々しく、どこかの王女ではないというなら、きっと。
「……あなたも女神なの?」
「わたしは予言者のシアヴィル。この神殿に仕えて剣を守っているのよ」
「剣……」
と、琥珀の知りたいこととどういう関係があるのだろう。とはいえ、アルティオの話していた巫女はこの女性で間違いないようだ。
「いらっしゃいな、琥珀」
シアヴィルが踵を返す。琥珀は慌ててあとを追った。
神殿の壁は薄い石を積み重ねて作られており、内部は暗かった。床は踏み固めた土で、ひんやり冷たく、中心に向かってやや下りに傾斜している。
「シアヴィルは一人でここを守っているの?」
「シアと呼んでくれて構わないわ。年寄りのドルイドが五人ばかりいるけれど、女は私だけ。年寄りは部屋にこもって教義の研究ばかりしているわ」
「神殿に呪われたものを入れたりしたら、あなたが叱られない?」
「アルティオの呪いではないと言ったでしょう? だったら構わない。それに、あの剣はあなたのものでもあるのよ」
どういうことだろうか。考えこむ琥珀に、シアヴィルは何気なく付け足した。
「ディランもしょっちゅうここに来ているわ」
琥珀の胸がちりっと痛んだ。大きらいと一方的に告げられて放っておかれるなんて、だれだって傷つくことだろう。
(もとはといえば彼がわたしを放っておいて、エルクウァルにひどいことを言うから……だけど、ディランだって牛舎に来てくれたところだったんだわ。謝ろう……許してくれないかもしれないけれど)
通路の先がぼんやり明るくなっている。シアヴィルは足をとめ、琥珀に先に行くように促した。
周囲はまだ暗いので、琥珀は一歩一歩慎重に歩を進める。
「ここは剣の神殿。千年の昔、英雄ルーがこの地を去るとき自らの剣を岩に突きさし、こう言い残していった。『我が再びこの地に還るとき、剣の封印は解かれる』」
吹き抜けから外の光と風が入りこんでいるようだ。通路の行き止まりの空間の中央に黄色っぽい大岩があり、その側面から、斜めに剣が突きだしている。
古びた鉄の剣だった。岩に近づくと、くらりとめまいを感じたものの、剣そのものはさして神聖な感じはしない。ただ、柄の部分は大勢の人に握られてきたらしく、黒っぽい艶を帯びていた。
ディランはこの剣のもとを訪れて、なにを思うのだろう。
「この剣を抜くと、どんないいことがあるの?」
「剣の真下に古代の魔法が眠っているというわ。それを手に入れたものは、この地に残るどんな魔法よりも強い力を手に入れることができる……代々の王はその力が欲しいがために、即位のときにこの剣を抜こうと試みてきたわ。けれど、どの王も抜けなかった」
「……ディラン様は、なんのためにここに来ているの」
「欠けたものを手に入れるため」
シアヴィルの声はすてきだが、響きは冷ややかだった。彼女は知っているのだ……アルティオが言ったとおりのことを。ディランはまったく魔法を使えない、そのための魂を持っていないと。
王族に欠けたところがあってはならない――コルマクの言葉だ。
「ディランは生まれたときに母親に呪いをかけられて、魂を失ってしまったのよ。見た目は普通の人間と変わらないけれど、彼には精霊が寄りつかないし、魔法も使えない……その呪いを解くことができるのはかけた本人か、より強い魔力を持つ魔法使いだけ。だからコルマクは、後継ぎのために古代魔法に目をつけたの」
だからディランはこの神殿を訪れ、何度も剣を抜こうと試みている。
力をつけ、武芸を磨き、勉学を修め、それだけでは足りないとなったら……。
琥珀は首を傾げた。
「そんなふうに努力を続けなければならないかたが、どうしてわたしを娶ろうなんていう気持ちになったのかしら」
「簡単なことなのよ。その剣を残した王は、海を渡って虹の国の王になったという伝説があるから」
目を剥く琥珀に、シアヴィルは落ちついた微笑みを返した。
「あなたの国にはそういう言い伝えが残っていない?」
「『王は虹を渡って、湖のそばに降りたった』というものがあるわ……ということは、つまり、わたしのずっとずっと前のご先祖様はこの魔法の国の出身だったのね? ディラン様はだからわたしを……」
「ドルイドたちが虹の国を見つけだし、あなたを手に入れる算段を整えたの。英雄ルーの子孫のあなたなら剣を抜ける、そして得られた古代魔法はディランの呪いを解けると……期待したのよね。先にあなたが呪いをかけられてしまったというのは皮肉だけれど」
「信じらんない」
琥珀は岩を貫く剣に向きなおった。
ただこれを抜く力を得たいがために、自分は求められたのか?
