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第8話
2・熊の手は蜂蜜味かもしれない
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「……ありがとう」
ようやくお礼を言い、顔をうつむける。
「怖かった……」
「ひでえ傷」
ディランが琥珀の手を取った。手枷の内側が擦り切れ、肘まで血が伝う。熊の爪も半ば以上折れてしまっていた。
「いくら手が熊だからって、こりゃあ……くそっ、ここじゃ手当てもできやしねえ」
ディランは断崖を見あげ、舌打ちした。そそりたつ崖は内側に抉れており、怪我人を連れてのぼることは不可能だろう。ディランは大声で「縄を下ろせ!」と呼ばわった。
「上にだれかいるの」
「この地方に暮らす一族があんたを見つけ、鳥を飛ばしておれに知らせた。妙だな、おれが落ちたのはわかっているはずなのに、妙に静かだぜ」
「風のせいで声が届かないのかも……」
「そのぶん気をつけているはずだ。なにかあったとしか……よけろ!」
なにから、どこへ。おたおたしている琥珀を胸に抱きかかえ、ディランは横っとびに跳んだ。琥珀の体が海水に浸かり、傷が燃えるように痛む。
「なにするの……ぷはっ」
泡を吐きながら叫んだ琥珀の頭を、ディランが水に沈める。直後、岩場が揺れた。水のなかで目を閉じている琥珀の頬にも、細かな石がぶつかってくる。ディランの力が緩んだ。
「ディラン?」
ぐったりともたれかかってくるディランの頭に手を触れると、一部が抉れたように凹んでいる。
「ディラン――どうしたの、しっかりして!」
「……るせえ。揺らすな。なんでもねえよ、これくらい」
琥珀ははっとして、先ほどまで立っていた場所を振り向いた。断崖から落下してきたのだろう、大岩が、尖った底を下にして岩場を抉っていた。そして、その大岩の上に……銀髪の魔法使いの姿が。
「エルクウァル……!」
「せっかく、苦しまずに二人まとめて片づけてあげようとしたのに」
エルクウァルは顔をしかめて、杖を振りあげた。もう、何度も魔法を見てきたせいか、杖の先になにかが集まっていくのが見えるようだ――あれは、エルクウァルに使役されている精霊。
ディランがエルクウァルをせせら笑った。
「一発で殺れなくて残念だったな。こんなところでてめえの魔法を使っていいのか? 琥珀は怪我をしている。精霊たちは血の匂いに敏感で、すぐに暴走しちまうもんなんだろ?」
「それは並みの魔法使いの話です。僕は、違う」
来る!
真上に注意を向けた琥珀の肩をつかみ、ディランは再び跳んだ。水を含んだ重たい体が岩に着地すると、間髪おかずに次の岩へ飛びうつる。二人の背後に落ちた岩が再び破片を散らかしたが、今度は琥珀も振り向くことなく、ディランを支えるつもりで走った。
「あなた、大丈夫なの。怪我人でしょ、無理しないで!」
「そりゃお互いさまだ。そっちこそ、ただでさえ重い体に鎖がくっついてんだ、遅れねえでついてこいよ!」
「いっつも一言多いんだから――――きゃあああ!」
逃げ回る二人に業を煮やしたらしい。拳大の石が雹のように落ちてきて琥珀もディランも逃げ場をなくした。身長差があるせいか、琥珀にはあまり石がぶつからないものの――いや、背の高いディランが琥珀の頭上に腕をかざして、石の雨からかばっていた。
「なにするの、ばか! わたしはいいから自分を守ってよ!」
「うるせえ、ばか! 文句を言う暇があったらその目をかっぴろげて逃げ道を探せ!」
この四方から降る石のなかに目印? 足止めされているあいだに、また大岩が降ってくるかもしれないのに――断崖に目を向けた琥珀は、抉られた岩の一部に深い亀裂が入っているのに気づいた。その向こうがどうなっているかわからない。外側からでは闇しか見えない。が、
「……ディラン、あそこ!」
「あれか。よし!」
ディランが力を振り絞って琥珀を抱え、飛ぶ。直後、これまででもっとも大きな岩が垂直に落ちてきた。ディランは肩から、琥珀はディランに庇われながら岩の隙間に滑りこんだとき、耳をつんざく轟音が響きわたる。
ぱらり、と天井の石が落ちた。
「しまっ……!」
ディランが身を起こした。エルクウァルの落とした大岩が斜めに傾ぎ、琥珀とディランが飛びこんだ穴の入口を塞いでいる。
ごく淡い光のみ、二人のいる場所を照らしていた。
入口よりも内部は広く、奥に続いているようだが、暗すぎて先がわからない。
