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素直になれない

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~精霊王フェル様視点~

 黒猫の獣人である彼女――ルチアから好きだと言われて4ヶ月半、手を握ったりキスをしたりはしたが、その先に一向に進まない。ルチアが案外子供じみた発想の持ち主なのは分かるが、先に進もうとすると馬鹿力で吹っ飛ばされる毎日……。正直、せない。

 照れ隠しでも、もう少し穏便な方法にしてほしいと本当に思う。毎回、あの馬鹿力で吹っ飛ばされ、学校の壁や部屋の壁やらに文字通り突き刺さるオレの気持ちを考えろと声を大にして言いたい。

 そもそも、アイツをつけ狙う変態ストーカーな金髪、陰険人魚な毒男などなど……が手ぐすねひいて待ってるのに、こんなに進展しない状況だと落ち着かない。

 いや、むしろ焦る。

 既成事実を作るまで――いや、自分のモノだとシルシを付けるまで安心なんて出来ない。

 だから、こうなったのはオレのせいではなくルチアのせいだ。ようは、オレを好きだと言うのにまったくオレを受け入れようとしなかったルチアの自業自得なのだ。

 オレは、ベッドの天蓋から伸びている蔦に絡め取られて身動きが取れない状態になっている彼女ーーああ、残念ながらまだしっかりと学校指定の黒い軍服せいふくを着ている――を見下ろす。

 彼女は猫獣人本来の姿で白い大きなベッドに這いつくばり、マゼンタ色の瞳を真ん丸にしながらこちらを見上げている。そんな彼女の艶やかな黒髪の先を軽く引っ張り、俺はニヤリと笑った。

「いつもの馬鹿力は出せないだろう?」

 その言葉に、彼女は黒いしっぽの毛を逆立て悔しげに顔を歪めた。彼女の手首には、オレが丹精込めて練り上げた呪術ーーオレの瞳と同じ紫色の紋様ソレは、複雑に絡み合い彼女を侵食している。

 彼女の怪力を抑えるため、幾重にも重ねた呪術をオレは今日この日のために1ヶ月もかけて仕上げた。この表情が拝めただけでも充分苦労した甲斐があったというものだ。

「その呪術は12時間経てば消えるから安心しろ」

「呪いをかけられた時点で安心なんか出来ないんだけど!?」

 どこまでも反抗的なマゼンタ色の瞳がオレへと向けられ、ついついあくどい笑みをこぼしてしまう。

 これからオレがすることに、コイツはどんな反応を返すのだろう?

 その事を考えるだけでゾクゾクする。
 身の内に秘めていた欲望が鎌首をもたげる。

 ルチアに絡ませていた植物を軽く操作して彼女の身体を起こすと、オレの目線よりも少し上に彼女の顔が来る。

「12時間――アンタは無力だ」

 能力を使い、魔力で作った植物を自身の背中からも出現させ、ルチアの身体にソッと這わせる。能力で出現させたのはヌルリと滑りけを帯びた蔦。自身の姿はまるで九尾の狐のようになるが、九尾のそれよりも多い大小様々な蔦ーーオレの髪色と同じ緑の蔦が彼女を拘束して好きなように扱っているのを見ると、非常に気分が良い。

「抵抗も出来ず、オレに縛られて好きにされるのはどういう気分だ?」

「最悪」

 吐き捨てんばかりの物言いに、早く目の前の猛獣を屈服させてやりたいと心がく。

「それはーー最高だな」

 それだけ言い、オレは蔦を操りルチアの服の中へとゆっくり差し込む。滑りけのある冷たい感触にフルリと一瞬だけ彼女が震える。ソッと彼女の豊満な胸へと手を伸ばすと、彼女はようやくオレのしようとしていることに気付いたらしい。カッと顔を真っ赤に染め、ジタバタともがく。

 でも、呪いの効果でいつもの怪力は出せない。

「最っっっっ低!!!!」

 目尻に少し涙をためて叫ぶその姿は、あまりにも妖艶で愛おしくて――逆効果だというのに、彼女はそのことを理解していない。

 蔦は彼女の肌を這い、彼女の敏感な部分へと触れる。この蔦の1本1本にオレの感覚を同調させ、彼女の感じる部分がどこなのかを探る。

「フンッ、最低なのは今更だろ?」

 彼女の胸を優しく揉んでみる。張りはあるが思ったよりもずっと柔らかいソレ……少し力加減に困るが、どうやらこれぐらいの加減でよさそうだ。

 彼女がフルフルと震え、思いっきりこちらを睨みつけている。色気がない返しだが、その反応にやはり心が踊る。本当はすぐにでも軍服せいふくを剥ぎ取って思うままに犯したいところだが、自重したい。

 まだ時間はある。思う存分可愛がり、最後には狂うようにオレを求めるさまを見たい。

 愛おしいと思う気持ちのまま彼女の唇へと口づけを落とす。一瞬噛まれるかとも思ったが、いきなりで驚いたのかピクリと反応しただけで噛む様子はない。舌で執拗に彼女の唇を舐めとっていると、やがて息苦しくなったのか酸素を求めるように彼女が口を開ける。