ディランが琥珀自身を見初めて求婚したわけじゃないことは知っているし、政略結婚がそういうものだということもわかっている。
けれど、胸がもやもやした。結婚をする前からディランにとって、琥珀よりもこの剣のほうが大事だと思うとやりきれない。
(おまけにわたしが呪われちゃったから、ディランはわたしと結婚するわけにもいかなくなって……『ほかの手段』とコルマク様がおっしゃっていたのはこのことだったのね。はじめからわたしには、剣を抜く目的以上のことは期待されていなかったんだわ)
顔が胸につくほどうなだれて、もやもやを呑みこもうとしたけれど、抑えきれない。
琥珀はきっとして顔をあげた。
「シア。わたしがこの剣を抜いてもいいの?」
「ええ。あなたにはその資格があるわ」
許可を得た琥珀は、熊の手で力強く剣の柄をはさんだ。これが抜けたらお役御免なら、いっそさっさと役目を果たしてしまったほうがいい。そして、ディランの欠けているものを補い、琥珀自身の呪いもといてしまおう。
(その上で国に帰されるなら、その時はその時よ。それにしても石、堅い……!)
顔が真っ赤になるほど力を込めて、琥珀は剣をぐりぐりと揺らした。手が熊になっているぶん、普通のときより握力はあるはずだ。ごくかすかながら、剣が動く手ごたえがあるのは気のせいだろうか。
「うー……ん……くっ」
シアヴィルが笑っている気配がする。過去何度も、ディランもこうやって剣を抜くことを試みたのかもしれない。
「くくっ」
腕だけでだめなら足も使ってみようと、琥珀が岩に膝をかけたときだった。
――シア! シア、いるのか。
だれかが来る。見つかる前になんとかしようと、琥珀はいっそう腕に力を込めた。
足音が迷いなくこちらに向かっていた。そして、聞き覚えのある声が間近で、
「琥珀っっっ! あんたこんなところでなにをしてやがる!」
「きゃー!」
ディランがなぜこんなところに!
「どうしてわたしがここにいるのがわかったの、もうちょっとあとに来てくれたらよかったのに!」
「わかっていて来たわけじゃねえ! というか、なんで人の国の神器にべたべた触っているんだ。離れろ、すぐに!」
「いやっ。もうすぐ抜けそうだもの!」
「それは王しか抜けないものなんだ! いいから離れろ、はーなーれーろーっ!」
「いーやー!」
ディランが琥珀の腰に腕をまわし、力ずくで引きはがそうとした。そうはさせまいと琥珀は剣にしがみつき、柄に齧りついてまで離れまいとする。一進一退の攻防のあいだもシアヴィルは口をはさまず眺めていた。そして、
ばきっ。
ふいに手ごたえがなくなり、ものの見事に琥珀は後ろにひっくり返った。下敷きにされたディランは背中から石の壁にぶつかり、咳きこんでいる。
「どこか打ったの、大丈夫っ?」
「……なんでもねえから、どけっ」
「あら」
悪口雑言はいつも通りなので無事なようだが、今度ばかりは琥珀も怒鳴り返せなかった。ディランの両腕にすっぽりと抱きしめられた格好で、くすんだ黒髪が頬に触れるほど顔が近い。ディランの髪は見た目よりも柔らかく、さらさらしていた。
「そういえば、剣は……あっ」
琥珀は岩を振り仰ぐ。ついさっきまで自分が齧りついていた場所には大きなひび割れができており、古びた剣が消えてしまっていた。シアヴィルが入口そばから進み出てきて、琥珀の足もとに屈みこむ。
その手に、剥き身の剣が握られていた。
「おめでとう、琥珀。あなたが新たな英雄だわ」
シアヴィルは紅潮した頬に笑みを湛えながら、剣を琥珀に差しだした。琥珀の背中のところで、ディランの胸が大きく上下する。
「ちょっと……ちょっと、待てよ。いまので剣が抜けたのなら、古代魔法も蘇ったんじゃねえのか。魔法はどこにあるんだ」
「さあ? 私は魔法使いでもドルイドでもないもの、わからないわ」
ディランははっとして琥珀の手を取ったが、熊の形は変わっていない。辺りを見回しても、壊れた岩以上のものはなにもなかった。
「じょ……冗談じゃねえぞ。こんなところで、なにもないなんて終わりかたになってたまるか。剣を岩に戻せ、儀式のやり直しだ!」
「戻せるものならどうぞ?」
ディランは複雑な表情で剣を受けとり、ひび割れに刃を滑りこませようとした。刺さるには刺さるのだが、手を離すなりすっぽ抜けて落ちてしまう。
「……」
背中だけ見ていると、ディランは一気に五十歳くらい老けこんだようだ。琥珀は這ってディランの足もとへ行き、剣を拾いあげて笑ってみせた。