「……エルクウァルが外にいるのかしら」
「しっ」
ディランは琥珀を黙らせ、しばらく外の気配に耳を澄ませたあと、息をついて岩壁にもたれかかった。
「……しばらくは来ねえだろうな、おそらく。魔法ってのはずいぶん使うやつの体力を削るものらしいぜ。ドルイドたちは儀式の手順を踏んで精霊を操るらしいけど、あいつはそんなもんをすっ飛ばして自由に魔法を使っているから……どうだかわからねえけどさ」
「エルクウァルはすごい魔法使いなのね?」
ディランは口をつぐんだ。琥珀はしゃがみこみ、熊の手に残った爪を使ってスカートの裾を裂き、布をディランに手渡した。
「怪我をしているのでしょう、使って。手当てしてあげたいけれど、この手だとできないの」
「そりゃ幸いだ。あんたの手当てなんて、怖くて受けられたもんじゃない」
「……そう」
言いたいことをすべて堪えて真面目に言ったので、悪態が返ってきたのはつらかった。ディランは琥珀の渡した布を頭の傷らしきところに巻くと、手近の岩を取り、自分の上着を裂きはじめた。
「悪かったな」
「なにについてそう思うの?」
「おれの国の魔法使いがあんたをひどい目に遭わせた、ってことだ。そもそも、おれがあんたとの結婚話をさっさと断ってりゃ、こんなことにならなかった」
琥珀の胸がきゅんと竦む。
「断るって……どういうこと?」
「ドルイドたちがあんたを見いだした理由は、あんたが英雄の子孫で蜜色の髪と目が伝説通りだっていう上に、子供であしらいやすいと踏んだからだ。欲しいものを手に入れたあとはどうにだってできる……そもそも、エリウの王はダナーの女王と結婚しなきゃならない掟があるしな。おれが王になれたとしたら、あんたはお払い箱ってことだ」
(なに、それ)
琥珀には意味のわからないことを次々に告げられ、それがすべて胸に刺さる。
「だから……いくらこっちに必要だからって、普通の娘はそんなもんで一生を台無しにされたくねえだろ。港で引き渡しの儀式のとき、正式に断るつもりだったんだ。あんたが先に船に乗って呪いをかけられちまったから、見放すわけにはいかなくなったけどさ」
ディランは琥珀自身の手当てをはじめようとした。しかし、海水の沁みた傷跡は血が凝っているものの、それを拭おうとすると焼けるようにひりつく。
「うきっ、ひっ、ふうっ」
痛みをごまかすつもりで変な声を出していると、ディランがいぶかしげに訊いた。
「気味悪い声を出すなよ。そんなに痛えのか?」
「だ、大丈夫……手当てもいらない、もう血もとまっているから」
「ちょっと黙ってろ」
琥珀の手を両手で包み、ディランは短く命じた。言われたとおりにしていると、いきなり、爪の剥げた手の先に乾いたものが這うのを感じる。
ディランが琥珀の熊の手を舐めていた。舌が辿るところから新たな痛みが生まれてくるものの、塩分で引き攣れるような痛みが和らぎ、血が通いだすのがわかる。
しかし、熊の手とはいえ、爪のあいだまで丹念に舌を這わせられるのはむずかゆい。
「やだ……ディラン、もう、いいわ。じゅうぶんよ」
「黙ってろっつったろーが。くそ、塩っ辛え……」
(優しくしないで)
ディランはぶつぶつ言いながら、琥珀のもう片方の手の傷も隅々まで舐めてしまった。包帯を巻く手が離れたところで、琥珀は魂も同時に離れてしまったようにへなへなと崩れる。
「なんだ、どうした。次は肩だな、さっさと服をはだけろよ、舐めてやる」
「……いい。ほんとにもういいから、それよりも話を聞かせて。あなたには別に婚約者がいたの? エルクウァルは、自分こそが王太子だって言っていたのよ」
「あの野郎はおれが気に入らないだけだ。魔法を使う素質の一切ない兄にすべてが譲られるなんていうのが許せないんだろうよ」
「エルクウァルのお母様は王妃ではなかったって……あなたのお母様は?」
「王妃。ダナー神族の女王、メイヴだ。ダナーはエリウの民より古くからこの土地に暮らす一族で、ドルイドが操る魔術もダナーから教えられたものなんだ。いまでもドルイドたちはダナーに捧げものをするし、強い力が欲しいときは彼らの力を仰ぐ……そんな一族の長がおれの母親で、エリウの王は代々、ダナーの女王を娶るのが慣習になっているのさ」
ということは、ディランは間違いなく正統な王子なのだ。エルクウァルはいい加減なことを言って……琥珀はほっとしたものの、気がかりなことは残る。
「じゃあ、もちろんあなたにも……ダナーの王女の婚約者がいるっていうわけね」
