幼馴染が国を救う英雄になるまで俺が人質って本当ですか!?

シン

文字の大きさ
11 / 29

9. 略取②




「お前に選択肢があると思うなよ、サフィルス。野良魔術師をみすみす野放しにしておくわけがないだろう。ひっ捕えて無理矢理騎士団に放り込んでやることもできるんだ」
「だとして、俺は国のために戦う気は無いし、英雄になる気もない。いくらアンタが俺を騎士団に放り込もうが俺のやる気がないなら無意味だろう」

「フンーーでは、これならどうだ」

 発せられた棘のある声色に振り向く暇もなく、ガシャリと無機質な音を立てて何かが俺の首に巻きついた。そのまま思い切り後ろに引かれ、俺はウィルの腕の中から引き出されてシュナイダーの足元に倒れ込んだ。

「ぐぁっ」

 苦しいが、全く息ができない程ではない。すぐに気を失ってしまうことないがそう長くは保たないだろう。必死に息を吸いながら手で首元を弄ると、太く頑丈な鎖が俺の首を締め上げていた。両手で掴んで首との間に隙間を作ろうと試みたががびくともしない。鎖の繋がる先を目線で辿ると、鎖はシュナイダーの手からまるで生えるように伸びていた。どうやら魔術で具現化した鎖で囚われてしまったようだ。

「ルカ! クソッ、そいつは関係ないだろう!」
「少しはやる気が出たか? 青狼衆の生き残りよ」

 ウィルがこちらに向けて右手をかざすと、旋風が巻き起こり鎖から「ガチッ」と金属音が鳴った。恐らくウィルが何か魔術を使ったのだろうが、鎖は傷ひとつつかず俺の首を締めつけたままだった。

「そんな子ども騙しで私の術を破れるとでも思ったか」

 それもそうだ。何の訓練も受けていないウィルと国内屈指の魔導騎士では実力に差がありすぎる。
 勝ち誇った様に言ったシュナイダーはウィルの方を見てくすくすと笑っていた。
 反撃をするとすれば、ウィルに注意が向いている今しかない。

 俺は鎖から手を離し、背負っていた籠を肩から下ろすと、低い体勢のまま目の前の二人目掛けて思い切りそれを投げつけた。袋の口が緩み、中からソラの葉が飛び出す。葉を顔面から被った青い髪の男はふらりと体勢を崩し地面に片膝をついた。と同時に、俺の首に巻きついていた鎖が霧散し、自由の身になる。

「ウィルっ!」

 すぐさま立ち上がりウィルのもとへ駆け出そうとしたが、その俺の首が背後から鷲掴みにされ、あっという間に再度囚われてしまった。視界の隅に赤髪が映る。しまった、こっちは魔術師ではなかったのだ。

 気づいた頃には背後から太い腕で首を絞められ、今度こそ丸腰の俺はなす術がなくなってしまった。苦し紛れにジタバタと暴れても全くびくともしない上に、どんどん腕を上に引き上げられ地面から両足が離れる。きつく回された腕に圧迫され、首の血管が堰き止められるのを感じた。これはまずい。さっきの鎖よりも容赦がない。力はどんどん入らなくなり、視界がぼやぼやと霞んできた。

「ん、ぁ……ウィル、俺のことはいいから……ッ」
「田舎者のガキどもが舐めた真似を……!」

 ゴホゴホと咳き込みながらシュナイダーが憎らしげに吐き捨てた。

「カイデン、こいつはこのまま連れていく」

 背後の男が頷くと、シュナイダーは両手で印を結び何かの術を展開した。途端に俺たちとウィルの間に風が吹き荒れ、巻き上げられた砂塵が壁の様に立ち上った。

「こいつを返してほしければ明日の日没までに我々第一部隊の隊舎に来るがいい。お前が入隊しこの国を厄災から救ったあかつきには、この男を解放してやる」

 遮られていく視界の中、遠くの方に何かを叫びながらこちらへ駆けてくる母さんが見えた。手には二本の傘を持っている。
 雨が降り出したから、仕事の合間に迎えに来てくれたんだろうな。無駄足を踏ませてごめん。

「ルカ、ルカ!」

 ウィルが叫びながら手を伸ばすが、その手が届く前に俺の視界は真っ黒に染まった。

 真っ暗闇の中、最後に見えたウィルの顔が残像のように目に焼き付いていた。
 今にも泣きそうな、あの夜の男の子と同じ表情。
 俺はお前にそんな顔させたくなかったのに。
 離れないって約束したばかりだったのに。

 ーーごめんな、ウィル。

 右目からぽろりと涙が溢れるのを感じながら、俺は意識を手放した。




感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

魔性の男

久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。 最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。 そう、思っていた。

楽な片恋

藍川 東
BL
 蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。  ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。  それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……  早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。  ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。  平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。  高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。  優一朗のひとことさえなければ…………

【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

王様の恋

うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」 突然王に言われた一言。 王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。 ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。 ※エセ王国 ※エセファンタジー ※惚れ薬 ※異世界トリップ表現が少しあります