神殺しの怪物と六人の約束

ヤマノ トオル/習慣化の小説家

文字の大きさ
96 / 229
混沌の北ゲート編

第96話 不穏

しおりを挟む
十ヶ月後。

ムー「さて、今日が期限日だ。サイラス、てめぇの本気度を確かめさせてもらおうか」

サイラス「良いだろう」

サイラスは手に雷を溜め、地面へと放出した。

サイラス「エクスライトニング!!」

地面一帯がバチバチと放電し、所々から雷柱が空高く伸びて行く。
雷柱はサイラスを中心にグルグルと周り、最後は重なり合って広範囲の電磁爆発を起こした。

ムー「ふん、確かにSランク相当の魔法威力だ。次だ」

その後もサイラスは風、地、水とSランク魔法を放ち、ムーはニヤリと笑った。

サイラス「ステップ1はクリアってことで良いよな?」

ムー「一応てめぇの得意の炎術も見ておこう、この試験は五属性Sランクを放って初めてクリアだ」

サイラス「茶番ですね」

サイラスは慣れた様子でムーに向けて炎魔法を放った。

サイラス「プロミネンスフレア!!」

しかし何故か魔法が発動しない。

ムー「、、、、?」

ムーの目はサイラスの身体から溢れる見たことのない魔力を捉えていた。

ムー「てめぇ、なんだその属性魔法は。僕の知らない融合系、または派生系みたいだな。何と何を混ぜたらそうなる?」

サイラス「分かりません、、、俺はただ炎術を、、、」

サイラスの魔力が暴走し、右手からとてつもない量の炎が溢れ出る。

サイラス「先生!!!これはどーなってるんだ!!!、、、、、止められない、、、腕が千切れそうだ!!!」

ムー「何してやがる!!いいから放つか魔力を切りやがれ!!」

サイラス「ぐ、、うぉぉおおおお!!!!」

サイラスが魔法を放つと、巨大な火球のような物体が現れた。
その球体はムーへとゆっくりと向かって行く。

ムーは咄嗟に水魔法で鎮火を試みた。

津波のように水が溢れ、火球を覆ったが、水は一瞬で蒸発してしまった。

球体はグツグツと煮えているように見える。

サイラス「先生!!!避けてくれ!!」

転送魔法を使えば避けることは出来るだろう。
しかし、この球体がどのくらい浮遊し続けるのか分からない。
ムーの後ろにはカメレオンドームに包まれている二百人の拠点があった。

僕が止めなければ。

使命感に駆られたムーはそっと火球へと手を伸ばす。

ムー自身もまた心から湧き上がる謎の魔力を感じていた。

これは、八岐大蛇召喚の時と同じ感覚だ。

ムーは何も考えず、素直にその魔力を放出した。

太陽に照らされている明るい時間帯にも関わらず、それを超える明度の眩い光があたりを包む。

その瞬間火球は動きを止め、その場でゆっくりと萎んでいった。

サイラス「大丈夫か!?」

サイラスはムーへと駆け寄った。

ムー「てめぇ、何をしやがった」

サイラス「分からない、俺はただありったけの魔力を込めていつも通り炎術を放とうとしただけだ」

ムー「、、、、、」

サイラス「すまない」

ムーの瞳孔が開いているのを確認して、サイラスはムーへと頭を下げる。

サイラス「、、、俺は生徒失格だろうか」

ムー「卒業だ」

サイラス「はい?」

ムー「いいか、今僕は裏属性を放った。おそらくてめぇが放った魔法も裏属性魔法だ。僕は全ての融合系、派生系を試した、よって僕の知らない属性魔法は存在しない。だがてめぇの放ったあの火球、それを消した謎の光、どちらも僕の知らない属性魔法だ。あの巨大な火球は炎属性なんかじゃねぇ、もっと強大な何かだ。よってステップ3到達だ」

