立日の異世界冒険記

ナイトタイガー

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0019.小屋の中の美少女

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 理解できない異世界の言葉で龍に挨拶の声をかけてもらっておいてから、健は壊れたドアを押して小屋の中に入った。部屋の中の雰囲気は、一応、雑貨屋のお店っぽい感じがする。ただ、入る前に外から見た時はとても怪しい小屋だったので、健は最大限の警戒をしながら周囲を伺う。しばらく待ってみたが、反応がないので龍に小声で依頼する。
「もう一度、大きめの声で頼む。」
「分かったよ。」
 龍が張り切って咆哮に近い大声を出したので、窓がビリビリと振動した。焦った健は慌てて注意した。
「おい、それは大き過ぎるだろ。」
 だが、龍の大声は効果があったようだ。部屋の奥にはお店のカウンターがあるが、そのカウンターの後ろのドアに向かって誰かが歩いて来る足音が聞こえる。健は緊張して身構えた。立札に騙されて小屋に迷い込んだ旅人を狙う盗賊が出て来る可能性もあるのだ。
 しかし、健の予想に反してドアから出て来たのはまるで人形のような美少女であった。透き通るような白い肌と青い髪にグレーの瞳がよく似合っている。耳が尖っているのでエルフと言われる種族なのだろうか。
 少女はカウンターに立つと、健と龍を見て何かを言った。それに応えて龍は少女に何か話しかけている。黒いコワ可愛い龍と美少女の会話はとても絵になる。健が少し感動していると現金な龍が現実世界に引き戻してくれた。
「食べ物も売ってるって。」
「それはいいな。だが、俺はこの世界の金を持ってないぞ。」
 龍がまた何かを少女に話しかけている。しかし、よく考えると、龍がいても平然としている少女に違和感を覚えた。
「彼女は何でチビ助のことを怖がらずに話せるんだ。」
 すると、龍がこっちを向いて丸いお目々をイタズラっぽく輝かせて教えてくれた。
「あ、ごめん。言ってなかったね。会って気付いたんだけど、彼女はちょっと昔の知り合いなんだよ。」
「ちょっと昔って、いつだよ。」
「うーん、100年くらい前かな。そのときは僕の母さんがまだ生きていて、一緒に火山に住んでいたんだけど、その火山の麓の森で彼女はレストランを開いてたんだ。あまりに美味しそうな食事の匂いが流れてくるから、匂いにつられて僕はよくレストランの前に行っちゃったんだよね。それでよく母さんに怒られてたよ。」
 今も100年前と全然変わらないぞと健は心の中で思った。
「彼女はレストランの前でフラフラしている僕によく美味しい食事を分けてくれたんだ。本当に美味しかったなあ。」
 龍は目を瞑って昔の味を思い出して噛みしめている。
「昔はレストランをやってたのに、今は雑貨屋をやってるんだな。」
「何か研究が忙しくなってレストランをやる余裕がないみたい。そうだ。お金がなくても何かを渡せば物々交換してくれるって言ってるよ。」
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