「いいや? おれに欠けているものがあるせいか、ダナーの連中もおれには見向きもしない。だいたい父上が王妃の侍女を見初めたもんで、女王は怒ってエリウの宮殿を出ていっちまったんだぜ? もう二度と部族間の縁組はないかもしれないな」
琥珀は目を見開いた。その侍女がエルクウァルの母親なのか。銀髪、紫の瞳、美貌……あの容姿が母親譲りなら、さぞきれいな侍女だったことだろう。
「侍女の名前はコリドウェン……ダナー神族きっての竪琴の名手だったそうだ。エルクウァルそっくりの美人だったそうだから、手を出したくなる気持ちもわからないでもない……が、父上は大事なことを忘れていたのさ。女王がひどく嫉妬深いってことを」
ディランの言いかたが引っかかり、琥珀は口を尖らせた。
「浮気されたら普通、怒るわよ。あなたは相手が美人だったら浮気してもいいっていうお考えなのかしら?」
「ふらっとくる気持ちはわかる……って、なんでおれの話になってんだ!」
「どうしてかしらね」
ディランは琥珀が結婚相手だということを失念しているのだろうか。薄闇でも睨まれているのがわかるようで、ディランは頭を掻こうとして……傷を引っ掻いたらしく、悲鳴をあげた。
「おれの話をしてるんじゃねえだろ! ともかく、おれの母親はコリドウェンにひどく辛くあたったらしい……自分が連れてきた侍女だってのに、ありとあらゆる嫌がらせを仕掛けて、しまいには身重の彼女を宮殿から追いだしちまったそうだ」
ディランは深い溜息をついた。
「そのうえでおれを産み落としてすぐに、自分もエリウを離れたのさ。裏切りものの夫への仕打ちとして、呪いのかかった息子を残してさ」
話を聞くだけで再び自分も呪いをかけられたような気がして、琥珀は顔をしかめた。
「魂を……奪われたのよね? それがないってどうしてわかるの」
「エルクウァルが言いやがったのか」
「ううん、シアが」
ディランは意外そうに目を見張ったが、溜息をまじえて肩を落とす。
「俺には精霊が見えねえんだ。幼いころからそうだった。ドルイドたちが言うには精霊のほうがおれを生きているものとして扱わないんだそうだ。魂がないから――魔法は国にとって大事なものなのに、加護を受けられない――王としちゃ致命的だ」
「わたしの父は、たぶん精霊を見たこともないけれどいい王様になっているわよ」
「この国では違う。精霊の助けを得られないっていうのは、ドルイドに破門されたも同然の立場ってことだ」
破門という言葉は重かった。琥珀の国にも教会があり、信者はその庇護下におかれる。しかしなにかの問題を起こして破門された場合は、まともな人間として扱われなくなってしまうのだ。
(同じ人間なのにね。人が人を区別するんだわ)
琥珀は悲しくなってしまう。精霊が見えなくても、いまのディランに人間として欠けているところがあるとは思えない――口が少々悪いけれど。彼がこの国でまともな扱いを受けるために唯一の希望だった剣も、いまだに彼の呪いを解けないのだろうか。
「……ごめんなさい、ディラン。わたしは結局、なんにもあなたの役に立てないのかしら」
「役に立つもたたねえも、まだ――まだ言っていなかったな。あの剣、ほんものじゃなかったらしいぜ」
ごくさり気なく言うので、琥珀は聞き間違いかと思った。
「……なんですって?」
「贋物。シアヴィルは、あんたの扱いさえよくなればそれでいいと思っていたから黙っていたんだそうだ……ほんもののルーの剣はこの国の地下深くの岩盤に突き刺さっていて、めったなことじゃ人が寄りつけない場所にあるんだと。あの神殿に飾られているのはその伝説に基づいてつくられた、いわば象徴みたいなものなんだが、あまりに長いあいだ祀られていたから、ほんものの剣のことを覚えている人間のほうが少なくなったんだそうだ」
「じゃあ、じゃあ、あなたにもまだ望みはあるの? みんなに認めてもらえる機会がまだ残されているっていうことね?」
「ああ」
ディランが冷静そうに見えるのは、照れ隠しからかもしれない。琥珀は感情を抑えきれず、ディランに抱きついた。
「よかったあ……!」
手の痛みも、体の痛みも疲労も忘れてしまうくらいに嬉しい。
「よかった、わたしがあなたの希望を潰してしまったのじゃなくて。よかった、まだあなたに恩返しすることができるんだわ」
「恩返し?」
「命を助けてもらったのだもの。一緒にその剣を探しましょう、ディラン。今度こそ二人で剣を手に入れて、それからあなたはあなたの願いを叶えるの」
それから……。
そうしたら、琥珀は用なしだろうか?
