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Lesson1 同窓会
STEP③ え、俺だけ?
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「いやみんな驚きすぎ! あははは、なんでもないですよー!」
胡蝶は、俺達の絶叫に似た驚きの声になんの騒ぎだとあちこちでこちらの様子をうかがっている同級生達に取り繕う。
「いつから付き合ってたんだ? まさか高校でこっそりと」
俺はまだ上手く呑み込めないまま訊く。
「高校の時は付き合ってなかったよ。付き合いだしたのは大学の時かな」
新垣が少し照れくさそうに話す。
「でも、確か胡蝶は専門学校だったはずだろ?」
楊枝が関係の発端を探る。
「うん。うちの専門学校と定治の大学のテニスサークルが試合した時にバッタリね」
「それから連絡取り合うようになって付き合ったって感じかな」
新垣が胡蝶に続けて話す。
「お前らいつの間に」
楊枝がニヤつく。
「それじゃあもう名字は胡蝶じゃないのね」
「やだなもう。胡蝶でもいいよ。そういう未久こそ結婚してるくせに」
「まあね」
「医者なのか? やっぱり医者なのかみやもっちゃん?」
ド定番だな。
お約束の展開を言っている失礼なみっちょんに呆れる。
まあ、宮本さんならありえるけどさ。
「違う違う。製薬会社の社員よ。すごいアプローチされて仕方なくデートしてたら、いつの間にか私の方が好きになっちゃってね」
「その男勇気あるなー!」
みっちょんがそう言うのも頷ける。
高校時代、宮本さんは高嶺の花的な感じで、告白しても釣り合わないだろうと大体の男子が挑戦しなかった。挑んでいるのはよっぽどの自信家か、イケメンであるかのどちらかだ。それでも告白された人数はかなりの人数だと聞いている。
「袴田君も結婚してるんでしょ?」
宮本さんが楊枝の左手を見て訊く。
「ええ!? 楊枝も!?」
「ああ」
「誰と!? いつ!?」
俺は動揺に急かされてまくし立てるように問う。
「付き合ってた布藤さんとめでたくな」
「なんだ、そのまま結婚してたのか」
「よくそのままゴールインしたね!」
みっちょんと、胡蝶蘭子改め新垣蘭子が笑みを零し祝福する。
布藤満帆さん。楊枝と高校時代から付き合っていた同じ学校に通う一年後輩の女子生徒だ。本当によく続いたなと思う。
「今じゃ子供もいるよ」
「こ、子供……」
目眩がしそうだ。
楊枝はスマートフォンの画面をみんなに見せる。
「うわー、可愛い~!」
「いくつなの?」
蘭子と宮本さんが楊枝のスマートフォンの待ち受けに食いつく。
「四歳だな」
あの馬鹿爪楊枝がこ、子供……。
俺はなんだか現実逃避したくなった。そして、楊枝の遺伝子を受け継いで産まれてしまった子供の将来を悲観した。なぜなら楊枝は馬鹿だから。学業で壁にぶち当たる可能性大!
「きょっちゃん。今なんかすげー失礼なこと考えなかったか?」
「えっ!? 考えてない考えてない!!」
馬鹿なのにこういう時だけ鋭い……。
「ま、まさかだけど、みっちょんは、結婚してない、よね?」
「は? 何言ってんだよきょっちゃん。俺も結婚してるって」
…………。うん……気のせいだ。
空耳だ。聞き間違いだ。
そうに決まっている。こんなに既婚者が揃うわけがない。
もう一度聞いてみよう。
「ごめん、よく聞こえなかったなー。もう一回言ってくんない?」
「いや、だから俺も結婚してるって」
…………。
おーーーーー!!! な、なんでーー!!?
