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Lesson4 重なる二人の想い出
STEP③ 新しい恋人
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イチコイ作戦から数ヵ月が経ち、春の知らせがニュースで聞かれ始めていた。イチコイ作戦の終了間際にあった寂しさは嘘のように消えてしまい、以前の日々に戻っている。
最近久しぶりに蘭子から連絡があった。なんでも女の子を紹介してくれるらしい。以前の俺なら断る所だが、このまま何もしないわけにはいかないと思い始めていた。こういう機会に面倒でも会ってみるのも必要だと、みんなに教えられたのだ。
そして、今日。その日が来たのだ。俺は仕事帰りに蘭子が指定してきた店へと足を運んだ。蘭子が指定してきたのは普通のカフェだ。
店内に入ると、こちらを振り向いた影が一つ。蘭子がこちらに手を振ってくれた。俺は店員が訊く前に蘭子達がいる席に行く主旨を伝え、窓際の席へと向かう。入り口を背にしている女性。蘭子の隣に座っている女性が例の女性だろう。俺は微妙な緊張感を持ちながら蘭子達がいる席についた。
「久しぶり」
「うん、久しぶり」
俺は蘭子の隣にいる女性に目を向けた。
「コネクトでも言ったけど、この子が私の大学の時のテニスサークルの後輩の、柳井海香ちゃんです」
「どうも柳井海香です。よろしゅうお願いします」
妙に訛った女の子だったが、明るそうな女の子だった。栗色のウェーブのかかったミディアムヘアが印象的だ。
「青野亨二です」
「私の可愛い後輩なんだから怖がらせないでよ?」
「俺がいつそんなことしたんだよ」
「したことはないけど、男は二人きりになったら豹変するかもしれないからねぇ」
悪戯っ子の笑みを浮かべて俺に妙な視線を向ける蘭子。
「警戒されるようなこと言うなよ」
「でもホンマ、青野さん優しそうな人でホッとしましたぁ」
「あ、どうもです」
「どうしました? うちの顔に何かついてはります?」
柳井さんは首を傾げて顔を触る。
「あ、いや」
「あ、この喋り方ですか? こっちに来てからもなかなか抜けんのですよ」
柳井さんは眉尻を下げる。
「そこがいいんじゃん! 海香の可愛い所、存分に出てると思うよ?」
「蘭子先輩、そんな褒めんとってください」
柳井さんはリンゴのように頬を赤く染める。
「きょっちもそう思うでしょ?」
「え!?」
俺は急に振られてどう返答するか迷う。
「うん、いいんじゃない、かな」
「そうじゃなくって! そこは可愛いって言うの!」
「うっ!……可愛いです、はい」
言わされた感満載でそう言うと、蘭子は縦に何度も頷く。
「ありがとうございます……」
柳井さんは恥ずかしそうにしながら、笑みを零してお礼を言う。
俺の顔も赤くなっているだろうな。
しばらく話した後、俺達はカフェを出た。
「じゃあ、私はこっちだから。きょっちは海香を送ってあげてね」
「え、俺が!?」
「他に誰がいんのよ? こんな夜道を女の子一人で歩かせる気?」
確かに蘭子の言う通りだが、いきなり初日で2人きりか。
「でも、それだと蘭子先輩が一人になりますけど」
申し訳なさそうに柳井さんは蘭子を見る。
「私は大丈夫。マイダーリンが迎えに来てくれる予定だから」
「分かった。じゃあ、そうするよ」
「そんじゃ、またね~」
蘭子は手を振って離れていった。
「失礼します~」
「それじゃ、行こうか」
「はい」
俺と柳井さんは並んで歩き始めた。
「すみません。つきあってもろうて」
「これくらいならお安い御用だよ」
俺は気前のいいことを言ってみる。
「ホンマ蘭子先輩にはお世話になりっぱなしで。引っ越しの時もてつどうてもらったんで、感謝してもしきれんのですよ~」
「蘭子は世話好きだからね」
「青野さん、今度またデートしてもらってもいいですか?」
柳井さんから次のデートの約束が飛びだした。
「え? あ、ああ、うん。そうだね、よろしく、柳井さん」
うわ、こういうの俺が言うべきだったよな。
俺はなんだか後ろめたい気分になる。
「柳井さんやなくて、海香って呼んでもらえると嬉しいです」
うっ!! か、可愛い……。
俺は満面の笑みを向けられ、驚くほど動揺してしまう。
「そそそそうだね! これから付き合うわけだし」