しょんぼりして体を離そうとすると、ディランが額をくっつけてきた。顔が近く、口元も近い。
「……おれがおれの願いを叶えるよりも、あんたが呪いを解くほうを先にするぜ」
「いいわよ、わたしは後まわしにして」
「おれは浮気はしない」
琥珀の胸がどきんと鳴る。それってどういうこと。
(そうだわ、ディランがちゃんと王太子として認められてしまったら、ダナーの人たちだって習慣どおりに彼に王女を娶らせるかもしれないもの。だけどいまのうちなら、わたしの呪いさえ解けたら、彼と、結婚)
鼓動は好き勝手に跳ねるので、胸がどんどん痛くなるし、体が熱くなってきた。ディランに手当てしてもらったばかりの手が、特に熱く、その熱さは手首を這いあがってきて腕のところで燃えるようになった。
「あつっ……手が、手……」
「どうした、傷が痛むのか?」
うすくまる琥珀の手を取り、袖を捲りあげてみて、ディランは息を呑む。琥珀の腕に数万本もの針を刺したように黒い毛が生えだし、肘まで覆っていた。熊の毛だ。
「まさか、まだ毒が残っているはずは……おまえ、エルクウァルのところでなにか飲んだんじゃないだろうな?」
「飲んだし、食べたわ。いっぱい」
「どうしておまえはそう食い意地が張っているんだ!」
「あのときはエルクウァルがわたしに呪いをかけた魔法使いだなんて知らなかったのだもの! でも、たぶん毒が入っていたのはあの苺だけ……最後に口に入れられた」
エルクウァルの指で押しつぶされた赤い色を鮮明に覚えている。
女の子を熊に変えようなんて悪趣味だ。それでもすぐに術が効かなかったから、もっと確実な手段……ハゲワシの餌にしてしまおうとしたのだろうけれど、それも失敗した。
(エルクウァルはそんなにもわたしが邪魔で、ディランを王位につけたくないんだわ。追いだされたお母様の恨みがあるからかな……きっと、また追ってくる。いつまでもここに隠れていても見つかってしまう)
「ディラン、逃げよう。ううん、剣を探しに行きましょう」
立ちあがろうとした足がもつれ、力の入らない両手を岩に打ちつける。痛みが全身に走った。
「あつ……っ」
「馬鹿、動くんじゃねえ! ただでさえ体力を消耗してんのに、このうえ呪いなんかかけられたら、体が……くそっ」
ディランが拳で地面を叩いた。短気なのは為政者を目指すものとしてどうかと思う。琥珀は両手をだらりとさげたまま膝立ちになり、ディランに笑いかけた。
「平気だよ、平気。ハゲワシからだって逃げられるくらい、わたしは見た目よりも丈夫なの……憧れの魔法の国で死んだりしないよ。今度こそ、あなたの願いを叶えに行くんだから」
「琥珀……」
洞穴に射しこむ光はわずかだが、海の色を映しているのだろうか。くすんだ黒色のはずのディランの瞳が、淡く青く揺らいだ。琥珀がどきりとするほど、いつもと雰囲気が違って見える。
「ディラン、目の色」
「目?」
ディランは手のひらを瞼にかざし、光を振り払うように二、三度まばたきした。そんなディランの周囲にも淡い光がいくつも浮かんでいる。エルクウァルに見つかったのだろうか。琥珀が見ているものもディランも振り向き、とっさに琥珀を庇うように抱きしめた。
表情が脅えている。
「なん……だ? この、光……」
――ディラン……。
鈴を鳴らすようなかすかな声。光の中心に目を凝らすと、琥珀には小さな人の影らしきものが見えた。
「精霊だわ」
「精霊? まさか、おれには見えないはず」
――ディラン、ディラン……ようやく気づいたわ。こっちへいらっしゃいな。
くすくすくす。光が小刻みに揺れながら移動して、洞窟の奥へと進んでいく。しかし、ディランの足は竦んでいる。琥珀は思いきって体を伸ばして、ディランの頬に唇を押し当てた。
ディランはぎょっとしたように、琥珀を見おろす。
「な」
「わたしがついているから平気よ。行きましょう」
両手が使えなかったので、言葉のほかにはこれしかディランの気を取り直させる方法がなかった。意図は達したらしい。ディランは琥珀に腕を貸して立ちあがらせ、光の導くほうへ足を踏みだした。直後、
「きゃああっ?」
足場がぐらつく。入口を塞いでいた岩が音をたてて崩れた。洞窟に鮮やかな光が射し、目が眩むのと同時に光たちが消えた。揺れはいつまでもやまないどころかますます強くなっていく。
「休憩時間はおしまいですよ」
翻る銀の髪。精霊のように美しい魔法使いが杖を琥珀たちに向けていた。顔色は青ざめ、疲労の色は濃いが、目の輝きはぎらぎらと強くなっている。
「エルク……どうしてそんなに執念深いのっ」