「なに頭抱えてんだよ?」
「なんで!? なんで教えてくれなかったんだよ!!? 俺達、ずっと独身貴族でいようって約束したじゃんか!!」
俺はもう半泣きでみっちょんに詰め寄る。
「いや、そんな約束してねぇし。記憶の改ざんが激しいぞ」
ぐはっ!! おぉ、心の友よ……。
俺はもうこの世の終わりというくらいの悲愴感に苛まれ、うなだれるしかなかった。
「お前な。俺達もう二十九だぜ? さすがに結婚しててもおかしくないだろ?」
「うっ……」
そりゃそうか……。
完全に生き遅れてるな、俺……。
「まさかとは思うが、きょっちゃん。お前、まだ結婚してねぇの?」
「うぅ……」
俺は楊枝の指摘にさらに落ち込む。
「どうせお前のことだ。相手もいないんだろ!!」
「……」
はい来ましたー。トドメの一撃が。
「おい、冗談で言ったのにマジなのかよ」
みっちょんが俺の反応に情けないと言いたげな目をする。
「ま、まあ、今の時代なら二十九歳で独身も珍しくないよ。今からでも全然遅くないし!」
蘭子がフォローする。
「でもきょっちゃん。高校時代も彼女3年間いなかったけど、その後彼女できたのか?」
楊枝のなにげない質問。
「……」
俺はもう返す言葉もなくなっていた。
「……お前マジかよ」
みっちょんは救えないなという意味を込めた言葉を漏らした。
「なんで彼女作らなかったんだよ? きょっちゃーん」
みっちょんが呆れた様子で訊く。
「いや、だって、高校卒業してから特に好きな子もできなかったし、デートするお金もなかったし……」
「そういうのはどうにか切り詰めて捻出するとか、お金のかからない場所をデートコースにするとか。工夫はできるでしょ?」
蘭子がまともなことを言う。
「でも、二十九歳の男がお金のかからないデートって、ケチ臭くないか?」
俺は懸念材料を提示してみる。
「うっ……うーん…………ちょっと嫌ね」
ぬおぅ……!!
胸の奥深くに鈍い痛みが刺さる。
「蘭子。フォローして蹴落とすなよ……」
新垣が苦笑いを浮かべる。
「ああ!! ごめん!」
「いや、いいんだよ。本当のことだし、ハハハハハ……」
「でも亨二君だって、好きな人はいたでしょ?」
宮本さんは何かを見透かすような瞳で訊いてくる。
「ああ。確かにきゃっちょんには好きな人がいた」
「みっちょん!?」
目を瞑って腕組みをしたかと思えば、無駄に低い声を出し始める。
「あれは高校一年の夏だったなー」
「楊枝まで!?」
「帰宅部のお前は学校が終わり、いつものように帰ろうとした時だった……」
楊枝とみっちょんはうさん臭い話し方をしながら、俺の高校時代の思い出を語りだした。
胡蝶は、俺達の絶叫に似た驚きの声になんの騒ぎだとあちこちでこちらの様子をうかがっている同級生達に取り繕う。
「いつから付き合ってたんだ? まさか高校でこっそりと」
俺はまだ上手く呑み込めないまま訊く。
「高校の時は付き合ってなかったよ。付き合いだしたのは大学の時かな」
新垣が少し照れくさそうに話す。
「でも、確か胡蝶は専門学校だったはずだろ?」
楊枝が関係の発端を探る。
「うん。うちの専門学校と定治の大学のテニスサークルが試合した時にバッタリね」
「それから連絡取り合うようになって付き合ったって感じかな」
新垣が胡蝶に続けて話す。
「お前らいつの間に」
楊枝がニヤつく。
「それじゃあもう名字は胡蝶じゃないのね」
「やだなもう。胡蝶でもいいよ。そういう未久こそ結婚してるくせに」
「まあね」
「医者なのか? やっぱり医者なのかみやもっちゃん?」
ド定番だな。
お約束の展開を言っている失礼なみっちょんに呆れる。
まあ、宮本さんならありえるけどさ。
「違う違う。製薬会社の社員よ。すごいアプローチされて仕方なくデートしてたら、いつの間にか私の方が好きになっちゃってね」
「その男勇気あるなー!」
みっちょんがそう言うのも頷ける。
高校時代、宮本さんは高嶺の花的な感じで、告白しても釣り合わないだろうと大体の男子が挑戦しなかった。挑んでいるのはよっぽどの自信家か、イケメンであるかのどちらかだ。それでも告白された人数はかなりの人数だと聞いている。
「袴田君も結婚してるんでしょ?」
宮本さんが楊枝の左手を見て訊く。
「ええ!? 楊枝も!?」
「ああ」
「誰と!? いつ!?」
俺は動揺に急かされてまくし立てるように問う。
「付き合ってた布藤さんとめでたくな」
「なんだ、そのまま結婚してたのか」
「よくそのままゴールインしたね!」
みっちょんと、胡蝶蘭子改め新垣蘭子が笑みを零し祝福する。
布藤満帆さん。楊枝と高校時代から付き合っていた同じ学校に通う一年後輩の女子生徒だ。本当によく続いたなと思う。
「今じゃ子供もいるよ」
「こ、子供……」
目眩がしそうだ。
楊枝はスマートフォンの画面をみんなに見せる。
「うわー、可愛い~!」
「いくつなの?」
蘭子と宮本さんが楊枝のスマートフォンの待ち受けに食いつく。
「四歳だな」
あの馬鹿爪楊枝がこ、子供……。
俺はなんだか現実逃避したくなった。そして、楊枝の遺伝子を受け継いで産まれてしまった子供の将来を悲観した。なぜなら楊枝は馬鹿だから。学業で壁にぶち当たる可能性大!