「うちも亨二さんって呼んでもいいですか?」
俺は熱くなる自分の頬を撫で、熱を冷ます。
「ああ」
「ふふっ」
和やかでくすぐったい会話をしながら、俺は海香ちゃんを家まで送った。
最近久しぶりに蘭子から連絡があった。なんでも女の子を紹介してくれるらしい。以前の俺なら断る所だが、このまま何もしないわけにはいかないと思い始めていた。こういう機会に面倒でも会ってみるのも必要だと、みんなに教えられたのだ。
そして、今日。その日が来たのだ。俺は仕事帰りに蘭子が指定してきた店へと足を運んだ。蘭子が指定してきたのは普通のカフェだ。
店内に入ると、こちらを振り向いた影が一つ。蘭子がこちらに手を振ってくれた。俺は店員が訊く前に蘭子達がいる席に行く主旨を伝え、窓際の席へと向かう。入り口を背にしている女性。蘭子の隣に座っている女性が例の女性だろう。俺は微妙な緊張感を持ちながら蘭子達がいる席についた。
「久しぶり」
「うん、久しぶり」
俺は蘭子の隣にいる女性に目を向けた。
「コネクトでも言ったけど、この子が私の大学の時のテニスサークルの後輩の、柳井海香ちゃんです」
「どうも柳井海香です。よろしゅうお願いします」
妙に訛った女の子だったが、明るそうな女の子だった。栗色のウェーブのかかったミディアムヘアが印象的だ。
「青野亨二です」
「私の可愛い後輩なんだから怖がらせないでよ?」
「俺がいつそんなことしたんだよ」
「したことはないけど、男は二人きりになったら豹変するかもしれないからねぇ」
悪戯っ子の笑みを浮かべて俺に妙な視線を向ける蘭子。
「警戒されるようなこと言うなよ」
「でもホンマ、青野さん優しそうな人でホッとしましたぁ」
「あ、どうもです」
「どうしました? うちの顔に何かついてはります?」
柳井さんは首を傾げて顔を触る。
「あ、いや」
「あ、この喋り方ですか? こっちに来てからもなかなか抜けんのですよ」
柳井さんは眉尻を下げる。
「そこがいいんじゃん! 海香の可愛い所、存分に出てると思うよ?」
「蘭子先輩、そんな褒めんとってください」
柳井さんはリンゴのように頬を赤く染める。
「きょっちもそう思うでしょ?」
「え!?」
俺は急に振られてどう返答するか迷う。
「うん、いいんじゃない、かな」
「そうじゃなくって! そこは可愛いって言うの!」
「うっ!……可愛いです、はい」
言わされた感満載でそう言うと、蘭子は縦に何度も頷く。
「ありがとうございます……」
柳井さんは恥ずかしそうにしながら、笑みを零してお礼を言う。
俺の顔も赤くなっているだろうな。
しばらく話した後、俺達はカフェを出た。
「じゃあ、私はこっちだから。きょっちは海香を送ってあげてね」
「え、俺が!?」
「他に誰がいんのよ? こんな夜道を女の子一人で歩かせる気?」
確かに蘭子の言う通りだが、いきなり初日で2人きりか。
「でも、それだと蘭子先輩が一人になりますけど」
申し訳なさそうに柳井さんは蘭子を見る。
「私は大丈夫。マイダーリンが迎えに来てくれる予定だから」
「分かった。じゃあ、そうするよ」
「そんじゃ、またね~」
蘭子は手を振って離れていった。
「失礼します~」
「それじゃ、行こうか」
「はい」
俺と柳井さんは並んで歩き始めた。
「すみません。つきあってもろうて」
「これくらいならお安い御用だよ」
俺は気前のいいことを言ってみる。
「ホンマ蘭子先輩にはお世話になりっぱなしで。引っ越しの時もてつどうてもらったんで、感謝してもしきれんのですよ~」
「蘭子は世話好きだからね」
「青野さん、今度またデートしてもらってもいいですか?」
柳井さんから次のデートの約束が飛びだした。
「え? あ、ああ、うん。そうだね、よろしく、柳井さん」
うわ、こういうの俺が言うべきだったよな。
俺はなんだか後ろめたい気分になる。
「柳井さんやなくて、海香って呼んでもらえると嬉しいです」
うっ!! か、可愛い……。
俺は満面の笑みを向けられ、驚くほど動揺してしまう。
「そそそそうだね! これから付き合うわけだし」
「うちも亨二さんって呼んでもいいですか?」
俺は熱くなる自分の頬を撫で、熱を冷ます。
「ああ」
「ふふっ」
和やかでくすぐったい会話をしながら、俺は海香ちゃんを家まで送った。
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