「理由を話したところでどうにもならない。説教は聞きませんよ、自分がなにをしようとしているのかという自覚くらいある」
洞窟ごと巨人の手で振りまわされているように揺れが激しくなり、立っていることもできなくなる。
「危ねえっ!」
ディランが琥珀を引き寄せた。洞窟が持ち上げられ、叩きつけられ、ひび割れた岩がディランと琥珀の上へなだれのように落ちてきた。
ようやくお礼を言い、顔をうつむける。
「怖かった……」
「ひでえ傷」
ディランが琥珀の手を取った。手枷の内側が擦り切れ、肘まで血が伝う。熊の爪も半ば以上折れてしまっていた。
「いくら手が熊だからって、こりゃあ……くそっ、ここじゃ手当てもできやしねえ」
ディランは断崖を見あげ、舌打ちした。そそりたつ崖は内側に抉れており、怪我人を連れてのぼることは不可能だろう。ディランは大声で「縄を下ろせ!」と呼ばわった。
「上にだれかいるの」
「この地方に暮らす一族があんたを見つけ、鳥を飛ばしておれに知らせた。妙だな、おれが落ちたのはわかっているはずなのに、妙に静かだぜ」
「風のせいで声が届かないのかも……」
「そのぶん気をつけているはずだ。なにかあったとしか……よけろ!」
なにから、どこへ。おたおたしている琥珀を胸に抱きかかえ、ディランは横っとびに跳んだ。琥珀の体が海水に浸かり、傷が燃えるように痛む。
「なにするの……ぷはっ」
泡を吐きながら叫んだ琥珀の頭を、ディランが水に沈める。直後、岩場が揺れた。水のなかで目を閉じている琥珀の頬にも、細かな石がぶつかってくる。ディランの力が緩んだ。
「ディラン?」
ぐったりともたれかかってくるディランの頭に手を触れると、一部が抉れたように凹んでいる。
「ディラン――どうしたの、しっかりして!」
「……るせえ。揺らすな。なんでもねえよ、これくらい」
琥珀ははっとして、先ほどまで立っていた場所を振り向いた。断崖から落下してきたのだろう、大岩が、尖った底を下にして岩場を抉っていた。そして、その大岩の上に……銀髪の魔法使いの姿が。
「エルクウァル……!」
「せっかく、苦しまずに二人まとめて片づけてあげようとしたのに」
エルクウァルは顔をしかめて、杖を振りあげた。もう、何度も魔法を見てきたせいか、杖の先になにかが集まっていくのが見えるようだ――あれは、エルクウァルに使役されている精霊。
ディランがエルクウァルをせせら笑った。
「一発で殺れなくて残念だったな。こんなところでてめえの魔法を使っていいのか? 琥珀は怪我をしている。精霊たちは血の匂いに敏感で、すぐに暴走しちまうもんなんだろ?」
「それは並みの魔法使いの話です。僕は、違う」
来る!
真上に注意を向けた琥珀の肩をつかみ、ディランは再び跳んだ。水を含んだ重たい体が岩に着地すると、間髪おかずに次の岩へ飛びうつる。二人の背後に落ちた岩が再び破片を散らかしたが、今度は琥珀も振り向くことなく、ディランを支えるつもりで走った。
「あなた、大丈夫なの。怪我人でしょ、無理しないで!」
「そりゃお互いさまだ。そっちこそ、ただでさえ重い体に鎖がくっついてんだ、遅れねえでついてこいよ!」
「いっつも一言多いんだから――――きゃあああ!」
逃げ回る二人に業を煮やしたらしい。拳大の石が雹のように落ちてきて琥珀もディランも逃げ場をなくした。身長差があるせいか、琥珀にはあまり石がぶつからないものの――いや、背の高いディランが琥珀の頭上に腕をかざして、石の雨からかばっていた。
「なにするの、ばか! わたしはいいから自分を守ってよ!」
「うるせえ、ばか! 文句を言う暇があったらその目をかっぴろげて逃げ道を探せ!」
この四方から降る石のなかに目印? 足止めされているあいだに、また大岩が降ってくるかもしれないのに――断崖に目を向けた琥珀は、抉られた岩の一部に深い亀裂が入っているのに気づいた。その向こうがどうなっているかわからない。外側からでは闇しか見えない。が、
「……ディラン、あそこ!」
「あれか。よし!」
ディランが力を振り絞って琥珀を抱え、飛ぶ。直後、これまででもっとも大きな岩が垂直に落ちてきた。ディランは肩から、琥珀はディランに庇われながら岩の隙間に滑りこんだとき、耳をつんざく轟音が響きわたる。
ぱらり、と天井の石が落ちた。
「しまっ……!」
ディランが身を起こした。エルクウァルの落とした大岩が斜めに傾ぎ、琥珀とディランが飛びこんだ穴の入口を塞いでいる。
ごく淡い光のみ、二人のいる場所を照らしていた。