 いまだに深いキスは慣れないらしい。まあ、深くなるとすぐに拳を振り上げていた彼女だから仕方がないと言えば仕方がない。

 彼女の縮こまった舌に自身の舌を絡め、時折吸い上げる。苦しそうに吐き出す乱れた吐息に、理性が持っていかれる。彼女の唾液と自分のそれとが混ざり合い、顎へと伝う感覚にゾクッとした。蔦を使い、彼女のベルトを外し、スルリとズボンを脱がせる。

「ッ――ッ――」

 何か騒ごうとする彼女の言葉をキスで飲み込みながら、薄い布越しに彼女の秘部へと触る。すでに湿ったそこに、彼女も感じていてくれたことが分かる。

「なんだ、感じてんじゃん」

 吐息混じりにそう言い、顎まで流れた唾液を片手でグイッと拭き取る。彼女は息も絶え絶えにこちらを睨んでいるが、流れ落ちた唾液を拭いとることも出来ていないこの状況下ではオレを楽しませるだけだ。

「ていうか、これーー紐パンじゃん……誘ってんの?」

 ルチアが着けていた下着はレースをふんだんに使った黒い紐パン……正直、子供っぽい猫ちゃんが付いたモノでもルチアであれば立つ自信はあったが、予想がいい意味で裏切られ逆に困惑する。

「う、るさいっ!! 文句ならッ――学校に、言え!!!」
 
 その言葉に納得する。オレ達が通っている新世校しんせいこうでは大体のものが支給され、生活に困らないようになっている。そして、この学校は【異種族間交配】を目的としているため、他種族が互いに【交流】を深められるよう色々と配慮されている。たとえば、男女混合の全寮制で寮の部屋は完全防音になっている等……非常に【交じり合いやすい】空間となっている。ルチアが着けているのもその一環とみていいだろう。

 オレはククッと喉で笑い、結ばれた細い紐をクイッと引っ張る。

「へぇ、支給品か。なら、学校に感謝だな」

「ど、うせキャラじゃないよ!!」

 顔を真っ赤に染めながらやはり息が整っていない彼女がプイッとそっぽを向く。いちいち可愛い反応だ。彼女が溢した唾液をソッと舌で拭ってやる。

「似合ってる」

「嬉しくない!」

 照れ隠しかなんなのか大きな声で喚くが、正直、耳元で騒がないでほしい。オレは彼女のよく音を拾う黒い猫耳に唇を近づける。

「ルチア」

 ピクピクと猫耳が跳ねるのを片手で捕まえる。

「どうせ出す大声なら喘ぎ声にしろよ」

「誰がッ――ンッ――」

 蔦を彼女の秘部へと入れる。滑りの多い蔦は卑猥な水音と共に一気に彼女の中に飲み込まれ、彼女は羞恥にこれ以上ないほど頬を真っ赤に染めている。

「オレが初めてみたいだな」

 確認するように彼女の中の蔦をゆっくり動かす。

「あ、あああ、当たり前でしょ!? こここ、こんなッ――」

 そう、当たり前でなくては困る。
 他の誰かが先では――

 蔦を動かす度に声を抑えようと頑張っている彼女に再び深い口づけをする。

「ハッ――フッ――ンッッ」

 漏れ聞こえる彼女の声に、抑えがきかなくなる。

 蔦が彼女のある場所に触れた時、彼女の体が面白いように跳ねた。

「へぇ、ここがイイんだ?」

 ニヤリと笑うと、彼女はサッと青ざめた顔でこちらを見返した。

「フェル、お、おおお、落ち着こうか!?」

「重点的に攻めてやるから、お前が落ち着けよ」

「ヤッ、なんか、そこダメな気がするから!!」

「ダメじゃなく、イイの間違いだろ?」

 彼女のイイところを何度も突くと、やがて彼女の体が弓なりになり始める。

「気持ちイイんだろ?」

 オレの言葉に首をフルフルと振る彼女にわずかばかり苛立ちを覚える。

「イケよ」

 彼女の耳元でそう囁き一番強い刺激を与えると、彼女はビクッと大きく痙攣し、声を押し殺しながら果てた。クテッと力なく蔦に身をあずけている彼女は少しボンヤリとしていたが、オレはかまわず耳元で囁く。

「イクのは気持ちイイだろ?」

 その言葉にルチアは目を白黒させている。イクということがよく分かっていなかったのだろう。ようやく全てを理解したらしい彼女は、またもや顔を真っ赤にする。

「バッッッカじゃないの!?」

「ハッ、まだ逆らうの?」

 ルチアの中にまだある蔦を動かし、彼女のイイところへと擦りつける。

「ヒ、アッ――」

 艶かしい声をあげた彼女に、オレの口角があがる。

「もう諦めたら?」

 彼女は小刻みに体を震えさせながらも、やはり涙の膜を張った瞳でオレを睨み付ける。

 再び上がってきた熱さに彼女がイキそうになる瞬間、ピタリと動きを止める。イキたいのにイケない状況に額に脂汗をにじませ、悩ましげな視線をオレへと向けてくる彼女に囁く。

「なあ、イカせて下さいフェル様って言えよ。オレが欲しいだろ?」

「欲しッ――のはフェルの方なんじゃない? フェルが私ッ――欲しいッて言ったら、あげる 」

 ああ、これは長期戦かもしれない。
 お互いに負けず嫌いで、素直になれていない。
 でも、まあ、時間はタップリある――

  
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