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私と同じ
しおりを挟むビンセント様に気持ちを伝えた事で、幸せいっぱいです!
「王妃様、何かいい事があったのですか?」
「王妃様がすごく幸せそう!」
いつものようにパンを配っている間も、私の顔はニヤけっぱなしだったようです。
「ごめんなさい。皆さんが大変なのに、私ったら……」
仕事を探す為に、何日も並んでいる人達の前で……なんて顔をしてたのでしょう。
「謝ることなんてありません。王妃様のそんな幸せそうなお顔が拝見出来るなんて、私達も幸せな気持ちになります。」
「私達は王妃様のおかげで、仕事を見つけるまでの間も飢えることもなく過ごせています。」
「この国の民に生まれて、私達は幸せです。」
そうな風に思ってくださるのですね。
皆さんがこの国の民で、私も幸せです。
そこに、一台の大きな馬車が止まりました。
「王妃様、奇遇ですね。こちらにいらしたんですか?」
「マギー王女?」
馬車から降りてきたのは、マギー王女。
マギー王女は沢山の食料を馬車に積み込んで来たようです。
「皆さん、干し肉やワインを用意しました! 沢山あるので、好きなだけ食べてくださいね!」
マギー王女は、自分が連れて来た使用人達に食料を配らせている……が、誰も受け取ろうとはしない。仕事を探して並んでいるのに、ワインなんて配られても困るのでしょう。
「どうしたんですか? そんなパンより、高級なワインとお肉の方が嬉しいのでは?」
不思議そうに首をかしげるマギー王女。
「ズレてんなー。庶民の気持ちも分からないくせに、セリーナ王妃の真似事か?
あんたじゃ、セリーナ王妃に勝てないよ。」
声の主は、ドリクセン公爵でした。
「偉そうに! あなた誰よ!? 」
「あんたさ、何が目的なんだ?
誰からも愛される存在に、あんたがなれるとでも思ってたのか? セリーナ王妃を見てれば分かるだろ? あんたには、誠意の欠片も見えない。」
あれから、ナーガブルクの事を私なりに調べてみました。マギー王女は、一度も嘘を言っていない。
「マギー王女は、寂しかったんですよね?」
欲しいものは必ず手に入れて来たと言っていましたが、全てお金で手に入るものでした。
ナーガブルクの国王は、他の国を侵略する事しか考えていない。大切なのは、跡継ぎの王子。
マギー王女には何も期待していないようで、お金だけ与えて放ったらかし。王妃様が大切なのは王子だけで、自分を相手にしてくれない国王の身代わりのように付きっきりで可愛がっているようです。マギー王女は、ずっとひとりぼっちだった。
「……何で? 何で、ビモードごときの王女はこんなにも愛されているのに、私の事は誰も愛してくれないの?」
私も、この国に来るまでひとりぼっちだった。
今のマギー王女の言葉は、本心だと思います。ただ、愛されたかった……
「私は、マギー王女の事を嫌いじゃありませんよ。」
宣戦布告はされましたし、暴言は吐かれましたが、特に何かをされたわけではないし、泣き真似で騙すような行動はとりますが、本当の涙を流すことが出来ないだけなのかもしれません。
最初の邪魔者の話は、嘘ではありませんでしたし。
「バカなの!?
私はあなたを、散々バカにしたのに……どうして?」
マギー王女からは、悪意を感じない。
口は悪いけど、ビンセント様に何かしたわけでもないし、私の真似事をしただけ。手のかかる子供みたい。
「散々バカにされるのには慣れています。
良かったら、次の施設に一緒に行きましょう。」
マギー王女の顔が、パァーっと明るくなった。
「行く!!」
この後、一緒に施設を回り、沢山の人達にパンを配りました。
マギー王女が持ってきた干し肉やワインは、仕事が決まった方にお祝いとして配りました。
何かが吹っ切れたのか、マギー王女は素直に私のいうことを聞いてくれました。
「何があったのだ!?」
城に戻るとビンセント様が出迎えてくれたのですが、私にベッタリなマギー王女を見て目を丸くして驚いています。
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