入口よりも内部は広く、奥に続いているようだが、暗すぎて先がわからない。
「……エルクウァルが外にいるのかしら」
「しっ」
ディランは琥珀を黙らせ、しばらく外の気配に耳を澄ませたあと、息をついて岩壁にもたれかかった。
「……しばらくは来ねえだろうな、おそらく。魔法ってのはずいぶん使うやつの体力を削るものらしいぜ。ドルイドたちは儀式の手順を踏んで精霊を操るらしいけど、あいつはそんなもんをすっ飛ばして自由に魔法を使っているから……どうだかわからねえけどさ」
「エルクウァルはすごい魔法使いなのね?」
ディランは口をつぐんだ。琥珀はしゃがみこみ、熊の手に残った爪を使ってスカートの裾を裂き、布をディランに手渡した。
「怪我をしているのでしょう、使って。手当てしてあげたいけれど、この手だとできないの」
「そりゃ幸いだ。あんたの手当てなんて、怖くて受けられたもんじゃない」
「……そう」
言いたいことをすべて堪えて真面目に言ったので、悪態が返ってきたのはつらかった。ディランは琥珀の渡した布を頭の傷らしきところに巻くと、手近の岩を取り、自分の上着を裂きはじめた。
「悪かったな」
「なにについてそう思うの?」
「おれの国の魔法使いがあんたをひどい目に遭わせた、ってことだ。そもそも、おれがあんたとの結婚話をさっさと断ってりゃ、こんなことにならなかった」
琥珀の胸がきゅんと竦む。
「断るって……どういうこと?」
「ドルイドたちがあんたを見いだした理由は、あんたが英雄の子孫で蜜色の髪と目が伝説通りだっていう上に、子供であしらいやすいと踏んだからだ。欲しいものを手に入れたあとはどうにだってできる……そもそも、エリウの王はダナーの女王と結婚しなきゃならない掟があるしな。おれが王になれたとしたら、あんたはお払い箱ってことだ」
(なに、それ)
琥珀には意味のわからないことを次々に告げられ、それがすべて胸に刺さる。
「だから……いくらこっちに必要だからって、普通の娘はそんなもんで一生を台無しにされたくねえだろ。港で引き渡しの儀式のとき、正式に断るつもりだったんだ。あんたが先に船に乗って呪いをかけられちまったから、見放すわけにはいかなくなったけどさ」
ディランは琥珀自身の手当てをはじめようとした。しかし、海水の沁みた傷跡は血が凝っているものの、それを拭おうとすると焼けるようにひりつく。
「うきっ、ひっ、ふうっ」
痛みをごまかすつもりで変な声を出していると、ディランがいぶかしげに訊いた。
「気味悪い声を出すなよ。そんなに痛えのか?」
「だ、大丈夫……手当てもいらない、もう血もとまっているから」
「ちょっと黙ってろ」
琥珀の手を両手で包み、ディランは短く命じた。言われたとおりにしていると、いきなり、爪の剥げた手の先に乾いたものが這うのを感じる。
ディランが琥珀の熊の手を舐めていた。舌が辿るところから新たな痛みが生まれてくるものの、塩分で引き攣れるような痛みが和らぎ、血が通いだすのがわかる。
しかし、熊の手とはいえ、爪のあいだまで丹念に舌を這わせられるのはむずかゆい。
「やだ……ディラン、もう、いいわ。じゅうぶんよ」
「黙ってろっつったろーが。くそ、塩っ辛え……」
(優しくしないで)
ディランはぶつぶつ言いながら、琥珀のもう片方の手の傷も隅々まで舐めてしまった。包帯を巻く手が離れたところで、琥珀は魂も同時に離れてしまったようにへなへなと崩れる。
「なんだ、どうした。次は肩だな、さっさと服をはだけろよ、舐めてやる」
「……いい。ほんとにもういいから、それよりも話を聞かせて。あなたには別に婚約者がいたの? エルクウァルは、自分こそが王太子だって言っていたのよ」
「あの野郎はおれが気に入らないだけだ。魔法を使う素質の一切ない兄にすべてが譲られるなんていうのが許せないんだろうよ」
「エルクウァルのお母様は王妃ではなかったって……あなたのお母様は?」
「王妃。ダナー神族の女王、メイヴだ。ダナーはエリウの民より古くからこの土地に暮らす一族で、ドルイドが操る魔術もダナーから教えられたものなんだ。いまでもドルイドたちはダナーに捧げものをするし、強い力が欲しいときは彼らの力を仰ぐ……そんな一族の長がおれの母親で、エリウの王は代々、ダナーの女王を娶るのが慣習になっているのさ」
ということは、ディランは間違いなく正統な王子なのだ。エルクウァルはいい加減なことを言って……琥珀はほっとしたものの、気がかりなことは残る。
「じゃあ、もちろんあなたにも……ダナーの王女の婚約者がいるっていうわけね」