「ね。ともかく剣は抜けたんだし、魔法は使うべき人が使えるのかもしれないわ。この剣はディランのものよ、ディランにあげる。そして堂々と、コルマク様の後継ぎに……」
「なれるかっ!」
怒鳴られて、びくっとしてしまった。ディランも自分の声に驚いたように琥珀を見つめ、いたん顔を背けたものの、
「……寄こせ」
琥珀の手から剣をもぎとり、柄を琥珀へ、刃を自分のほうへ向けてひざまずいた。
「英雄ルーの子孫よ。私、ディラン・マク・コルマクはあなたへの忠誠をお誓い申しあげます」
「頭でも打ったの?」
「だれがだっ! ……ともかく魔法がなくたって、剣の所有者は尊敬されるべきなんだ。おまえ自身がどうであれ、それがこの国の掟だ」
「そんなこと、困るわ。わたしはただ、あなたがその剣を抜くためだけにわたしが必要だったっていうから」
ディランは眉をあげたものの、図星だったのだろう。琥珀から顔を背けて、それでも剣を下ろそうとしない。琥珀は悲しくなってきた。
「……わたしはもう、あなたにとって用なし?」
「……呪われた女を見捨てるほど無責任じゃねえ。あんたの手をもとに戻すまでは、放りだすつもりはねえよ」
婚約者としては用なしなのか。琥珀は悲しい気持ちになりながら、熊の手で剣を受けとった。
くすくす笑いが聞こえる。シアヴィルが眦に涙を浮かべながら、堪えきれない笑いを洩らしていた。
「どうして笑うの?」
「だって、これまで代々の王があがめてきた剣を、力任せに引っこ抜……いいえ、なんでもないの。ここの剣がなくなってしまったことがわかったら、ドルイドどもが大騒ぎするだろうって思っただけで、おっかしくって」
「試してみたかっただけなのよ。ディランの役に立てたらいいなって思っただけなのに、こんなことになるなんて思わなかった」
本心からの呟きを洩らすと、ディランが「あ」と声をあげた。
「なによ」
「いちいちつっかかるなっての……あれだ、つまり、あんたが剣の所有者として認められたのだったら、もう牛舎住まいをしなくてもよくなるんじゃねえか? 手が熊だろうがなんだろうが、英雄に代わるものはないんだし」
「わたしが英雄の子孫です、なんてコルマク様に名乗れるはずないわ! 冗談でしょう、わたしはただの小国の姫なのに」
「いいえ、告げるべきね」
鮮やかな金髪を揺らし、シアヴィルがきっぱり宣言した。
「剣を抜いたものが英雄ルーの再来というのは、ドルイドたちも知っている言い伝えだもの。呪いが不吉だなどという言い伝えに従って琥珀を牛舎に押しこめたのだから、もちろん、これからは琥珀を王と同様に遇するべきです」
「遇されなくていいの! わたしは、普通に……お守りを返してもらえるなら、それだけでじゅうぶんなの」
「あんたの琥珀玉、ドルイドたちが持っている」
ディランがぼそっと告げた。婚約者を振り仰いだ琥珀に、溜息をついて首を横に振ってみせる。
「返せっつっても聞きやしねえ。魔法で守られた結界のなかに仕舞いこみやがって」
「……取り戻そうとしてくれたの?」
ディランは目を伏せた。できなかった、という意味だと伝わってくる。
姿を見せなかった三日のあいだ、琥珀のために動いてくれたのか。
魔法を持たない身で、唯一の希望だった剣を琥珀が抜いてしまっても結果をちゃんと受けとめて、そのうえなお、呪いがとけるまでは放りださないと約束してくれて。
とくん、と、琥珀の胸が疼いた。
鼓動が強く打つでもなく、胸の奥のところが潰されたみたいに痛い。
「剣のせいかしら」
不安を感じさせる痛みに、焦りながら言うと、ディランが眉をあげた。
「なにが」
「胸が痛いの。苦しい感じがするわ、理由もなく」
「ああそりゃあ、大昔の王はその剣で山ほどの敵を屠ったっていうしな。即位の儀式のたびにこの岩のそばで生贄も捧げられているし、そんだけの血を吸った剣を抱いてりゃ、そりゃあ胸苦しくもなるさ」
胸苦しさを忘れるくらいの衝撃に、琥珀の顔がさあっと冷たくなった。熊の爪で引っかけるように剣を持ち、腕を突きだしてできるだけ自分から遠ざける。
「いらない、これ! ディランが預かって」
「とんでもねえ。英雄様の剣に触れるなど恐れ多くてできやしないね」
「じゃあシアヴィルが、これまでどおりにここで預かってくれたら……」
「とんでもない。所有者が定まった剣をこちらで預かることなどできませんわ」
「そんなああ」
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