〖完結〗陛下、溺愛されたら困ります。

藍川みいな

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マギー王女の策略

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 マギー王女の言葉に、絶句してその場を動けずにいた。マギー王女は、言うだけ言って、さっさと去っていきました。

 「あの方が、ナーガブルクの王女様ですか!?」

 シルビアもビックリしたようで、目を丸くしています。
 ただ、マギー王女は私の事を分かっていませんね。最初の印象と全然違っていたから驚きましたが、あんな事を言われたくらいで私は気にしません。
 生まれた時から嫌われてきた私を、なめないでください。

 「なんだかエレノアを思い出したわ。王女って、ワガママな生きものなのね。それに、プライドが高い。」

 「ふふッ。王妃様も、王女様だったではありませんか。」

 「そうだった……
 あまり、王女として扱われた事がなかったから、自分の事忘れていたわ。」

 正直、マギー王女が最初のイメージ通りじゃなくて安心しました。ビンセント様は、側室をとるおつもりはないので、傷つけてしまうかもしれないと心配していたからです。あの感じなら、安心ですね。少しの事じゃ傷つきそうにありませんから。
 
 マギー王女はすぐに諦めると思っていたのですが、いくら断られても諦めようとはしませんでした。それどころか、ずっとビンセント様のお側から離れようとしません。
 ビンセント様を信じているので、全く心配はしていないのですが……

 2人の時間が全くありません!!

 「陛下はパンがお好きなのですね! 私も好きなんです! 私達、似ていますね!」

 朝食をとりながら、ずっと話しているマギー王女。食事の時間が、ビンセント様と唯一ゆっくりお話出来る時間だったのに、話す事すら出来ない。 

 「……いつまでこの国にいるつもりだ? そろそろ国に帰りなさい。セリーナとの時間の邪魔をしないでくれ。」

 そんなにハッキリ言ってしまうのですね……
 私よりもビンセント様の方が、限界だったようです。

 「陛下も私を邪魔者扱いするのですね……」

 マギー王女は下を向き、涙を堪えているようです。

 「私はずっと、ナーガブルクで邪魔者扱いされて来ました。お父様もお母様も、お兄様の事ばかり可愛がって来ました。
 王女とは名ばかりで、私の居場所なんてなかった。
 だから、この国で過ごす日々がとても幸せなんです……」

 そんな事が……?

 「マギー王女も辛い目にあってきたのですね。好きなだけいてください。」

 目をうるませながら、マギー王女に同情するセリーナ。

 「セリーナ!?」

 セリーナの言葉に、目を見開くビンセント王。

 「王妃様、ありがとうございます!!」

 涙を堪えていたはずのマギー王女は、満面の笑みで元気よく礼を言った。
 
 「はあ……」

 ビンセント様は大きなため息をつきました。  
 勝手な事を言って、怒っているのでしょうか……
 私もビンセント様との時間がないのは辛いです。ですが、辛い目にあってきたマギー王女を追い出すわけにはいかない。




 「とんだお人好しだな。」

 街でパンを配りながら、マギー王女の事をドリクセン公爵に話したところ、開口一番そう言われました。
 しばらくは会いに来なかったドリクセン公爵でしたが、最近また姿を見せるようになりました。
 あの話は全くしなくなったけど、元気な顔を見せてくれるのは嬉しいです。

 「お人好し……ですか? そんな事はないと思います。」

 私と同じで、辛い目にあったのなら、少しでも癒してあげたいです。

 「演技に決まってるだろ。マギー王女は、ナーガブルクでワガママし放題で、自分が一番大事だって聞いたが?」
 
 「そんなはず……」

 “ない”とは言いきれませんでした。
 そういえば私、マギー王女に宣戦布告されていました。
 ビンセント様のあの溜め息は怒っていたからではなく、呆れていたのですね……
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