「いいや? おれに欠けているものがあるせいか、ダナーの連中もおれには見向きもしない。だいたい父上が王妃の侍女を見初めたもんで、女王は怒ってエリウの宮殿を出ていっちまったんだぜ? もう二度と部族間の縁組はないかもしれないな」
琥珀は目を見開いた。その侍女がエルクウァルの母親なのか。銀髪、紫の瞳、美貌……あの容姿が母親譲りなら、さぞきれいな侍女だったことだろう。
「侍女の名前はコリドウェン……ダナー神族きっての竪琴の名手だったそうだ。エルクウァルそっくりの美人だったそうだから、手を出したくなる気持ちもわからないでもない……が、父上は大事なことを忘れていたのさ。女王がひどく嫉妬深いってことを」
ディランの言いかたが引っかかり、琥珀は口を尖らせた。
「浮気されたら普通、怒るわよ。あなたは相手が美人だったら浮気してもいいっていうお考えなのかしら?」
「ふらっとくる気持ちはわかる……って、なんでおれの話になってんだ!」
「どうしてかしらね」
ディランは琥珀が結婚相手だということを失念しているのだろうか。薄闇でも睨まれているのがわかるようで、ディランは頭を掻こうとして……傷を引っ掻いたらしく、悲鳴をあげた。
「おれの話をしてるんじゃねえだろ! ともかく、おれの母親はコリドウェンにひどく辛くあたったらしい……自分が連れてきた侍女だってのに、ありとあらゆる嫌がらせを仕掛けて、しまいには身重の彼女を宮殿から追いだしちまったそうだ」
ディランは深い溜息をついた。
「そのうえでおれを産み落としてすぐに、自分もエリウを離れたのさ。裏切りものの夫への仕打ちとして、呪いのかかった息子を残してさ」
話を聞くだけで再び自分も呪いをかけられたような気がして、琥珀は顔をしかめた。
「魂を……奪われたのよね? それがないってどうしてわかるの」
「エルクウァルが言いやがったのか」
「ううん、シアが」
ディランは意外そうに目を見張ったが、溜息をまじえて肩を落とす。
「俺には精霊が見えねえんだ。幼いころからそうだった。ドルイドたちが言うには精霊のほうがおれを生きているものとして扱わないんだそうだ。魂がないから――魔法は国にとって大事なものなのに、加護を受けられない――王としちゃ致命的だ」
「わたしの父は、たぶん精霊を見たこともないけれどいい王様になっているわよ」
「この国では違う。精霊の助けを得られないっていうのは、ドルイドに破門されたも同然の立場ってことだ」
破門という言葉は重かった。琥珀の国にも教会があり、信者はその庇護下におかれる。しかしなにかの問題を起こして破門された場合は、まともな人間として扱われなくなってしまうのだ。
(同じ人間なのにね。人が人を区別するんだわ)
琥珀は悲しくなってしまう。精霊が見えなくても、いまのディランに人間として欠けているところがあるとは思えない――口が少々悪いけれど。彼がこの国でまともな扱いを受けるために唯一の希望だった剣も、いまだに彼の呪いを解けないのだろうか。
「……ごめんなさい、ディラン。わたしは結局、なんにもあなたの役に立てないのかしら」
「役に立つもたたねえも、まだ――まだ言っていなかったな。あの剣、ほんものじゃなかったらしいぜ」
ごくさり気なく言うので、琥珀は聞き間違いかと思った。
「……なんですって?」
「贋物。シアヴィルは、あんたの扱いさえよくなればそれでいいと思っていたから黙っていたんだそうだ……ほんもののルーの剣はこの国の地下深くの岩盤に突き刺さっていて、めったなことじゃ人が寄りつけない場所にあるんだと。あの神殿に飾られているのはその伝説に基づいてつくられた、いわば象徴みたいなものなんだが、あまりに長いあいだ祀られていたから、ほんものの剣のことを覚えている人間のほうが少なくなったんだそうだ」
「じゃあ、じゃあ、あなたにもまだ望みはあるの? みんなに認めてもらえる機会がまだ残されているっていうことね?」
「ああ」
ディランが冷静そうに見えるのは、照れ隠しからかもしれない。琥珀は感情を抑えきれず、ディランに抱きついた。
「よかったあ……!」
手の痛みも、体の痛みも疲労も忘れてしまうくらいに嬉しい。
「よかった、わたしがあなたの希望を潰してしまったのじゃなくて。よかった、まだあなたに恩返しすることができるんだわ」
「恩返し?」
「命を助けてもらったのだもの。一緒にその剣を探しましょう、ディラン。今度こそ二人で剣を手に入れて、それからあなたはあなたの願いを叶えるの」
それから……。
そうしたら、琥珀は用なしだろうか?