「きょっちゃん。今なんかすげー失礼なこと考えなかったか?」
「えっ!? 考えてない考えてない!!」
馬鹿なのにこういう時だけ鋭い……。
「ま、まさかだけど、みっちょんは、結婚してない、よね?」
「は? 何言ってんだよきょっちゃん。俺も結婚してるって」
…………。うん……気のせいだ。
空耳だ。聞き間違いだ。
そうに決まっている。こんなに既婚者が揃うわけがない。
もう一度聞いてみよう。
「ごめん、よく聞こえなかったなー。もう一回言ってくんない?」
「いや、だから俺も結婚してるって」
…………。
おーーーーー!!! な、なんでーー!!?
「なに頭抱えてんだよ?」
「なんで!? なんで教えてくれなかったんだよ!!? 俺達、ずっと独身貴族でいようって約束したじゃんか!!」
俺はもう半泣きでみっちょんに詰め寄る。
「いや、そんな約束してねぇし。記憶の改ざんが激しいぞ」
ぐはっ!! おぉ、心の友よ……。
俺はもうこの世の終わりというくらいの悲愴感に苛まれ、うなだれるしかなかった。
「お前な。俺達もう二十九だぜ? さすがに結婚しててもおかしくないだろ?」
「うっ……」
そりゃそうか……。
完全に生き遅れてるな、俺……。
「まさかとは思うが、きょっちゃん。お前、まだ結婚してねぇの?」
「うぅ……」
俺は楊枝の指摘にさらに落ち込む。
「どうせお前のことだ。相手もいないんだろ!!」
「……」
はい来ましたー。トドメの一撃が。
「おい、冗談で言ったのにマジなのかよ」
みっちょんが俺の反応に情けないと言いたげな目をする。
「ま、まあ、今の時代なら二十九歳で独身も珍しくないよ。今からでも全然遅くないし!」
蘭子がフォローする。
「でもきょっちゃん。高校時代も彼女3年間いなかったけど、その後彼女できたのか?」
楊枝のなにげない質問。
「……」
俺はもう返す言葉もなくなっていた。
「……お前マジかよ」
みっちょんは救えないなという意味を込めた言葉を漏らした。
「なんで彼女作らなかったんだよ? きょっちゃーん」
みっちょんが呆れた様子で訊く。
「いや、だって、高校卒業してから特に好きな子もできなかったし、デートするお金もなかったし……」
「そういうのはどうにか切り詰めて捻出するとか、お金のかからない場所をデートコースにするとか。工夫はできるでしょ?」
蘭子がまともなことを言う。
「でも、二十九歳の男がお金のかからないデートって、ケチ臭くないか?」
俺は懸念材料を提示してみる。
「うっ……うーん…………ちょっと嫌ね」
ぬおぅ……!!
胸の奥深くに鈍い痛みが刺さる。
「蘭子。フォローして蹴落とすなよ……」
新垣が苦笑いを浮かべる。
「ああ!! ごめん!」
「いや、いいんだよ。本当のことだし、ハハハハハ……」
「でも亨二君だって、好きな人はいたでしょ?」
宮本さんは何かを見透かすような瞳で訊いてくる。
「ああ。確かにきゃっちょんには好きな人がいた」
「みっちょん!?」
目を瞑って腕組みをしたかと思えば、無駄に低い声を出し始める。
「あれは高校一年の夏だったなー」
「楊枝まで!?」
「帰宅部のお前は学校が終わり、いつものように帰ろうとした時だった……」
楊枝とみっちょんはうさん臭い話し方をしながら、俺の高校時代の思い出を語りだした。
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