〖完結〗陛下、溺愛されたら困ります。

藍川みいな

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諦めないようです

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 城へ戻ると、マギー王女が待っていました。

 「王妃様、少しお話したいのですが、よろしいでしょうか?」

 マギー王女のお話とは、何なのでしょう?
 聞いてみないと分からないので、マギー王女を自室にお招きしました。

 部屋に入ると、何も言っていないのにソファーに座るマギー王女。

 「で、いつ出て行ってくれるの? 」

 座るなりいきなり言われた言葉。先程の態度とはまるで違うマギー王女に、やっぱり今朝の話は作り話だったのだと思い知らされました。
 すぐに騙されるようではダメですね……

 「出て行くつもりなんてありません。
 マギー王女がどのようなおつもりなのかは知りませんが、マギー王女がしている事はムダだと思います。時間をムダにしないで、王族なら国の為に尽くしたらいかがですか?」

 ナーガブルクは大国だというのに、裕福な人がほんのひと握りで、多くの民は皆貧しいと聞きました。ナーガブルクの国王は、戦争ばかりしているという話ですし、国を守るよりも他国を侵略する事に力を注いでるようです。
 飢えに苦しむ民を救う事よりも、ビンセント様を私から奪う事の方が大切なのでしょうか……

 「言ってくれるじゃない。私は今まで、欲しいものは必ず手に入れて来た。小国の王くらい、簡単に落とせるわ。
 みすぼらしいあなたより、華やかな私の方がいいに決まってる。」

 マギー王女は、ビンセント様を諦めるつもりはなさそうです。ですが、ビンセント様は簡単に落とせる相手ではありません。
 今の言い方だと、ビンセント様を好きというわけではなさそうです。ビモードが属国になった事で、デルターを味方につけたいということなのでしょうか……

 「マギー王女が欲しいのは、ビンセント様ですか? それとも、この国の王妃の座ですか?」

 「どっちも同じじゃない。
 出て行くつもりがないのなら、追い出してあげるわ。覚悟しておいてね。」

 そう言って、マギー王女は部屋を出て行きました。
 どっちも同じと答えたマギー王女は、やはりビンセント様を慕っているわけではないようです。

 

 「今日も楽しい1日でした。ずっとこの国にいられたら幸せなのに。」

 夕食をとりながら、楽しそうに話すマギー王女。先程とは、別人のようです。
 ビンセント様の前では、本性を見せないのですね。でも残念ながら、ビンセント様はマギー王女の本性を見抜いていると思います。
 鈍感な私にだって分かるくらい、マギー王女を見るビンセント様の目が呆れているからです。
 そういえば、私はいつからビンセント様の事がこんなにわかるようになったのでしょう?

 「王女というのは気楽でいいな。楽しいのなら良かった。明日からは、食事を部屋に用意させよう。1人でゆっくり食べなさい。」

 ビンセント様は、もう限界だったようです。

 「なぜですか!?
 私は、陛下と一緒に食事をしたいです!」

 瞳に涙を浮かべて訴える、マギー王女。簡単に涙を出せるなんて、素直に尊敬します。
 ですが、さすがに私も彼女の涙は演技だと分かります。……追い出してあげると言われましたし。

 「悪いが、私はセリーナと過ごす時間を大切にしたい。君は、邪魔だ。」

 ナーガブルクが大国だからと、気を使う気は全くないようです。ハッキリ言ってくださるビンセント様が、すごくカッコよく見えました。本当は、ビンセント様がマギー王女と仲良くしてる所を見るのが辛かった。
 これって、もしかしてヤキモチ? 私、ビンセント様を……
 
 「分かりました。陛下の仰る通りにいたします。」

 まだ諦めないと思っていたマギー王女が、すんなり受け入れました。少し意外です。
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