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シュペール王国、風雲急を告げる
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こちらはシュペール王国、裏切り者のレッテルを貼った聖女を処刑し、さらに侯爵令嬢ジリーナとの新たな婚約を発表した王太子アステールは得意の絶頂だった。温厚で国民からは敬愛されてはいるが、体の弱い父の国王ラスカットに取って代わって、既に国政のかなりの部分を担っていた。次期国王に就任する布石は着々と打っていたのだ。今日は婚約者ジリーナとともに国王の私邸に伺候して、父国王に謁見していた。
「ジリーナ殿、息子を頼みますぞ」
「はい、全力でアステール様をお支えします」
「王国の方はどうじゃ、アステールよ」
「万事、ぬかりはございません。聖女亡き後の国防にも力を入れております」
「聖女か。聞くところによれば、王国を裏切ったとか」
話がリリアンの処刑の話題になった。
「はい、すぐ捕らえて、十字架に磔にして火炙りの刑にいたしました」
「聖女を磔火刑とな、すこし残酷すぎるのではないかのう」
リリアンの処刑への父である国王からの意外な批判に、王太子アステールは、すぐ鋭い口調で反論した。
「いえ、父上。あのような重罪には、みせしめとして厳しく対応しなければなりません。けっしてわたしは間違えてはおりません」
ジリーナもアステールを援護射撃する
「リリアンは性格も最悪の性悪女でした。アステール様は正しかったですわ」
「ふーむ、そうかのう」
実は、貴族階級の人々の間では、今回のリリアンへの処分が厳しすぎるとして、アステールの残忍さを当てこする向きもあり、そういった声がアステール本人にも聞こえてきて、苛立っていたのだった。
そして、その事をこともあろうに、父のラスカット国王から指摘されて不快感を覚えたのだった。
「……」
国王ラスカットは納得していなかった。父の疑問に、王太子はまともに答えようとせず、国王と王太子の父子の間で、冷え冷えとした空気が流れたが、そこに突然凶報が飛び込んできたのだ。駆け込んできた伝令が伝える。
「火急の知らせでございます。王国辺境の都市コブレントが、魔族の急襲を受け、抵抗むなしく陥落したとのことでず」
「なんだと!」
悲報を聞いた王太子は驚愕した。コブレントは辺境の地にあったが、隣国との交通の要衝を占める、シュペール王国にとっては重要な都市であった。そこが魔族の手に落ちたというのだ。魔族が、この要地コブレントを狙っているという噂は、最近アステールの耳にも入っており、警戒はしていたのだ。
「そんな莫迦な! コブレントには特に強力な軍勢を送っていたはずだ」
「は、間違いはございません」
アステールは、最初は否定してはみたが、伝令の口ぶりからは、どうも間違いはなさそうだった。温厚な国王も心配そうだった。
「どうするのじゃ、アステール」
「すぐ、王宮に戻ります。父上は安全のために、ここで御待機ください」
「大丈夫なのか?」
「は、すべて私におまかせを」
国王のラスカットに対して、この危機は自分が仕切るという意思を示し、全権を握ることを明らかにした。そして、伝令を振り返り指示を飛ばす。
「すぐに正確な情報を集めよ! 更に各地の要塞に、警戒令を流すのだ」
「は、承知しました」
「これは、大変なことになるやもしれんな」
いきなり黒く垂れこめた暗雲、シュペール王国の運命は風雲急を告げていた。
「ジリーナ殿、息子を頼みますぞ」
「はい、全力でアステール様をお支えします」
「王国の方はどうじゃ、アステールよ」
「万事、ぬかりはございません。聖女亡き後の国防にも力を入れております」
「聖女か。聞くところによれば、王国を裏切ったとか」
話がリリアンの処刑の話題になった。
「はい、すぐ捕らえて、十字架に磔にして火炙りの刑にいたしました」
「聖女を磔火刑とな、すこし残酷すぎるのではないかのう」
リリアンの処刑への父である国王からの意外な批判に、王太子アステールは、すぐ鋭い口調で反論した。
「いえ、父上。あのような重罪には、みせしめとして厳しく対応しなければなりません。けっしてわたしは間違えてはおりません」
ジリーナもアステールを援護射撃する
「リリアンは性格も最悪の性悪女でした。アステール様は正しかったですわ」
「ふーむ、そうかのう」
実は、貴族階級の人々の間では、今回のリリアンへの処分が厳しすぎるとして、アステールの残忍さを当てこする向きもあり、そういった声がアステール本人にも聞こえてきて、苛立っていたのだった。
そして、その事をこともあろうに、父のラスカット国王から指摘されて不快感を覚えたのだった。
「……」
国王ラスカットは納得していなかった。父の疑問に、王太子はまともに答えようとせず、国王と王太子の父子の間で、冷え冷えとした空気が流れたが、そこに突然凶報が飛び込んできたのだ。駆け込んできた伝令が伝える。
「火急の知らせでございます。王国辺境の都市コブレントが、魔族の急襲を受け、抵抗むなしく陥落したとのことでず」
「なんだと!」
悲報を聞いた王太子は驚愕した。コブレントは辺境の地にあったが、隣国との交通の要衝を占める、シュペール王国にとっては重要な都市であった。そこが魔族の手に落ちたというのだ。魔族が、この要地コブレントを狙っているという噂は、最近アステールの耳にも入っており、警戒はしていたのだ。
「そんな莫迦な! コブレントには特に強力な軍勢を送っていたはずだ」
「は、間違いはございません」
アステールは、最初は否定してはみたが、伝令の口ぶりからは、どうも間違いはなさそうだった。温厚な国王も心配そうだった。
「どうするのじゃ、アステール」
「すぐ、王宮に戻ります。父上は安全のために、ここで御待機ください」
「大丈夫なのか?」
「は、すべて私におまかせを」
国王のラスカットに対して、この危機は自分が仕切るという意思を示し、全権を握ることを明らかにした。そして、伝令を振り返り指示を飛ばす。
「すぐに正確な情報を集めよ! 更に各地の要塞に、警戒令を流すのだ」
「は、承知しました」
「これは、大変なことになるやもしれんな」
いきなり黒く垂れこめた暗雲、シュペール王国の運命は風雲急を告げていた。
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