しょんぼりして体を離そうとすると、ディランが額をくっつけてきた。顔が近く、口元も近い。
「……おれがおれの願いを叶えるよりも、あんたが呪いを解くほうを先にするぜ」
「いいわよ、わたしは後まわしにして」
「おれは浮気はしない」
琥珀の胸がどきんと鳴る。それってどういうこと。
(そうだわ、ディランがちゃんと王太子として認められてしまったら、ダナーの人たちだって習慣どおりに彼に王女を娶らせるかもしれないもの。だけどいまのうちなら、わたしの呪いさえ解けたら、彼と、結婚)
鼓動は好き勝手に跳ねるので、胸がどんどん痛くなるし、体が熱くなってきた。ディランに手当てしてもらったばかりの手が、特に熱く、その熱さは手首を這いあがってきて腕のところで燃えるようになった。
「あつっ……手が、手……」
「どうした、傷が痛むのか?」
うすくまる琥珀の手を取り、袖を捲りあげてみて、ディランは息を呑む。琥珀の腕に数万本もの針を刺したように黒い毛が生えだし、肘まで覆っていた。熊の毛だ。
「まさか、まだ毒が残っているはずは……おまえ、エルクウァルのところでなにか飲んだんじゃないだろうな?」
「飲んだし、食べたわ。いっぱい」
「どうしておまえはそう食い意地が張っているんだ!」
「あのときはエルクウァルがわたしに呪いをかけた魔法使いだなんて知らなかったのだもの! でも、たぶん毒が入っていたのはあの苺だけ……最後に口に入れられた」
エルクウァルの指で押しつぶされた赤い色を鮮明に覚えている。
女の子を熊に変えようなんて悪趣味だ。それでもすぐに術が効かなかったから、もっと確実な手段……ハゲワシの餌にしてしまおうとしたのだろうけれど、それも失敗した。
(エルクウァルはそんなにもわたしが邪魔で、ディランを王位につけたくないんだわ。追いだされたお母様の恨みがあるからかな……きっと、また追ってくる。いつまでもここに隠れていても見つかってしまう)
「ディラン、逃げよう。ううん、剣を探しに行きましょう」
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「あつ……っ」
「馬鹿、動くんじゃねえ! ただでさえ体力を消耗してんのに、このうえ呪いなんかかけられたら、体が……くそっ」
ディランが拳で地面を叩いた。短気なのは為政者を目指すものとしてどうかと思う。琥珀は両手をだらりとさげたまま膝立ちになり、ディランに笑いかけた。
「平気だよ、平気。ハゲワシからだって逃げられるくらい、わたしは見た目よりも丈夫なの……憧れの魔法の国で死んだりしないよ。今度こそ、あなたの願いを叶えに行くんだから」
「琥珀……」
洞穴に射しこむ光はわずかだが、海の色を映しているのだろうか。くすんだ黒色のはずのディランの瞳が、淡く青く揺らいだ。琥珀がどきりとするほど、いつもと雰囲気が違って見える。
「ディラン、目の色」
「目?」
ディランは手のひらを瞼にかざし、光を振り払うように二、三度まばたきした。そんなディランの周囲にも淡い光がいくつも浮かんでいる。エルクウァルに見つかったのだろうか。琥珀が見ているものもディランも振り向き、とっさに琥珀を庇うように抱きしめた。
表情が脅えている。
「なん……だ? この、光……」
――ディラン……。
鈴を鳴らすようなかすかな声。光の中心に目を凝らすと、琥珀には小さな人の影らしきものが見えた。
「精霊だわ」
「精霊? まさか、おれには見えないはず」
――ディラン、ディラン……ようやく気づいたわ。こっちへいらっしゃいな。
くすくすくす。光が小刻みに揺れながら移動して、洞窟の奥へと進んでいく。しかし、ディランの足は竦んでいる。琥珀は思いきって体を伸ばして、ディランの頬に唇を押し当てた。
ディランはぎょっとしたように、琥珀を見おろす。
「な」
「わたしがついているから平気よ。行きましょう」
両手が使えなかったので、言葉のほかにはこれしかディランの気を取り直させる方法がなかった。意図は達したらしい。ディランは琥珀に腕を貸して立ちあがらせ、光の導くほうへ足を踏みだした。直後、
「きゃああっ?」
足場がぐらつく。入口を塞いでいた岩が音をたてて崩れた。洞窟に鮮やかな光が射し、目が眩むのと同時に光たちが消えた。揺れはいつまでもやまないどころかますます強くなっていく。
「休憩時間はおしまいですよ」
翻る銀の髪。精霊のように美しい魔法使いが杖を琥珀たちに向けていた。顔色は青ざめ、疲労の色は濃いが、目の輝きはぎらぎらと強くなっている。
「エルク……どうしてそんなに執念深いのっ」
「理由を話したところでどうにもならない。説教は聞きませんよ、自分がなにをしようとしているのかという自覚くらいある」
洞窟ごと巨人の手で振りまわされているように揺れが激しくなり、立っていることもできなくなる。
「危ねえっ!」
ディランが琥珀を引き寄せた。洞窟が持ち上げられ、叩きつけられ、ひび割れた岩がディランと琥珀の上へなだれのように落ちてきた。
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