ムーは興奮気味にブツブツと訳の分からないことを喋り出した。

それを遮るようにサイラスは声をかける。

サイラス「、、、要するに?」

ムー「卒業だ。もう教えることは何もない。あの火球をいつでも出せるようにしておけ、あの属性魔法の感覚をとにかく研究しろ。それがてめぇの、、、、適性属性だ」

サイラス「なるほど、この力があれば、、、」

サイラスは右手を見つめ、太陽へと手を伸ばした。

ムー「僕は僕の適性属性を極める、これからのことは好きにしやがれ」

ムーはカメレオンドームの中ではなく、青い森の方へと走って行ってしまった。

サイラス「この力で、、、、」

サイラスは自分の可能性に胸を躍らせていた。

~~~~~~~~~~~~~~~

数ヶ月後。

ムー「よし、完成だ。。。。遂に完成した、これが僕の属性魔法」

あの日からムーは毎日のように自分の裏属性の研究に没頭していた。
遂に裏属性を自由に操れるようになり、ムーはその場に倒れ込んだ。

研究が進めば進むほど拠点へと帰ることは少なくなり、ここ二週間はぶっ続けで森に籠っていた。

ムー「ふん、マイカ姐さんが見たら驚くだろうな」

マイカ姐さんの驚く顔、そして満面の笑みが脳裏によぎる。

ムー「クソ、さっさと見せてやりてぇが、体力の限界だ」

霞む視界に身を任せ眠ろうとした、その時。

誰かがムーの元へと近づいてきていた。

ムー「この魔力は、サイラスか?」

サイラス「久しぶりだな、先生」

久しぶりに見るサイラスは痩せ細り、やつれた顔をしていた。

ムー「ふん、てめぇも随分と無理をした様だな」

サイラス「お互い様でしょう」

ムー「ところで裏属性の研究は進んでいるのか?」

サイラス「ええ、完成しました」

ムー「奇遇だな、僕もたった今、仮説の検証が終わったところだ」

サイラス「流石先生ですね」

ムー「僕が先生だったのは五属性Sランク習得までだ」

サイラス「いいえ、この力に辿り着けたのは先生のおかげです。出来れば俺はあなたを超えたい。しかしそれを証明することは出来ない、何故なら証明した時、あなたはこの世からいなくなってしまう。それは悲しい」

ムー「ふん、何を言ってやがる。魔法対決ならいつだって受けて立ってやる」

サイラス「私がしたいのはそんな茶番ではありません、本当の意味での超える、です」

ムー「疲れがピークに達してるんじゃねぇか?性格が歪んでやがる」

奇妙な言葉遣いと言動にムーは苛立ちをおぼえた。

ムー「僕もてめぇも、少し休んだ方が良いみたいだな」

サイラス「休んでる時間なんてありません、俺にはやるべきことが三つある、もう既に一つは済ませてあります」

ムー「ほう、お聞かせ願おうか」

サイラス「先生には特別に教えてあげましょう。今日の早朝に俺は娘を海に流しました」

突拍子もない言葉にムーは立ち上がった。

ムー「何を言ってやがる」

サイラス「大丈夫です、ちゃんと闇魔法永続スリープをかけ、木箱に詰め、カメレオンドームを張ってありますから海で魔物に襲われる心配もありません。きっとどこかの大陸の誰かが大切に育ててくれる」

ムー「その冗談は笑えねぇぞ、サイラス」

サイラスは不気味に微笑んでいる。

サイラス「こんな大陸では幸せにはなれません、俺は娘の幸せを願っている。マイカさんが教えてくれたカメレオンドーム、あの術を習得した時にピンときたんです。娘を幸せにする方法を」

ムー「どうやら裏属性の習得と共に大切なものを失ったようだな」

サイラス「そんなことはありません、俺はようやく望む姿になれた。。。二つ目のやるべきことはあなたを超えることです」

ムー「ほう、じゃあここで僕と殺し合いをするためにやってきたってわけか」

サイラス「いいえ、違います。あなたには恩がある。俺はあなたを殺したくはない」

ムー「簡潔に説明し、、ろ」

ムーは突然強烈な眠気に襲われ、その場に倒れ込んだ。

ムー「てめぇ、、何をしやがった」

サイラス「闇魔法、強制スリープです」

ムー「、、、、、」

サイラス「流石のあなたも闇魔法の行使は見えなかったようですね。あなたを超える方法は一つ、あなたよりも強い人物と戦い、殺すことです。あなたは昔に言いました、どうしても超えられない人がいる、と」

ムーは魔法を放とうとしたが疲労も相まってその場で深い眠りに落ちてしまった。

サイラス「おやすみなさい、先生」

ムーが最後に薄ら見えたのは、サイラスが拠点の方へと歩いて行く後ろ姿だった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...